「私、復活!・・・なんてね♪」
天羽 奏がガングニールのシンフォギアを纏い、しかもエクスドライブモードで現れた!
「面白いね・・・・・・いいよ、かかっておいで」
「んじゃ、遠慮なく!」
遂に、二人の「かなで」が戦う。
エクスドライブモードに至った事による飛行能力で高速接近し、歌いながら槍型アームドギアで刺突を行う。
加速も加えた一撃は、カナデの左手小指一本でアッサリ受け止められる。
ニヤ、と笑うカナデ。直後、空いていた右腕でストレートパンチを放つ。
奏は高速で後方に退避して、アームドギアをカナデに向けて投げ捨てて即座に二撃目を放つ。
投げられたアームドギアはデコピン一発で粉砕し、カナデは笑いながら再び攻撃を仕掛けてきた奏を見て・・・。
「っ!!」
「あら、惜しい」
カナデが人差し指を向けた瞬間、奏は急停止。直接触れたらやばい・・・それを直感的に感じ取り、止まったのだ。
急停止した隙ををついてカナデは奏の額にデコピンを当てる。大きな音と痛みが走るが、奏は痛みに耐えてそのままカナデに頭突きを当てる。
更に仰け反ったカナデにアームドギアで渾身の一突き!それはカナデに確かにダメージを与える。
「ふふふ、痛いけど悪くないな・・・さぁ・・・もっともっと遊ぼうよ」
楽しそうに、遊びと表現するカナデ。奏は真剣に戦っているのにカナデにとっては遊びでしかない。
エクスドライブモードであっても、一対一では戦局が好転しない・・・それが現実である。
一方、戦いを見守っていた他の皆も戦局が未だに劣勢である事に危機感を抱いていた。
「どうするんデスか!?このままじゃあ奏さんも、バタンキューデス!」
「奏さぁぁぁぁぁぁん!!」
「奏えぇぇぇぇぇぇぇ!!」
「響と翼、ステイ!」
「でも切歌ちゃんの言う通り、このままじゃあ不味いよ・・・」
「しょうがない・・・おい、紅」
ディケイドは一枚のライダーカードを取り出した。それは黄色でキバと弓矢の絵が書かれていた。
「まさか・・・またですか?」
「当然だ」
キバはディケイドが何をしようとしているのかわかったのか、またかと問いディケイドは気にせず続行する。
カードをディケイドライバーに入れて、その効果を発動する。
《FINAL FORM RIDE》
《KI KI KI KIVA!》
「紅、ちょっとくすぐったいぞ」
「・・・・・・はい」
キバは諦めたように大人しく背を向け、ディケイドはキバの背中へ手を突き入れる。
「うわっ」
そのまま開くと足の部分が大きく開きそのままキバは更に様相を変えていく。
見た目は、巨大なキバットの顔がついた大きな弓矢。鏃はキバの右足がついている。
キバのファイナルフォームライド形態、「キバアロー」だ。
これになるのは二回目で、最初はニ年前に美穂と戦った時にもこの姿になったのだ。
「直人が、武器に!?」
「ちょ、直人さんは大丈夫なんですか!?」
「お前、直人に何をした!」
「心配すんな。本人はちょっとくすぐったいだけだぞ」
皆は驚愕しつつ、大きく変形を遂げたキバの身を案じる。
サガはディケイドに怒りも混ざった声でディケイドに詰め寄るが、キバアローに変形したキバから声がする。
「皆、大丈夫だよ。ニ回目だし痛みは無いけどやっぱり違和感があるな・・・」
「慣れろ」
ディケイドはただ一言を告げ、ディケイドは矢の照準をカナデに合わせていく。そしてもう一枚のカードをドライバーに入れる。
「私達も、一緒に!」
『応!』
響の言葉に、装者達とサガも賛同し準備を始める。
《FINALE ATTACK RIDE》
《KI KI KI KIVA!》
必殺技、ディケイドファングを発動。
グリップを引くことで先端のヘルズゲートを解放。一気に放出した魔皇力で形成された紅い光の矢を放つ。
更に、装者達も自身の魔皇力をアームドギアや拳に集中し、それを弾丸のように一斉放出。
サガもジャコーダーの先端に球状の魔皇力の球を作り皆に合わせて放つ。
ディケイドファングの矢と皆の攻撃が一体化し、虹のように複数の色が重なる美しい矢となった。
奏はカナデが虹色の矢に気を取られた一瞬の隙をついて、槍に魔皇力を集中・・・カナデに乗っ取られていた時の感覚で出来るようになっていた。
《LAST∞METEOR》
旋回させたガングニールの穂先から竜巻を発生させ、そのまま突き刺す暴風の蹂躙を放つ!
それを一突きしてカナデを矢の軌道に持っていく。
そして矢がカナデに命中!矢を受けたそのまま吹き飛ばされ、少し離れたところにある崖にぶつかって、停止の直後に爆発。
キバが元に戻り、皆もカナデが吹き飛ばされた崖まで向かう。その途中でユウスケ達とも合流し、全員でカナデの様子を警戒しながら伺う。
積もった瓦礫を吹き飛ばし、カナデは現れた。矢が当たった腹部を中心に体中傷が出来て血も流れているが、すぐに立ち上がり・・・。
「パーフェクト!」
満面の笑顔で拍手を贈った。その表情や態度からは、純粋に皆を褒めているのがわかる。
「こんなに傷を負ったのは初めてかも!本当に凄いよ、これは凄い!だから・・・・・・ここで終わらせちゃあ勿体ないよね」
「というわけで、今日はここまで!また遊ぼうね〜!」
カナデは笑顔のまま、あっさりとワープして去っていってしまった。
終わりは突然だった。数秒間呆然としていたが、皆が終わった事を理解し、脱力してしまった。
女神との戦いは、女神の気まぐれによる撤退で終わったのだ。
だが、装者達もカナデと何とか戦える位には成長している事を実感できた。
何より、奏を取り戻した事は何よりも大きな成果だ。そして、奏は翼達に向き合い・・・。
「皆、ただいま!」
満面の笑顔で、一番伝えたい事を伝えたのであった。
その後、奏はS.O.N.G.の本部で弦十郎や慎二、朔也やあおい達と再会。
皆と再開を喜び合い、了子の事を聞いて悲しみ、未来やクロードと出会いすぐに仲良くなり、クリス達他の裝者達と親睦を深めていく。
今までいなかった分の時間を、埋めるように。
そして翌日、直人達はこの世界を去る士達の見送りに来ていた。
「士さん、ご協力ありがとうございました」
「門矢さん達の協力があったからこそ、奏さんを救えたんです!ありがとうございます!」
「私からも礼を言うよ。ありがとう」
「門矢さん、ありがとうございます」
「・・・この世界での役割を果たしただけだ」
直人だけでなく、響と奏と翼にもお礼を言われ士はそっぽを向いてぶっきらぼうに言うが、ユウスケと夏海はニヤニヤしながら言う。
「とか言ってるけど、ただ照れてるだけだからさ〜」
「えぇ、こういう所は本当に素直じゃないんですから」
「ユウスケ〜、夏ミカン〜!」
士がユウスケにゲンコツを落とす。夏海は素早く笑いのツボをついて無力化した。
士が落ち着いてから灰色のオーロラを出現させる。最後に、直人が笑顔で言う。
「士さん。気が向いたらで良いので、また通りすがって下さい」
「・・・あぁ、それも悪くないかもな」
士も少し笑いながら肯定し、直人達の皆をカメラに収め、三人はオーロラをくぐり新たな世界へと旅立って行った。
こうして、カナデとの戦いは一旦終わる。だが、脅威は無くなった訳ではない。皆は心の中で改めて気を引き締める。
すると、ここで弦十郎がやって来る。
「門矢君は行ったか・・・・・・奏。君の今後についてだが、俺から一つの提案がある」
「ダンナ、提案って何だよ?」
「それはな・・・」
その内容に奏は驚きながらも、笑顔で了承した。他の皆も賛成してくれた。
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士達がこの世界を離れた日と同じ日。
ワープしたカナデが今いるのは、世界のどこか。数多くの花々が咲き誇り、木々が成る。暖かな日差しを受けて穏やかな気候のまさに楽園のようだ。
また、少ないが家などの建物もある。そこに存在する白い・・・教会のような建物の中に入る。
その中には、異質な光景が広がっていた。
協会内部、聖堂の奥に大きな水晶が一つ。中央のより少し小さな水晶が左右に二つずつの計五つ。
その中には、人間が入っていた。左右の四つに男女二人ずつ、そして中央に男性が一人の計五人。
「皆、私・・・新しい体になったよ。もうすぐ、絶対に皆に会えるよね」
一人一人を愛おしく見るカナデ。その表情は、親愛の情に満みている。
そして中央の水晶に触れ、潤んだ瞳に少年の姿を映す。
「昔みたいに皆と一緒に遊んで歌って話して・・・あなたと一緒に生きたい・・・大好きなあなたと一緒に」
その表情は、恋する乙女そのもの。
そう、カナデは・・・始祖の吸命鬼・女神は・・・この女ファンガイアは、二人の少年と二人の少女に友情を抱いている。
一人の人間の少年に、恋をしている。
「もう少しだけ待っててね・・・・・・渡」
中央の少年の名は、紅 渡。直人と同じ紅家の血筋の人間である。
「絶対に、皆ともう一度会って・・・そして、あなたとの時間を永遠にしよう・・・絶対に」
カナデの目的は五人を生き返らせて、もう一度楽しかった時間を永遠にする事だ。
しかし・・・それは罪だ、許されない大罪だ。
不老不死など、この世界には存在しないのに。それに逆らい・・・現実にしようとしているのだから。
次回予告
第三章・最終話 共ニ音奏デ、歩ミ合イ
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今回の最後に紅 渡が出ましたが、キバ本編の主人公とは同姓同名の別人です。
今後、カナデの過去編も書く予定で、そこで登場します。
次回で、第三章は終わります。