紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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お待たせいたしました。やっと書けたので更新いたします。


第十一話 進化する女神、奏の心

カナデが第二段階に至ったのと同時刻。

クウガとキバーラ、零士と美穂の戦いはクライマックスを迎えていた。

 

クウガは紫の重装甲形態、タイタンフォームとなって零士の撃つ銃弾を受け止めつつ進み、手に持った剣のタイタンソードで斬りつける戦法を取ってジワジワと追い詰める。

 

美穂はシンフォギアを纏っているとはいえ、生身でもあるためそのままでは危険と判断して体をファンガイア態に変える。

 

虹色の炎を球状にして投げつけるが、剣で切り裂き背中に光の羽を伸ばして低空飛行で高速接近。そしてそのまま斬撃攻撃を与えていく。

 

そして、クウガが零士に向けてタイタンソードを上から力を込めて振り下ろすが零士は寸のところで後ろに回避。

 

同じく回避していた美穂に言う。

 

「ここまでにしておくか・・・おい、引き上げるぞ」

「はぁ!?」

 

「こいつらも中々やるし、ここで死んだら意味ねぇだろうがよ」

「チッ・・・」

 

零士と美穂は揃ってワープの魔術で戦線離脱。

 

そこに、再生態のファンガイアを全て倒したチェックメイトフォーのルーク、豪介。ビショップ、聖。クイーン、深央が合流。

 

クウガはマイティフォームに戻り、事前に用意していた自分のバイクである「ビートチェイサー2000」に乗る。

 

後ろにキバーラを載せ、先にいる健吾達の助太刀に向かう。

更に、豪介が聖と深央を抱えて高速移動の魔術で並走していく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

次狼、ラモン、力の三人はウェル博士率いるファンガイア再生態を全て倒し、健吾が変身するイクサはウェルと戦っていた。

 

 

「お好み焼き爆弾、と見せかけてぶった斬り!」

「興味ありますお好み焼きっ!」

 

イクサカリバーを持ち、そのまま疾走。

 

剣で斬る攻撃と予想したウェル博士は、防御の為に胸元で腕を交差させる。だが、イクサの攻撃は斬撃ではなく・・・。

 

「整形パンチ!」

「ベビリ!」

 

右手のイクサカリバーを落とし、がら空きの顔面に向けて全力パンチだった!

 

よろけるウェル博士。そしてイクサナックルフエッスルをベルトに装填し、ブロウクンファングを発動。

 

《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》

 

腹部にイクサナックルを当てて、ゼロ距離で技を放つ。

装甲があったため倒される事は無かったが、ダメージは大きくウェル博士は人の姿に戻る。

 

「ちくしょう・・・このままでいる僕じゃ無いぞ!」

 

ウェルは悔しがりながら、全速力で走って逃げた。ワープはまだ出来ないらしい。

 

イクサは追わず、キバ達に合流する為イクサリオンに乗り現場に急行する。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

カナデが、遂に第二段階に至った。ステンドグラスの二対四枚の翼がそよ風になびく。

 

服装は白い、スカート丈も膝位までの長さであるワンピースに水色のフリルがついた、可愛らしいものになっている。

 

水色の長髪は、奏の橙色の髪と正反対の色合いだが、カナデ自身の存在感もあって輝かしく見える。

 

柔軟な微笑みを浮かべながら翼を広げ佇む・・・その姿はまさに女神。ならば、彼女は善なる存在か?

 

 

否。

 

 

 

「さぁ、第2ラウンドだよ」

 

壮絶な笑みを浮かべながら、カナデは挑発するように手招きをする。

 

それに答えたのはマリアとセレナ。二人で最大数の短剣を展開し前後左右上下・・・縦横無尽に攻撃を仕掛ける。

 

調の鋸と切歌の鎌も同時に襲いかかる。

 

しかし、カナデはそれを全く動かず防御もしない。

全てがカナデの全身に刺さる。しかし、カナデ自身は傷付かずノーダメージ。

 

「ふふ・・・」

 

「さっきより硬いな・・・なら」

 

《KAMEN RIDE》

《RYUKI!》

 

《FINAL ATTACK RIDE》

《RYU RYU RYU RYUKI!》

 

ディケイドは鏡の魔物・ミラーモンスターと契約し共に戦う戦士、仮面ライダー龍騎にカメンライド。

 

先程と同じように直ぐにファイナルベントを発動。更に、サガがジャコーダーを鞭にして巻きつけ空中へ投げる。

 

ディケイドは高くジャンプし、どこからか現れたドラグレッダー吐いたの炎を纏ってドラゴンライダーキックを発動。

 

それは吸い込まれるようにカナデに命中。

 

吹っ飛んで崖に激突その威力は大きく、装者達の攻撃ではノーダメージだったが口から血を流す位にはダメージを受けていた。

 

「・・・・・・痛いなぁ、でも・・・・・・楽しくなりそう・・・あぁそうだ。だったらもっともっともっと」

 

ブツブツ言いながら立ち上がり、目を見開いて皆を視界に移す。

 

「壊しちゃお」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

オーロラの向こう、そこは何もない空間。そこにいるのは直人、翼、響、奏の四人。

 

「ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・ごめんなさい・・・」

 

奏は蹲り、膝に顔を埋めながら泣いて謝り続けていた。翼は奏を抱きしめながら優しく頭を撫で、直人は奏のそばにいる。

 

響は立ったまま俯いており、表情は見えない。

 

 

「私・・・何度も何度も止めようと・・・・・・でも、意識はあっても体は勝手に動いて皆を傷付けて・・・」

 

「奏のせいじゃない、だから・・・」

翼の言葉に、奏は弱々しく反論する。

 

「止められなかった・・・何も出来なかった・・・私は、こんな思いを相手にさせたくなかったのに・・・」

 

カナデに体を乗っ取られていたとはいえ、奏自身の意志は残っていた。

 

奏自身の意思では止められず、自分が直人達を傷付けていく事をただ見ているしか出来なかった。

 

それは、奏の心を傷付け続けてきた。その傷は深く、いつも明るく前向きな奏が暗く沈め・・・・・・。

 

 

「もう・・・・・・終わりにさせて・・・諦めさせてよ。もう、辛すぎて耐えられないよぉ・・・・・・」

 

生きる事を諦めてしまう程に。

 

 

 

直人が言おうとした瞬間、響が奏の胸ぐらを掴んで強引に立たせ・・・。

 

 

パァンッッ!!

 

 

頬を叩いた。怒りの表情で、涙を流しながら叫ぶ。

 

「ふざけないでっっ!!」

「・・・ぇ?」

 

叩かれた奏だけでなく、直人と翼も呆然と響を見る事しか出来ない。

 

「直人さんが、皆が教えてくれたんです。相手への言葉や意思、決意や行動には責任が伴うって。

 

奏さんは私に言ってくれました、生きるのを諦めるなって。

 

なのに、そう言った奏さん自身が生きるのを諦めてどうするんですか!」

 

「・・・そ、れは・・・」

 

「私を生かした責任を取らず、死へと逃げないでください!

 

私や翼さん、直人さん達に二度も奏さんを失う悲しみを背負わせないでください!」

 

 

 

「生きる事を諦めないでっ!!」

 

「・・・!!」

 

かつては奏から響に言われた言葉が、今度は響から奏に伝えられた。その言葉は、奏の心に確かに届いた。

 

「・・・響、だっけ。強くて立派だな。私よりずっと・・・」

 

「私が強くなれたのは、皆さんと・・・その皆さんと出会う未来へと命を繋いでくれた奏さんのお陰です」

 

そう言って、響は優しく微笑んで奏を抱きしめる。

 

「生きてください、奏さん。奏さんが生きることを望んでいる人はたくさんいますから」

 

直人と翼も、奏を抱きしめる。

 

「響ちゃんの言う通りだよ。僕達は奏と一緒にいたい。一緒にいられなかった時間も含めて、ずっと」

 

「奏、私は奏が大好き。また一緒にいたい・・・一緒に歌いたい。だから、生きて」

 

「・・・ありがとう・・・・・・私、生きるよ・・・生きて皆と一緒にいたい・・・!」

 

今度は悲しみの涙ではなく、喜びの涙を流し生きることを受け入れた。

 

皆は立ち上がり、オーロラの外に向けて歩き出す。その最中、奏は聖唱を歌い、ガングニールのシンフォギアを身に纏う。

 

カナデによる改造により、正規適合者と同じようにシンフォギアをデメリットなく纏う事が可能になっている。

 

響と同じオレンジと白のスーツになり、槍のアームドギアは以前よりも固く強くなっている。

 

奏は歌う。前に進む為の、生きるための歌を。その歌は、奏を優しく包み込み・・・。

 

 

外は荒れ果てていた。地面はデコボコの穴だらけ、周囲は瓦礫や地面で荒れ狂う。

 

装者達は意識こそハッキリしているが倒れており、最早戦う力は残っていない。

 

サガとディケイドも、変身は解けていないがダメージが大きい。

 

カナデに対してはドラゴンライダーキックを最後に、まともなダメージを与えられていない。

 

「・・・」

 

その光景を、つまらなさそうに見るだけのカナデ。装者やライダー達が弱いのではない。第二段階に至ったカナデが強すぎるのだ。

 

 

ため息を一つ吐きトドメとして手を皆に向けた瞬間、横から高速で響と翼、キバが現れ、カナデに攻撃する。

 

カナデは攻撃を中断し、三人の攻撃を回避。三人に一瞬気を取られた隙に、今度はガングニールのアームドギアが飛んできた。

 

それをキャッチして見つめ、カナデは奏が戻ってきた事を確信する。響達は倒れていた皆を起こす。

 

「皆、遅くなってごめんね」

「大丈夫よ、天羽 奏は?」

「奏は・・・来たぞ」

 

マリアの問に答えたのは翼。そして遂に、奏が皆の前に姿を現した。

 

 

「私、復活!・・・なんてね♪」

 

天羽 奏がガングニールのシンフォギアを纏い、しかもエクスドライブモードで現れた!

 

奏自身の生きたいという願い、絶望を乗り越えた強い意志、そして響達の奏を想う心がフォニックゲインとなり、ガングニールをエクスドライブモードにまで高めのだ。

 

さながら天女であり、女神。その姿に響達を魅入られる。その姿から、ファンガイアの間で奏に新たな名が付けられる。

 

 

真槍の奏歌(しんそうのそうか)・・・と。

 

 

「面白いね・・・・・・いいよ、かかっておいで」

「んじゃ、遠慮なく!」

 

そして遂に、奏とカナデが戦う!




次回予告。

遂に奏とカナデの戦いが始まった。両者の戦い、そしてその後の行く末は・・・。

第十二話 復活の奏、真槍の奏歌

同じ名前の者同士だけど、お互いに相容れない。その戦いはわかり合うためじゃない。


ーーーーーーーーーー


本文中にあった、響が奏に「生きる事を諦めないで」と言ったシーンは、ずっと書きたかったシーンの一つだったので、書けて本当に良かったです。

それと修行したのにカナデに苦戦しているのは、カナデが強すぎるからですね。

皆の魔術やイクサへの変身など、今回見せられなかった分は今後のお話で見せていきますので、お待ちいただけると幸いです。

第三章も、後二話位で終わります。

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