第一話 始まりの平穏、崩れる平穏
「心の音楽に耳を澄ませ、心の歌を歌いましょう。大切な人へ、その歌を届けてあげるの。きっと、解り合えるから」
少年はかつて、自分の母親が言っていた言葉を思い出した。きっかけは無い、本当に突然だった。言われた当時はまだ幼かったから判らなかった。
でも、今ならわかる。歌は、自分の気持ちを、言葉にして大切な人へ伝えること。気持ちを伝える為に、言葉は存在するのだと。
そして、音楽は。自らの心を映す、鏡なのではないか。その鏡と向き合い、自分の心を・・・気持ちを知ることが、心の音楽に耳を澄ませる・・・ということではないか・・・。
「・・・驚いたな。旧式とはいえ、我々の保有する兵器達が、こんなに簡単に・・・・・・」
山梨県、北富士演習場。多くの自衛隊員や日本政府の人間が見守る中、一人の少年と二人の少女が、兵器を全て破壊したのだ。
茶髪の少年、蒼い髪の少女、橙色の髪の少女。三人がそれぞれ装束を身にまとい、手に武器を持っている。
壊れた兵器の中で、三人は平然と立っている。
「特異災害対策機動部二課が所持する、FG式回天特機装束・・・シンフォギア、か。まさかこれ程とは・・・」
特別な力を扱う三人。その三人は今・・・・・・。
「直人!私の話、聞いてるか?」
「え・・・あぁ、ごめんね奏。えっと、炎の精霊を使役して、『ちっちぇな』と言いながら世界を征服したいけど、どうすればいいかって話だっけ?」
「全然違あぁぁぁぁぁう!!でも私にピッタリそうだなその設定!」
「ごめん、何の話だっけ?」
「全く、ちゃんと聞いてくれよ。いいか?・・・・・・ヒマだ、何とかしたい!以上」
「ヒマって・・・」
「奏、今はまだ任務中よ。ちゃんとしないと・・・」
「固い事言うなよ翼~。将来はげちゃうぜ?」
待機室で、おしゃべりをしていた。
紅 直人。風鳴 翼。天羽 奏。この三人は、シンフォギア奏者として人類の脅威と戦う戦士だ。
「なぁあんた。この施設ってさ、暇つぶしに良い所ってない?」
奏は、この部屋に居る四人目・・・自衛隊員の津山一等陸士にたずねた。
「あの、勝手な行動は控えていただきたいのですが・・・えっと、娯楽施設としてはシアタールームくらいしか・・・」
「あはは、ごめんごめん。あんたは真面目だよねぇ」
「うん、翼みたいだよ」
「直人!」
「翼も昔は、もっと素直で可愛かったのにな・・・」
「えぇ!?か、可愛いって・・・私、あの、そんな・・・」
「幼なじみとしても鼻が高いよ。可愛い翼をたくさん知ることが出来たんだから」
「う・・・うぅ・・・直人の、いじわる・・・」
直人と翼は、幼稚園に入る前からの付き合い・・・いわゆる幼なじみだ。長い時を共に過ごしていく中で、翼は直人に何度も救われていた。
いつも一緒に遊んでくれた。不安なとき、怖いとき、いつもそばにいて手を握ってくれた。なぐさめてくれた。
怖い物から守ってくれた。
翼は幼い頃から直人に好意を抱いており、成長していき、直人への恋心をハッキリと自覚した。
奏は、翼の恋を応援しており、色々とアドバイスや工作を行っていた。
そんな奏にとっても、直人は大切な存在であることに変わりは無い。自分たちの支えになってくれる、優しい少年だから。
それに、そういう奏自身も直人の事を・・・。
「そうだ!直人、バイオリン、ひいてくれよ!持ってきてるだろ?」
「え?うん、もちろん持ってるけど・・・いいかな?」
翼の方を向いて訪ねる直人。翼は微笑んで肯定した。
「あぁ。私も、直人のバイオリンを聞きたい」
「わかった。津山さんも、ぜひ聞いてみてください」
「は、はい!」
直人はバイオリンをケースから出して、弦を持ち、構える。
すると、直人の雰囲気が一変した。優しい雰囲気が、真剣な物へと。そして・・・ゆっくりと引き出した。
その旋律に、翼も奏も、津山も聞き惚れる。とても神聖な、それでいて力強い不思議なメロディだ。
ポン、と弦を一回はじく音を最後に、演奏は終了した。
「・・・・・・すっごくよかったぜっ!やっぱり直人はすごいな!」
「うん。何度聞いても、すばらしい音色だったわ」
「・・・本当に、すごかったです」
「ありがとうございます」
礼儀正しく一礼する直人。音楽を通じて、四人の心に安らぎが生まれた。しかし・・・・・・。
その時間は、突然の警報と、特異災害対策機動部二課の司令、風鳴 弦十朗からの通信によって破られた。
『この基地内にノイズが大量発生!当たるのを幸いの大暴れしている・・・っ!』
『伝説の武器はこっちで預かってるわ。D300区画まで来れる?』
シンフォギア開発者、櫻井 了子も通信に加わる。
三人は肯定して、D300区画まで向かっていく。ノイズと戦う奏者・・・防人としての使命を果たすために!
頑張って書いていくので、よろしくお願いします。