活動報告を投稿しました。連載作品についてのご報告です。
それと、前回の話ですがカナデを少し弱くしました。流石にあれは強すぎたので、下方修正しました。
「ん・・・・・・?」
「あ・・・・・・目が覚めた?大丈夫?」
目を覚ました翼の目に、安堵した直人の顔が映る。
「直人・・・・・・ここは?」
「本部の医務室。翼以外の皆は、もう目を覚ましているよ」
「・・・・・・・・・・・・」
翼は上半身を起こし、少しの間うつむいていたが、ポツリと言う。
「直人・・・奏は・・・私達の敵なの?」
「・・・・・・奏は、ファンガイアの始祖に体を乗っ取られている。敵はカナデであって、奏ではないよ」
「・・・・・・でも、奏は生きていて嬉しいのに・・・嫌だ。体を乗っ取られているっていっても・・・奏が敵なんて、信じられない・・・・・・」
「・・・・・・」
「嫌だよ・・・・・・奏が敵だなんて、奏と戦うなんて・・・・・・いやだよぉ・・・・・・!」
翼は直人の胸元に抱きつき、悲しみのまま泣き出す。直人は翼を抱きしめ、頭を優しく撫でる・・・。
「翼・・・・・・僕だって奏と戦うのは嫌だよ。でも、これは避けられない現実だ」
「直人・・・・・・」
「新しい体の構築が終わったら、奏を返すと言ってたけど・・・きっと、もう一度戦いを挑んでくる筈だ」
直人は、確信に満ちた事を言う。そして、翼に話を続ける。
「いつまでも悲しんでいられない。涙を流せば、奏が戻ってくるなんて事はない。
だからこそ、戦わないといけない。戦ってでも取り戻す、という気持ちでいないと悲しみと苦しみに心が押し潰されて壊れてしまう」
「・・・・・・」
「奏とまた、一緒にいられる未来を掴みとる為に・・・今、立ち上がろう。
僕が、おじさんが、皆がいるから・・・・・・もう一度、立ち上がる勇気を持ってほしい」
「・・・・・・直人」
翼は直人の胸元で、直人に言われた事を反芻しながら、悲しみと戦っていた・・・・・・。
ーーーーーーーーーー
一方。直人と翼、響以外の皆は、食堂に集まっていた。食欲はないが、水分補給のために皆で水を飲んでいた。
皆、病衣姿で体の色んな所に包帯が巻いてある。
「あいてて・・・まだ痛む・・・」
「クリス先輩もデスか・・・」
「・・・・・・カナデ、強すぎる」
「ファンガイアの始祖、イヴっていうけど本当に敵わないって思ったわ」
「でも、戦えるのは私達だけ・・・」
「そうだな、翼先輩と響がどうなるかは・・・・・・戦えないって可能性も考えないとな」
ここにいる皆は、翼と響にとって奏がどういう存在かは既に始っている。だからこそ、二人は奏への情から戦えない・・・そう予想していた。
「・・・・・・特訓デス」
「切ちゃん?」
「次戦うときは、少しでも戦えるように特訓デス!じっとしているより、何かをするべきデス!」
切歌の言葉は、具体的な提案という訳ではない。しかし、何故か説得力を感じられた。
皆は顔を見合わせながら、フフッと微笑み切歌に頷いた。
そして、皆でトレーニングルームに向かう。
「アチョー!!」
先客がいた、響だ。部屋の端には連絡を受けて駆けつけた未来とクロードがいて響を見守っている。
響はトレーニングウェアに着替えていて、格闘技の型をとっている。
「え・・・響!?」
「あ・・・皆さん!」
マリアの声に気付いた響と未来とクロードが、皆の元に駆け寄る。
「響・・・お前、大丈夫なのか?」
「大丈夫だよ、クリスちゃん!平気、へっちゃら・・・・・・とは流石に言えないけど。でも、くよくよしてばかりじゃあ駄目だから」
「響ったら・・・心配して来てくれた直人さんが励ましてくれるまで、ずっと泣いてたのに」
「未来ぅ・・・・・・」
シューン、となる響だがすぐに真剣な表情になって話す。
「・・・未来の言うとおりです。直人さんのお陰で、私は決めました。
奏さんを取り戻す為に、奏さんをぶん殴ります!例え体を乗っ取られているとしても、たくさん心配をかけた分、一発殴ります!」
フン!と意気込む響に、皆は最初はポカンとしていたがやがて笑顔になっていく。
「ったく、この大バカやろうが・・・でも、らしいっちゃあ、らしいな」
「「流石響さん・・・」」
「「うんうん♪」」
「・・・未来、誉められている気がしないような・・・・・・」
「どうだか・・・」
そんな話をしていると、直人と翼が入ってきた。
「さっきの話が聞こえたけど・・・うん、響ちゃんらしいな」
「立花・・・・・・その、顔は殴らないであげてほしい」
「直人さん、翼さん!」
皆が二人に駆け寄る。翼は皆を見渡して、自分の決意を言う。
「皆・・・私にとって、奏は大切な人だ。でも、泣いていては奏を取り戻せない。
・・・・・・戦わないと奏を取り戻せないならば、辛くて苦しくて・・・でも、戦う。
だから・・・・・・私が折れそうになったら、支えてくれないか?」
すると、響が翼に抱きつく。
「立花・・・」
「翼さん、私も同じです。奏さんが大好きです。大好きだから・・・頑張ります!」
「・・・・・・立花より、私の方が奏を大好きと思っているぞ」
「いやいや、私の方が大好きですよ!」
「いやいや、私の方が・・・」
「いえいえ、私の方が・・・」
「はいストップしやがれ!・・・・・・ま、二人が大丈夫なら、問題ねぇな」
「本当に、心強く感じるわ」
「だね♪」
「「そうそう!」」
笑顔が戻った皆。すると、クロードは翼にギュッと抱きつく。
「翼お姉ちゃん・・・もう大丈夫?」
「あぁ・・・心配をかけてごめんなさい・・・でも、もう大丈夫」
「良かったぁ・・・」
クロードも翼を心配していた故に、抱きついて少しでも安心させようとしていたのだ。
翼はクロードに感謝の気持ちを込めて、優しく頭を撫でる。クロードも翼が元気になった事に安心しながら、撫でを受け入れる。
こうして、痛みと悲しみに満ちていた皆は奏を救うという決意を胸に、再び立ち上がれた。
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「さて、俺は・・・・・・」
士は、トレーニングルームの前で盗み聞きを終えて艦内を歩いていく。
直人は盗み聞きに気付いていたが、害意は無いことがわかっていたので、何も言わなかった。
館内を歩き、食堂に行くと・・・・・・。
「あ、士!潜水艦って初めて乗ったけど、ここは乗り心地が良いな!」
「士君・・・ここの人達に迷惑をかけていますね」
「ユウスケ、ガキみたいにはしゃぐな。あと夏海、何で断言しやがる」
小野寺 ユウスケ、光 夏海。二人は士の旅の仲間である。「ジオウの世界」では別行動だったが、後に合流してまた一緒に旅をしている。
奏者の皆が医務室にいる間に、士が弦十朗に紹介し入る許可を得ておいたのだ。
「この世界って直人君がいる、キバの世界だろ?
でも、女の子が歌を歌いながら戦ったり・・・そういうのって初めてだから新鮮だな~」
「歌を歌いながらって・・・・・・本当にビックリしましたよ」
「それより、海東は来てないだろうな?」
「えぇ、見ていませんが・・・」
「ならいい。さて、お前らにも手伝ってもらうぞ」
士は二人と同じテーブルに座り、用件を言う。
「俺も戦えばいいんだよな?」
「あぁ。それと夏海、お前は腐った夏ミカンになって部屋の隅にいろ」
「秘技、笑いのツボ!」
一瞬、明暗暗転。
「ブハッハハハハハハハ!!冗談だ・・・キバーラを呼んでおけ・・・」
「全く!・・・しかし、思い出しますね。この世界のキバットに、キバーラを紹介した時の事を」
「あぁ、この世界のキバットは妹がいないから、キバーラを紹介した時は凄く驚いてたね」
「・・・そうだな」
その後、士は二人を連れて直人達の所に。
直人はユウスケ、夏海との再会を喜び握手をする。奏者の皆にも自己紹介をして、皆とすぐに打ち解けた。
そして二人も仮面ライダーであり共に戦えることを伝え、次のカナデとの邂逅に備えていく事になる。
次回予告
再び動き出すカナデ。奏者の皆は、決意を胸に再び戦う。全ては、奏の為に・・・。
第八話 奏でよ、決意の多重奏を
各々の決意は、奏を救う為に一つに収束する。それは、如何なるようになるのか・・・。