紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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第三話 旅人と魔皇、動く者達

S.O.N.G.の本部として機能している潜水艦。その食堂にてシンフォギア装者の面々、直人、弦十郎・・・そして門矢 士がいた。

 

士に対しての聴取なのだが、士はこれほどの面々に囲まれても平然と茶を飲んでいる。

 

ちなみに、翼は直人の腕に抱きついている。直人に甘えて士による疲労を癒していた。

 

弦十郎が士に訪ねる。

 

 

「門矢 士・・・だったな、まずは単刀直入に聞こう・・・・・・君は何者だ?」

 

「通りすがりのイケメンだ」

「いや、そうじゃなくてな」

 

「何だ、俺のサインが欲しいのか?俺の直筆サインは1億ドルの価値があるぞ」

「・・・その台詞、俺の親友がよく言ってたな・・・」

 

「そうか?・・・まぁ、俺にもよくわからん。俺は記憶喪失でな、多少は戻っているが完全じゃない」

「そうだったか、すまない」

 

「別に構わん・・・・・・だが、通りすがりというのは事実だ。俺は世界を旅している旅人だ」

 

弦十郎からの質問に、士は不真面目に答える時もあれば真面目に答える時もある。

 

どことなく、掴み所がない青年だ。

 

「次の質問だ。君は直人と面識があるみたいだが、そこはどうなのだ?」

 

「以前もこの世界に通りすがった時、協力して狐のファンガイアと戦った・・・そのくらいだ」

「美穂ちゃんと・・・?」

 

狐のファンガイアと聞いて、響が反応した。

 

「ま、油揚げやるから大人しくしろと言ったらキレられたがな」

 

「あぁ・・・そうでした。士さんが挑発するから色々と大変でしたよ」

「刺激的なスパイスをかけた、と言え」

 

「士さん、相変わらずですね・・・」

「当然だ」

 

「こいつ、完全に俺ルールで動いてやがる・・・」

クリスは目元をひくつかせながら、彼の性格を言い当てた。

 

「じー・・・・・・ただいま監視中・・・・・・」

「おい、そこのツインテール。お前は生きた監視カメラか」

 

士と直人がそんなやり取りをしたり、外野に士が律儀にツッコミを入れつつ、弦十郎による聴取は続く。

 

それからしばらく、あまり良い聴取とは言えなかったが、聴取事態は終了。

 

「聴取は以上だ、君は泊まる部屋はあるか?ないならこの潜水艦の部屋を貸すが・・・」

「それは良いな、寝床を探す手間が省ける・・・・・・おい、風鳴」

 

「な、何ですか・・・」

士が翼に声をかける。直人の腕に抱きつきながら、士を警戒する翼。

 

「明日の仕事も、俺がマネージャーだ」

「ーーーーーっ!?」

 

 

ニヤリと笑って告げ、部屋を出た士はS.O.N.G.エージェントの案内で客室へ向かう。

 

一方、告げられた翼はショックで顔面蒼白(ギャグ描写)になっていた。

 

そう、緒川はまだ風が治っていないので、翼のマネージャーは士のままなのだ。

 

翼はまたあの苦労をする事に恐怖して、直人に言う。

 

「直人・・・お願い、あの人を説得して・・・」

「無理」

 

きっぱりと言い切った直人。士は良くも悪くも我が道を行くタイプ、説得は難しい。

 

「な、なら!直人が私のマネージャーになって!お願いだから・・・・・・」

「翼・・・・・・」

 

直人はそっと翼の肩に手を置いて・・・。

 

 

 

「頑張れ」

 

無情に突き放した。

 

他の装者達+弦十郎は、これまでのやり取りで士の性格を理解したためか、手を合わせて合掌し翼に拝むように頭を下げた。チーン・・・という効果音まで聞こえる始末。

 

孤立無援、味方はいない。翼はガクッと膝から崩れ落ちた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

その後、何とか翼を励ました直人達だが、ここで弦十郎のスマホに着信が入る。画面に表記された名前を見て電話に出る。

 

「もしもし、栞か。どうした?・・・・・・あぁ、こちらは相変わらずだ。エレナは相変わらずだろ?」

 

 

「・・・?翼さん、師匠は誰と話しているんですか?」

 

「風鳴 栞。東京南部と神奈川北部の間にある"天宮市"に住んでいる、叔父様の娘・・・つまり私の従姉妹だ。エレナさんは、叔父様の奥さんの名だ」

 

『・・・・・・えええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!?』

 

翼が話した内容に、直人と翼以外の装者が驚きのあまり、大きな声を出してしまう。

 

「何だぁ!?どうした!」

弦十郎も大声に驚き、振り向く。

 

「師匠、結婚してたんですか!?っていうか、娘さんいたんですか!?」

「私達、今初めて聞いたぞ!?」

「デスデス!驚愕の事実デース!」

 

響とクリスと切歌の言うとおり、弦十郎が妻子持ちだということを翼と直人以外は聞いていなかったのだ。

 

「そ、そうか・・・それは済まなかった。そういえば、話していなかったか・・・」

 

「そういえば、天宮市って空間震が起こってるところだよね?」

「あぁ、シェルターが完備されているから大丈夫だろう」

 

セレナの呟きに弦十郎が答える。実際は"バグスターウィルス"の対処に当たっているが、その存在はまだ秘密であるため、弦十郎はその事を伝えなかった。

 

 

『お父さん?』

「あぁ、済まない栞。驚かせてしまったな」

 

『あ、もしかしてシンフォギア装者の人達?』

「そうだ、翼と直人もいるぞ」

 

『翼お姉ちゃんと直人お兄ちゃんも?皆に挨拶していい?』

「いいだろう、スピーカーモードに変えよう」

 

弦十郎はスピーカーモードに変えて、スマホを皆に聞こえるように向ける。

 

『初めましての方は初めまして、風鳴 栞といいます。今回は声だけで失礼します』

 

「何て甘くてかわいい声なの!?蕩けてしまいそう!」

「姉さん、落ち着いて・・・でも確かにかわいい」

 

「・・・きっと天使のごとく愛らしい」

「声以外もかわいいと思うデス!」

 

「あぁ、目に入れても痛くない位にかわいい娘だぞ」

『もぉ、お父さんったら・・・』

 

弦十郎が誉める姿は、親バカそのもの。少女・・・栞はちょっと呆れながらも満更でもないようだ。

 

「久しぶりだな、栞。天宮市でも相変わらずのようね」

『翼お姉ちゃん、外国ライブはテレビで見てたよ。すっごく良かった!』

 

「ありがとう、栞。そう言ってもらえて嬉しいな」

 

翼と栞は従姉妹だが、翼は栞を本当の妹のように思い、とても可愛がっている。

 

栞も翼を本当の姉と思い、心から慕っている。従姉妹としても姉妹としても、お互いの関係は良好である。

 

それに、栞は直人の事も本当の兄のように思っており、お兄ちゃんと呼んでいる。

 

「栞ちゃん、久しぶり」

『直人お兄ちゃん、久しぶり!翼お姉ちゃんと仲良くしてる?』

「もちろん」

 

『良かった♪翼お姉ちゃん、直人お兄ちゃんと奏さんがいなくなってから、寂しくていっぱい泣いてたんだよ?』

「それは本当に申し訳ない・・・」

 

『反省しているならよろしい。これからは翼お姉ちゃんといっぱいイチャイチャしてね♪』

 

「し、栞!イチャイチャって、そんな・・・」

顔を真っ赤にして慌てる翼、その姿はとてもかわいい。

 

その後、他の皆も栞に自己紹介をした後に、直接会ったらまた話をしようと約束して通話は終わった。

 

 

余談だが・・・栞との通話の後、イヴ姉妹は夜の自宅でこんな会話をしていた。

 

「・・・・・・お姉ちゃん、か」

「セレナ、どうしたの?」

 

「調ちゃんと切歌ちゃんは私より年下で、幼い頃からずっと一緒でしょ?」

「えぇ・・・大変な時も、楽しい時もずっと一緒だったでしょ?」

 

「なのに、どうして二人は私をお姉ちゃんって呼んでくれないんだろう?って思っちゃって・・・」

 

「あー・・・・・・そういえば私も呼ばれたこと無いわね」

「私の周りで、お姉ちゃんって呼んでくれるのはクロード君だけだし・・・私って、お姉ちゃんらしさが足りないのかな・・・」

 

「そんな事無いわよ、セレナは慈愛と包容力に溢れた素敵な女性よ」

 

「それなら他の子もそうでしょ?・・・私が原作で出番が少ないのは、きっと姉らしさが足りないから・・・フフフ・・・私、姉らしさと出番が欲しい」

 

「セレナ!?しっかりして・・・セレナアァァ!!」

 

・・・という事があったそうだ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

士を聴取している時と同時刻、世界のどこかにある革命団の本拠地。

 

そこには、美穂、零士、ウェルの三人がいた。

 

「なぁ、ウェル博士。あれは完成したか?」

「えぇ、昨日完成したばかりですよ。まだ使っていませんが」

 

「しかし、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()のは何でと思ったけど・・・こんなのを作っていたとはね」

 

「やはり英雄と言えば変身!古代より人間が鎧と武器を持って掲げた姿が英雄に見えるように・・・姿を変えるのは己を変えてくれる」

 

ウェルは自身の発明品を見て、ウットリとした表情のまま語る。

 

「今度こそなって見せますよ、僕が思い描く真の英雄にね!」

「そいつは結構・・・んでさ、それは俺の分もある?」

 

「それは今開発中です。っていうか、君の力が強すぎてこれの方が耐えられないから、耐えれるようにする設計や調整が必要だ!」

 

「・・・・・・それ、早く出来るか?」

「難しいから時間がかかるわ!あなたが強すぎるのがいけないんですよ!」

 

「ウソダドンドコドーン!!」

叫んでガクリ、と落ち込む零士。美穂はそんな零士を無視してウェルに聞く。

 

「ところでウェル博士、あいつがどこにいったか知らない?」

 

「あいつ?・・・・・・あぁ、彼女の事ですか。確か外を見てくると言って行きましたよ」

 

「・・・・・・勝手に出るなって言ったでしょうがあぁぁぁぁぁぁ!!」

 

美穂も叫ぶ。なんだかんだ言って、この三人は良いチームなのかもしれない。

 

 

「さてと、行きますか・・・紅達を冷やかしに」

「僕は早速この発明品の実戦テストを・・・」

 

「ちょっと、あいつは良いの!?」

「自分から勝手にこっちへ来るだろうよ。邪魔して機嫌悪くするのもあれだし、放っておこう」

 

「・・・・・・・・・・・・はぁい」

 

 

そして翌日。周りが望む望まないに関係なく、状況は大きく動き出す事になる。

 




次回予告

日常を過ごす装者達だが、美穂、零士、ウェルの三人が動き出した。士も加えて戦いを挑む。


第四話 日常と、急襲


これまで通りの日常とは、唐突に崩れるもの。それでも守ることこそ、戦場に赴く者の責任なのだから。


ーーーーーーーーーー


今回もう一つの小説、EX-AID・A・LIVEより、風鳴 栞が電話越しの声だけでゲスト出演となりました。

EX-AID・A・LIVEの方にも弦十郎が出ているので、親子でそれぞれにゲスト出演を果たしました。

本格的な交流は、自作品同士のクロスオーバーであるノベル大戦までお待ち下さい。

また今回の話の時点では、エグゼイド側では四糸乃を救出して少し経った位でバグスターウィルスの事はまだ公表されていません。


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