紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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お待たせいたしました。

今月に投稿した三つ目の作品についてのお知らせを、活動報告に乗せますので、一読ください。

士の戦闘になります。


第二話 世界の破壊者、その力

「・・・・・・・・・・・・」

 

風鳴 翼はS.O.N.G本部・食堂の机に顔を乗せ、疲労による顔色の悪さを隠そうともせず、生気のこもってない虚ろな目をしていた。

 

誰が見ても最悪の状態なのは明確である。

 

食堂にいる、不在の直人と張本人の翼以外の装者が困惑している中、響が思いきって声をかけた。

 

「翼さん・・・・・・大丈夫、ですか?」

「・・・・・・これが大丈夫に見えるか?立花・・・・・・」

 

「すみませんごめんなさい私が悪かったですからお願いいたしますそんなゾンビみたいな顔を向けないでください」

「一息で言い切ったな・・・っていうか、先輩がそんな顔をするなんて何があったんだよ?」

 

「あの翼がこんなになるなんて・・・一体何があったの?」

「確かに、これは普通じゃないね・・・」

 

「じー・・・・・・お化粧でも誤魔化せない位に顔色が悪い」

「私達で良ければ、相談に乗るデス!」

 

切歌の言葉に、皆が頷く。翼は顔をあげる。

 

「ありがとう、皆・・・・・・私の苦労を聞いてくれ・・・・・・」

そして、翼はポツポツと語り始めた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

門矢 士という名の青年。風邪をひいた緒川の代理で翼のマネージャーを勤める事になった。

 

翼は態度はともかく、真面目にマネージメントしてくれるなら文句は無かったのだが・・・。

 

 

「よし、まずはバラエティー番組でカニ漁に出る企画だ」

「はぁ!?」

 

「俺がカニを食いたいからだ。ほら、早くえんやこらーと行ってこい」

「行きません!」

 

「チッ・・・しょうがない。なら、こっちのクイズ番組"ファッション!パッション!クエスチョン!"にするか・・・」

 

「何故舌打ちを!?私は悪くありません!」

 

出演するテレビ番組の件で、もうゴタゴタになっていた。他にも・・・。

 

「はぁ・・・はぁ・・・あぁもう!門矢さんが写真撮影に夢中になっているせいで、遅刻しそうになったじゃないですか!」

「撮りたいものを撮っているだけだ」

 

アーティストとマネージャー、二人揃って遅刻しそうになったり・・・。

 

 

アーティスト特集雑誌の表紙を飾る事になった翼が、写真撮影をしていた時。

 

「風鳴さん、もう少し笑っていただけますか?」

「はい、もう少しですね・・・もう少し・・・加減が難しいですね」

 

「笑いたいなら手伝ってやる」

「え、門矢さん!?」

 

「動くな・・・夏ミカンから何度もくらって体で覚えた、秘技・笑いのツボ」

 

一瞬、明暗反転。

 

「あははっはははははっはははははは!」

 

「えぇぇぇぇぇ!?風鳴さんがキノコ食べて笑いが止まらなくなった、みたいになった!?」

 

「よし、今の内に撮れ」

「「「無理に決まってるでしょうが!!」」」

 

「あははははははははははははは!と、止まらあはははないははははは!」

 

笑いのツボを押され、三分程笑いが止まらなくなったり・・・。

 

 

「ぜぇ、ぜぇ、笑い疲れた・・・」

「さっきは悪かったな。ほら、麦茶を飲め」

 

「は、はい。ありがとうございます・・・・・・ブハァッ!!?」

 

「あ・・・これは俺が以前、気まぐれで作ったオリジナルティーだった・・・麦茶と間違えて水筒に入れちまったか、同じ茶色だし」

 

「・・・・・・・・・」(チーン)

「ふむ、改良が必要だな。次は海東かユウスケを実験台にすれば問題ないだろ」

 

失敗作のお茶を飲まされ、とんでもない味に気絶したり・・・。ちなみに、写真撮影はちゃんと終わらせた辺り、プロである。

 

 

 

そういった事があり、翼は身も心も疲れていた。

 

『・・・・・・・・・・・・』

 

翼の話を聞き終えた皆は、士のトンデモ振りに絶句していた。

 

「何と言うか、その・・・・・・お疲れ様?」

「ハハハ・・・全くだ」

 

「でも・・・そういう話を聞くと逆に、門矢さんって人に興味が湧いてきますね」

 

「駄目だ立花・・・やめてくれ。私は仲間が門矢さんに振り回される所など見たくない・・・」

 

「どんだけだよ!」

 

「・・・こんな時、直人さんがいてくれると翼さんは元気になれるけど・・・」

 

「直人さんは今、外国にいるから来れないデス・・・。でも、今日帰ってくるから大丈夫デス」

 

調と切歌の言う通り、直人は数日前に外国に向かっていた。

 

「確か、ホビット族っていう魔族が住んでいる村に行ってるんだっけ」

「あぁ。何でもそこの族長と話し合いがあるって言ってたな」

 

セレナの言葉にクリスが答える。王はたまに、外国に暮らす魔族の元を訪れ、話し合いや問題の解決に勤しむ事がある。

 

その仕事は主に大牙が行っているが、たまに直人も手伝いとして同行する事がある。今回は大牙の手伝いである。

 

「私・・・直人が帰ってきたら、いっぱい甘えるんだ・・・・・・ハハハハハハ」

 

「翼さん、気を確かに!?」

 

ちょっとカオスな事になってきたその時、弦十郎から通信が入る。

 

『皆、青空の会のエージェントから連絡が入った。共存反対派のファンガイアが出現した、直ちに現場へ急行するぞ!』

 

「わかりました!」(シャキーン!)

「翼さんが復活した!」

 

「防人とは、戦が始まるとなれば活力が沸き上がるもの!皆行くぞ!」

 

『りょ、了解!』

元気になった翼を戦闘に、皆が戦闘準備に入る。

 

弦十郎によると、今は現場で健吾を含むエージェント数名で応戦しているが、倒すには至ってない。

 

イクサに変身できる啓介は、別件の対処で不在である。

 

彼らでは長時間は戦えないので、現場へ急行する事になった。

 

潜水艦が停泊に使う港に止まっていたので、そのまま外に出て、シンフォギアを纏い現場に向かって走る。

 

港から現場まで遠くない為、シンフォギアを纏って走れば十分に間に合う。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「オラオラァ!」

 

健吾を筆頭に集まったエージェント達が、対ファンガイア用の銃弾入りマシンガンを連射する。

 

「ギャハハハハハ!効かん効かん!」

「やっちゃうよ、やっちゃうよ!?」

「クヒヒヒヒヒ!」

 

ファンガイアは三体いるが、一体も倒せていない。

 

「やっぱりこれじゃああまり効かんか・・・久しぶりにイクサになりたいわホンマ」

 

ぼやきながらも動きながら翻弄し、ファンガイアの攻撃をかわしながら銃を撃つ。

 

全滅はしてないが倒せない・・・そんな拮抗状態が続いていた。

 

しかし今、シンフォギア装者達が現れファンガイアを攻撃。健吾達が使う銃とは比べ物にならない、圧倒的な力でファンガイアを吹っ飛ばす。

 

「立花ちゃん達、来てくれたんか!」

「遅れてすみません!ここは私達にお任せください!」

「襟立さん達は下がってください」

 

「おおきに。皆、撤収や!急いで下がるんや、はよせい!」

響達に礼を言って、健吾は仲間達と一緒に避難する。

 

「シンフォギアってやつか・・・もう来たようだな」

「蒼剣の歌姫を筆頭に、こんなに・・・皆やっちゃっていいよねぇ!」

「倒しちゃうよ、倒しちゃうよ!」

 

「甘く見られたものだな・・・私達がお前達に裁きを与えてくれる!」

 

翼を筆頭に、皆が構える。そして両者が激突・・・。

 

 

 

 

「「「アベシ!!」」」

 

する前に、突然ファンガイア達にエネルギー弾が撃たれ命中。火花を散らしてファンガイア達が倒れた。

 

驚く装者達が周囲を警戒しながら見ると、両者の間に入るように、一人の男性が入ってきた。

 

 

「マネージャーの仕事っていうのは、アイドルを守るのも含まれるのか?」

 

「か・・・門矢さん!?」

 

翼のマネージャー代理、門矢 士だった。

 

 

「あの人が翼さんの言ってた・・・ってさっきの攻撃はあの人が!?」

 

士の手には、箱のような・・・本のような四角形の剣にも銃にもなる武器「ライドブッカー」が握られている。

 

先程の攻撃も、ガンモードで撃って放ったエネルギー弾によるものだ。

 

士はライドブッカーをクルクルと器用に回して下げ、今度はベルトのバックルを持ち、それを装着。ベルトが自動で伸びて固定された。

 

表面の中央が濃いめのマゼンタになっており、赤い中央の周囲に18個のクレストがあるのに加えて、バックルのサイド、6個付いている輝石もブラックになっている。

 

ベルトの左にライドブッカーを付け、バックルの左右を掴んで開き、中央を九十度回転させる。

 

ライドブッカーを開けてエンジンのような音と共に一枚のカードを取り出す。

 

それは戦士の顔が書かれたカード・・・ライダーカードだ。それを正面に構え・・・。

 

 

「変身!」

 

《KAMEN RIDE》

《DECADE!》

 

バックルの上からカードを入れて、左右を閉じると電子音声の後にいくつもの白に近い灰色の姿が現れそれが全て重なる。

 

バックルから出現した複数枚のプレートが頭に刺さり、体の一部がマゼンダ色になり・・・変身を完了した。

 

世界の旅人であり破壊者、仮面ライダーディケイド!

 

「門矢さんが・・・・・・変身した!?」

「な、何だ貴様は!」

 

「仮面ライダーディケイド」

 

士は気だるそうに答えながらも、三体のファンガイア相手に走り、その勢いのまま飛び蹴りを繰り出す。

 

一体に命中して吹っ飛び、木にぶつかって止まる。二体目と三体目が同時に襲いかかるが、士はライドブッカーをソードモードにして、両者の攻撃を受け止める。

 

そして力づくで振り払い、そのまま回転斬りで攻撃し、更に高くジャンプして空中からガンモードでエネルギー弾を撃って追加でダメージを与える。

 

ここで一体目が体組織から作った剣を持って着地した瞬間を狙って攻撃するが、士は左腕の装甲で防御。

 

ダメージは入っていないのか平然と右ストレートパンチを当てる。

 

「あいつ・・・強い」

「うん・・・動きに無駄がない」

「直人さんと同じくらい強い・・・デス」

 

「翼、あなたのマネージャー代理の人・・・本当にとんでもない人ね」

「あ、あぁ・・・」

 

「でも、強さは本物ですよ」

「一体、何者なんだろう・・・?」

 

装者達が各々感想を言い合っていると、士はまたカードを一枚取り出し、バックル・・・ネオディケイドライバーに入れる。

 

《KAMEN RIDE》

《KUUGA!》

 

すると、姿が別の仮面ライダーのものに変わった。超古代の戦士・・・仮面ライダークウガの姿に。

 

カメンライド・・・カードに書かれた仮面ライダーの姿と能力を使えるようになる能力だ。

 

「また変わった!?」

「来いよ」

「キャハハハハハ!」

 

士の挑発にのったのは三体目。まっすぐ突っ込んでくるが、士は右足で三体目を空中に蹴りあげる。

 

空中に上がった三体目がジタバタしている間に、士は黄色いライダーカードを入れる。

 

《FINAL ATTACK RIDE》

《KU KU KU KUUGA!》

 

必殺技を発動する、ファイナルアタックライドのカードでクウガの必殺技を発動。

 

士もジャンプし、空中前転を行いエネルギーを込めた必殺キック・・・マイティキックを当て、三体目を倒した。

 

「バカな・・・あいつ強すぎる!」

「まだあるぞ」

 

士は新たなカードを入れる。

 

《KAMEN RIDE》

《KABUTO!》

 

赤いカブトムシのような高速の戦士・・・仮面ライダーカブトに変身。

 

「また変わったデス!?」

「バカにするな!バカにするな!」

 

二体目が戦おうとした瞬間、士はカブトの特殊能力である超高速移動・・・クロックアップを発動。

 

他の物が知覚出来ない超スピードで二体目を何度も攻撃。

 

高速移動を終えて、二体目に止めをさす。

 

《FINAL ATTACK RIDE》

《KA KA KA KABUTO!》

 

落ちてきた二体目にタキオン粒子を集めた回し蹴り・・・ライダーキックを当てて、二体目も簡単に倒してしまった。

 

「嘘だ・・・俺達がこんな簡単に!?」

「最後はこいつだ」

 

士は三枚目のカードを入れる。そのカードには・・・キバの顔が書かれている。

 

《KAMEN RIDE》

《KIVA!》

 

直人が変身する、仮面ライダーキバになった。

 

「キバの・・・鎧・・・!?」

「何で・・・何であいつが!?」

 

キバをよく知る装者達やファンガイアは、士がキバの姿になれた事に驚く。

 

「き・・・貴様は、閃紅の魔皇の姿にもなれるのか・・・!?」

 

「は?何だ、その中二病臭い呼び方は」

 

一蹴し、士は回し蹴りを当ててから一体目の後ろまでジャンプして、背中にストレートなキックを当てて吹っ飛ばす。そして、必殺技を発動。

 

《FINAL ATTACK RIDE》

《KI KI KI KIVA!》

 

直人のキバと同じようにダークネスムーンブレイクを発動。最後の一人も簡単に倒してしまった。

 

「こんなもんか」

戦いを終えた士は、手をパンパンと払うように合わせ、変身を解除・・・の前に。

 

《KAMEN RIDE》

《DECADE!》

 

ディケイドの姿に戻り、体を回転させてライドブッカーをソードモードにして背後からの攻撃を防ぐために振る。

 

攻撃してきたのは翼だ。アームドギアの刀を簡単に受け止められ一旦後ろに下がったが、翼は臆する事なく睨む。

 

「何者だ・・・お前は!」

「自己紹介は既に済ませた筈だが?」

 

翼の問いにも、士はまともに答えない。それに、余裕な感じすら出している。

 

対する翼は、かなり強い力を持っている上に直人と同じキバになれることから、かなり警戒していた。

 

他の装者達も同じく、何があっても良いように構えていた。まさに一触即発の雰囲気になっていたその時、バイクのエンジン音が聞こえ、マシンキバーに乗った直人が到着した。キバットも隣にいる。

 

帰国してすぐに連絡を受けて、駆けつけたのだ。

 

 

「直人!?下がって、この人は」

「大丈夫!・・・・・・お久しぶりです、士さん」

「よぉ、カメラ野郎」

 

「何だ、ここはお前のいる世界だったのか・・・紅 直人。後コウモリ、いい加減名前で呼べ」

 

「いやお前こそ名前で呼べよ!俺はキバットバット三世だぞ!」

 

「え、まさかのお知り合い!?」

 

既に二人は面識があるらしく、直人は笑顔で受け入れている。

 

変身を解いた士。直人は装者達に駆け寄って簡単に説明した。

 

「僕が東京に戻る前・・・共存が決まった直後に出会ってね、共闘した事があるんだよ」

「つーわけで、会うのは二年振り位か?」

 

「二年か・・・しかし、またお前のいる世界に通りすがるとはな」

 

「また通りすがってくれてありがとうございます、士さん」

「ふん・・・・・・」

 

笑顔で言う直人に、士は答えなかったが満更でもないようだ。

 

「とりあえず士さん、すみませんが付いてきてくれますか?

僕が所属している組織の人や装者の皆も、あなたの事を知りたがっていると思います」

 

「・・・・・・仕方ない、行くか。おい」

 

士は翼達の方を向いて・・・。

 

 

 

 

「俺から話を聞きたいなら最高級の茶と、最高級の茶菓子を出せ」

 

ふてぶてしく要求してきたのであった。直人以外の装者達はコントのようにずっこけたのであった。

 

 

この日・・・世界の破壊者である旅人と魔皇が再び出会い、既に会っている翼も含む装者達とディケイドとして邂逅した。

 




次回予告

士の聴取を行うS.O.N.Gの面々。一方、美穂と零士が動き出していた。


第三話 旅人と魔皇、動く者達


「士さん、相変わらずですね・・・」


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