紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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お待たせいたしました、第二章・・・G編の最終話です。


第二章・最終話 喜びの祭典、想いを込めて

「しっかしまぁ、ウェル博士・・・最近色んな物を作ってるな。

 

お、ネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲!完成度高ぇなオイ」

 

「・・・・・・轟木」

「おう、浅間。どうした?」

 

「パヴァリアとの交渉は?」

 

「それがよぉ、局長と話したら断られた。帰ろうとしたら局長をよく思わない一派の奴等が組んでほしいって言うんでOKしておいた。近々、団員をそいつらの所に向かわせる予定だ」

 

「ふーん・・・」

 

「とりあえず最初は、ファンガイアの魔術や技術、パヴァリアの錬金術を組み合わせて武器を作る事になっている。最初は、刀剣類から始めるってことで決まった」

 

「わかったわ、パヴァリアの事は向かわせる奴に任せましょう」

 

 

「んで、もう一つ。少し前に野暮用で天宮市って所に行ったんだよ」

 

「・・・あぁ、東京と神奈川の中間にある"空間震"跡のクレーター内に作られた町よね。それで?」

 

「そこで面白いのに出会ってよ、近々そいつらとも話をする予定だ」

 

「面白いの?」

 

「あぁ・・・"バグスター"っていう奴らだ」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ネフィリムとの戦い・・・後に「フロンティア事変」と呼ばれる大きな戦いから一ヶ月後。

 

 

シンフォギア装者の女子達は、共存派のファンガイアが運営する大きなホテルにいた。

 

フロンティア事変から一ヶ月、遂に人工ライフエナジーが完成、その記念パーティーに招待されているのだ。

 

そして今、更衣室でドレスに着替えている途中である。

 

 

「未来どうしよ~。私、ドレスなんて初めて着るよ」

「私だって同じだよ。でも響がドレスかぁ・・・見てみたいなぁ」

「頑張って着ますとも!」

 

「マリア、すまないがちょっと手伝ってくれ」

「いいわよ、よいしょ・・・」

 

「マ、マリア・・・こっちも手伝ってくれねぇか・・・?」

「クリス?・・・あらあら、ちょっと凄いことに・・・」

 

「はい、調ちゃん。これで綺麗になったよ」

「ありがとう、セレナ」

 

「セレナー、こっちもヘルプミーデス!」

「うん、今行くね」

 

慣れないドレスに四苦八苦している中、全体的に仕切っているのは・・・。

 

「未来さん、ここがちょっと崩れてますよ」

「あ、ありがとうございます・・・深央さん」

 

 

登 深央。旧姓は鈴木。大牙の妻であり、直人の義理の姉であり、チェックメイトフォーのクイーンでもある。

 

真夜が失ったクイーンの力を受け継いだ女性だが、最初は自分がファンガイアだと知らず過ごしていた。

 

先代ビショップによって自分がクイーンだと知って、それ以降ファンガイアの世界に身を投じざるをえない状態になってしまう。

 

 

紆余曲折の末に、クイーンの使命を受け入れたこと。

直人や真夜と出会って対話を重ね、自分の心の整理が出来たこと。

 

大牙も改心して、人間との共存に取り組み性格も穏やかになったこと。

 

そういった事情が重なり、自分がクイーンであることを受け入れて、惹かれていた大牙と結婚。

 

今は大牙の補佐として、妻として大牙を支えている。

 

 

未来のドレスをキッチリと整えて直した深央。とても手慣れている。

 

「やっぱり深央さん慣れてますね、ドレス」

 

「というよりは、慣れないといけないって感じですね。今の私はファンガイアのお姫様ですから、ドレスを着て色んな所に出ることが多くなって」

 

これまでの苦労を思い出しながら、未来のドレスを整える。

 

それからしばらくして、皆がドレスを着ることが出来た。

 

響、翼、クリス、未来が身に着けているドレスは、ノースリーブのパーティードレス。

 

切歌と調は、ワンピースタイプ。マリアとセレナはAラインドレスを着ている。

 

ドレスの色は、皆のシンフォギアのカラーと同じ色になっており、装者達のドレスは、大牙と深央が用意してくれたものだ。

 

深央の協力のお陰でドレスをしっかりと着ることが出来た皆は、深央にお礼を言って更衣室を出て、会場へと向かっていく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ドレスを着た女子達が会場入ると、そこは豪華になっている。

 

シャンデリアが会場を明るく彩り、複数のテーブルの上には豪華な食事が置かれ、舞台の上にはモニターと楽器が既に設置されていた。

 

「響お姉ちゃん、皆!」

「クロード君!」

 

クロードは先に子供用の礼服を着て、会場入りしていた。

 

「クロード君、格好いいよ!」

「うん、大人っぽくなった感じ」

 

「えへへ・・・ありがとう。お姉ちゃん達もすごく綺麗だよ」

「「ありがとうクロード君、嬉しいよ~!」」

 

「ムギュ!?」

 

「響さんと未来さんばかりずるいデス!私もクロード君をギューするデス!」

「お姉ちゃんだから、弟を可愛がるのは当たり前」

 

「ムギュウ!?」

 

「あぁコラ、お前ら!いい加減離れろ!」

「あまりクロードを困らせるな」

 

クリスと翼が、響と未来と切歌と調に抱きつかれているクロードを救出。

 

四人は口を3の字にして、ブーブーと文句をいう。

 

「大丈夫か?あいつら加減ってのを知らねぇからな」

「立花達に困らされたら、遠慮無く相談してくれ」

 

「ありがとう。クリスお姉ちゃん、翼お姉ちゃん・・・でも嬉しいから・・・」

 

 

二人の腕に抱きついて笑顔+上目遣いなクロードの可愛らしさに、クリスと翼のハートにズキューン!と刺さる。

 

クロードを可愛がる、響と未来の気持ちがわかるようになった二人であった。

 

「ったく、パーティー始まるまでこのままでいいぞ・・・」

「あぁ、お姉ちゃんがしっかり守ってやろう」

 

「わーい♪」

「「「「ズルい!」」」」

 

四人はますます文句を言う。マリアとセレナは・・・。

 

「セレナ、二人でクロードと一緒の時間を作るにはどうしたら良いかしら?」

 

「姉さん、私もある程度考えてあるよ」

「じゃあ、このパーティーが終わったら話し合いましょう」

 

「もちろん。私達もクロード君のお姉ちゃんなんだから」

「えぇ、響達にばかり独占させるわけにはいかないわ」

 

二人でクロードと一緒の時間を作る為、協力することにした。クロードは皆に愛されているのだ。

 

 

しばらくすると、スーツ姿の直人が舞台の袖から一礼をして出てきた。会場中から拍手が沸き起こる。

 

ブラッディローズを手に、歩く直人。

直人はとても真剣で凛々しくなっており、見る人達を感嘆させ自然と拍手が起こる。

 

直人は所定の位置につく。舞台の中央で堂々と立つ直人がブラッディローズを構えると、拍手がピタリと止まった。

 

会場の証明が消えると、スポットライトが直人に当たり演奏が始まる。

 

直人がブラッディローズを奏で、この記念すべき日に相応しい曲を演奏する。

 

その演奏は、まさに完璧の一言。会場全ての客から最初以上の盛大な拍手が送られる。

 

演奏が終了してから、直人は舞台の端に移動。入れ違いでスーツで身なりを整えている大牙がステージ中央に立ち、マイク付きスタンドを少し修正して語り始める。

 

 

「皆さん。本日はお忙しい中、人工ライフエナジー完成記念パーティーにご参加していただき、ありがとうございます」

 

マイクで拡張された大牙の声が、会場の隅々まで響いた

 

「人間とファンガイアの共存。その実現において、必須であった人工ライフエナジーの開発。それがついに、完成しました」

 

ステージの奥から、男性が車輪付き荷台に乗せて運んできたガラスの器に複数の野球ボール位のサイズの虹色に光る球体が入っている。

 

共存を望む全ての魔族が所望していた、人工ライフエナジーである。

 

 

「この日が迎えられたのは、私個人の力ではなく、多くの協力者のおかげです。

キングとしても未熟な私を支えてくれたD&Pの社員の皆様。

 

私や弟に賛同し、協力してくれた青空の会を初めとした人間の皆様。本当にありがとうございます」

 

 

「この人工ライフエナジーを明日より、皆に配布いたします。本日は前祝として、最後まで楽しんでいただければ幸いです。

 

それとは別に、ディナーやお酒等も用意いたしましたので、人間の皆様も遠慮なくお楽しみください。

 

それでは、堅苦しい挨拶はここまでにして・・・皆様、お手元のグラスをお取りください」

 

行き渡ったグラスを、全員が手にする。

 

 

「全魔族の共存と平和、繁栄を願って・・・乾杯!!」

 

「「「乾杯!!」」」

 

グラスがぶつかる上品な音が会場に響き、パーティーが始まった。

 

 

「高級ご飯&ご飯!」

 

・・・と言いながら、響は早速お皿に料理を盛って食べる。料理はビュッフェ式になっており、自分で食べたいのを取って食べる。

 

「・・・美味しい・・・まさか私がこんな高級な料理にありつけるなんてぇ・・・」

「響、食べすぎてドレスを破らないでね」

「はーい・・・って、ドレス破けるほど食べるってどんだけ!?」

 

「皆、楽しんでる?」

 

そこに、ブラッディローズをしまったケースを持ったまま直人が響達の元へ。

 

「直人。さっきの演奏、凄くよかったよ」

「ありがとう、翼。それに、皆のドレス姿・・・似合ってる。とても綺麗だ」

 

翼が誉めると、直人もドレス姿を誉める。女子達は顔を赤くしながらも、心から喜んだ。

 

 

それからもパーティーは続く。ファンガイアも人間と一緒に料理と酒を味わうが、彼らにとってのメインは人工ライフエナジー。

 

人工ライフエナジーは、薄い膜で覆われた野球ボール位のサイズの虹色に淡く光る球体である。

 

味はファンガイアの皆を喜ばせる事が出来るくらい、素晴らしい出来となっている。

 

そしてファンガイアと友好、恋愛、夫婦等の関係にある人間も、共存派の皆が我慢する必要も飢餓感に苦しむ事も無くなった事に心から喜ぶ。

 

啓介、恵も共存について大きな一歩が踏み出された事を喜ぶ。

 

次狼、ラモン、力、クロードも人工ライフエナジーを味わっていた。

 

 

「クロード君、ライフエナジーって美味しいの?」

「うん、美味しいよ。うまく説明出来ないけど、とにかく美味しくて美味しくて・・・」

 

未来の問いに答えるクロードも、喜びながら人工ライフエナジーを味わう。

 

皆が喜び合い楽しむ中、響は直人の姿がない事に気付いた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

直人は演奏を終えた後、一人会場を離れて外が見える所にいた。一人で考え事をしていたのだが、そこに響がやって来た。

 

「直人さん」

「響ちゃん、もうご飯はいいの?」

「ちょっとお休みです」

 

「クロード君は?」

「未来や皆に引っ張りだこですね。いやぁ、クロード君はモテモテですよ」

 

「響ちゃんが一番クロード君を可愛がってる気がするけど」

「初めての弟なので嬉しくて嬉しくて、いっぱい可愛がりたいんです。それで、直人さんは何をしているんですか?」

 

「ちょっと考え事をね・・・共存の掟が出来てから、今に至るまでの事をね」

「考え事・・・ですか?」

 

「僕が人間とファンガイアの共存を唱え、兄さんや皆が受け入れてくれたけど、今度は共存反対派という新たな驚異が生まれた。

 

今、革命団によって世に混乱や被害が出ているけど・・・それについては僕も同罪だ。僕が革命団を生み出したといってもいいくらいに」

 

「そんな事ありませんよ!」

 

「今でも考える事がある・・・・・・僕の考えがまだ甘いって。

 

当時の僕は自分が人間とファンガイアのハーフで、父さんと母さんが愛し合ったからこそ僕が生まれた。

 

だから他の皆もきっと出来る・・・反対する者がいても必ず何とか出来る・・・そう考えていた。でも、当時の僕は無意識に楽観視していたんだ。

 

あの時はまさか、反対派が大きな組織を成して今回のようなフロンティア事変という大きな事件を起こすとは・・・考えもしていなかった」

 

未来の事はわからない。しかし、直人は自分が共存を唱えた為に今の驚異が生まれた事に、罪の意識を抱いていた。

 

そんな直人に、響は真剣な表情で真剣に気持ちを・・・己の考えを伝える。

 

「・・・・・・直人さんは、間違っていません!」

「響ちゃん・・・?」

 

「直人さんは皆の為にって一生懸命じゃないですか!現実の辛さにも、目の前の強敵にも決して挫けずに・・・!

 

だからこそ、直人さんのお陰で人工ライフエナジーが完成して、クロード君や次狼さん達・・・共存派の皆さんの笑顔があるんです。

 

そういった努力や結果が、皆にとっての償いにだってなっています!」

 

そこまで言って、響は・・・・・・。

 

 

「だから・・・大丈夫です。直人さんは前に進んでください。途中で躓いたり挫けそうになったら、絶対に私達が支えます!」

 

力強くも慈愛に溢れた言葉を、直人に想いを込めて伝えた。

 

その言葉を聞いて、直人は響からの想いを確かに受け取り、心からの感謝を込めて、響を優しく抱きしめた。

 

 

「響ちゃん・・・・・・ありがとう」

「はい・・・・・・」

 

「響ちゃんは強くなったね・・・僕よりずっと」

 

「そんな事ありませんよ・・・でも、ほんの少しでも強くなれたなら、それは直人さんや出会った皆のお陰です。

 

皆が私に教えてくれて、私を守ってくれたから・・・ですよ」

「そうか・・・良かった」

 

少しの間抱きしめ合い、離れる。直人はもう大丈夫だ、これからも共存の為に戦っていける、前に進める。

 

直人の温もりが離れた事を残念に思いながらも、響は思う。

 

(直人さんを支えたい・・・・・・共存を掲げる者として、直人さんはたくさんの物を背負っているから)

 

(少しでもいい、一緒に背負って共に歩んでいきたい。だって・・・私は・・・)

 

「直人さん」

「響ちゃん?」

 

「これからも、私達で頑張りましょう!皆で一緒なら、平気へっちゃらです!」

 

「・・・うん、一緒に頑張ろう!」

「はい!」

 

 

(直人さんの事が・・・・・・大好きだから!)

 

響は自らの恋心を再確認すると共に、直人の力になり共に生きたい・・・そう願った。

 

 

 

余談だが・・・他の女子達は乙女の勘で直人と響がいい雰囲気になっている事を感じとり駆けつけ、一騒動あった。

 

一緒に駆けつけたクロードも、直人と一緒に苦笑しながらもその光景を見ていた。

 

そしてこれを切っ掛けに女子の間で「乙女協定」なるものが結ばれる事になったのであった。

 

 

乙女協定

 

1.直人と一緒に過ごす時間は皆で、可能な限り平等にする。

 

2.揉め事が発生したら、話し合いで解決する。武力や暴力は禁止。

 

3.今後直人との交流において決定した事があった場合、直人の意思は無視せず本人の了承を得るようにする。

 

4.直人の意思や都合を無視しての、過剰なアプローチをする事を禁止する。

直人の了承があればOKとするが、やり過ぎないようにする。

 

 

以上のように決定した。今後も増えるかもしれないが、一定のルールを設けていく事になった。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

一つの大きな戦いが終わり、人工ライフエナジーは完成。世界は人間とファンガイアを含む他の魔族との共存に向けて、また一歩近づいた。

 

しかし、まだ革命団という驚異は無くなっていない。今後も戦いは続くだろう。

 

 

だが、この世界で生きる者が皆で手を繋ぎ、平和の歌を歌い愛を奏で合う。

 

それがきっと、理想を現実に変え、真の平和をもたらすと信じて・・・皆はこれからも戦い続ける。

 

 

 

第二章 Gの小夜曲 完。

 

 




G編、これにて終わります。次回からは、G編とGX編の間のオリジナルストーリーになります。

以下に、ストーリーの現在の予定を簡単に書きます。


G編(終了)→オリジナル1(次回から)→GX編→XD編→オリジナル2→AXZ編→XV編→最終章


という感じに考えています。変更になる可能性もありますが、ご了承ください。


以前から考えていたEX-AID・A・LIVEとのコラボであるMOVIE大戦的な話も、章の間の時系列に組み込むつもりです。

大戦的な話は、新作扱いで別枠連載になると思いますが、投稿されるまでお待ち下さい。

キバとエグゼイドの話を、ある程度進めておかないといけないので・・・。

1/28、乙女協定の内容を追記しました。要するに、直人をずっと一人占めしない、直人の意思も尊重するということです。

直人から許可があれば、一緒にお風呂に入るのもエッチな事をするのもOKです。無理矢理はダメですが。


次回からもよろしくお願いいたします!

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