紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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お待たせいたしました!

仕事が忙しくて早く書けませんでしたが、ちょくちょくと書いておりました。

G編は今回を含めて後三話位ですが、なるべく今年中にG編を終わらせられるようにしたいです。

出来なかったら来年になってしまいます。ご了承ください。


第二十一話 奇跡の歌、奇跡の力

ネフィリムとの三回目の戦いが始まった。

 

しかし、ネフィリムは直人達から背を向けてジャンプし、フロンティアの内部を侵食するように喰らっていく。

 

知性を身につけたネフィリムは、まず自分をパワーアップさせる為に、フロンティアを全て喰らうつもりなのか。

 

「させるか!」

 

クリスがアームドギアから射撃を行うが、ネフィリムはそれを全て俊敏な動きでかわし、口を開くとそこに光がたまっていく。

 

それを見た調が、魔皇力の流れが口の一点に集中している事を読み取る。

 

 

「あれは魔皇力・・・!何でネフィリムが!?」

「革命団のファンガイアが手を加えたんだ!皆、早く逃げて!」

「余計な事をっ!」

 

クロードの指示に従って皆がすぐに散開すると、直後にネフィリムが魔皇力の光線を放った!

 

その威力は大きく、皆が元いた場所を破壊してしまう。

その直後に爆煙から短剣が十本程飛び出し、ネフィリムの影に刺さり動きが封じられる。

 

離脱中に翼が影縫いを使い、ネフィリムを止めたのだ。

 

更にライジングイクサに変身した啓介がイクサライザーからエネルギー弾を連続で放ち、ダメージを与えていく。

 

 

調がネフィリムを注視していると、魔皇力の大元がある場所を見抜いた。

 

魔皇力をネフィリムに供給している、"核"の部分の事だ。

 

以前大牙が使った、魔皇力を凝縮して物質化させた結晶だ。それをネフィリムに埋め込んだのだろう。

 

 

「響さん!魔皇力の集中している部分はお腹辺りに!」

「了解だよ調ちゃん!」

 

更に響が飛び出してハンマーパーツを引き絞り、ナックルガードを展開し、バーニアで飛んでネフィリムの腹に威力を増したパンチを当てる。

 

しかし、核を壊すことは出来なかった。

 

 

ダメージを受けたネフィリムは再び響を喰らおうとするが、響は膝キックをネフィリムの顎に当てて、無理矢理口を閉じさせる。

 

「もうあげないっ!!」

 

もう食べられるのはごめんだ、と響はネフィリムを蹴りその反動で後ろへ飛んで着地する。

 

ネフィリムはこのままでは駄目だと思ったのか、響達と戦うよりもフロンティアを喰らう事を優先することにして、侵食を再開する。

 

体内の結晶の魔皇力を使い、己の体を膨張させて侵食範囲を一気に広げる。

 

このままではまずいと思い、真っ先に動いたのはイヴ姉妹。

 

二人は同時に短剣を抜刀。連ねる要領で刀身を伸ばし、蛇腹剣と成してネフィリムを斬り裂く。

 

《EMPRESS†REBELLION》

 

蛇腹剣の不規則な軌道でネフィリムを連続で切り裂く。しかし、ネフィリムはそれらを無視して侵食を続ける。

 

ネフィリムの体積はどんどん膨張していき、このままでは皆も侵食に巻き込まれてしまう。

 

 

クリスがアームドギアを大きくして、無数の鏃に分裂する大型矢を全方位、ネフィリムの侵食範囲に向けて放つ。

 

「私の奢りだ、お残しは許さねぇぜ!」

 

《GIGA ZEPPELIN》

 

無数の鏃がネフィリムに刺さり、確かなダメージを与える・・・と思われたが、ネフィリムの体に鏃は刺さらず、全て弾かれてしまう。

 

「嘘だろ!?さっきまで柔らかい感じだったのに!」

「ネフィリムは魔皇力で硬度まで上昇させたんだ!」

 

 

今のネフィリムは、魔皇力の結晶を消費して己の体を固くして、尚且つ体積を膨張させ続けている。

 

 

その時、切歌が大牙に声をかける。

 

「お義兄ちゃん!ネフィリムに攻撃するので手伝って欲しいデス!」

「切歌ちゃん!?」

「切ちゃん!?」

 

大牙の返事を聞く前に走り出す。大牙はジャコーダーの刀身を鞭のようにしてネフィリムに向かって伸ばし壁に刺す事で、切歌の足場を作る。

 

ジャコーダーの刀身に飛び乗って走り、ネフィリムにどんどん近づいていく。

 

ネフィリムは切歌に気付いて攻撃しようとしたが、クロードが咄嗟に幻覚を用いて切歌が何十人もいるように見せかけ、ネフィリムを混乱させる。

 

そして、ネフィリムにまで到着すると、ジャンプして接近・・・。

 

「デェェェェェス!!」

 

切歌はネフィリムの胴体を鎌型のアームドギアで切り裂こうとするが、ネフィリムは腕で防御する。

 

魔皇力の恩恵と今までの侵食で強さを増したネフィリムは体の硬度も上がっており、刃が通らない。

 

しかし・・・。

 

 

「それが・・・どうした、デス!」

 

切歌は諦めず、刃を押し通す為に力を込める。

 

切歌は未来が拐われた後の特訓で直人に諭されてから、己を見つめ直していた。

 

 

自分にある力って何だろう?

 

自分だけの強さって何だろう?

 

自分に出来る事は何だろう?

 

 

自問自答を繰り返し、時には周囲の人達・・・弦十朗や慎二、朔也にあおい等と相談して、それでも悩み考え続けて・・・。

 

そして今、切歌は自分だけの強さについては、ほんの少しだけ・・・答えを見つけていた。

 

「私はちょっと焦っていただけだったデス。そのせいで見えなくなっていた・・・・・・でも、もう大丈夫デス!」

 

「私は私なんデス。例え才能が無くても、皆のようにすごい力が無くても、私は私の出来る事を一生懸命頑張る。それで良いんデス!だから・・・!」

 

切歌が語っていく内に、切歌に変化が現れる。切歌の内側から力が溢れ出て、それがイガリマのアームドギアに収束していく。

 

その事にいち早く気付いたのは調と直人。

 

「切ちゃんに・・・魔皇力が・・・!?」

「まだ僕とパスは繋がってない・・・まさか、自力で・・・!」

 

 

イガリマの刃に翡翠色の魔皇力が纏われ、大きさが増し緑色に輝く、切れ味が格段に上昇した刃となる。

 

「デェェェェェェス!!」

 

光る鎌を勢いよく降り下ろす。ネフィリムは異変に気付いて動こうとしたが、間に合わずそのまま刀身が腕を・・・そして胴体も、硬度を増したネフィリムを切り裂いた!

 

「・・・私、やったデスね・・・」

 

自分の内側から溢れるこの力は、己の魔皇力であることを自覚した切歌は、嬉しそうに呟いてネフィリムの上半身と一緒に落下していく。

 

落下する切歌に直人はかけより、ジャンプして自らの腕の中に抱えた。

 

暁 切歌は直人以外のシンフォギア装者の中では初めて、自分の魔皇力を自力で発現して使用したのだ。

 

 

 

切歌には、確かに才能は無い。だが、"素質"はある。

 

魔皇力の操作、使い方、総量、魔皇力による強化、魔術の使用・・・。

 

魔皇力全般に関する素質は、直人以外の装者の中では一番高いと言っても良い。

 

しかし使いこなせている訳ではなく、今後は相応の訓練を必要とする。訓練を怠れば、その素質も意味を成さなくなる。

 

しかし、切歌は己の魔皇力を自力で発現させた。今後も役に立つ強力な武器を得られた事は、間違いない。

 

「直人さん・・・この力は・・・」

 

「切歌ちゃん、それは君が自分で掴み取った力だ。それをどうするかは君次第だけど・・・よく頑張ったね、切歌ちゃん」

「えへへ・・・直人さんに誉めてもらえて嬉しいデス・・・」

 

 

その時、上半身を斬られたネフィリムが雄叫びを上げて活動を再開。

 

腕の力だけで高くジャンプして残った魔皇力を振り絞って体を一気に膨張。下半身を含むあらゆる物を高速で取り込んでいく

 

「何か不味くないですか!?」

「皆、急いで避難するぞ!」

 

翼が言って、壁を切り裂いて進路を作る。全員が全力で走ってフロンティア内部から避難した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

ネフィリムの侵食が終わる前に脱出に成功。海には氷の大地は無かったが、キバットがキャッスルドランを呼んでいてくれていたので、皆はキャッスルドランに飛び乗る。

 

空を飛び、フロンティアから離れるキャッスルドラン。その間にも、ネフィリムはフロンティアへの侵食を続けており、今はもう七割以上が侵食されている。

 

「さて、これからどうするよ?」

キバットが訪ねる。

 

「決まってるよ。ネフィリムを倒す」

「でも、ネフィリムはフロンティアを取り込んだら、とんでもない力を得ることになる」

 

「だからって、何もしないわけにはいかないよ」

響は真っ直ぐにネフィリムを見て、戦う意思を示す。

 

その時、宇宙に放り出されたレティアから通信が入る。魔方陣のようなのが現れて、レティアの姿が写し出される。

 

「あーあー、テステスデスデス。皆聞こえる?」

「お姉ちゃん!大丈夫なの!?」

 

「大丈夫よ!クー君の為なら、何でも平気へっちゃらよ~」

「レティアさんにも真似された!?」

 

「立花ちゃんどうどう。さて、解決策としては、落下しつつある月を戻すには、この大量のフォニックゲインを集め私のいるターミナルに集中させ一気に月に向けて放つこと。

 

そうすれば、月は復元されて元の周回軌道に戻る。そのためには、地球上の・・・皆の協力が必要ね」

 

「地球の皆さんの・・・!?でもどうやって」

「それは私が引き受けるわ!」

 

そういって、レティアは通信を切る。そして、レティアは即座に行動を開始した。

 

直人達がフロンティアの方を見ると、フロンティアは全て食べられてしまい、後には一番下の土台部分だけが残されていた。

 

 

残された土台に皆が着地する。キャッスルドランは離れていく。

 

ネフィリムが全てのフロンティアを食らいつくした事によって、ネフィリムは最大の進化を遂げていた。

 

ネフィリムは、フロンティアの全てを取り込んだネフィリム・ノヴァとなって灼熱を纏い、爆発すれば一兆度のエネルギーを放つ爆弾と化した状態になった。

 

その大きさ等に驚くが、決して屈することなく立ち向かう意思を持つ。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

同時刻。世界中で月がどんどん近づいていく様子がハッキリと伝わっており、パニックになっている所が多い。

 

しかし、そんな人達を黙らせる映像が全世界に同時に映される。

 

 

レティアは魔術の力を最大限に利用し、全世界に己の姿を写して大々的な演説を開始した。

 

「はぁい、地球上の愚かな人間諸君、ごきげんよう!」

 

そんな一言から、レティアの演説が始まった。

 

 

「怖がってる。怖がってる。みーんな、恐怖してるよ。あはははははは!!」

 

「ねえ、ねえ教えてよ。月が落ちてくるよ?革命団の馬鹿な奴が暴走したせいで地球に激突間違いなしだよ?ほんっと救いが無いよねぇ」

 

「怖い?怖いよねぇ?」

 

「あんたらには、何にも出来ないよね。

この非常事態に、正義の味方とやらは十人位しかいない。

 

何も出来ず地球は粉々、宇宙のゴミになって、消えるのを待つばかり・・・。

 

悲しい話よね。涙が出るね。私もドキドキしてるわ。怖くてさ」

 

 

煽る。とにかく煽る。徹底的に煽る。

 

更に、ネフィリムと対峙する直人達の映像が映るが、直人達の姿はモザイクがかかっているようにぼんやりしていて、よくわからないようになっている。

 

 

「この映っている人達に向かって、祈りの歌でも歌ってみたら?応援歌とも言うかしら?祈ってみなさいよ心の底から!

 

ハハハハ!もしかしたら何とかなるかも知れないわよ!

 

何でも歌えるもんなら、歌ってみればいいさ。祈ってみればいいさ。弱虫毛虫の愚かな人間さん達!

 

どうせ出来っこない出来ないままあんたらは終わるわよ!アハハハハハハハ!早く楽になりなっ!」

 

ここまで煽って、レティアの姿と映像が消える。

 

そして、レティアの煽りを聞いた世界中の人々は・・・。

 

 

(ふざけるな!出来る事はある!!)

(あの人達の力になるんだ!!)

 

心を一つにした。そして、皆で一緒に歌う。人間もファンガイアも、それ以外の魔族も等しく。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

「お姉ちゃん・・・いっぱい煽ったね・・・」

「だが、そのお陰でフォニックゲインがどんどん上昇している」

 

二課からの報告で、世界中の人々の心の歌がフォニックゲインとなり、それが直人達のいる場所に集まっている。

 

そして、装者達は手を繋ぎ全員で絶唱を歌う。

響の持つ「繋ぎ束ねる」特性を最大限に活かして、七十億以上のフォニックゲインを束ねる。

 

地球の皆が届けてくれた、歌ってくれた。その奇跡を確かに掴みとる為に、ネフィリムとの戦いを終わらせる為に。

 

その間、直人達を守るのは大牙達の役目。

ネフィリム・ノヴァの放つ火炎を啓介がファイナルライジングブラストを放って相殺。

 

大牙がスネーキングデスブレイクを発動し、ジャコーダーの刀身を鋭く伸ばしてネフィリム・ノヴァの体を貫き、自身も高速で接近して力を込めてキックを当てる。

 

更に、クロードが実体のある幻覚を魔皇力を用いて作り出す。

 

電車型の実体ある幻覚をネフィリム・ノヴァにぶつけて、ダメージを与える。

 

ぐらついたネフィリム・ノヴァに、次狼、ラモン、力がそれぞれ最大の攻撃を当てて転倒させた。

 

そして、シンフォギア装者達は地球の皆のフォニックゲインを受けて、遂にその段階に至る!

 

(私が束ねるこの歌は・・・仲間の、大好きな人の、地球に住む皆の・・・絶唱だあぁぁぁぁぁぁぁ!!!)

 

八人の装者が強い光を放つ。その光こそ、地球上の皆のフォニックゲイン。

 

それが宇宙に放り出されたターミナルに届き、レティアが速攻でフォニックゲインを利用して月に向けて放った。

 

それによって、月は正常に回復。

ルナアタックの時の月の損傷が復元されて、更に月が移動し地球から離れて、正常な周回軌道に乗った。

 

これにより、地球は月の衝突による崩壊は回避された。

レティアは静かに、礼を言った。

 

「ありがとう、立花ちゃん達・・・」

 

 

 

更にそのフォニックゲインによって、装者の皆がその姿を変えた。

 

シンフォギアの究極形態・・・XD(エクスドライブ)へと、至ったのだ!

 

 

 

神剣・天叢雲剣を纏いし少年、『閃紅の魔皇(せんこうのまおう)』、紅 直人。

 

 

撃槍・ガングニールを纏いし少女、『繋槍の拳士(けいそうのけんし)』、立花 響。

 

 

絶刀・天羽々斬を纏いし少女、『蒼剣の歌姫(そうけんのうたひめ)』、風鳴 翼。

 

 

魔弓・イチイバルを纏いし少女、『夢想の射手(むそうのいて)』、雪音 クリス。

 

 

 

更に・・・この戦いを見ている別のファンガイアによってマリア、セレナ、調、切歌の四人にも新たな名が付けられた。

 

 

銀腕・アガートラームを纏いし少女、『戦烈の戦姫(せんれつのせんき)』、マリア・カデンツァヴナ・イヴ。

 

 

銀腕・アガートラームを纏いし少女、『優美の舞姫(ゆうびのまいひめ)』、セレナ・カデンツァヴナ・イヴ。

 

 

紅刃・シュルシャガナを纏いし少女、『静憐の紅刃(せいれんのこうじん)』、月読 調。

 

 

碧刃・イガリマを纏いし少女、『明光の翠刃(みょうこうのすいじん)』、暁 切歌。

 

 

 

新たな名を得た四人を加えた、八人がエクスドライブに至り、白と己のパーソナルカラーが合わさり飛行が可能になった。それは、フィーネとの決戦の時よりも強い力を与えてくれる。

 

「お姉ちゃん達・・・綺麗だ」

クロードは初めて見るエクスドライブに見とれていた。

 

「見て、二世。人間が、ファンガイアが・・・魔族の皆が一つになって奇跡を起こしたわ」

 

「あぁ、俺も感じている」

 

二課仮設本部から見守っている真夜とキバット二世も、エクスドライブに至った直人達、そして歌を歌ってくれた皆に感動していた。

 

 

「この力は、私達だけじゃない。生きる皆の歌を束ねて重ねた・・・シンフォギアだ!!」

 

響が力強く言う。それは、ネフィリムへの開戦の合図となった!!

 




次回予告


七十億以上の奇跡を束ねた力で、ネフィリムとの最後の戦いを行う。その結末は・・・。


第二十二話 決戦、そして・・・


未来は続くか、閉ざされるか・・・今を生きるものにはわからない。それでも、良くしようと動く意思こそが、人の持つ力。


ーーーーーーーーーー


切歌が自身の魔皇力を自力で発現させたり、レティアが人々を煽って奇跡を起こしたり・・・自分でも色々と、ご都合主義や無茶をやったなぁと思います。

人によってはあまりいい気はしないかもしれませんが、受け入れてくださると嬉しく思います。

G編も残り二話です!

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