キバ、イクサ、サガの三人の戦士と、スタッグファンガイアこと轟木 零士の戦いは激しかった。
啓介がイクサカリバーのガンモードで銃弾を連射するが、ノーダメージでケロっとしている零士は自身が撃たれている最中にお返しとばかりに自身の銃をイクサに向けて連射。
零士の銃から放たれた弾丸はあり得ない威力と速さでイクサに放たれた。
銃弾は啓介にダメージを与えたが、その威力は一般のファンガイアが体組織から生成して放つ攻撃とは次元が違う。
まるで、小型の大砲から放たれる砲弾を受けているようであり、たった数発で大きなダメージを受けた。
大牙はジャコーダーの刀身を鞭のようにして、零士を巻き付けて拘束。
直人が魔皇力を多く込めた飛び蹴りを繰り出す。
しかし、零士は魔術によるワープで姿を消すことで拘束から逃れ、攻撃が外れて着地した直人のすぐ近くに現れ、銃弾を放つ。
吹っ飛んだ直人に目もくれず、零士が次に狙いを定めたのは大牙。ワープで大牙の近くに出現する。
銃身を打撃武器として接近戦を繰り出す。
大牙は素早くジャコーダーを剣に戻し、零士の攻撃に対応していく。
そのスピードは徐々に上がっていき、次第に常人では視認不可能な域にまで達した。
そして互いの武器が強く衝突したところで両者は離れるが、その時の隙をついて啓介がイクサジャッジメントを発動していた状態で全力で走って接近し、一閃。
《イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》
「はぁぁぁ!!」
「おおっと!?」
これには零士もダメージを受け、体に傷跡が残るが倒せていない。
「くはは、面白ぇ!」
零士は笑うと高く跳躍し、空中から銃弾を連射して銃弾の雨を降らせる。
大牙が啓介を巻き付けて引っ張り、範囲から逃れる。すると・・・。
「ガルルセイバー!バッシャーマグナム!ドッガハンマー!」
直人がドガバキフォームとなり、零士と同じ高さまでジャンプする。
「いらっしゃい!」
「はぁっ!」
ガルルセイバーと銃がぶつかり合い、火花が散る。
ぶつかり合った反動で離れた両者は、銃弾と水弾を撃ち合いお互いの弾を相殺する。
着地と同時に直人がドッガハンマーを持って突撃し、零士は銃を捨てて両腕に魔皇力と力を込めて殴って止めてしまう。
「良いねぇ良いねぇ!もっと楽しもうぜ!」
テンション高く零士が叫び、両腕のパンチラッシュで直人に攻撃する。
直人も両腕でパンチラッシュを防ぎながら隙を見てパンチを繰り出す。
ここで、自身の魔皇力が多く響に流れていくのを感じた。今は戦いに集中しないといけないため確認は取れないが、きっと何かがあったのだと理解した。
《ラ・イ・ジ・ン・グ》
ライジングとなったイクサ。啓介はとなってもう一度イクサジャッジメントを発動。
バーストモードの時よりも威力が増した必殺技で、零士に背中から斬りかかる。
「ウェイクアップ!」
更に、大牙も必殺技を出す。ジャコーダーに魔皇力を溜めて伸ばし、零士を貫こうとする。
「ーーー!」
だが、零士は・・・。
「甘え・・・なあぁぁぁぁぁぁぁ!!!」
大声を上げた途端、莫大な魔皇力を放出。その勢いはかなりのものであり、放たれた技を悉く無効。
更にそのまま零士は高速で動きながら三人を殴り、吹き飛ばしてしまう。
ーーーーーーーーーー
「調を助けてくれて、ありがとうデス」
「本当に、ありがとう」
「ありがとうございます」
「いやいや、当然の事をしたまでですから」
「立花・・・私と雪音が言いたいことはわかるな?」
「は、はい!心配をかけてしまってごめんなさい!」
「全くだ!・・・心臓が止まるかと思ったぞ、バカ・・・」
「ク、クリスちゃん・・・ごめんなさい~!」
『無事なのは良かったが・・・二課に戻ったら、必ず検査を受けるんだ』
装者達がネフィリムを倒し、響の体をガングニールの欠片が侵食してしまった時・・・。
響達の所にも零士が放出した魔皇力の勢いが突風のように吹き荒れる。
更に、吹き飛ばされた三人が響達の所で倒れてしまう。
大牙と啓介は変身が解けてしまっており、直人はドガバキフォームを維持できずキバフォームに戻ってしまう。
ガルルセイバーから次狼が直人に言う。
「・・・すまない直人、ダメージが大きい」
「大丈夫です。戻って休んでください」
「頼んだぞ」
「僕も色々痛いな~・・・あれ、僕のG編の初台詞がこれなの!?もっとカッコいいのがいいよ!」
「メタはつげん、やめなさい」
バッシャーマグナムのラモン、ドッガハンマーの力も次狼に続いてワープでキャッスルドランへ戻っていった。
「直人さん!?」
「名護さん!お義兄様!大丈夫ですか!?」
「あいつがやったのか!」
装者達も零士を睨む。零士は放出していた魔皇力を抑え、歩み寄る。
轟木 零士。ライダー三人を相手にしても戦える程の圧倒的な力を持つ強者だ。
「あぁ~・・・久しぶりだなぁ。あんなに魔皇力を出したのは。なぁ、何で俺が革命団の幹部なんてやってると思う?」
零士は両手を広げながら、高々に言った。
「"楽しい戦い"がしたいからだよ」
「楽しい戦い・・・?」
「イエース。俺は物心ついたときから、世の中の色んな事がつまらねぇって思ってた。
遊ぶのも、勉強するのも、食うのも、寝るのも・・・何もかもがつまらねぇ」
「・・・」
「そんな時、俺は唯一楽しいって思える事を見つけた。それが戦いだ」
「戦いが楽しい・・・」
「生まれつき大きな力を持ってたからだろうかね。でも俺は"あいつ"と違って心が壊れる事は無かった」
零士の言うあいつとはクロードの事だ。
「心が壊れる事なく正気だった俺は、常々考えた。戦う時以外は何もかもがつまらない。でも、何も考えずにただ戦うだけじゃあいずれ己の身を滅ぼす。
じゃあどうするか?そして思い付いた。俺が楽しいと思える戦いは、自分で作ればいいんだってな」
「自分で作る!?」
「あぁ、無いなら作るってな。その為に、色んな事を勉強したし、更に力を鍛えた。
それに、俺は他勢力との交渉役を引き受けているけどよ、それも戦いをもっと楽しくしたいからだよ!アハハハハ・・・アハハハハハハハハハ!!」
笑い始める零士。
「もっともっと戦いたい!楽しいと心から思える戦いをもっともっと味わいたい!
でも、人間とファンガイアの共存が主になった今の世界じゃあ、そんな戦いも減ってしまうじゃねぇか!
そんなつまらなくなる要素が増える世界は否定する!ぶっ壊してやる!この世界は、俺が楽しむための舞台装置になればそれで良い!!」
「・・・狂ってる!」
マリアは零士の狂気を強く感じながら、一言を絞り出した。
しかし零士自身は強く真っ直ぐに、一生懸命になっている。どんなに間違っていても己の力と決心に、何の疑問も迷いも無い。
「・・・世界は、自分一人の都合で変えて良い事は何一つ無い!そこに住まう様々な命を自分が楽しむための道具にすることは許さない!」
直人は零士に向けて叫び、タツロットを呼ぶフエッスルを吹かせる。
「出番だぜ、タッちゃん!」
「ビュンビュンビューン!テンションフォルッテシモ!」
タツロットが全ての拘束を外し、キバをエンペラーフォームにウェイクアップさせた。
マリア、セレナ、調、切歌は初めて見るエンペラーフォームに驚き感動したが今は直人の戦いを見守る事とした。
直人は魔皇力を全身に行き渡らせ、身体能力を更に高めて一気に零士に攻撃を仕掛ける。零士も同じように魔皇力で己を強化して直人に応じる。
拳が、足がぶつかり合う度に音が響く。
直人が零士の腹を蹴るが、同時に零士も直人の腹を蹴る。零士が直人の顔を殴るが、同時に直人も零士の顔を殴る。
殴り、蹴り、殴り、蹴り・・・それが続き、中々戦局が傾かない。
どちらかが圧倒的という訳ではなく、両者は拮抗している。二人とも互角であり、このままでは相討ち、共倒れもあり得る。
「ひひひ、良いね良いね良いねぇぇぇ!楽しいぜ紅!こんなに楽しく感じたのは本当に久しぶりだぜ!」
零士は直人から離れて、両足に魔皇力を溜めていく。
直人も左腕のタツロットの頭を引っ張り、ルーレットをキバの紋章の模様で止める。
「WAKE UP FEVER!」
タツロットの声の直後、キバの両足に多くの魔皇力が集中し、エンペラームーンブレイクを発動。
そして、両者は同時にジャンプして飛び蹴りがぶつかった!
その大きなエネルギーを込めた必殺技がぶつかり合い爆発。二人とも地面に落下して倒れる。装者達と啓介と大牙は直人の側に駆け寄り助け起こす。
「直人!大丈夫!?」
「な、何とか・・・キバット、タツロット、二人は大丈夫かい?」
「キツかったですよ、魔皇力のコントロールをフルにやりましたからねぇ」
「あぁ~、俺も頑張ったぜぃ。父ちゃんならもっと余裕で出来ただろうけどよ」
「・・・いや、俺の事は誰も心配してくれないの?まぁ敵キャラだからな、しゃーないと言えばしゃーないけどさ」
零士は軽口を叩きながら立ち上がった。ダメージは受けているようだが、まだまだ余裕があるようだ。
「あぁぁ、楽しかった!今回は引き上げるけど、次会うときはもっと強くなってくれよ。そうすれば、もっと楽しくなれるだろうからな!」
じゃあな、と言って零士はワープして姿を消した。
直人は変身を解いたが、流石に疲れているのか疲労がハッキリと出ている。それは啓介と大牙も同じだが。
そんな三人を、装者達が支えて二課へ帰還することになった。
カ・ディンギル跡地での戦いはこうして終わった。
又してもウェルを逃がしてしまったばかりか、響は代償を背負うことになってしまった。
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「さてさて・・・また鍛え直すとしますかね」
~~~♪
「はい、もしもし。あぁ・・・フムフム、ホムホム・・・そいつと交渉すれば良いんだな?了解」
ピッ。
「早速仕事追加とは、中々のブラックぶり。それじゃあ、行きますか。"パヴァリア光明結社"へ」
次回予告
戦う事を禁止された響は、気分転換をかねて未来と一緒に遊ぶ事に。
二人で楽しい一時を過ごすが、その中で一人の男の子と出会う。
第十三話 少年と出会い、偶然か必然か
出会いが何をもたらすかは誰にもわからない。わからないけど、悪いことばかりとは限らないかもしれない。
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