紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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第十一話 熾烈な戦、激突する力(前編)

シンフォギア装者七人・・・響、翼、クリス、マリア、セレナ、調、切歌とネフィリムの戦いが始まった。

 

 

ネフィリムは雄叫びを上げながら、装者達に襲いかかる。

 

聖遺物を喰らって成長するネフィリムにとっては、聖遺物の力を使うシンフォギアもご飯同然であり、その身を喰おうとしている。

 

昔から知っていたマリア、セレナ、調、切歌。

そしてマリア達からネフィリムについて事前に聞いていた響、翼、クリスは喰われないように注意しながら戦う。

 

七人の装者は同じ歌を歌い合い、力を高めていく。

 

 

 

クリスが高くジャンプして、銃撃をネフィリムの頭に向けて集中して撃つ。

 

ネフィリムは後ろに飛んでかわすが、背後には既に調と切歌が待ち構えていた。

 

二人でセッションしながら、同時に鋸と鎌を射出してネフィリムを切り裂く。

 

 

《α式 百輪廻(ひゃくりんね)

 

切・呪リeッTぉ(キル・ジュリエット)

 

 

調のシュルシャガナと、切歌のイガリマ。この二つは女神ザババが振るった物で対になっており、同時運用によるユニゾンで性能を引き上げる事が出来る。

 

 

装者としてはまだ未熟な二人は、お互いに歌い合い力を合わせて補っていた。

 

何れは単独でも戦う時が来るかも知れないため、単独でも戦えるようにと訓練をしているが。

 

 

 

増幅された攻撃は、ネフィリムの背中に傷を残した。

 

更にクリスが崩壊したカ・ディンギルの上に立って、歌いながらアームドギアをスナイパーライフルに変形。ヘッドギアのスコープでネフィリムの背中の傷を捕捉し狙撃を行う。

 

その際に、魔皇力のパスを通じて直人から魔皇力を分けてもらい、それを銃弾に凝縮して撃った。

 

 

《RED HOT BLAZE》

 

 

一発の銃弾は狂いなく背中の傷に吸い込まれるように命中。銃弾に込められた魔皇力が解き放たれ、ネフィリムに体内からダメージを与えた。

 

 

次はマリア。

 

痛みで苦しむネフィリムに対して、マリアが力強く歌いながら、アームドギアの刀身を展開して形成した砲身部から高出力のエネルギービームを放った。

 

 

《HORIZON†SPEAR》

 

 

エネルギービームはネフィリムの左腕を消し飛ばした!痛みで悶えるネフィリム。

 

 

セレナと翼が同時に歌いながら、同時に動く。

 

セレナが腕部ユニットからアームドギアである短剣を引き抜き、それに連なって引き出された無数の短剣を周囲の空中に展開して、一斉に投擲する。

 

更にそこに翼が加わる。空間から大量の青いエネルギーの剣を具現化させて、上空から落下させる際に全ての剣が落ちる範囲を、ネフィリムの範囲のみになるようにコントロールして攻撃する。

 

 

《INFINITE†CRIME》

 

《千ノ落涙》

 

 

多量の短剣とエネルギーの剣がネフィリムに雨のように降り注ぐ。

 

全身を切り刻まれ、ネフィリムは大きな雄叫び声を上げながら倒れた。

 

そこにだめ押しと言わんばかりに、歌いながらジャンプした響が倒れたネフィリムの腹に強烈なパンチを叩き込む。

 

 

《我流・一挙強烈(いっきょきょうれつ)

 

 

それっきり、ネフィリムは動かなくなった。

体の外からも中からも大きなダメージを受けて、ネフィリムは完全に戦闘不能になっていた。

 

 

 

「バカな!?七対一とは言え、完全聖遺物で、以前よりも強くなった筈のネフィリムがぁ!!?」

 

ウェルはパワーアップしたネフィリムが装者達に勝てなかった事が信じられず叫ぶ。

 

ノイズを召喚する事を考えたが、装者が七人もいては時間稼ぎにもならない事が容易にわかってしまう。

 

そんなウェルに、響が対話を試みる。

 

 

「ウェル博士、あなたはどうして英雄になりたいんですか?」

 

「た・・・立花 響ぃ!?」

 

 

「ウェル博士の事はよくわかりません。でも、今のウェル博士が間違っているということはわかります。

 

英雄になりたいって言いますけど、どうしてノイズを使うんですか?人の命を奪うことしか出来ないノイズを!」

 

「手っ取り早いからさ!僕の思想を否定したり邪魔するやつらを殺すのに、ノイズ程に便利なやつは無いからねぇ!

 

それに、人類は僕の手で救われるんだ!今殺されたやつらはその為の礎・・・尊い犠牲ってやつだよアハハハハ!!」

 

 

「ウェル博士は科学者としては凄い人じゃないですか!

その凄い知識を人を苦しめたり殺す為に使うなんて間違っています!

 

お願いですから罪を償って、その科学知識を正しく使ってください!そうすればあなたは、"本当の英雄"になることだって出来るはずです!」

 

 

「ハン!お断りだね。捕まるなんて冗談じゃない。

 

それに、僕自身の科学の才能をどうやって使うかは、僕の自由だ!お前なんかの指図は受けない!!」

 

 

 

響の説得を受けないと判断したマリアはガングニールのアームドギアを向けて降伏を呼び掛ける。

 

「ウェル博士、ソロモンの杖を捨ててお縄に付きなさい!」

 

だが、ウェルは当然と言うべきか拒否する。

 

 

「お断りだ!僕はこんな所で終わる男じゃない!僕は」

 

そこまで言ったその時、ネフィリムが突然意識を覚醒させて急速に動き出した!

 

 

ネフィリムは自身にある自我で考え、装者達が油断している所を一気に襲いかかる作戦を練ったのだ。

 

大きく口を開けて、装者を喰おうとする。ターゲットは・・・調。

 

 

「ーーー」

調は突然の事に対応出来ず、棒立ち状態。喰われると思ったその時・・・!

 

 

調の体が何か暖かいものに包まれ、移動するような感覚があった。何かが喰われたような音が聞こえた。

 

地面に倒れ転がる。調は何があったのかを確かめようと目を開いて・・・。

 

 

 

 

 

「調ちゃん・・・大、丈夫・・・?」

 

 

調()()()()()()()()()()()()()()()姿()()()()()

肘から先の左腕を失ったのに、血が出ているのに、笑顔で調を気遣う響の姿があった。

 

 

「ーーーーーっ!!!」

 

 

響が自分を庇って、左腕を喰われたという事を理解し、声にならない悲鳴を上げる調。

 

他の装者達も響と調の元に駆け寄る。ネフィリムは左腕を食べる。

 

左腕だけとはいえシンフォギアを食べることで、少しずつだが回復してきている。

 

 

 

「アハハハハ!これはいい。手を繋ぐとか言っておきながら、殴ることしか出来ない矛盾している手を持っているお前にはお似合いの姿だ!アハハハハハハハ!!」

 

ウェルが装者達に聞こえるように大声で言う。

 

 

「立花!しっかりしろ!」

「なんて無茶しやがったバカ響!」

 

 

「ご・・・ごめ・・・な・・・い」

 

 

上手く言葉に出来ない調だが、響は優しく調の頭を撫でる。

 

「大丈夫・・・・・・へいき、へっちゃら・・・!」

 

響は立ち上がり、ウェルへ向かって叫ぶ。

 

 

「ウェル博士っ!!あなたの言うとおり、私は繋ぐための手で誰かを殴っている。確かにそれは矛盾です!

 

でも、私は誓った!手を繋ぐ理想。その為に戦うことが避けられないならば、戦いから逃げない、目を背けないで立ち向かうって!」

 

 

左腕を失った痛みが続く。あるはずの物が無い喪失感を強く感じる。

 

意識を失いそうになりながらも、必死に意識を繋ぎ止める。

 

 

腕を失っても進む響の姿に、ウェルは情けない声を上げながら後退り倒れてしまう。

 

 

(その為に・・・お願い、ガングニール。私に力をちょうだい。目の前の困難を乗り越える為の力を!!)

 

 

 

ドクンッッ!!

 

 

 

響の言葉に反応するようにガングニールの欠片がある心臓が強く脈打ち・・・。

 

ガングニールの欠片が響に、力を与える(更に侵食する)

 

 

「おおぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!」

 

 

響が雄叫びを上げると、魔皇力のパスを通じて魔皇力を得て、その魔皇力とガングニールの力が混ざり合い、無くなった左腕部分に集中。

 

そして、左腕はシンフォギアのアーマーが西洋の突撃槍(ランス)になったような形の紅色の槍で固定された。

 

 

 

皆が驚く中で、響はネフィリムのみを見据える。

そして、大きな声を上げながらネフィリムに向かって左腕の突撃槍を突き刺すように走る。

 

ネフィリムはその突撃槍をも喰らおうとしたが・・・そんな事、出来るわけがない。響の槍からは、逃れられない。

 

 

 

突撃槍がネフィリムに直撃し、その強力なパワーに耐えきれず体が爆散。

 

コアは無傷だったが、そのコアはウェル博士の近くに音を立てて落ちた。

 

ウェル博士は、ネフィリムのコアを抱き抱えて、悲鳴を上げながら逃げ出した。

 

 

響の言葉は、ウェルに届く事は無く。響の力は、ウェルに恐怖を与えた。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

響が左腕を下げると、突撃槍の部分が砕け散り、失われた筈の左腕が再生している状態で出てきた。

 

 

「・・・あ、うで・・・もどってる・・・」

 

響は腕が戻った事に安心したが、体に力が入らなくなって倒れてしまう。

 

すぐに皆が介抱してくれた。意識はハッキリしている為、自分の症状を伝えた。

 

胸・・・正確には心臓が少し痛む事と、左腕は少し痺れていると。

 

そして、どちらも時間がたてば収まるかもしれないと。

 

 

「あの・・・ありがとう。それと・・・ごめんなさい」

 

 

うつむき、涙を流しながら謝罪する調。

響があぁなってしまったのは、自分のせいだと自分自身を責め続けていた。

 

しかし、響は先程のように優しく頭を撫でる。

 

 

「調ちゃんは食べられる事なく助かった。なら、私はへいき、へっちゃらだよ。だから、気を落とさないで」

 

「・・・」

 

「私としてもそうしてくれる方が嬉しいかなぁって・・・」

 

「・・・やっぱり、あなたはあなた」

「ほぇ?」

 

調は納得できたのか、微笑みながら涙を拭った。

響はわからなかったようだが、調に笑顔が戻ったのでそれで良しとした。

 

 

「調を助けてくれて、ありがとうデス」

「本当に、ありがとう」

「ありがとうございます」

 

「いやいや、当然の事をしたまでですから」

 

 

「立花・・・私と雪音が言いたいことはわかるな?」

「は、はい!心配をかけてしまってごめんなさい!」

 

「全くだ!・・・心臓が止まるかと思ったぞ、バカ・・・」

「ク、クリスちゃん・・・ごめんなさい~!」

 

 

『無事なのは良かったが・・・二課に戻ったら、必ず検査を受けるんだ』

 

通信による弦十郎の強い言い方に続くように、装者達も頷く。響は反対せず、素直に従うことにした。

 

 

 

響はネフィリムを倒し左腕を再生させたが、その為に背負う事になった代償は大きい事を、後に知ることになる。

 

そして、離れた所から爆発音が連続で聞こえる。

 

 

戦士達と革命団幹部の戦いは、熾烈な物になっていた。

 




次回予告


響達がネフィリムを倒したが、そのファンガイアは今だ倒されない。

強くて、真っ直ぐで、一生懸命だから・・・。


第十ニ話 熾烈な戦、激突する力(後編)


己の力と心に、何の疑問も迷いも無い。あぁ、それは確かに強いだろう。


ーーーーーーーーーー


次回は響達がネフィリムと戦っている最中の、ライダー達と幹部の戦いを描きます。

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