「これから、あなたも本格的に動いてもらうわよ」
「別に良いけどよ、何すんだ?」
「今回は、ウェル博士の護衛ね」
「ドクターのねぇ・・・。あいつには洞○湖と書かれた木刀でも持たせておけば良いじゃねぇか」
「ウェル博士は研究者であって万事屋じゃないわよ。そういうわけで、よろしくね」
「了解っと。んじゃ、行ってくるわ」
「行ってらっしゃーい」
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本日遂に、リディアンで生徒たちの待ちに待った学園祭・・・秋桜祭が開かれていた。
校舎内や中庭にて、出店やゲームを楽しむ生徒、街中でチラシやポスターを見て集まってきた人達でとても賑やかだ。
そして、この学園祭に新しい人達が入る。
直人、マリア、セレナ、調、切歌の五人だ。
しかも、キバットとタツロットの二匹も直人の持つカバンの中に入って来ていた。
翼、響、未来、クリスはリディアンの生徒としてクラスの出し物に出たりしている。
「さて、到着したけど・・・凄い盛り上がりね」
「これが、学園祭・・・!」
「うまいものMAP製作が捗りそうデス!」
「え、MAP・・・?」
「よし、まずは」
「うまいものデース!」
「切ちゃん!?走っちゃダメ!」
「こら、はぐれるし迷惑がかかるわよ!」
「姉さん・・・まるでお母さんみたい」
「うん、僕もそう思う」
「セレナ、直人!私はまだお母さんって年齢じゃ無いわよ!」
「「えー、本当でござるかぁ?」」
「キバット、タツロット。後でリディアンの屋上に来なさい」
「「からかってごめんなさい」」
「皆、切ちゃんを回収した」
「ごめんなさいデス・・・周囲のごちそうに我を失ってしまったのデス・・・」
「大丈夫だよ。じゃあ、皆で回ろうか」
「「「「はい!」」」」
そんなやり取りがありながら、五人と二匹は学園祭を楽しむことに。
途中でわたあめを買って皆で食べる。
調と切歌は、初めてのわたあめにはしゃいでいて、マリアとセレナも笑顔だった。
向かったクラスは、まずは響と未来のクラス。
「あ、直人さん!マリアさん達も来てくれたんですね!」
「いらっしゃいませ」
「やぁ。響ちゃんのクラスは・・・」
「はい!クレープ屋さんです!」
響と未来のクラスはクレープ屋。教室中に甘い香りが漂っている。
クラスの女子達は皆、かわいいエプロンを付けて調理や接客を行っている。
調と切歌は鼻をクンクンと動かして、香りから堪能している。
「オススメは何かしら?」
「オススメは、イチゴホイップです。カットしたイチゴにクリーム、そしてジャムをかけたやつなんです」
マリアの問いに未来が答え、他のメニューも紹介する。
直人、マリアはイチゴホイップ。セレナはフルーツクリーム、調はチョコレートホイップ、切歌はキャラメルカスタードを注文。
未来が生地を焼いて、響が盛り付けを行って完成。直人は自分の分をキバットとタツロットに分ける。
味はもちろん好評だった。
食べ終えて、次に向かったのはクリスの教室。二年の教室だ。
「お、来たか」
「うん。クリスのクラスは・・・」
「手作りのキャンドルを展示、そして販売だ」
クリスの言うとおり、クラスの皆が作ったキャンドルを展示している。作り方を記した大きな紙も貼られている。そして、展示されているキャンドルは買うことも出来るのだ。
市販の材料だけで出来の良いものが出来ており、どれもレベルが高い。
直人はクリスが作った物を複数購入。マリア達も気に入ったキャンドルを買った。
最後は翼の三年生の教室。
翼のクラスは、和風喫茶店。和服、及び和風メイド服を来た女子達が店員の喫茶店だ。
「翼、来たよ」
「直人!?」
「・・・凄い、翼って和服が凄く似合ってるわ」
「うん、凄くきれい」
「「わぁ・・・」」
「うぅ・・・」
知り合いに見られ恥ずかしいが、誉められて照れている。そして、翼は一番感想を言ってほしいと思っている直人を見る。
「・・・見とれちゃった。とても綺麗で、似合ってて」
「・・・!良かった・・・」
直人に誉められて、翼は心の底から嬉しくなる。
ちなみに、翼の直人と接している時の可愛い反応や恋する乙女な感じに周囲のクラスメイト達は、恋の気持ちを感じとり微笑ましい気持ちになった。
そして、和風喫茶店で翼の接客を受けながら食事をして、午前は終わった。
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ここからは、午後の時間。直人はマリア達四人と別れて、休憩時間の翼と響と未来とクリスで秋桜祭を回る事になる。
翼と一緒に展示を見て。
響と未来と三人でお化け屋敷に入り。
クリスと一緒にゲームで遊んで。
皆で秋桜祭を十分に楽しんだ。
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そして、最大のイベントが始まる。
披露ステージにて合唱や吹奏などの発表会が行われている。スポットライトが照らすステージの上で発表を行うのだ。
優勝すれば、生徒会権限の範疇で一つだけ望みが叶えられるという優勝商品が与えられる。
直人も翼も響も未来も、そしてマリアもセレナも調も切歌も、席についていた。
キバットもタツロットも、姿を隠しながらも聞いている。
板場弓美・寺島詩織・安藤創世の仲良し三人組はアニソン同好会の設立を目的に出場。
しかし、一番が歌い終わった所で強制終了となってしまった。
そして、順調に進んでいき、最後に出るのは・・・。
雪音 クリスだった。
その顔はこんな大舞台に立つことと少しの恥ずかしさから顔が赤いが、クリスは自分の意思でここに出ることにしたのだ。
クリスは歌う。今までの思いを歌にして伝えるために。
ここにいる皆に、仲間に、大好きな彼に・・・。
その歌は、優しい歌だった。
いつしか、諦めかけていた日常をもう一度過ごせるようになって。
歌うことの楽しさと喜びを思い出せて。
父と母が残した曲と想いを受け取り、夢へ向かって進めるようになって。
共に戦う仲間を得られて。
そして・・・一人の女の子として、男の子に心からの恋をして。
手放したくない、大きな幸せをたくさん得られて。
その気持ちが歌詞となり、クリスの口から歌となって溢れる。
そして、全てを歌い終えた。
会場内の観客達は溢れんばかりの拍手を送る。
優勝は、クリスで確定した。
クリスは、天国にいる両親に心の中で伝える。
(パパ、ママ・・・私は今、幸せだよ)
次回予告
ステージ終了後、ノイズ出現の知らせが伝えられる。
ウェル博士ともう一人の男と出会う事になり、更に・・・。
第十話 狂気の理想、甦る異形の遺産。
狂った願い、咆哮する魔獣、強大な魔族。それらは一つになり、動き出す。