紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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お待たせいたしました!やっと書けたので、更新いたします!


第七話 小さき者、幻の中で(後編)

 

テイピアファンガイアが行うのは、魔術の力で作り出した遊園地の夢の世界を舞台にしたかくれんぼ。

 

テイピアのかくれんぼをクリアしないとこの夢の世界からは脱出出来ない。

 

直人達は全員で固まらず、ある程度バラけて探すことにする。

 

 

直人、マリア、響、調のAチーム。翼、セレナ、クリス、切歌のBチームの二つに分けて捜索を開始。

 

キバットとタツロットは機動力の高さを生かして飛び回りながら探す。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

Aチーム。

 

「こっちはどうかしら・・・」

「いない・・・」

 

遊園地の半分を担当するAチームが探すが、今のところ全く見つかっていない。

 

途中で、響が直人に声をかける。

 

 

「直人さん・・・」

「どうしたの?」

 

「あのファンガイア・・・何て言うか、子供っぽい感じがしたんです」

「子供だよ、あの子は・・・。心の音楽が幼くて純粋。子供特有の音楽だ」

 

 

「幼くて純粋・・・ですか?」

 

「うん。故に、()()()()()()()()()()()()()

 

 

「・・・」

 

「自分のやっている事を悪いことだとわからない、理解できない。だから、悪いことをしてもそれが悪いことだとわからない」

 

 

「・・・何とか、説得出来ないでしょうか」

「・・・」

 

「まだ子供だって言うなら、悪いことだっていうことがわからないなら、ちゃんと教えてあげるべきだと思います!それであの子が変わってくれるなら!」

 

 

直人が何かを言おうとしたその時、調がずんずんと響の元へ向かい、強引に自分の方を向かせる。

 

響を見るその表情は怒りにも真顔にも見える。

 

 

「・・・あなたの言ってる事は偽善。そのつもりが無くても」

「・・・!」

 

「そんな事では、私はあなたの言葉もやり方も認めない。それとも、そんな偽善を吐くだけの理由があるの?」

 

「調ちゃん・・・」

 

 

調は、響に問う。

 

直人は過去に偽善な事を言いながらも、ちゃんと納得できる答えを出した。だから信じる事が出来た。

 

だが、直人がそうでも、響も同じとは限らない。

もし、ちゃんと言えないのであれば・・・。

 

 

問われた響は小さく深呼吸をして、調から目をそらさずに真正面から見据えて、言葉にしていく。

 

 

 

 

「調ちゃん・・・。私はね、こう思うんだ。偽善って言うのは、良いことを言っても言ったことを叶える為の行動をしない事・・・なのかなって」

 

「・・・」

 

 

 

「口では良いことを言っても、それを実現する為になにもしないで、ただ言うだけ・・・それじゃあダメ、偽善って言われちゃうと思う。

 

私は、ただ言うだけじゃない、自分がどうしたいかを言ったからには、それにちゃんと責任を持って言ったことを現実にするために行動していきたい」

 

 

それは、響が共存反対派との戦いを見て、直人と言葉を交わして触れあって自分で思い至った事。

 

 

「もちろん、行動したからって必ずしも望んだ結果になるとは限らないし、それがすっごく難しい事だっていうのはわかってるつもりだよ。でも・・・」

 

響は声を大きく、調に届くことを願い、言う。

 

 

「それでも、私は言い続ける。それが偽善であってもその偽善を現実にするために。

 

どうしても戦う必要があるなら、戦う。戦うことから、自分で言ったことの責任から逃げたりなんてしないよ」

 

 

響の気持ちを聞いた調は、そのまま響を見つめる。響も目をそらさずに見つめる

 

数秒経って、調は小さくため息を吐いて俯いた。

 

 

「・・・わかった。その言葉は信じる。でも、まだあなたを完全に認めた訳じゃないから」

 

「・・・!ありがとう調ちゃん!」

「ちょっ・・・抱きつかないで・・・!」

 

「信じてもらえただけでも嬉しいよー!」

 

 

二人のやり取りを見ていた直人とマリアは微笑んでいた。

 

「響ちゃん・・・強くなったね」

「同じガングニール使いとして、負けてられないわ!」

 

「ドンパチ激闘なんてしないでね。さて、探すのを」

 

再開しよう。そう言おうとしたその時・・・。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

Bチーム。

 

 

「いないデス・・・どーこーデースーかー?」

 

「真面目に探せって!ここはファンガイアが作った空間、何があってもおかしくねぇんだぞ!ファンガイアの驚異をわかってねぇのか!?」

 

「わかってるデスよ!直人さんが戦ったレティアっていう人の事を見ればわかるデス!」

 

「わかってんなら・・・」

 

 

「・・・お説教臭いデスねー。慎ましさは胸に行っちゃったから胸もヘビーアームズなんデスね!」

 

「なっ・・・何言ってんだ!?それを言うならお前だって、年の割にはデカイだろ!」

 

「あー、言われてみると・・・そんな気がしなくもないデスよ。調が仇を見るような目で見てくる事があるデスけど・・・」

 

「・・・・・・そういえば、私も翼先輩や未来にそういう目で睨み付けられる事があるな・・・」

 

 

何故か胸に関する話になっていった、クリスと切歌。そんな二人を翼は見ていた・・・。

 

 

「・・・・・・」

「えっと・・・翼?怖い顔してるよ・・・」

 

「!す、すまないセレナ。あぁいう話題になると、その・・・」

 

 

翼とセレナは、お互いをタメ口で話せる位に親しくなっていた。マリアも同様だ。

 

直人もイヴ姉妹とはタメ口で話し合える位仲良くなっていた。

 

「セレナ・・・ファンガイア探しを再開しよう」

「う、うん・・・」

 

自分の胸元を見てしょんぼりとなる翼。セレナは深く聞いてはいけないと思い、ファンガイア探しを行う。

 

 

「かくれんぼ・・・か。懐かしい」

「え?」

 

「幼い時、直人といっぱい遊んだ。かくれんぼもやったな。

 

遊ぶだけじゃなくて、勉強も特訓も一緒で・・・直人はずっと私の側にいて支えてくれた。

 

凄く・・・嬉しい」

 

 

幼い頃からの直人との思い出を、翼は一つ一つ、大切にしていた。それを思いだすと、翼は自然と優しい笑顔になる。

 

 

(いいなぁ・・・)

セレナは、翼を羨ましく思う。幼い頃から一緒で、たくさんの思い出を持っている事に。

 

 

((いいなぁ・・・))

クリスと切歌にも翼の声が聞こえていたようで、セレナと同じ事を思っていた。

 

 

ここで四人ともファンガイア探しを真剣に行うが、中々見つからない。

 

一旦集まり、どうするかを話し合ったその時・・・。

 

 

 

遊園地のアトラクションが、獣のようになって、牙を剥き出しにして襲いかかった!

 

 

 

四人はすぐに反応して、四方に散ってかわした。

翼達に襲いかかったのは、メリーゴーランドの馬だ。本物の馬のように動いて襲いかかったのだ。

 

四人はすぐに合流して、アームドギアを構える。

 

馬は牙を見せつけるように口を開く。目も赤く光り、まるで魔物のようだ。

 

 

それだけではない。観覧車のゴンドラが全て車輪状のフレームから離れて、宙に浮かびながら翼達に襲いかかる。

 

クリスとセレナが銃弾と短剣を発射して襲いかかってくるゴンドラを全て撃ち落としたが、フレームから新しいゴンドラが生成される。

 

 

メリーゴーランドの馬も襲いかかってくる。

翼と切歌が馬の突撃をかわし、すれ違い時に切り裂く。

 

馬は崩れ去り、倒されたものの他の馬が複数現れる。

 

 

「やっぱりロクな事にならねぇ!」

「デンジャーな遊園地デスよ!」

 

「このかくれんぼ、襲いかかるアトラクションにも対応しないといけないの・・・!?」

 

「そのようだ・・・行くぞ!」

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

Aチームも、アトラクションの襲撃を受けていた。

コーヒーカップが突進してきたり、子供用の車がクラクションを鳴らしながら突進してきたりした。

 

各々で対応しているが、次々と現れるのでキリがない。

 

 

「これじゃあ、かくれんぼどころじゃないよ!」

 

「狼狽えるな!私達はアトラクションなんかに負けはしない!」

 

「やっぱり凄いな、あのファンガイア。僕の想像以上に高度な魔術・・・共存反対派ならば、確実に幹部クラスだ」

 

「・・・あ!」

 

 

調は気付いた。キバットとタツロットが大慌てで直人達の方へ飛んできたのだ。

 

「遅くなってすまねぇ!」

「ただいま参上しました!」

 

「ありがとう。キバット、タツロット!君達なら単独でも倒せる位だ、加勢して欲しい!」

 

「おうともよー!」

「おまかせ下さい!」

 

 

キバットとタツロットも、爪や翼のカッターで切り裂いて行く。

 

二人の力はキバへの変身ばかりではない、魔族としての力も十分強い。

 

 

直人の剣の一閃で、目の前のアトラクション達は全滅。

周囲を警戒するが、増援は来なかった。

 

「はぁ~、やっと終わったぁ」

「ちょっと疲れた・・・」

 

 

すると、直人達の方へ翼達Bチームがやって来た。

 

「皆、無事か!」

「大丈夫です!」

 

響が答える。全員で無事を確認してから、翼達もアトラクションに襲われた話を聞いた。

 

 

「どうする・・・」

「これが何度も続くとなると・・・流石に不味いわね」

 

「早く見つけないと・・・ここにずっといるままというのは嫌デスよ!」

 

「・・・」

「あのファンガイアは一体どこにいるんだろう・・・」

 

 

「あの・・・」

 

皆が話し合っている時に、調が手を上げる。

 

 

「さっき戦っていた時だけど、変な感じがした・・・」

「変な?調、どういう事?」

 

マリアが聞くと、調は考えを整理しながら少しずつ話していく。

 

 

「えっと、アトラクションと戦っていた時、何か流れるような感じがした・・・」

 

「流れる?」

「うん。遠くから風が吹いてくるような、水が流れるような・・・」

 

 

 

 

「魔皇力の流れだ」

 

 

 

 

「えっ・・・?」

 

「調ちゃんが感じたのは、あのファンガイアが流している魔皇力の流れだよ」

 

直人は皆に説明していく。

 

 

「魔皇力については以前説明したよね。その魔皇力であのアトラクションを操る術を使っているようだけど、術を使う際に動力となる魔皇力を送るためにアトラクションに流しているんだ」

 

あのアトラクション達は、魔皇力を燃料として、魔術で魔物のように変えられたのだ。

 

 

「その魔皇力の流れを、調ちゃんは感じ取ったんだよ。魔皇力の流れを感じる事は、生まれ持った才能が肝心。

 

人間も魔族の一種。故に、人間にも魔皇力に関する力や才能は存在するから。

 

調ちゃんの様子だと、これはかなり精度が良い。生まれつき魔皇力の流れを感じる才能が大きいのかもしれない」

 

 

「凄いデス!調にそんな才能があったなんて!」

 

切歌は親友に凄い才能があると知って、自分の事のように喜ぶ。

 

 

「直人さん・・・私が流れを感じれば」

「うん、あのファンガイアのいる場所がわかる」

 

「でもよ、流れを感じるといってもどういう時が一番良いんだ?」

 

「やっぱり、術を使っている時・・・つまり、アトラクションを操っている時が一番感じやすい時だろうね」

 

「つまり、調が魔皇力の流れを感じ取っている間、私達がアトラクションと戦うってことね」

 

「わかりました!調ちゃんは私達が守ります!」

 

 

話し合いを終えた皆は、このかくれんぼを終わらせるために行動を開始した。

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

しばらくして、再び魔術で操られたアトラクションが襲いかかってきた。

 

今度はジェットコースターだ。空を飛んで装者達を見下ろすその姿は、まるでドラゴンのようだ。

 

 

調は魔皇力が何処から流れてきているかを知るため、精神を集中させて探る。

 

その間、全くの無防備になっている調を守るのが直人達の役目だ。

 

 

襲いかかるジェットコースターと戦う、調以外の装者達。

 

手掛かりとなるアトラクションを壊すわけにはいかないので、生かさず殺さずな戦いが続く。

 

そして、遂に調は魔皇力の流れを明確に感じとり、流しているテイピアの位置も掴むことに成功した。

 

 

その報告を聞いた装者達は一斉に攻撃を放ち、ジェットコースターを破壊した。

 

そして、精神的に疲れている調を支えながらテイピアのいる場所へ向かった。そこは・・・。

 

 

 

お化け屋敷最深部だった。

 

 

 

「みーつけた!」

 

 

「あはははは!見つかっちゃったぁ!僕の負けだ!」

 

直人達の前に姿を現した時とは異なり、明るい口調のテイピア。

 

 

「あーあ、負けちゃった。まぁ良いや、楽しかったもん!じゃあねお兄ちゃんお姉ちゃん達!また一緒に遊ぼうよ!」

 

「はぁ!?自分で戦ったりしないのかよ!?」

 

クリスが驚くと、テイピアは・・・。

 

 

 

 

「かくれんぼが終わったら早く帰ってきなさいって、お姉ちゃんに言われてるからね~。

 

だからもう放っておいてようるさいんだよいらないんだよかくれんぼで勝ったお前達なんて嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだ嫌いだぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

 

 

明るい口調だと思ったら、今度は癇癪を起こしたように喚き散らして暴れだす。

 

 

 

「性格も、心の音楽も・・・何もかも滅茶苦茶だ!」

 

直人は心の音楽が雑音のようにグチャグチャになっているテイピアに驚いた。

 

他の装者も驚いている中、響は動く。

 

 

「待って!」

「嫌いだ嫌い・・・何?」

 

響が声をかけると、テイピアは大人しくなった。初めて姿を現した時と同じような感じだ。

 

 

「私、君とお話がしたいの。いいかな?」

 

響は優しく訪ねる。

 

 

「やだ・・・もう帰る。じゃあね」

 

静かに、しかしキッパリと拒否して、テレポートで帰ってしまった。

 

その直後、ガラスが砕け散るような音が響いて、魔術で作られた夢の空間は消え去った。

 

 

そこは、廃病院の一室。そこそこ広いものの、遊園地が入るような広さではなかった。

 

すると、ここでようやく二課と通信が繋がった。

 

弦十朗に何があったのかを説明してから、廃病院の探索を再開。

 

 

しかし、ウェル博士は見つからなかった。

直人達が夢の空間にいる間に逃げてしまったようだ。

 

 

『おそらく、皆が夢の空間に閉じ込められたのは、ウェル博士を逃がすための時間稼ぎだったのだろう』

 

弦十朗の言葉に、皆は納得した。

 

時間稼ぎが目的であることは装者達も途中から気付いた事だが、テイピアを見つける事以外で脱出の手段が無かった以上、どうしても時間が 掛かってしまった。

 

その隙に、ウェル博士にはまんまと逃げられてしまったのだ。

 

 

廃病院の外に出る。目の前に港が見える。日も上ってきた事から、夜明けが来たのだ。

 

皆がウェル博士を確保出来なかった事を残念に思う中、響は・・・。

 

 

「・・・・・・あの子と今は話が出来なかったけど、諦めない。きっと・・・」

 

響が一人、決意を改める。調に言った通り、テイピアを止める事を諦めない為に。

 

 

こうして、ウェル博士を確保するという任務は、失敗に終わってしまったのであった。

 

 

 

ーーーーーーーーーー

 

 

魔術でワープしたテイピアは、終焉の革命団がアジトとして使っている所へ帰還した。そして人間の姿になった。

 

黒い髪の、小学校高学年位の少年だ。すると・・・。

 

 

 

「おっ帰り~、クー君♪」

「お姉ちゃん・・・ただいま」

 

 

女性がテイピアに抱きついた。その女性は、革命団幹部の一人、レティア・グラトリンだった。

 

「お姉ちゃん!僕、あいつらを閉じ込めて、一緒にかくれんぼをやったの!

 

負けちゃったけど、博士はちゃんと守ったよ!」

 

 

「そうなの!偉いわね~、流石私の弟!」

「エヘヘ~♪」

 

 

 

共存反対派の組織、終焉の革命団の幹部の一人、テイピアファンガイア。名は、『クロード・グラトリン』。

 

レティア・グラトリンの、実の「弟」である。

 

 

クロードは、生まれつき強大な力を持っていた。

魔術に関する力は、ファンガイアの中でも一、二を争う程に強い。

 

 

 

しかし、それがクロードにとっての不幸だった。

 

クロードの持つ強大な力は、クロードの幼い心を侵食し、傷つけてきた。

 

大きすぎる、強すぎる力にクロードの心は耐えられなかった。彼は精神崩壊のような状態になってしまったのだ。

 

 

性格が急に変わったりするのもそのせいだ。精神が安定せず、大人しいと思えば急に暴れだしたりしてしまう。

 

 

直人が最初に心の音楽を聞いた時は幼くて純粋だったのに、かくれんぼが終わった時には急に豹変し、雑音のようにグチャグチャな感じになったのは、精神が崩壊していて安定していない事が理由だ。

 

 

クロードは持ち前の強大な力のみで幹部になった。姉であるレティアのサポートを受けながら、幹部としての仕事をこなしていく。

 

 

「えへへ・・・お姉ちゃん」

「なぁに?」

 

 

「ぼく、お姉ちゃんのこと、ダイスキダヨ」

「私も、クー君の事大好きよ!」

 

レティアとクロード、二人の姉弟はこれからも暗躍を続ける。姉弟で、ずっと一緒にいるために。

 

 




次回予告。


直人から翼にプレゼントが渡される。二人は一緒の一時を過ごすが・・・。


第八話 駆ける防人、黄金の魔像


魔皇と防人よ、走り駆け抜け、邪悪な魔を滅せよ。


ーーーーーーーーーー


魔皇力の流れと、調の才能は私のオリジナル設定です。


捕捉説明デス・・・。

流れを感じとる才能はファンガイア以外の魔族、もちろん人間にも存在しますが、生まれ持った才能によって決まります。

ファンガイアの中でも、この才能が大きいのは僅かで、人間だとそれよりも少ないです。

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