紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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必死に書いて、溜めています。






第三話 歌姫の舞台、悪意の胎動

会場内の歓声に混じり、マリアの名が何度もコールする。

 

その観客達に答える様に、メインステージにて手を振るマリア。

 

 

先まで披露していたその歌は、終わった後も尚その余韻を残していた。

 

 

会場の天井には複数のテレビモニターがある。

 

ほぼ全ての世界が映し出されており、その中に映し出されている映像には、今も手を振っているマリアが映し出されていた。

 

 

 

会場内に設けられた特別ブースの一室。

そこにはサイリウムを手に持ち、観客達と同じく盛り上がる四人の少女達がいた。

 

 

板場 弓美、寺島 詩織、安藤 創世、小日向 未来の四人だ。

 

 

 

「おぉぉ!!さっすがマリア・カデンツァヴナ・イヴ!!生の迫力は違うねぇ!!」

 

「全米チャートに登場してから三年、流石の貫禄です!」

 

 

「今度の学祭の参考になればと思ったけど、流石に真似できないわ!」

 

「それは始めから無理ですよ、板場さん・・・」

 

 

「学園祭か~。リディアンの学園祭って、何か特徴的な所ってある?」

 

 

一緒に来ている名護 恵の問いに、弓美が答える。

 

 

 

「リディアンの学祭ではね、チームや個人がステージに立って歌うんです!外部の方も参加OK!」

 

「そうなの!?私も歌っちゃおうかな?」

 

 

「まだ学祭まで間があるけど、始まったら絶対に来てください!面白いですよ!」

 

「もちろん!夫と一緒に行くわね!」

 

 

 

弓美、詩織、創世の三人もルナアタックをきっかけに響達の事情のみならず、ファンガイアを含む十三魔族の事情を知ったのだ。

 

そして直人から名護夫婦を紹介され、あっという間に仲良くなった。

 

 

 

「・・・・・・」

 

「まだ、ビッキーから連絡来ないの?メインイベントが始まっちゃうよ?」

 

「うん・・・」

 

「せっかく風鳴さんが招待してくれたのに、今夜限りの特別ユニットを見逃すなんて・・・」

 

「期待を裏切らないわねぇ、あの娘ったら」

 

 

「キネクリ先輩と紅さんも来れないの?」

 

「うん・・・。クリスは響と一緒に任務だし、直人さんは、共存反対派のファンガイアへの対応が長引いちゃってるみたいで・・・」

 

 

 

ここで、急に照明が暗くなり、皆が一斉にメインステージに眼を向ける。

 

待ってましたと言わんばかりの歓声を上げながら手にした青と白のサイリウムの光を灯しだす。

 

そして、ステージの下から本日の主役二人・・・風鳴 翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴの二人だ。

 

 

 

「見せてもらうわよ!戦場に冴える、抜き身のあなたを!!」

 

 

 

マリアが纏う西洋風ドレスは純白、まさしく歌姫と呼ぶに相応しい出で立ち。

 

 

もう一人、翼は対を成すように黒の振袖に帯を巻いたデザインのドレスを身に纏っている。

 

 

二人は手に持つサーベルを模したマイクを持ち、ついに歌い始めた。

 

 

タイトルは、不死鳥のフランメ。

 

熱き炎を纏いし鳥の羽ばたきに合わせて、二人の歌姫は舞い、歌う。

 

観客のテンションもどんどん上がっていく。

 

 

二人が振るう剣が地についた瞬間、不死鳥の炎が舞い上がる。

 

 

そして、最後まで歌いきったマリアと翼が立つメインステージの大きな画面に炎を纏った不死鳥が映し出された。

 

 

日米におけるトップアーティストの二人のコラボレーションに先まで以上の大きな歓声が上がっていた。

 

翼とマリアも、手を降って答える。

 

 

 

それも少し落ち着いた所で、翼とマリアがステージの客達に言う。

 

 

 

 

「ありがとう、皆!私は、いつも皆からたくさんの勇気を分けてもらっている!

 

だから今日は、私の歌を聞いてくれる人たちに、少しでも勇気を分けてあげられたらと思っている!!」

 

 

 

「私の歌を全部、世界中の聞いてくれている皆にあげるわ!!私は振り返らない、私の歌は全力疾走だ!!ついて来れる奴だけついて来い!!」

 

 

 

それを見ていた全世界の人々も、マリアを羨望の眼差しで見つめ、ある者は涙を流している者もいた。

 

 

舞台の横で見ていたセレナは、姉さんらしい言い方だなぁ・・・と苦笑しながら思っていた。

 

 

「今日のライヴに参加できたことを感謝している。そしてこの大舞台に日本のトップアーティスト、風鳴 翼とユニットを組み、歌えた事をね」

 

「私も、素晴らしいアーティストに巡り合えたことを光栄に思う」

 

 

翼が差し出した手をマリアが握る。

それだけでも観客達の歓声は盛り上がりを見せる。

 

 

 

「私達が世界に伝えていかなきゃね、歌には世界を変えていける力があるって事を」

 

「そして、人を笑顔に出来る力だ!」

「えぇ!その通りだわ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

『本当に、そうなのかしら?』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「!?」」

 

 

突然、ステージに響き渡る謎の声。声からして女性だ。

 

翼とマリアは一瞬で警戒体制に入り、舞台の袖のセレナも同様に警戒している。

 

観客達は何の声だ?と回りを見回している。

 

 

 

 

その時、空中から突然、一人の女性がステージへと降り立った。

 

 

膝の裏まで届くほどの長い黒髪、会場の人間を見渡す金色の瞳。

 

黒いドレスを纏った姿で、絶世の美女と言えるほどの美しい女性だ。

 

 

 

「突然ごめんなさいね、全世界の方々!ステージに乱入した無礼をお詫びいたしますわ!」

 

恭しく一礼する女性。しかし、顔を上げた瞬間、こう言った。

 

 

「では会場の皆様!お詫びとして、こんなものをお見せいたしましょう!!」

 

 

女性が右手を横にかざした瞬間、右手が亜空間に突っ込まれ、そこからあるものを取り出した。

 

 

 

それは、ソロモンの杖だった。

 

 

 

この女性もファンガイアであり、亜空間を開く魔術を使用したのだ。

 

 

 

 

 

杖から放たれた光がステージに降り注いだ瞬間、観客達の周りにノイズが出現したのだ。

 

 

 

余りにも予想外の事態に一瞬反応し切れなかった観客達。

だがそれも長くは続かず、正気を取り戻した人から順に悲鳴を上げる。

 

自分達の目の前、それも囲むような形で現れたノイズが現れたのだ。慌てない方がおかしい。

 

 

しかし、観客をノイズ達が囲っており、逃げることすら許されない。

 

 

特異災害対策機動部二課の司令室に警報が鳴り響く。

ノイズの出現を直人に、響とクリスに伝えて会場へ急行するように伝える。

 

 

 

 

女性は会場から盗んだ一本のマイクを使い、会場の人間、及び中継を見ている者達に告げた。

 

 

「ご覧の通り、私達はノイズを操る力を有している!この力を持って、我々は一つの『革命』を成し遂げる!

 

この宣言は、世界へ向けての、我々からのメッセージである!!」

 

 

 

声高々と言い放つその言葉。

 

 

 

「これはまるで・・・!」

 

「宣戦布告っ!」

 

 

 

「ははは、はははははははは!!

私達は、この世界の掟に不満を抱きし者達の集いであり、力を持って破壊を成す者達!」

 

 

 

 

 

 

「『終焉の革命団(しゅうえんのかくめいだん)』・・・フィーネ・レボルシオン!!

 

私達の組織の名であり、私の宣戦布告は、組織の総意である!!」

 

 

 

 

 

終焉の革命団(フィーネ・レボルシオン)

 

共存反対派のファンガイアによって名付けられた、共存反対派の新たな名前である。

 

 

 

 

(成る程・・・共存反対派のファンガイアによる組織の名前か。しかし、またフィーネの名前を聞くことになるとはな)

 

翼は掟に不満を抱き、破壊するという言葉から、ファンガイアの組織であることを突き止め、シンフォギアのペンダントを握りしめる。

 

女性が更に何か言おうとしたその時、女性のスマホに着信が入る。

 

 

 

「はい、もしもーし!私のかっこいい宣戦布告見てくれた?・・・え、うそマジで?

 

・・・リーダーの指示?わかったわよもう!」

 

 

通話を切った女性は、会場の客達に告げた。

 

 

 

「会場の人間に告げまーす。舞台の上にいる風鳴 翼とマリア・カデンツァヴナ・イヴ以外の人間は会場から出ていって良しだそうよ。

 

とゆーわけでさっさと出ていきなさい!ほら、道を空けるから!」

 

 

 

観客達は困惑しながらも、会場から出ていく。

 

そして観客はいなくなり、不気味なほどの静寂さを伴った。

残っているのは女性、翼、マリア。セレナも逃げずに隠れている。

 

そして、制御下にあるノイズと、いまだ中継を続けている世界各国のカメラだけである。しかし・・・。

 

 

 

「さてさて、解放って事になったけど、これからまた世界に・・・あれ?」

 

モニターに目を向けると、画面は黒くなっており、何も写していない。

 

"NO SIGNAL"という文字を除いて。

 

 

 

「中継が中断された!?うっそーん・・・」

 

「緒川さんのお陰ね・・・」

「日本のエージェントって優秀なのね」

 

 

すると、舞台の横からセレナがステージへとやって来た。

 

 

「あなたは私達が止めます」

「セレナ・・・残ってたのね」

「姉さん達がいるのに、私だけ逃げるなんて嫌だから」

 

 

「で、どうする?ノイズに加えて私もいるけどこの状況で?」

 

 

「ふん、私達は戦えないと思ったら大間違いよ。行くわよセレナ!覚悟は出来てる!?」

 

「勿論だよ。皆を守るため、私は戦う!」

 

 

カデンツァヴナ・イヴ姉妹はあるものを取り出した。それは・・・。

 

 

 

「シンフォギア・・・!?」

 

シンフォギアのペンダントだ。しかし、翼の驚愕はまだ終わらない。

 

 

聖唱を歌い、シンフォギアをまとう二人。

 

 

 

 

その反応は、二課でも検知していた。

 

 

「司令、二つの反応を検知!ですが・・・!

 

二つの内の片方・・・この波形パターン・・・まさかこれは!?」

 

 

 

二課司令室にてモニターしていた朔也は驚きを隠せない。

 

何故なら、捉えたその波形パターンは3ヶ月と少し前にも見たものだったからだ。

 

 

 

 

 

"GUNGNIR"

 

 

 

 

「ガングニールだと!!?」

 

 

 

響が初めてガングニールを纏ったときと同じように、弦十郎はその結果に声を上げずにはいられなかった。

 

 

 

 

マリアのは黒いシンフォギア。

 

頭の二方向に立った髪に沿うように立つ突起、両腕にはガントレットが装着され、背中には黒いマントが閃いていた。

 

手には、奏が使っていたアームドギアの黒い物が握られていた。

 

 

 

セレナのは白銀のシンフォギア。

 

背中に剣のような半透明な羽がついていて、セレナの右手には十字架のマークがついた盾が装備されている。

 

セレナの周囲を、短剣が複数本浮かんでいる。

 

 

 

 

マリアのシンフォギアは、激槍・ガングニール。

セレナのシンフォギアは、聖腕・アガートラーム。

 

 

 

 

姉妹はシンフォギアを纏い、女性が召喚したノイズに立ち向かっていく!

 

 

その直後に、会場上空にヘリが到着。響とクリスがシンフォギアを纏って着地した。

 

 

「黒い・・・ガングニール」

 

響は弦十朗から通信で話は聞いていたが、自分の目で見て、複雑な気持ちを抱く。

 

 

「おいおい、マジかよ!?」

「・・・とにかく、世界への中継は遮断されている。私も行くぞ!」

 

 

翼も天ノ羽々斬を纏い、三人の奏者も加勢しようとしたその時・・・。

 

 

 

 

 

「デスデスデエェェェェス!私達も加勢するデス!!」

「マックスピードで来ました」

 

 

 

 

 

新たな二人の少女の声。そして、声の主は空中からノイズへと突貫。その衝撃でノイズを吹っ飛ばす。

 

 

 

煙が晴れた中には、二人の少女。高校生になる直前位だろうか。

 

 

二人とも黒いシンフォギアを纏っている。

 

黒髪の少女は、ツインテール部分にピンク色の長い耳のようなパーツがついている。

 

金髪の少女は、緑色のパーツを付け、手には死神の鎌・・・デスサイズを持っている。

 

 

 

 

月読 調。シンフォギアは、紅刃・シュルシャガナ。

暁 切歌。シンフォギアは、碧刃・イガリマ。

 

 

 

 

マリア、セレナと同じく直人に救われた二人は、とても愛らしく可愛い女の子へと成長していた。

 

 

「調ちゃん、切歌ちゃん!」

「セレナ、マリア!遅れちゃってごめんなさいデス!」

「その分、いっぱい頑張る!」

 

「よし!気合い入れていくわよ!」

 

 

マリア達四人で次々とノイズを葬っていく。

 

 

 

 

「装者が・・・四人!?」

 

「まるで、シンフォギア装者のバーゲンセールだな・・・」

 

「と、とにかく!私達も加勢しましょう!」

 

 

響に続いて、翼とクリスも戦いに参加する。

 

 

 

「まさか、歌だけでなく戦闘でも共演することになるとはね!」

 

「あぁ、私も驚いている!」

「風鳴さん、一緒に戦ってくれますか!?」

 

「無論だ!行くぞ!」

 

翼、マリア、セレナは初めてながらも悪くない連携が取れている。

 

 

しかし・・・。

 

 

 

「私も手伝う!」

「あなたの助けなんていらない!」

 

「今は緊急事態なんだよ!?そんなことを言ってる場合じゃないよ!」

「・・・・・・」

 

 

 

「おい!そっちを倒し損ねてるぞ!」

「うるさいデス!あなたは黙って撃ってればいいんデスよ!このヘビーアームズ!」

 

「誰がガン○ムだ!このデスサイズ!」

「デスサイズは大好きデス!」

 

 

 

言い合いばかりで、ロクに連携が取れない。

 

それは、調と切歌が二課の奏者達に嫉妬心を持っているからだ。

 

 

調査で二課の装者達は直人と共にいる事を突き止めていた。

 

戦いも、それ以外でも一緒にいられる。

 

 

 

その事に、強いヤキモチを抱くようになった。

 

マリアとセレナはそれをある程度コントロール出来ているが、まだ幼さの残る調と切歌は、ヤキモチを押さえられずにいた。

 

感情のコントロールがまだ未熟であるが故に。

協力するべきだと頭ではわかっていても、心が納得してくれない。

 

 

そのような事になりながらも、何とかノイズは全て倒した。

 

しかし、まだファンガイアの女性が残っている。

 

 

装者達が女性の方を見ても、女性はソロモンの杖を片手にニヤニヤと余裕のある笑みを浮かべていた。

 

「やれやれ、人間にしてはやる方ね。でも、あんた達じゃあ私には勝てないわよ!」

 

 

 

 

「ならば、僕が相手だ!!」

 

 

 

 

男性の声が聞こえた瞬間、一台の紅いバイク・・・マシンキバーが会場へ入る。

 

そして、装者達の間に止まり、バイクを降りてヘルメットを脱ぎ捨てた。

 

 

天叢雲剣のシンフォギアを纏った、紅 直人である。

 

 

 

「直人さん!」

「ったく、遅ぇよ直人!」

「直人・・・!」

 

 

響、クリス、翼は直人が来てくれた事に心から安心した。そして・・・。

 

 

マリア、セレナ、調、切歌はずっと会いたかった愛しい人がいきなり出てきたことに驚きながらも、再び会えた喜びが沸き上がってくる。

 

 

しかし、今は敵がいる。一旦それを抑えていく。

 

 

 

「共存反対派・・・いや。『終焉の革命団』幹部の一人、レティア・グラトリン!これ以上の狼藉は許さない!!」

 

 

直人の鋭い言葉に、女性・・・レティアは笑みを深めるだけだ。

 

 

 

魔皇はついに現れ、幹部は動き出した。

衝突は避けられない。戦いは始まろうとしていた。

 

 




次回予告。


革命団幹部と魔皇の戦いはついに始まった。
そして、もう一つの戦いも始まろうとしていた。


第四話 魔の戦い、女の戦い


決して避けられない戦いがある。
乙女の心は、熱く激しくぶつかり合う。


ーーーーー

共存反対派の組織、その名前を出しました。
やっと出せました。



本来ならオーズの小説を消すときに報告したかった事があります。


詳細は、活動報告にのせます。


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