紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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今回より、二期の話「G編」がスタートします!


四期一話、リアルタイムで見ました。物凄く面白かったですね!

後書きでちょっとしたお知らせがあります。


第二章 Gの小夜曲
第一話 変わる運命、救われる少女達


あなたは、私達を救ってくれた。

 

あなたは、私達に大切なことを教えてくれた。

 

 

私達は、あなたと約束した。大切な約束を。

 

私達は、あなたのお陰で笑顔でいられる。

 

 

 

 

 

 

あなたの為に・・・戦いたい。

あなたの為に・・・歌いたい。

 

あなたと一緒に・・・生きたい。

あなたと一緒に・・・歩みたい。

 

 

 

どんなに辛くても、苦しくても、あなたと一緒なら。

 

あなたと一緒なら、大丈夫。前を向いて歩いていけるよ。

 

だから、ずっと・・・。

 

ずっと・・・一緒にいたい。

 

 

 

 

大好きなあなたと共に・・・。

 

 

 

 

 

二章 Gの小夜曲(セレナーデ)、開始。

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

終末の魔女、フィーネによる一連の事件『ルナアタック』から三ヶ月後。

 

 

『閃紅の魔皇』・・・紅 直人は、とある場所を訪れていた。

 

 

そこは、キャッスルドランの内部に存在する一枚の扉の前。

 

ドクン、ドクンとキャッスルドランの心臓の音が響く中、直人は疑問を持って後ろにいる二人に問う。

 

 

 

「次狼さん、母さん。時の扉の所まで連れてきた・・・ということは、過去を変えないとダメってこと?」

 

 

直人が連れてこられたのは、『時の扉』。

ファンガイアが魔術の粋を集めて作り上げた奇跡の存在。

 

 

タイムトラベルを可能とし、その当時の人物や出来事に干渉でき、使い方次第では歴史を変える事も可能である。

 

これは普段は次狼達によって厳しく管理されており、理由もなく使うことは出来ない。

 

 

その時の扉まで連れてきたのは、アームズモンスターの一人にして、ウルフェン族の生き残り、次狼。

 

もう一人は、全身黒い服を着ていて左目に眼帯を着けているが、美しさは全く損なわれていない美女。

 

 

美女の名は、真夜。元チェックメイトフォーのクイーンであり、直人と大牙の母親でもある。

 

 

「直人・・・あなたに託すわ」

「託す?何を」

 

「この先にある、命を救う事を。それが例え、歴史を変える事になっても」

 

「・・・」

 

 

「・・・詳しい事は、言えない。でも、あなたにしか出来ない事なの」

 

 

「・・・直人、開けるぞ」

 

 

次狼が鍵を使って扉を開ける。扉の先には光で満ちている。

 

 

「直人、お願い」

「難しい事は考えるな。お前の思う通りにやればいい」

 

二人に言われ、何処か釈然としない気持ちを持ちながらも、直人は扉に入ろうとしたら、声が掛かる。

 

 

 

「ちょい待ったー!俺も連れていけい!」

「もちろん。・・・よし、行くよ!」

 

キバットも直人と並ぶ。直人は頷いて、二人で一緒に扉の中に入った。

 

 

 

自動で扉が閉まる。真夜は呟く。

 

 

「・・・心の音楽が、導くままに」

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

 

 

少女達の周りで燃え盛る炎。それ自体が熱く、そしてこの暑さも汗を滝のように流れさせる。

 

 

 

 

「セレナ・・・セレナ!待って!」

「マリア姉さん・・・私、行くよ」

 

 

マリアとセレナ。二人の少女は、身勝手な大人達の実験による犠牲者であり、今目の前の大きな化け物と対峙していた。

 

 

「アレを・・・ネフィリムを何とか出来るのは私と、私のシンフォギアだけ。

 

だから、私が行くよ。姉さんとマム。生き残っている人達を救うためにも」

 

 

「セレナ!あなたが犠牲になることなんて無い!」

「・・・」

 

 

セレナはマリアの手を振りほどき、聖唱を歌い、シンフォギアを身に纏う。

 

 

化け物・・・ネフィリムと対峙するセレナ。

 

そして、己が死する覚悟の元、絶唱を歌おうとする。

 

 

セレナを止めようとするマリア、初老の女性・・・ナスターシャが走る。

 

しかし、頭上から瓦礫が落ちてきて、ナスターシャはマリアを突き飛ばしてマリアを守ったが、代わりにナスターシャが瓦礫に埋もれてしまう。

 

 

「マム!?」

「行きなさいマリア!!!」

 

「っ!・・・ごめんなさい!!」

 

 

マリアはナスターシャを残していく事に罪悪感を感じながらも、セレナを止めるために走る。

 

 

「セレナアァァァァァ!!!」

 

必死に走るマリア。しかし、走っても走っても追い付けないような錯覚に陥ってしまう。

 

それでも走り続けたが、途中で転んでしまう。

 

 

そして、ネフィリムが、拳を高く上げて・・・。

セレナが絶唱を歌いかける。

 

セレナに向けて、手を伸ばすマリア。

 

 

 

 

誰か、セレナを助けて。

私はどうなっても構いません。どうか、セレナは・・・!

 

 

 

嫌だ・・・本当は死にたくない。姉さんと、皆と一緒に生きたい・・・!

 

 

 

 

その心の奥にある祈りは、願いは・・・神には届かなかった。

 

しかし・・・・・・。

 

 

一人の王には、確かに届いた。

 

 

 

 

 

 

紅の閃光が、ネフィリムを切り裂き、セレナを救い、マリアを救った。

 

閃光の波動が、ナスターシャの瓦礫を吹き飛ばす。

 

 

マリアとセレナは、一人の少年の腕に優しく抱かれている。

 

 

「「あ・・・」」

 

 

腕や体から感じる優しさと温もりに、少女二人の顔が赤くなる。

 

 

「間に合って良かった」

 

 

少年・・・直人は、優しく声をかけたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

直人が時の扉を潜り、辿り着いたのは炎が燃え盛る施設だった。

 

走り回る人達が英語で話していたので、外国だと判断した直人は、言語が違ってても意思疏通を可能とする魔術を発動。

 

英語が日本語のように理解できるようになったところで、走り出した。

 

すると途中で、ある光景が目に入った。

 

 

 

 

金髪と黒髪、二人の少女が手を繋いで走っていたが、黒髪の少女が転んでしまう。

 

しかも、黒髪の少女の足が亀裂に挟まってしまった。

金髪の少女が引っ張るが、中々抜けない。

 

 

「私はいいから・・・先に逃げて」

「そんなの駄目デス!二人で逃げるんデス!」

 

その時、直人は二人の元に駆け寄り、金髪の少女の手に己の手を重ねて握る。

 

 

「え!?」

「手伝うよ!せーの、で引っ張るんだ!」

 

「は、はいデス!」

「じゃあ行くよ!せーの!」

 

「デース!」

 

二人で引っ張りあげる。

黒髪の少女は無事に亀裂から抜かれた。

 

 

「君たち、大丈夫?」

 

「は、はい・・・」

「あ・・・ありがとう、ございます・・・」

 

 

救ってくれた直人にお礼を言う二人。

直人がハンカチを取り出して、二人の顔の汚れなどをそっと拭いていく。

 

 

それに逆らうことなく、二人は直人の手を受け入れた。

 

助けてくれた恩人だから、というのもあるが、直人の気遣ってくれる優しさが本物である・・・という確信が持てたからでもあった。

 

拭き終わってから一緒に外に出ようということになり、三人で並んで走る。

 

 

 

「自己紹介がまだだったね。僕は紅 直人」

 

「月読 調・・・です」

 

「暁 切歌デス!」

 

 

二人の少女・・・調と切歌は自己紹介をして、直人に改めてお礼を言う。

 

 

 

ある程度走った所で、女の子の叫び声を聞く。

そこに向かうと、大きな怪物にシンフォギアを纏っている少女、その少女に手を伸ばすもう一人の少女が見えた。

 

 

「キバット!」

「キバッていくぜ!」

 

 

直人は走りながらキバに変身。

 

紅の閃光を纏っての攻撃で怪物を切り裂き、変身を解いて二人の少女を優しく抱き抱えた。

 

 

 

 

 

 

その後、先程までいた部屋から出る。直人はナスターシャを部屋の外まで運び、簡単な治癒の魔術を使い、動けるようにする。

 

そして、調と切歌とも合流。二人も、マリアとセレナとナスターシャの無事を喜んだ。

 

 

「大丈夫ですか?」

「えぇ、ありがとうございます。助かりました」

 

「あ、あの・・・」

 

そこに、マリアとセレナが声をかける。

 

 

「セレナ・カデンツァヴナ・イヴと言います。助けてくれて、ありがとうございました!」

 

「セレナの姉、マリアです。セレナだけじゃなくて、私やマム、調と切歌を助けてくれて・・・ありがとうございます!」

 

 

「ナスターシャと申します。あなたに、心からの感謝を」

 

三人は深々と頭を下げてお礼を言う。

 

 

直人は三人の頭を上げさせてから自己紹介をする。

 

 

 

 

「僕は紅 直人、日本人です。でも、ここで一体何があったのですか?」

 

 

ナスターシャが代表して説明をしてくれた。

 

 

 

この施設は聖遺物研究機関『F.I.S』で、 シンフォギアに適合出来る、あるいはフィーネの器になりうる少女達を集めている所だという。

 

彼女らの他にも数千名の候補がいるが、セレナがシンフォギアの正規適合者と判明。

 

急遽開始されたテストでマリア、調、切歌が限定適合者となり得ることが判明、以上4名だけが装者候補として別途今いるこの研究所に移されて管理された。

 

 

 

そして、先程の怪物は、完全聖遺物の一つ『ネフィリム』。

 

生態型の聖遺物で、奏者の歌を介さず機械のみで制御する実験を行っていた。

 

しかし、その実験は失敗しネフィリムは暴走。それをセレナが絶唱を使って止めようとした所で直人に救われ、今に至る。

 

 

 

「そうですか・・・生きている聖遺物」

 

「古代の力は、今の我々が扱うことは極めて難しく繊細。功を得ようと焦り、幼い命をも利用する。

 

この現状は、そんな我々への罰なのかも知れませんね」

 

 

ナスターシャが研究所を見る。

研究所はネフィリムのいた部屋周辺は瓦礫の山であり、しばらくはまともな研究は出来ないだろう。

 

 

すると、そこで切歌があることを思い出して、直人に質問をした。

 

 

 

「あ、直人さん!さっきの赤い姿は何デスか?」

 

マリアとセレナを助ける際に纏ったキバの鎧だろう。一瞬しか見えなかったが気になったのだ。

 

「赤い・・・あぁ、キバの鎧の事ね」

 

「その説明なら、俺様に任せなさーい!」

 

 

キバットが現れた!

 

 

「ワァっ!?鳥デス!鳥がしゃべってるデス!」

「あれはコウモリだよ、切ちゃん」

 

「「わぁ・・・」」

「何と、摩訶不思議な・・・」

 

 

「俺様は、キバットバット三世。キバットって呼んでくれ。ほんじゃあ、軽く説明すっぞ!」

 

キバットは説明する。

ファンガイアの事。十三魔族の事。キバの鎧の事。共存の事。

 

 

そして、直人も話す。

マリア達を助けて欲しいと頼まれ、六年後の未来からタイムトラベルをしてここまで来た事。

 

 

「すぐには信じられないかもしれないけど。でも、そうとしか言えなくて」

 

「いえいえ、そんな!直人さんの話、信じます!」

「そうね。直人さんは嘘を言ってない。私はわかるわ」

「直人さん、カッコいいデス!」

 

セレナ、マリア、切歌は信じたが、調は俯いて何も言わない。

 

 

「・・・皆一緒に仲良く暮らすなんて、本当に出来るの?」

 

「・・・」

 

 

「そんな甘い考え、叶う無いよ・・・」

「・・・調・・・?」

 

 

「そんなの・・・ただの偽善だよ・・・!」

 

 

 

直人を睨むように見る調。

 

調は研究所で決して良くない暮らしや実験を強いられてきた。

 

その中で、調は人の善意に対して疑心暗鬼になっていた。

 

切歌やマリア達はともかく、いくら助けられたとはいえ、今日あったばかりの直人の言っていることをすぐには信じられない。

 

 

マリアが調に注意しようとしたが、それより早く直人が動く。

 

直人はしゃがんで片膝を地面に付け、調と目線を合わせる。

 

 

 

「調ちゃん。君の言うことは正しいよ。僕の唱えた共存は、偽善なんだ」

 

「・・・・え?」

 

ポカン、としてしまう調。調は直人が偽善ということを否定してくると思っていた為だ。

 

 

 

『共存を成したいと言うが、それは紅 直人の自己満足ではないか?』

 

『人間とファンガイアの両親が結ばれたから、他の者も出来る・・・という理想を押し付けているだけではないか?』

 

 

直人は常にその事を考えていたし、他のファンガイアから指摘された事もあった。

 

 

それでも考え続けて、直人は一つの答えを出している。

 

 

 

「確かに、共存に賛成してくれたファンガイアはたくさんいる。

でも僕のやっている事は、僕自身のエゴだっていうことは、自分でも自覚してる」

 

直人はわずかに顔を伏せる。

 

 

「人間とファンガイアの共存を成したい。それは本心だけど、やっぱり自己満足である以上、偽善であるのかもね」

 

でもね、と続けて言う。

 

 

「それでも僕は共存の為に戦う。異なる種族同士でも、手を取り合って生きられる未来の為に。

 

その為に、僕は前に進んでいく。例えそれが偽善でも、命が尽きるその瞬間まで。

 

共存を唱えた者として、その偽善を口だけにしない、現実にするために戦い続ける」

 

 

 

「・・・!」

調は感じ取った。直人の言葉に秘められた決意は、本物であると。

 

 

「・・・・・・わかった、信じる」

「調ちゃん・・・」

 

「それと・・・・・・ごめんなさい」

 

「気にしないで」

 

 

 

(偽善は偽善。でも・・・直人さんの偽善は、信じても良いのかもしれない・・・)

 

(・・・?直人さんの事を考えると、ドキドキする。どうして・・・?)

 

 

 

調は直人を受け入れる。そして、彼に対して胸が高鳴っていくのを感じた。

 

それはセレナ、マリア、切歌も同じだった。

 

 

 

(直人さんは、優しい人。出会ったばかりの私たちを救ってくれて、優しく包んでくれて・・・)

 

(直人さんは、強い人。己の掲げる理想を現実にするため、様々な困難に立ち向かう。

 

直人さんのような人が、本当に強い人なんだ・・・)

 

(直人さんは凄いデス。強くて優しくてかっこよくて・・・なんかドキドキしちゃうデス!)

 

 

 

セレナ、マリア、調、切歌の四人は女として直人に惹かれていく。

 

 

 

(やれやれ。罪な方と思うべきか、凄い方と誉めるべきか・・・)

 

ナスターシャは直人の意思の強さや理想へ真っ直ぐ進む姿を高く評価している。

 

しかし、それによってセレナ達が直人に想いを寄せるようになったことを見抜き、感心と呆れが混ざった気持ちになっていた。

 

 

 

 

 

しかし、この穏やかな時間は瞬間的に崩れ去った。

 

 

突然、強い揺れが発生したかと思うと、研究所の瓦礫からネフィリムが雄叫びを上げながら出現した!

 

 

直人によってやられた傷はまだ癒えていないものの、まだ活動が出来るだけの力を残していたようだ。

 

 

ネフィリムは直人達を睨む。しかし、直人から受けたダメージを引きずっているのか、痛そうに呻き、動きも鈍い。

 

 

 

突然のネフィリム出現に驚きと恐怖を抱くセレナ達。

ナスターシャも苦い表情をしている。

 

 

「ネフィリム・・・まだ動けるのですか!」

 

「・・・皆は、私が守る!」

 

 

セレナが前に出て、シンフォギアのペンダントを握りしめる。

 

 

「セレナ!?」

「大丈夫だよ、姉さん。もう自分が死んでも、なんて思ってないから」

 

「「セレナ・・・」」

 

 

「私は生きたい。直人さんが救ってくれたこの命を持って。

皆一緒にいられる未来の為に、私は戦う!」

 

 

強い決意を持って語るセレナ。しかし、直人はセレナの肩 に手を置く。

 

直人の方を見るセレナに、直人は言う。

 

 

「セレナちゃん。ここは僕に任せて」

 

「え・・・?」

 

直人の申し出に驚くセレナ。聞いていたマリア達も同じだ。

 

 

「セレナちゃんはさっき言ったよね、生きたいって。

セレナちゃんは、マリアちゃん達と一緒にいたいんでしょう?」

 

 

 

「君達は、僕が護る。そして、君達の夢と・・・命を未来に繋ぐ」

 

 

直人は迷いなく、どこまでも自分の想いを・・・信念を貫く意志を持ち、それを現実にするためにあらゆる努力を惜しまず、あらゆる困難にも立ち向かう。

 

 

護る。その言葉を真っ直ぐ言える。

護る。それを本当に成せるだけの意思と力を持っている。

 

 

 

そんな直人の姿にセレナが、マリアが、調が、切歌が。

胸を高鳴らせ、頬を赤く染め、直人から目を離せなくなっていた。

 

 

「行くよキバット!」

「おう!キバって、行くぜ!」

 

キバットが直人の手に噛み付き、アクティブフォースを注入。ステンドグラスの模様が走り、顔に到達した所で、ベルトが出現。

 

 

直人はキバットを右手で掴み、左胸元まで右手を持っていき・・・。

 

 

 

「変身!!」

 

 

 

一気にキバットをベルトに装着し、キバに変身した!

 

 

「裁きの刻だ!!」

 

 

宣言と共に、キバはネフィリムへと立ち向かう!

 

 

ネフィリムも、回復しきっていない体でキバを迎え撃つ。

 

ネフィリムは拳を振り上げて一気に落とす。キバはジャンプしてかわし、腕の上に乗って走ってネフィリムに接近。

 

 

頭の近くでジャンプして、ネフィリムの頭部に強烈な蹴りをくらわせる。

 

しかし、まだ終わらない。

 

 

キバは蹴ったときの反動でネフィリムよりも高い所へ飛び、もう一発キックを与え、更に力を込めたパンチを同じ箇所に叩き込む。

 

ネフィリムは苦し紛れに腕を振るうが全く当たらない。

 

キバは軌道を読んでかわし、今度は腹部に魔皇力を込めたパンチを与える。

 

 

倒れるネフィリム。

キバは着地して、手に魔皇力を再び溜めていく。

 

ネフィリムが再びパンチを放つが、キバはその場から動かない。

 

セレナ達が声をかけようとした瞬間、キバは右手を手刀の形にして、溜めた魔皇力で手刀を覆って剣のようにすると、その手刀でネフィリムの腕を切り裂いた!

 

 

苦しみに満ちた雄叫びを上げて、倒れるネフィリム。

 

 

「凄い・・・」

「万全じゃないとはいえ、ネフィリムを、あんなに簡単に・・・」

 

「・・・カッコいい」

「凄いデス!カッコいいデス!」

 

「古代の種族が造り出した鎧・・・これ程とは」

 

 

 

キバはネフィリムにとどめをさすべく、ウェイクアップフエッスルをキバットに吹かせる。

 

 

「ウェイク・アップ!」

 

音色と共に夜となり、キバの右足のヘルズゲートが開く。

 

 

「「「「夜!?」」」」

「・・・・・・もう、何と言えば良いのかわかりません!」

 

 

 

キバは高くジャンプして、ダークネスムーンブレイクをネフィリムに当てた。

 

右足の魔皇石によって増幅された直人の魔皇力によって、ネフィリムの体は限界を向かえ、爆発四散した。

 

空も、元に戻った。

 

 

勝負の結果は、キバの圧勝。完全聖遺物をも退けた王は、ゆっくりとセレナ達の元に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

しかし、直人達は気づけなかった。倒された直後にネフィリムのコアが研究所の瓦礫の中に飛んでいった事に。

 

そして、そのコアを一人の人物が回収した事に。

 

 

「ありがとう、閃紅の魔皇。私の手でネフィリムを倒す手間が省けたわ。

 

さて、元の時代に戻りましょうっと」

 

 

小声で呟き、その人物は一瞬で姿を消した。

 

 

 

 

 

 

 

戦闘が終わった後、直人は変身を解いてセレナ達と合流。

無事を確認したところで、直人の体が光だし、少しずつ透けていく。

 

 

「直人さん!?体が・・・」

 

「僕がこの時代でやるべき事は終わった。元に時代に戻るんだ」

 

 

その言葉をその言葉を聞いた四人の少女は、悲しみを強く抱いたのか、一斉に直人の元に駆け寄り、抱きついていく。

 

 

「嫌です!直人さんともっと、もっと話したい!もっと一緒にいたい!」

「私も・・・離れたくない!」

 

「・・・・・・いなくなっちゃ、やだ・・・」

「もうお別れなんて嫌デス!」

 

 

直人は四人を包むように抱き寄せる。

 

 

 

「セレナちゃん、マリアちゃん、調ちゃん、切歌ちゃん。

 

確かにお別れになるけど、二度と会えなくなる訳じゃない。未来で、きっと会える」

 

「ぐすっ・・・本当に・・・?」

 

泣きながら訪ねるセレナに、頷く直人。直人は消えてしまう前に、伝えたい事を伝える。

 

 

 

 

「皆。この先、大変な事や辛い事がたくさんあるかもしれない。

 

でも、それでも前を向いて未来に向かって、一歩ずつ進んで欲しい。

それは決して無駄にならない。その経験は、今後生きていく上で、必ず君達の力になってくれる」

 

 

少女達は、直人の言葉に頷く。直人の言葉を胸に刻むように。

 

 

 

「どんなに辛くても、未来へ進んで欲しい。生きることを・・・諦めないで」

 

「「「「・・・はい!」」」」

 

 

頷く少女達。直人はナスターシャに言う。

 

 

「ナスターシャさん、セレナちゃん達をお願いします。皆には、あなたが必要です」

 

「えぇ、勿論です」

 

 

 

遂に直人が戻る時が来た。

 

 

 

「じゃあね、皆。未来で、また会おうね!」

 

 

直人はそう言い残し、完全に消えた。元の時代に戻ったのだ。

 

 

 

「直人さん・・・本当に、ありがとう!!」

 

「セレナ、調、切歌、マム。皆で頑張りましょう!」

 

「「うん!」」

 

「もちろんデス!」

 

「ふふ・・・これから、忙しくなりそうですね」

 

 

直人によって、セレナは死の運命から救われた。

そして、セレナ、マリア、調、切歌は直人に淡い想いを抱く。

 

ナスターシャも、セレナ達の支えとなることを決意する。

 

 

直人は、少女達を確かに救ったのだ。命も、心も。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

時の扉から出てきた直人とキバットは、目の前に真夜と次狼がいることを確認して、元の時代に戻った事を認識した。

 

 

「よくやった直人。これで過去は・・・運命は変わった」

 

「・・・」

「何か匂うなー。真夜達、何か隠してねぇか?」

 

 

「直人、キバット・・・あなたが気負う必要はないわ。必要な事ではあるけど、あなたのお陰で、救われた命があるのだから」

 

 

「・・・・・・わかった」

 

心の何処かに釈然としない気持ちを持ちながらも、真夜達を信じ、深くは追求しなかった。

 

キバットと一緒に帰る中、直人は考える。

 

 

(今回の事は、兄さんが言っていた『あれ』に関係することか・・・?でも・・・)

 

 

(あの子達を救えた。今は、それで良いのかもしれないな・・・)

 

 

 

 

 

新たな物語は、過去を変える所から始まった。

これから始まるのは、新たな戦姫達との戦いと恋の物語。

 

 




次回予告


完全聖遺物、ソロモンの杖護送任務。
そこから始まるのは、戦姫達と王の舞台。

成長した乙女達の、戦。



第二話 始まる戦、想いを抱いて


それは、始まりを告げる笛の音色。その音色は皆に伝わり、動き出す。



ーーーーー


次回予告の使用を変更しました。


お知らせですが、私が書いている作品の一つについて、活動報告の方に書きました。

急な事ですが、ご理解の程をお願いします。

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