紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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この話をもって、第一章・・・アニメ一期の話は終わりとなります。


第一章・最終話 告げられる想い、新たな予感

フィーネによる一連の騒動から、シンフォギア奏者達が戻ってきてから一週間後。

 

月の欠片の破壊から、ちょうど一ヶ月が経過していた。

 

 

 

 

直人と翼は、二人で出掛けていた。

 

今の二人は、よく来るようになった公園の高い丘にいた。

 

 

まだ翼のアーティスト活動は再開しておらず、それ以外にやることが多かった為でもある。

 

それも一段落した時、直人から一緒に出掛けることを提案されて翼もこれを承諾し、今に至る。

 

 

フィーネとの決戦による街の破壊跡は大きいが、騒動が終結してから数日中に復興作業が開始された。

 

そして一ヶ月たった今、街は速いスピードで復興が進んでおり、この分だと、後二ヶ月程で九割程の復興が可能であるという見方になっている。

 

 

「すごい・・・。一ヶ月でもうこんなに進むなんて・・・」

 

「これもまた、人が持つ強さだよ。壊れても直していき、新たな一歩を踏み出せる」

 

 

丘の上から街を見る二人。今の時刻は夕方。夕日が優しく二人を包み込むように照らしている。

 

 

「実は、今回の復興作業には、共存派のファンガイアも協力してくれているんだ」

 

「えっ、そうなの?」

 

 

「うん。魔術を使って壊れている所を直したり、工事現場で人手が足りない所へ行って手伝ったり。

 

そういう、ちょっとした事でも人と人に理解あるファンガイアは手を取り合って、一緒に頑張っている」

 

そう語る直人の表情は穏やかで、人間とファンガイアが協力している事を心から喜んでいる。

 

 

「昔だったら、こういうことは絶対に無かった。

ファンガイアはライフエナジーを喰らい、利用し、生き長らえる。それが当たり前だった。

 

それが今、少しずつだけど変わり始めている。

 

新しい一歩を踏み出しているんだ。それを実感できて、凄く嬉しい」

 

「直人・・・」

 

 

翼は思う。直人が二年間、ファンガイアとの戦いの中で、苦しい事や辛いことがたくさんあったはずだ。

 

それを乗り越えてきた直人は強い。力も、心も。

それはきっと、二年間で培った、直人だけの強さ。

 

 

でも、変わらない所もある。

 

バイオリンが好きなところ。料理が上手なところ。そして・・・優しいところ。

 

王として厳しくなることもあるが、彼の本質は変わっていない。

 

それが嬉しくて、強くなった彼が眩しくて、とてもとても格好よくて。

 

 

翼は今、昔からずっと抱いていた想いを、改めて自覚した。

 

 

 

(私は、昔からずっと・・・直人の事が・・・好き。

この気持ちは、永遠に変わらない・・・!)

 

 

 

 

 

 

「翼・・・?翼!」

 

「きゃっ・・・!?」

 

 

想いを再確認していた翼だが、急に直人に声をかけられて驚きのあまり、かわいい悲鳴を上げてしまう。

 

「えっ!?どうしたの!?」

 

「ご、ごめんなさい!何でもないの・・・それで、どうしたの?」

 

続きを促す翼。直人は気を取り直して話す。

 

 

「ねぇ、翼。君は世界を舞台に歌いたいんだよね。そして、防人として護るために戦い続ける・・・でしょう?」

 

「うん・・・そうだけど・・・?」

 

 

「それは凄く良いことだし、僕も応援する。力になる。

でも、いずれそれらがもたらす重圧に翼が押し潰されないかって、不安になってしまう」

 

「私は大丈夫だよ、直人。今の私は、簡単にへし折れるような柔な剣じゃないわ」

 

 

「うん、わかってる。でも、それでも不安になってしまうんだ。

 

翼は女の子なんだ。とても繊細で、寂しがり屋さんの甘えん坊な女の子だよ」

 

 

「っ!?・・・か、からかわないで・・・」

 

 

顔を赤くする翼。直人はそんな翼に微笑みながら続きを話す。

 

 

 

 

 

「そんな君を支えたい。僕は・・・君の『鞘』になる」

 

「鞘・・・?」

 

 

「そう。君が剣として戦い続けるというならば、僕は君の鞘になろう。

 

剣である君を包み、癒し、護る。そんな鞘に」

 

 

「・・・!」

 

「ダメかな?」

 

「・・・ううん、嬉しい。ありがとう、直人」

 

 

心から嬉しさを感じ、微笑む翼。

 

翼の胸の高鳴りが、更に大きくなっていく。

その高鳴りを持ったまま、翼は自分から直人と手を繋ぐ。

 

直人もそっと繋ぎ返し、二人は一緒に復興の進む街を見る。

 

 

その景色を胸に刻み、二人はこれからの戦いを、試練を乗り越えていく事を誓った。

 

 

 

 

 

 

--------

 

 

 

D&P社内、地下にある部屋の中。

 

そこに、大牙とチェックメイトフォーのナイトとポーンがいた。

 

 

「キング、そういえばもうすぐですよね。二課と青空の会、そしてチェックメイトフォーの三組織の会議は」

 

「あぁ。我々は今後どのように協力していくことになるか、それを決める為にな」

 

 

とある機械に繋がっているコンピューターを操作しながら訪ねるポーンに答える大牙。

 

 

もうすぐ、特異災害対策機動部二課、素晴らしき青空の会、D&P社(正確には、キングである大牙)。

 

 

この三組織の代表同士が集い、今後の連携などについての話し合いが行われることになっている。

 

 

 

「それで、キング・・・」

 

ナイトが少しばかりの「呆れ」を含めて言う。

 

 

 

 

「『これ』について、どう説明するおつもりですか?」

 

 

「・・・確かに、それが一番の悩み所だな」

 

 

大牙は正面にある大きなケースを見る。

それは透明な丸い、長いケースだ。

 

その中に・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

完全聖遺物の一つ、サクリストD『デュランダル』が入っていた。

 

 

 

ケース内で封印の鎖、カテナに巻かれて力を封じられているが、それは間違いなくデュランダルだ。

 

 

フィーネとの戦いの中で、完全聖遺物同士の対消滅で消えたはずのデュランダルがなぜ消えず、大牙達の手元にあるか。

 

それは大牙が直人に指示を出したからだ。

 

キャッスルドランの図書庫で、大牙が直人に頼んだ内容こそが・・・。

 

 

 

 

 

『直人。お前に、頼みたい事がある。

二課で管理している完全聖遺物、デュランダルを確保してほしい』

 

驚きのあまり、ペットボトルを床に落としてしまう直人。

 

 

『---どうして・・・・・・』

 

『必要になるからだ。それが・・・必要になるときが必ず来る』

 

 

『その理由は?』

『それは---』

 

 

 

その理由を聞いた直人は、真剣な表情で頷いた。

 

『・・・・・・わかった。チャンスはいつになるかはわからないけど、やってみる』

 

 

『すまない。どうか・・・頼む』

 

 

以上の経緯があり、フィーネとの決戦の時、四人でデュランダルを振るいフィーネを攻撃した時に、直人はデュランダルが消える前に二つの魔術をかけたのだ。

 

 

 

一つは、『固定化』。物体の状態をその時の状態で固定する。あるいは壊れないようにするための魔術。

 

 

かつては冷蔵庫の無い時代に食料を腐らさずに保存したり、貴重な物品が壊れないようにするために使用されていた。

 

固定化の魔術を使うことで、デュランダルが対消滅によって消えること無いようにしたのだ。

 

 

 

二つ目は、『転移』。

 

対象を別の場所へとワープさせる魔術。

 

固定化の魔術をかけたデュランダルを、このケース内部にワープさせてすぐにナイトとポーンがカテナを巻き付けて封印したのだ。

 

 

 

コレが、デュランダルが残っていて大牙達が所有している理由である。

 

双子は不安げに訪ねる。

 

 

「キング、大丈夫でしょうか。この事を話したとして、直人様が何らかの不利益を被るようなことは・・・」

 

「それに、政治的な面でも、問題があるのでは・・・?」

 

 

「そうならないようにする。それに、政治面に関しては我々にも心強い味方がいる」

 

 

大牙は真剣な表情で、デュランダルを見つめる。

 

 

 

「これは必要だ。『あの存在』と対等に渡り合う為に・・・そして、勝つために必要なピースの一つだからな」

 

 

 

 

 

 

物語は、まだ終わらない。様々な者達が絡み、戦い、繋がる。

 

 

戦いと恋の物語は、まだ続いていく。

 

 

 

 

 

第一章 完。




今までで登場しなかった要素は、二期以降に登場となります。


新しいチェックメイトフォーや共存反対派の幹部達は、二期からの参加です。

他に登場させられなかったのも、ちゃんと出していきたいです。


二期の話はもう大体構想は出来ていますので、後は書いていくだけです。

投稿出来るまで、もう少しお待ち下さい。


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