紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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この話、長いです。一万字を超えています。

区切るタイミングが中々掴めず、一つにまとめた為です。

ご了承いただけると幸いです。


第十八話 強き歌、魔女との決戦

「シンフォギアアアァァァァァーーーーーーー!!!」

 

シンフォギアXD(エクスドライブ)へと、至った奏者達。

 

 

その姿は、正に天使の如し。

 

 

 

空へと飛び上がった直人、翼、響、クリス。見上げるフィーネに向かって響は言い放つ。

 

 

「みんなの歌声がくれたギアが、私に負けない力を与えてくれる。

 

私達に護る力を与えてくれる!!歌は戦う力だけじゃない・・・命なんだ!!」

 

 

 

「高レベルのフォニックゲイン・・・・・・コイツは2年前の意趣返しか・・・」

 

 

『んなこたぁどうでもいいんだよ!!』

 

 

「念話までも・・・限定解除されたギアを纏って、すっかりその気か!!」

 

クリスの思念通話・・・念話による声が、フィーネに届く。

 

 

フィーネはソロモンの杖を使い、町中に大量のノイズを放つ。その数は、数えるのも嫌になるほどで・・・。

 

 

 

『いい加減、芸が乏しいんだよ!』

 

『世界に尽きぬノイズの災禍、すべてお前の仕業なのか!?』

 

 

奏者達の念話に、フィーネも念話で答える。

 

 

 

『ノイズとは、バラルの呪詛にて相互理解を失った人類が、同じ人類のみを殺戮するために作り上げた自立兵器』

 

『人が・・・人を殺すために!?』

 

『人間ばかり殺していく理由は、その為だけに作られたから・・・』

 

 

 

『バビロニアの宝物庫は、扉が開け放たれたままでな・・・。

 

そこから間延び出いずる十年一度の偶然を私は必然と変え、純粋に力として使役しているだけのこと』

 

 

『また訳わかんねぇことを!』

 

 

 

フィーネはソロモンの杖の出力を更に上げ、強い光を放つソロモンの杖を掲げる。

 

 

「怖じろぉぉぉーーーーー!!!」

 

 

 

その光が空に向かって放たれ、その街全体に広がり、降り注ぐ。

 

 

その光がノイズとなり、街の道路という道路に溢れかえる。

 

そして空にも飛行型の小型や大型、さらには空母の巨大ノイズまでもが出現。

 

 

街はノイズによって埋め尽くされた。

 

 

 

「上等だ・・・全部撃ち倒してやる!」

「今の私達は、今までとは違う」

 

「歌による繋がり、温もりを抱えている今!」

「怖いものはない!」

 

 

 

四人は街へと飛び、ノイズとの戦いを始める。

 

 

四人が心の音楽を一つに合わせ歌う、FIRST LOVE SONGと共に。

 

 

 

「ではこちらは・・・」

「フィーネ。俺達と少しばかり付き合って貰おうか」

 

啓介と大牙は、直人達がノイズと戦っている間のフィーネの相手を引き受ける。

 

 

「・・・良いだろう。受けてたつ」

 

余裕があるような笑みを浮かべながら答えるフィーネ。

 

 

《レ・ディ・イ》

「○◇△□!(マジョ、ヤッツケル!)」

 

 

「「変身!」」

 

 

《フィ・ス・ト・オ・ン》

「ヘン・シン!」

 

 

 

啓介が変身したイクサ。

大牙が変身したサガ。

 

 

二人の仮面ライダーが並び立ち、フィーネに立ち向かう!

 

 

 

 

 

 

直人達は、XDへと至ったシンフォギアの歌を歌い、力を存分に振るい、ノイズの大群を次々と消し去っていく。

 

 

 

 

響は腕部ユニットを引き出し、拳と共に衝撃波を巨大ノイズに打ち込む。

 

その威力はかなりの物で、後ろにいたもう一体の巨大ノイズを粉砕し、その周囲にいた小型ノイズも巻き込んで消滅させた。

 

 

その後ろから刀と剣を手に持った翼と直人が、空を縦横無尽に飛びながらノイズを切り裂き続けている。

 

 

クリスはギアの一部を飛行ユニットに変形させ、レーザーを撃って飛行型ノイズを一掃していく。

 

 

すると、直人は翼から一旦離れて、クリスの元まで飛んできた。

 

 

 

『クリス、一緒に!』

『おうよ!』

 

 

念話で言葉を交わした瞬間、直人がクリスと手を繋ぐ。

 

 

クリスもレーザーの発射口を全て展開させた。

 

そして、直人は己の魔皇力を繋いだ手を通してクリスに、飛行ユニットに注ぎ込む。

 

 

魔皇力とエネルギーの充填が終わり、直人は空いた手に持った剣で紅い真空刃を放ち、クリスも魔皇力がミックスされたレーザーを放った!

 

 

 

“MEGA CRIMSON PARTY”

 

 

 

紅色の真空刃と光線が多数発射され、軌道を変えながら次々とノイズを撃ち、貫き、消していく。

 

 

『やっさいもっさい!』

 

『凄い!乱れ打ち!』

 

『いやいや!ちゃんと狙い撃ってんだからな!』

 

 

直人はクリスから離れて、今度は響の側に。

 

『響ちゃん!』

『はい!』

 

 

二人は並び立ち、手を繋ぐ。繋いだ手に直人が魔皇力を集中させていく。

 

 

そして、力を溜め終えた二人。繋いだ手が紅色の大きな拳型エネルギーの固まりになる。

 

それを構え、全力のパンチを放つ!

 

 

 

 

『『行けえぇぇぇぇぇ!!』』

 

 

 

"我流・紅星巨槍(がりゅう・こうせいきょそう)"

 

 

 

二人は地上へ向かい、地上を低空飛行しながらにいるノイズたちをエネルギーの固まりで殴って消滅させていく。

 

街中を縦横無尽に駆け巡り、あっという間に地上のノイズを殆ど倒してしまう。

 

『やったぁ!!』

 

 

直人は響から離れて、最後に翼の元に。

 

『行くよ、翼!』

『あぁ!』

 

 

巨大飛行型ノイズよりも更に上昇した二人。

 

 

二人で剣の柄を握り、直人が魔皇力を注ぎ込む。

大型化させた剣を降り下ろし、その一閃が放たれる。

 

 

 

"猛紅蒼滅刃(もうこうそうめつじん)"

 

 

 

その一撃も今までのものより桁違いの力を誇り、一番上にいたノイズ、及びその下にいたノイズまでも纏めて切り裂き、消滅させた。

 

 

四人の心を一つにして歌う奏者達の前では、もはやノイズなど敵ではなかった。

 

 

 

 

 

 

直人達がノイズと戦っている間、イクサとサガもフィーネと戦っていた。

 

イクサはイクサカリバーをガンモードにして銃弾を連射。

フィーネが防いでいる隙にサガが背後から攻撃を仕掛ける。

 

 

しかし、ネフシュタンの鎧についている鞭が自動で動き、フィーネの背後を守るように網状になってサガの攻撃を防ぐ。

 

 

そして、フィーネは背中の鞭をグルグル巻きにして一本の槍のようにする。

 

それをサガに向けて放ったが、サガは高くジャンプしてかわし、空中にいるままサガークにウェイクアップフエッスルを吹かせる。

 

 

 

「ウェイクアップ!」

 

サガークにジャコーダーを接続、エネルギーが溜まったところでフィーネに向かって一直線に刀身を伸ばす。

 

 

鋭く、速く向かってくるそれをフィーネは体を捻って強引に回避。

 

 

しかし、その直後-

 

 

《イ・ク・サ・ナ・ッ・ク・ル・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》

 

 

イクサが必殺技の一つ、ブロウクン・ファングを放つ。

 

サガの攻撃を回避した直後で隙のあったフィーネに直撃。

吹っ飛び、地面に倒れる。

 

しかし、ネフシュタンの鎧が持つ再生能力によってフィーネのダメージは回復した。

 

 

「決定打が与えられない・・・」

「それは、お互い様のようだ・・・」

 

 

サガの呟きに答えるフィーネ。すると、ノイズの殆どを倒した奏者達が戻ってきた。

 

 

それを確認したフィーネは小さく舌打ちしたが、ここでとある手段を取ることにした。

 

 

 

突然ソロモンの杖を自分に突き刺したのだ。その表情は一瞬で苦悶から余裕の笑みへと変わる。

 

 

その瞬間、街中に残っていたノイズの生き残りたちが一斉にフィーネに向かって飛んでいく。

 

フィーネにまとわりついたノイズたちは、赤黒い肉の塊のようになる。

 

さらには杖から放たれたノイズを生み出す光もフィーネに集まり、一つになっていき、どんどん巨大化していく。

 

 

 

「ノイズに・・・取り込まれて!?」

 

「そうじゃねぇ!アイツがノイズを取り込んでんだ!!」

 

 

赤黒い肉塊の中、フィーネは最後のピースを呼び出す。

 

 

「来たれ、デュランダル!!」

 

 

 

備え付けていたデュランダルを取り込んだ。

 

その瞬間、その肉塊は形を変え、赤黒い体色をした龍のような姿となる。

 

 

頭頂部から放たれた光線が街に向かって放たれ、大爆発を起こす。

 

 

一瞬で火の海になった街。その威力に、奏者達も絶句してしまう。

 

 

 

そこへ不気味さと怒りを含んだ声音による念話が響く。

 

『逆さ鱗に触れたのだ。相応の覚悟はできておろうな?』

「・・・龍」

 

 

赤黒い龍の首辺りに鳥籠のような空間があり、その中心に龍の身体と一体化したフィーネがいた。彼女が手にはデュランダルが握られている。

 

 

先に動いたのはクリスだった。クリスは飛行ユニットからレーザーの雨を降らせる。

 

 

しかし、フィーネを包む籠の隙間を埋めるように閉じられた壁によって防がれる。

 

直後、龍の鬣から放たれた小型の光線がクリスを襲う。

 

 

クリスは光線をかわしたが、その衝撃を受けて吹っ飛んでしまう。

 

 

直人・翼の一閃と響の衝撃波を伴った拳が龍の頭部に打ち込まれる。

 

その傷口は瞬時に再生。再び光線が放たれ、三人は急いで回避する。

 

 

 

『いくら限定解除されたギアであっても、所詮は聖遺物の欠片から作られた玩具!

 

完全聖遺物に対抗できるなどと思うてくれるな!!』

 

 

フィーネの念話による言葉を聞いた奏者達は、あることに気付いた。

 

 

『聞いたか!?』

 

「チャンネルをオフにしろ」

 

「もう一度やろう!」

 

「しかし、そのためには・・・」

 

 

直人と翼とクリスは、おもむろに響を見据える。

当人の響は少し戸惑った表情だ。

 

 

「立花!!」

 

「後は任せたからな!!」

 

「うえぇぇ!?」

 

 

突然の期待を意味する言葉を掛けられ戸惑う響。

 

 

「え、えーっと・・・。言ってること全然わかりません!でもやってみます!!」

 

戸惑いながらも、自分に託された事を理解し、ハッキリと答える。

 

 

残る三人は響を待機させて、フィーネに向かって突き進む。

 

 

「私と直人、雪音で露を払う!!」

 

「手加減なしだぜ!!」

「しっかりね!」

 

「わかっている!!」

 

 

「では、こちらの方も」

「あぁ、皆に加勢しよう!」

 

サガとイクサも直人達に協力するべく動き出す。

 

 

 

《ラ・イ・ジ・ン・グ》

 

イクサがライジングイクサになり、パワードイクサーを召喚。イクサが操縦席に座り、サガはパワードイクサーの胴体に着地。

 

共に向かっていく。

 

 

 

「こっちも!キャッスルドラン!」

 

キバット(一時的に離れていた)も皆に乗っかり、キャッスルドランをフエッスルを用いて呼び出す。

 

 

すぐに駆けつけたキャッスルドランとパワードイクサー。

 

翼は初めて見る巨城の竜と機械の竜に驚いたが、直人達が説明しながら、四人はキャッスルドランの上に乗る。

 

 

 

「今さらドラン族や機械の竜を繰り出したところで、何が出来る!」

 

 

フィーネは叫び、巨体から光線を放つ。

キャッスルドランが雄叫びを上げると、魔皇力のバリアーを張って光線を防ぎきった。

 

「ちっ・・・」

 

小さく舌打ちするフィーネ。

 

 

 

そして、キャッスルドランの上に、奏者四人とサガ。

更に次狼、ラモン、力も現れる。

 

少女達に簡単に自己紹介してから、三人は魔獣形態に替わる。

 

 

「お前達の狙いはわかっている。協力しよう」

「よーし、頑張るぞい!」

「がんばる、ぞい」

 

「当然、俺達もだ」

「成功させよう、必ず」

 

 

「皆、行くよ!!」

「「「了解!」」」

 

 

皆の気持ちが一つになる。勝つための一手を掴み取る為に。

 

 

「いくら策を講じようが・・・ん!?」

 

フィーネは刮目した。

 

 

 

奏者達は飛び、イクサはパワードイクサーの口が動き、射出されるように飛び出す。

 

更に、サガと次狼とラモンは、力が抱えているカプセル(パワードイクサーに積んであるアレ)の上に乗っている。

 

 

そして、力が力一杯ぶん投げ、フィーネに迫っていく。

 

 

 

「お前達正気か!?」

 

フィーネがツッコミながら、光線を撃ち撃ち落とそうとする。

 

 

その光線はクリスの光線によって相殺される。

 

 

翼は刀にさらにエネルギーを集中、巨大化させた刀を振り上げる。

 

そこに、直人の魔皇力がプラスされた斬撃と、イクサのファイナルライジングブラストも加わる。

 

 

「はぁぁぁ!!」

「・・・っ!」

 

 

"蒼ノ一閃・滅破"

"紅ノ一閃・裁皇"

 

二つの斬撃が砲撃によって後押しされ、勢いを増していく。

 

イクサは落下時用パラシュート(アップデート時に追加された)を開いて地面に着地。

 

 

斬撃と砲撃が直撃。しかし、穴を開ける事は出来てもそれはどんどん塞がっていく。

 

 

だが、完全に塞がる前に先にクリス、サガ、次狼、ラモンが籠の中に入り込む。

 

 

「っ!!?」

 

「うぉぉぉおおおおりゃぁぁぁぁ!!」

 

 

内部からの攻撃に焦りを隠せないフィーネ。

 

 

クリスのレーザーによる一斉射撃。

サガのジャコーダーによる一閃。

 

次狼の狼の遠吠えによる衝撃波。

ラモンの水の爆弾。

 

 

その全てをデュランダルの一振りで振り払い、防御壁を開く。

 

サガ達は、クリスの飛行ユニットに乗り、後方へ退避。

ある程度高度が下がったところでサガ達は地上へ降りる。

 

 

フィーネが防御壁を開いた先を見ると・・・。

 

 

 

「「はぁぁぁあああ!!!」」

 

 

二発目の一閃を構えていた、直人と翼が待ち構えていた。

 

 

「っ!!」

 

 

フィーネはネフシュタンの鎧の防御壁によってそれを防ぐが、その爆発は抑えられなかった。

 

 

その爆発によって巻き起こった煙から飛び出した物。

それこそが、皆の狙いだった。

 

 

「そいつが切り札だ!!」

 

 

真っ直ぐに響のもとに飛んでいく、完全聖遺物・デュランダル。

 

 

 

「っ!!」

 

「勝機を零すな!掴み取れ!!」

「手を伸ばすんだ!!」

 

「ちょせぇっ!!」

 

 

飛んでいくデュランダルの飛距離をクリスの小銃型のアームドギア一発一発によって稼ぐ。

 

 

響はデュランダルを掴んだ際に沸き起こった黒い衝動を思い出してしまうが、その思いを振り切ってデュランダルの元へと飛んでいく。

 

 

そして掴んだ瞬間、周囲の意識が一瞬反転し鐘の音が響く。

 

 

「ウッ・・・ヴオォォォォォォォッッ!!」

 

 

響がまたもやデュランダルの力に飲み込まれようとしていたが、そんな響に声をかける者達がいた。

 

 

 

 

「正念場だ!!踏ん張り所だろうがッ!!」

 

 

弦十郎の声が聞こえた。地下から地上へと出てきた弦十郎達に眼を向ける。

 

そこには、二課の人達に、響の友達の姿もあった。

 

 

「強く自分を意識してください!!」

 

「昨日までの自分を!!」

 

「これからなりたい自分を!!」

 

 

「あなたのお節介を!!」

 

「あんたの人助けを!!」

 

「今日は、私たちが!!」

 

 

緒川、朔也、あおい、詩織、弓美、創世の声が聞こえる。

 

 

「己の強さを、信じなさい!!」

 

「信じる心が、君に光をもたらす!!」

 

変身を解いた啓介、大牙の声が聞こえる。

 

 

 

「屈するな立花!!お前が構えた胸の覚悟を、私に見せてくれ!!」

 

「お前を信じ、お前に全部賭けてんだ!!お前が自分を信じなくてどうすんだよ!!」

 

「君の強さは、心の強さ!それは聖遺物にも屈しない、君だけの力!!」

 

 

翼、クリス、直人の声が聞こえる。三人は響のデュランダルを握る手に自分の手を重ね合わせ、響を支える。

 

 

「頑張れ響!キバって行けぇ!!」

 

「響さん!テンションフォルテッシモですよ!!」

 

 

キバット、タツロットの声が聞こえる。

 

アームズモンスターの三人も、言葉は出さないが、響達を見守っている。

 

 

 

 

「響ぃぃぃぃぃ!!頑張ってぇぇぇぇぇ!!」

 

 

未来の声が聞こえる。

 

 

 

 

(皆の声が聞こえる・・・。今の私は、私だけの力で戦っているんじゃない!

 

私と一緒にいてくれる人達、皆の力を束ね一つとしている)

 

段々と、響を覆う黒い衝動が抜けていく。

 

 

 

(それは、きっと・・・絆。

 

皆の心の音楽を重ね合わせ、共に奏で合う。そうですよね・・・直人さん!)

 

 

闇が広がっていた心の中に、皆の姿が、そして・・・愛しい人(直人)の姿が浮かび上がって・・・。

 

 

(この衝動に!!塗り潰されてなるものかぁぁぁぁぁ!!)

 

 

 

響のその身を覆っていた闇が消え、その背中の光のウィングが大きく広がる。

 

 

完全に制御出来るようになったデュランダル。

最初に覚醒した時以上の光の柱を天に伸ばしている。

 

 

「その力・・・何を束ねたのだ!?」

 

 

「響き合う、皆の歌声がくれた!!」

 

 

 

 

「「「「シンフォギア!!!」」」」

 

 

 

 

"Synchrogazer"

 

 

 

 

四人の声が重なり、振り下ろされたデュランダル。

 

 

 

刀身が龍の頭を切り裂く。

 

 

 

 

 

 

 

「------」

 

 

 

 

 

 

 

 

その言葉では言い表せない位のエネルギーをくらったことで、龍の・・・フィーネの身体に異変が起こる。

 

 

「完全聖遺物同士の対消滅!?」

 

フィーネは異変を・・・対消滅を止めることが出来ず、叫ぶ。

 

 

 

「どうしたネフシュタン!!再生だ!!この身、砕けてなるものかぁぁぁーーーー!!!」

 

 

フィーネの叫び、その内容は叶えられる事なく、赤き竜の体は砕け散った・・・。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー

 

 

 

夕方、ノイズの大量発生及び撃退。

 

そしてフィーネとの決戦によって破壊された街に残された傷は大きい。

 

 

しかし、それら全てを守った戦士達のおかげで、街の地下シェルターに避難した人々への被害はゼロだった。

 

 

 

 

「お前、何を馬鹿なことを・・・」

 

 

リディアン跡地から、響がフィーネの肩を担いで歩いてくる。皆が集まる場所へと。

 

 

「このスクリューボールが・・・」

 

 

それを見ていたクリスと翼は相変わらずと苦笑する。

 

 

 

「皆に言われます。親友からも変わった娘だ~って・・・」

 

 

響は岩場に腰を下ろしたフィーネの背に、そっと語りかける。

 

 

 

「もう終わりにしましょう、了子さん」

 

「私は・・・フィーネだ」

 

「でも、了子さんは了子さんですから」

 

「・・・」

 

 

 

フィーネは腰を上げ、数歩先で立ち止まり、沈んでいく夕日を見る。

 

 

「ノイズを作り出したのは、先史文明期の人間だ。

 

統一言語を失った我々は、手を繋ぐことよりも相手を殺すことを求めた。そんな人間が分かり合えるものか・・・」

 

項垂れたまま言うフィーネ。そして・・・。

 

 

 

 

 

 

 

「だから私は、この道しか選べなかったのだ!!」

 

 

フィーネは瞬時に立ち上がり、叫んだ直後にある物を取りだし、それを自分の胸元に埋め込むように押し付けた。

 

 

皆が驚くなか、フィーネの体に埋め込まれたもの・・・ステンドグラス模様の球体が、フィーネの体にステンドグラス模様を広げていく。

 

 

「了子さん!?いったい何を!」

 

「悪あがきだ!!」

 

 

「悪・・・あがき?」

 

 

「そうだ!・・・万が一にと思って用意していた保険を使うとはな・・・」

 

 

そして、模様が全身に行き渡った瞬間、フィーネの姿が変わった。

 

 

 

その姿は、ファンガイアだった。

 

 

 

ネフシュタンの鎧も合わさっているためか、鎧を装着していたときのフィーネの面影がある。

 

しかし、その姿は完全に「怪人」のそれだった。

 

 

何の生物の性質を現しているかは全くわからない。

ただ、異形の姿になっているにすぎない。

 

 

 

「了子さんが・・・ファンガイアに!?」

 

「ファンガイアの技術を解析している時に作っておいた物だ。ファンガイアの体組織をかき集めて固めた。

 

一時的にだが、私もファンガイアと同じ力が使える!」

 

 

 

 

更に、フィーネはネフシュタンの鎧の鞭を伸ばし・・・。

 

 

 

「はああぁぁぁ!!」

 

 

ネフシュタンの鞭を投擲。ネフシュタンの鞭はそのまま伸び続け、ついには宇宙空間にまで到達。

 

そしてその切っ先が欠けた月の欠片に突き刺さる。すると。

 

 

 

「でりゃああぁぁぁぁ!!!」

 

 

 

フィーネは立っている地面が陥没し、力を込めて鞭を引き切った。

 

 

 

 

「月の欠片を墜とす!!」

 

 

 

その宣言の通り、月の欠片が地球に向かって落下し始めたのだ。

 

 

「私の悲願を邪魔するものはここで纏めて叩いて砕く!

それを止めたいならば、私を倒して月の欠片の落下を阻止して見せろ!!」

 

高々に叫びだすフィーネ。皆が焦りの表情になるなか、直人は一歩ずつ歩き、フィーネと相対する。

 

 

 

「響ちゃん、皆!ここは任せて!」

 

「・・・っ!直人さん、お願いします!了子さんを、止めてください!」

 

「もちろん」

 

 

直人に後を託し、響は翼達のいるところまで離れた。

 

 

皆が見守るなか、両者は向かい合っている。

 

 

 

「やはりお前か」

 

「了子さん、あなたはやり過ぎました。その罪は、重い。だからこそ、裁かねばならない」

 

 

「裁けるものなら、裁いてみろ!王よ!!」

 

 

力をたぎらせるフィーネ。静かに力を溜める直人。そして・・・。

 

 

 

 

「キバット!!」

 

「キバって行くぜ!!」

 

 

 

 

 

「変身っ!!」

 

キバに変身した直人。

 

 

 

「裁きの刻だ!!」

 

 

 

宣言の直後に両者は走り・・・。

 

 

 

キバとフィーネが拳を交えた。

 

 

 

 

 

 

ぶつかり合う拳から衝撃が発生し、それが力の強さを物語る。

 

誰もが固唾を飲んで見守るなか、両者の戦いは続いていく。

 

 

フィーネが拳を振るう度に、キバはそれをかわし、受け流して的確にカウンターを当てていく。

 

その力も上がっており、通常形態であるのに今まで以上の力を発揮し、パンチを当てる度に衝撃が音と共に発生していく。

 

 

 

XDに至ったシンフォギアを纏ったままキバに変身したことにより、キバのスペックが底上げされている状態だからである。

 

 

 

「ハァッ!」

 

フィーネが手から光弾を放つが、キバは腕を一振りするだけで弾く。光弾は明後日の方向へ飛んでいき、地面に落ちて爆発した。

 

 

ならば、とネフシュタンの鎧の鞭を伸ばし、一気にキバを貫こうとするが、キバは当たる寸前で掴んで止めてしまう。

 

 

更に、力を込めて引っ張り、フィーネを自分の方に引き寄せて渾身のキックを浮き出ている球体に当てた。

 

「がぁ!!」

 

短く悲鳴を上げて吹っ飛ぶフィーネ。

更に、球体に少しだけだが、ヒビも入った。

 

 

「タツロット!」

「テンションフォルテッシモ!!」

 

 

キバはエンペラーフォームになり、一気に決着をつけるために動き出す。

 

 

両方の拳に紅色の魔皇力を集中。可視化しているほどの高密度のエネルギーを纏い、走って一気にフィーネに接近。

 

 

その速さに対応出来なかったフィーネはキバが懐に入ることを許してしまう。

 

 

そして、キバが連続パンチに加えて時折回し蹴りを加えての怒濤のラッシュを叩き込む。

 

 

見るものを圧倒するほどのその迫力と威力に、誰もが目を離せない。

 

 

キバの怒濤の連続攻撃によって、球体のヒビもどんどん大きく広がっていく。

 

最後にアッパーをくらい、放物線を描いて地面に倒れるフィーネ。

 

 

 

「ぐっ・・・がはっ!」

痛みで苦しむ。

 

フィーネはファンガイアの力を使えば勝てる、そう見込んでいた。

 

しかし、翼達との戦いでフィーネはかなりのダメージを負っており、それがフィーネがファンガイアの力を使って戦う上での枷になってしまっていた。

 

 

万全の状態ならばともかく、フィーネは手負いである上、キバはXDモードのシンフォギアの力にキバの力がプラスされた状態。

 

差の大きさはかなりの物であった。

 

 

 

 

「貴様・・・先程からこの球体のみに攻撃を集中させているな・・・」

 

「あなたを殺すためではなく、止めるための戦いですから」

 

 

フィーネの言う通り、キバは変身して戦っている間、攻撃の全てを核である球体に一点集中していた。

 

フィーネを、ファンガイアの力から解放するために。

 

 

そして、キバは最後の仕上げに入る。タツロットの背中のスロットを回す。

 

 

「WAKE UP FEVER!!」

 

 

キバの両足に多くの魔皇力が集中し、エンペラームーンブレイクを発動。

 

力の全てを右足に集中させた。

 

 

高くジャンプし、右足を前に突き出して、キバの紋章と共に最大のキックを繰り出した!

 

 

「ぎゃあああああああ!!」

 

 

エンペラームーンブレイクはフィーネの胸元の球体に寸分の狂いもなく命中。

 

キバがフィーネの背後に着地すると共に、球体が破裂。

そして、フィーネの体のステンドグラス模様の体組織も連鎖爆発のように次々と壊れていき、対に元のフィーネに戻った。

 

 

 

 

 

膝をつき、項垂れるフィーネは、もはや抵抗する力を失っていた。

 

変身を解いた直人はゆっくりとフィーネに近づく。

 

響達シンフォギア奏者も一緒に。

 

 

 

「私の悲願を邪魔しても無駄だ。この身はここで果てようと、魂までは絶えやしないのだからな。

 

聖遺物の発するアウフヴァッヘン波形がある限り、私は何度だって世界に甦る。

 

どこかの場所、いつかの時代、今度こそ世界を束ねるために・・・。

 

そうだ、そうに決まっている!!」

 

 

立ち上がり、声を大きくして叫ぶ。

 

 

 

「私は永遠の刹那に存在し続ける巫女、フィーネなのだ!!」

 

 

その叫びに答えたのは、胸元に軽く当てられた響の拳だった。

 

 

 

 

「うん・・・そうですよね。どこかの場所、いつかの時代。

甦るたびに何度でも、私の代わりに皆に伝えてください。

 

世界を一つにするのに、力なんて必要ないってこと・・・言葉を超えて、私たちは一つになれるってことを。

 

私たちは未来にきっと手を繋げられるということ!私には伝えられないから・・・了子さんにしか、出来ないことだから」

 

 

「了子さんに未来を託すためにも、私が今を守ってみせますね!!」

 

 

 

響の決意を聞いた、フィーネは彼女らしくない呆れ交じりの溜息を吐き・・・

 

 

 

「本当にもう、放っておけない子なんだから・・・」

 

 

 

 

穏やかな、櫻井了子としての優しい顔で響を見る。

 

 

「胸の歌を、信じなさい」

 

 

フィーネこと、櫻井了子は塵となって消えた。

 

 

弦十郎達二課のメンバーはその光景に涙ぐみ、または流す。

 

理由はどうあれ、自分を助けてくれたフィーネの最期を見届けたクリスは、誰よりも多くの涙を流していた。

 

 

 

 

 

その後、朔也が端末によって導き出した結果が出た。

 

 

「軌道計算、出ました。直撃は・・・避けられません・・・!」

 

 

 

地球から引っ張られたその月の欠片はその根元である地球に向かってくるのは当然。

 

 

全員が徐々に地球に向かって落ちてくる月の欠片を見上げる。

 

 

 

そんな中、ただ一人・・・響は月に向かって歩いていく。

 

 

 

 

「響・・・」

 

 

 

響を呼び止める未来。

 

 

 

 

「なんとかする!ちょーっと行ってくるから。生きるの諦めないで!」

 

「え・・・?」

 

 

響は背を向け、走り出し・・・落下してくる月の欠片へ向かって、飛んでいった。

 

 

 

 

 

 

空を超え、成層圏を超え、大気圏を超えて、ついに宇宙へ。

 

 

 

響は己の死を覚悟の上で歌っていた。

心の中に心残りがたくさんあっても・・・。

 

その時・・・。

 

 

 

 

『そんなにヒーローになりたいのか?』

 

『えっ!?』

 

 

『こんな大舞台で挽歌を歌うことになるとはな・・・立花には驚かされっぱなしだ!』

 

『宇宙で歌う、か。これは滅多に出来ない経験だよ!』

 

『クリスちゃん!?翼さん、直人さんも・・・!』

 

 

 

クリス、翼、直人が追いかけてきていたのだ。

 

 

『でもまあ、一生分の歌を歌うにゃ丁度いいんじゃねぇのか?』

 

『それに、立花に良いところを独り占めさせるわけにはいかなかったからな』

 

『さぁ、行こう。今度は、四人で』

 

『・・・はいっ!』

 

 

そして四人は手を繋ぐ。

手を繋ぎ、四人で奏で合い、歌い合う。

 

 

 

『それでも私は、立花や雪音、直人ともっと歌いたかった』

 

『ごめんなさい・・・』

 

『バーカ!こういう時は、そうじゃねぇだろ?』

 

『こういう時は、ね』

 

 

 

 

 

『ありがとう!』

 

 

 

 

 

四人はより一層スピードを上げ、月の欠片に向かっていく。

 

 

 

 

『解放全開!行っちゃえ、ハートの全部で!』

 

迫り来る月の欠片へ向かって、怖れなく突き進む。

 

 

 

『皆が夢を叶えられないのは、わかっている。

だけど、夢を叶えるための未来は等しくなきゃいけないんだ!』

 

 

『命は尽きて終わりじゃない。尽きた命が残したものを受け継ぎ、次代に託していくことこそが人の営み。

だからこそ剣が守る意味がある』

 

 

『異なる価値観を持つ者達が共に生きる。

それは即ち、手を繋ぎ、お互いを思い合って一歩ずつ共に歩んでいく事だ』

 

 

『例え声が嗄れたって、この胸の歌だけは絶やさない!

夜明けを告げる鐘の音奏で、鳴り響き渡れ!!』

 

 

 

 

「これが私たちの!!絶唱だぁぁぁぁぁーーーー!!!」

 

四人のアームドギアが、絶唱によって最大以上の力を発揮する。

 

 

 

 

翼の刀が、天ノ逆鱗の時以上の大きさとなり。

 

クリスのギアの背後に、何百発というミサイルが形成され。

 

響の両腕ユニットが巨大化し、脚部に装備されたバンパーも一緒に、通常の何倍もの長さに引き伸ばされる。

 

直人の剣も翼と同じく巨大になった。更に魔皇力を注ぎ、刀身にキバの紋章が浮き出た。

 

 

四人の力を一つにして、月の欠片へ攻撃。

月の欠片はバラバラになり、そして・・・。

 

 

 

 

地上では、破壊された月の欠片が光を纏って降り注いだ。

その光景は、たくさんの流れ星が降り注いでいるかのようで。

 

 

未来は「一緒に流れ星を見よう」という響との約束を思い出していた。

 

でも、その響は・・・。

 

 

未来は泣いた、泣き続けた。いない大切な友の事を思いながら。

 

 

 

 

 

------

 

 

三週間後。

 

響達は「作戦行動中の行方不明」から「死亡扱い」になり、捜索は打ち切られることになった。

 

未来は名前のない墓にお参りへ向かっており、その帰り道でノイズが発生して人を襲っている現場に遭遇。

 

 

襲われていた人を連れて逃げるも、途中で襲われていた人が倒れてしまい、気を失ってしまう。

 

未来はその人を庇うように前に出る。

 

ノイズが襲いかかろうとしたその時、強烈な一撃によって全てのノイズが炭になって消えた。

 

 

その攻撃を放った者は、道の先、上の上り坂の上にいた。

 

 

 

四つの光が弾けて、その人物達が姿を現した。

 

 

紅 直人、風鳴 翼、雪音 クリス。そして・・・。

 

 

 

「ゴメン・・・いろいろ機密を守らなくちゃいけなくて。未来にはまた、本当の事が言えなかったんだ。

 

でも、この言葉は、ちゃんと言おうって決めてたんだ」

 

 

 

 

「未来、ただいま!!」

 

 

 

立花 響だった。

 

 

 

泣きながら響に抱きつく未来。この涙は悲しみではなく、喜びの涙だった。

 

 

 

 

 

 

 

ノイズの脅威は尽きることなく、人の闘争は終わることなく続いている。

 

人間との共存に反対するファンガイアは、人を襲い続けている事も変わらず。

 

いまだ危機は満ち溢れ、悲しみの連鎖は留まることを知らない。

 

 

だが、それでも彼ら彼女らは俯かない、諦めない。

 

 

 

何故ならこの世界には・・・

 

 

歌があるのだから!




次回予告



第一章 最終話 告げられる想い、新たな予感


Wake up。運命の鎖を、解き放て。



次回で、第一章・・・つまり、アニメ一期の話が終わります。

二期以降の話も書きます。これで終わりではありませんよ!


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