「忌々しい限りだっ!!」
フィーネはカ・ディンギルを破壊されたことに対する苛立ちを叫んでいた。
だが叫んだところで、破壊されたカ・ディンギルはもう瓦礫の山と化しており、元に戻ることは無い。
故に更に苛立つという、負の連鎖に入っていた。
「月の破壊は"バラルの呪詛"を解くと同時に重力崩壊を引き起こす!
惑星規模の天変地異に人類はもちろん、全ての魔族が恐怖し、狼狽え、そして聖遺物の力を振るう私のもとに帰順するはずであった!!」
そしてフィーネは、直人達を睨む。
「痛みだけが、人の心を繋ぐ絆!!たった一つの真実なのに!!
それを・・・お前たちはっ!!」
「知らねぇよ」
クリスが遮るように言う。
「それって、要するに自分がこの世界の支配者になるって事だろうが。
恐らく、共存反対派すらも自分の管轄下に置いて利用しようとか考えてるだろ。
下らねぇ!支配された世界で、夢も希望もなく言うこと聞きながら暮らすなんて、そんなの生きるとは言わねぇ!」
クリスは宣言する。
「人は、夢を持って、未来へ向かって一歩ずつ進んでいく!それを邪魔する権利は、お前にも・・・誰にも無い!!」
続いて、翼も。
「人も、人ならざる者もこの世界に生を受け、今を一生懸命生きている!
恐怖による支配で出来た世界など、生きとし生ける者達を否定し、侮辱する事に他ならない!
私の剣を持って、その悪意を絶ち切ってくれる!!」
「黙れ!この世界は悪意あるもので溢れている!バラルの呪詛を打ち消し統一言語を取り戻し、混乱極まる世界を迅速に納める。
力を持ってすればそれが可能だと言うことがなぜわからん!手を取り合う等、綺麗事でしかない!」
響も言う。
「人間も、ファンガイアも。意思を持って、夢を持って生きています。
例え、それが悪意あるものだとしても。でも、悪意あってもわかり合う事はできます。
偽善、理想論、綺麗事・・・そうであっても、手を取り合う事を諦めません!諦めずに、共に生きられるように!」
「手を繋いで、一緒に!」
フィーネは少女達の強い意思に気圧され、少し後ずさる。
しかし、すぐに睨みを強め、指を鳴らす。
すると、ファンガイアが一体現れる。
このファンガイアは、フィーネの支配下に置かれている。
フィーネがファンガイアに直人達に襲いかかるように命じようとした直後・・・。
《イ・ク・サ・カ・リ・バ・ー・ラ・イ・ズ・ア・ッ・プ》
「邪気退散!」
イクサリオンに乗ってやってきたイクサ・・・名護 啓介はイクサリオンからジャンプして飛び下り、イクサジャッジメントを発動し、ファンガイアを一刀両断した。
「イクサ・・・か」
「貴様が足止めとして放った再生態達は全て倒した!」
イクサはフィーネに向かって斬りかかる。フィーネは鞭で防ぐが、イクサはイクサカリバーを手放し、フィーネの顔をぶん殴った。
「がっ・・・」
「お前の策略によって散った者の分の怒りだ!」
「っ!」
殴った直後の一瞬の隙をついてフィーネが鞭を伸ばして槍のように突く。
吹っ飛ぶイクサ。倒れたところで変身が解ける。
「啓介さん!」
「問題ない!イクササイズで鍛えているからな!」
自力で立ち上がる啓介。本当に大丈夫らしい。
(((イクササイズって何!?)))
翼と響とクリスは内心で突っ込む。
「・・・閃紅の魔皇、貴様は何を考える。何を持って戦う」
「僕はこう思う。僕は今まで共存反対派と戦ってきたけど、結局それは力で無理矢理従わせようとしているだけ。
そういう意味では、僕はあなたと同じだ」
フィーネを真っ直ぐ見つめ、直人は続きを口にする。
「それは、消えない罪だ。共存を唱えた者として、否定してはならない罪。
この罪を背負って前に進み、未来を切り開く!」
「罪を背負って?それは罪から目をそらすための戯れ言でしかない!己の正義を押し付ける人のエゴでしかない!」
この言葉には、啓介が反論した。
「お前は、その発言がブーメランだという事がわからないか?」
「何!?」
「貴様も、己が支配しようとしている。支配とは即ち、己のルール、正義を強制し押し付ける行為だ」
「・・・っ!」
「お前は、直人君に会う前の俺と同じだ。俺もかつては、自分の考える事が・・・自分の正義こそが絶対に正しいと思い込んでいた。
その為、その正義を押し付けていた。俺は正しい、正しくない等あり得ない・・・と」
過去の自分を思いだし、思わず苦笑してしまいながらも、己の考えを言う。
「自らの正義を無理矢理押し付けることは、悪と変わらない!我々はその事を認め、その上で守るために戦い続けている。
お前のように、悪と自覚せず己の考えを押し付けるだけではない!!」
大牙も参加する。
「お前も王になろうと言うのならば、お前は王失格だ。
王としての責任を持たずにただ従わせようとする。
皆の言う通り、お前は悪だ。間違っている。だからこそ、裁かなければならない」
響が、結論を述べていく。
「私たちが戦うのは、一つでも多くの命を救いたいから。
世界中の、全ての人を・・・とは言えない。でも、自分の手の届く所にいる人だけでも救いたいから!
そして、異なる存在同士のものでも手を繋いで、共に生きられる未来を作る!!」
その時、響達の言葉に・・・決意に答えるかのように、とある歌が響き渡る。
「・・・?耳障りな・・・何が聴こえている?」
聞こえてくる歌は、破壊されたリディアン校舎に備え付けられていたスピーカーから流れていた。
「何だこれは!!」
「暖かい歌・・・!」
その歌を紡ぐのは、未来、創世、弓美、詩織を始めとするリディアンの生徒たち。
それを直に聞いている弦十郎達二課の隊員たちや、避難していた人達には、美しい歌に聞こえ、その歌に聞き惚れる。
歌は、シンフォギア奏者達の耳に、心に確かに届いた。
そして、歌う者達の気持ちも確かに届いた。
その歌・・・リディアン音学院の校歌が歌い終わる。
そして・・・・・・。
周囲に光の粒子が浮かび上がる。
「どこから聴こえてくる・・・この不快な、歌・・・歌だと!?」
登り、降り注ぐ朝日のもと、奏者達がより一層輝きを増し・・・。
「私を支えてくれてるみんなは、いつだって傍に・・・。
皆が歌ってるんだ。だから、まだ歌える・・・頑張れる!戦える!!」
「まだ戦えるだと!?何を支えに立ち上がる!?何を握って力と変える!?
鳴り渡るこの不快な歌の仕業か!?
そうだ!お前たちが纏っているものは何だ!?何を纏っている!?
それは私が作ったものか!?お前たちが纏うそれは何だ!?何なのだ!!?」
四つの光の柱が空へと伸びる。
そして、四人の少年少女が空へと上がる。
後に語られる名を持って。
絶刀・天羽々斬を纏いし少女、『
魔弓・イチイバルを纏いし少女、『
撃槍・ガングニールを纏いし少女、『
神剣・天叢雲剣を纏いし少年、『
彼ら彼女らが纏いし、その鎧の名は。
「シンフォギアアアァァァァァーーーーーーー!!!」
シンフォギアの限定解除形態。全体的に己の色に加えて白も加わる。
翼が蒼と白。響が橙と白。クリスが赤と白。直人は紅と白。
そして、各々の色が反映された光の羽を広げ、空を飛ぶ。
この姿こそ、奏者達が至ったシンフォギアの進化した姿。
歌に込められた思いと祈りを受け、高レベルのフォニックゲインを持って進化したシンフォギア。
シンフォギア
次回予告
『やっさいもっさい!』
「・・・龍」
「まだだっ!」
第十八話 強き歌、魔女との決戦
Wake up!運命の鎖を、解き放て!
天叢雲剣のパーソナルカラーを、白色から紅色に変更しました。
次回から、一期最終話に入ります。
奏者はもちろん、ライダーも活躍させます。