長くなってしまいましたが、頑張って書きました!
それと、シンフォギア四期のタイトルと放送月が判明しましたね。今からすごく楽しみです!
翼の復帰ライブから十日後。
この日、奏者達に大きな戦いが訪れる。
そして、ひとつの終止符をうつことになる。
直人は今、キャッスルドランの内部にある図書庫にいた。
歴代のキングを含む古代のファンガイア達が残した、あらゆる本が残っている。
それは物語であったり、研究資料だったり、設計図だったり。
超が何個も付くほど貴重な物ばかりであり、専門家が見たら卒倒すること間違いなしである。
直人は東京に戻ってきてから、たまにここを利用する事がある。
テーブルの上に数冊の本が置かれている。
その内の一冊を、直人は読んでいた。
ある程度読み終わった時、扉が開いて四人の人物が入ってきた。
次狼、ラモン、力。アームズモンスターの三人と、登 大牙。計四人が入ってきた。
「直人、差し入れだ」
「いや~、外は美味しいもので一杯だよね」
「さっそく、たべる」
次狼からお菓子やジュースの入った袋を受けとる直人。
中身は昔ながらの駄菓子や一口サイズの甘味等が入っている。
アームズモンスターの三人は少し離れた席に座って食べ始める。
本来であれば、図書室で飲食はダメなはずだが、ここでは本を汚さない限りはOKとなっている。(始まりはキバットから)
大牙は直人の対面席に座る。
「一緒にいいか?」
「もちろん!」
直人は本を邪魔にならない所に避けて、二人でお菓子をつまみながら、色んな話をする。
仕事の事や最近の近況に世間話等だ。
「タッちゃん、こういう本どうよ」
「もっと大人な本が良いですね。キバットさんみたいに子供っぽい本は読みませんよ~」
「何だとう!?俺はそんなの読んでないぞ!」
「どうですかね~?」
キバットとタツロットも、持ち帰って読む本をあれこれ吟味している。
本来であれば、図書室で喋りすぎるのはよくないが、ここではうるさくしすぎない範囲であればOKとなっている。(始まりはキバットから)
ある程度喋った所で、大牙は話を代える。
「直人、お前もわかっているだろうが、共存反対派の動きが活性化している。俺は、それが不安でたまらない」
「兄さん・・・」
「反対派は人工物は受け入れないから・・・人間が襲われ続ける事は変わらないだろう」
「・・・そうだね。でも、それでも頑張らないといけない。共存を唱えた者として、途中でその責任を放棄することは許されない」
「直人・・・」
「例え僕達の代で成し遂げる事は出来なくても、次の世代に託す。
今の僕たちに出来るのは、次の世代の為に出来ることをやっておく事・・・かな」
大牙は一瞬驚いたものの、微笑みに代わる。
「・・・・・・強いな、直人。俺よりもずっと」
「僕は強くないよ。もしそう見えるとしたら・・・皆のお陰かな」
「・・・そうか」
大牙は感慨深そうにつぶやき、ペットボトルのお茶を一口飲んでから・・・。
「直人」
「ん?」
「お前に、頼みたい事がある」
本題に入った。
大牙の頼みを聞いた直人は・・・。
驚きのあまり、言葉も出ず、手に持っていたペットボトルを床に落としてしまった。
同時刻。この日、特異災害機動部二課の面々はクリスから提供された情報を元に、フィーネが使用していたアジトに来ていた。
そこには、司令官である風鳴 弦十郎も一緒だった。
しかし、そこにはフィーネの姿はなく、あったのは複数の死体だ。
死体は、色を失いガラスのように砕け散る。
正面の機材が置いてあるスペースに、一人の男が椅子に座って弦十郎達を見下ろしていた。
顔にステンドグラスの模様が出ている。ファンガイアだ。
「てめぇらがフィーネの言ってた、政府の人間か?」
「共存反対派のファンガイアか」
ファンガイアと弦十郎の会話が始まる。
「あぁ、フィーネならもういねぇよ。俺はこのアメリカの連中を喰ってただけだ」
「アメリカ・・・」
「しっかし、こいつらは不味かった。あの広木っていう政府のお偉いさんの方が旨かったぜ」
「・・・!?お前が、広木防衛大臣を!?」
「フィーネの頼みだ。あいつは俺達の支援者だから願いを聞いてやった。
政府の人間を喰らうのは初めてだったからワクワクしたぜ」
弦十郎は強い怒りを覚える。二課を、自分達を信頼し様々な事から庇い、護ってくれた恩人を食材のように語るファンガイアに。
ファンガイアは椅子から立ち上がり、弦十郎達を睨み・・・。
「じゃあな」
男は体をファンガイア体に変えた。
ヒグマの性質を持つ、ビーストクラス、グリズリーファンガイアだ。
グリズリーは右腕を振り上げ、思いっきり降り下ろして床を砕く。
その衝撃は凄まじく、弦十郎や回りの者も吹き飛ばされ、屋敷も跡形もなく破壊する。
その少し後。真っ先に起き上がった弦十郎は瓦礫をパンチで吹き飛ばし、付いてきたエージェントの無事を確認。
グリズリーの姿を探すが、もういなくなってしまったらしい。
「・・・」
弦十郎は通信機を取り出して、直人に連絡を入れる。
『はい、直人です』
「直人・・・実はな」
弦十郎は直人に屋敷であった事を説明。直人の意見を聞くために二課へ来るように要請した。
通信が終えた弦十郎は、今は亡き広木防衛大臣を思い、青空を見上げた・・・。
その後。直人は二課に来て、弦十郎と意見交換を行っていた。
そのすぐ後に二課で得た情報と直人の意見を纏めた事を伝えるために、奏者三人に連絡を入れる。
『はい、翼です』
『響です!』
『クリスだ』
モニターに三人の顔が映る。
「君達に報告する。先程、フィーネのアジトに入ったが、そこにフィーネはいなかった。
いたのは、米国政府の人間の遺体だった。ファンガイアにライフエナジーを喰われた状態で発見された」
『・・・確かにフィーネは、米国とも繋がってたな・・・』
『そのファンガイアというのは、フィーネと繋がる共存反対派の者ですね』
「あぁ。フィーネ本人の行方は未だにわからん」
そこまで話したところで、弦十郎はあおいに訪ねる。
「了子君は?」
「まだ出勤していません。朝から何回かコールしているのですが、繋がらなくて・・・」
「そうか・・・」
その時、件の了子が連絡をしてきた。sound only で。
『遥か彼方から電波を受信した了子ちゃんよ!』
「了子君、どうかしたのか?」
『ただの寝坊よ、おまけにゴミも出せなかったし・・・』
「ならばいい。それより聞きたい事がある」
『せっかちねぇ・・・何かしら?』
「"カ・ディンギル"・・・この言葉が意味するものは何だ?」
『カ・ディンギルとは古代シュメールの言葉で"高みの存在"・・・・・・転じて"天を仰ぐほどの塔"を意味しているわね』
「何者かがそんな塔を建造していたとして・・・何故俺たちは見過ごしてきたのだ?」
『そう言われちゃうと・・・そうね、二課の情報網を持ってしても見つけられないように細工をしたのかしら?』
「共存反対派を追っていくと言ったが、ようやく掴んだ敵の尻尾・・・相手の隙にこちらの全力を叩き込むんだ。
フィーネとの最終決戦・・・・・・仕掛けるからには仕損じるな!」
『『『了解!』』』
『ちょっと野暮用を済ませてから、私も急いでそっちに向かうわ』
奏者三人に、了子も通信を閉じる。
「些末なことでも構わん。カ・ディンギルついての情報をかき集めろ」
朔也やあおいを始めとした二課のオペレーター陣がパネルを操作し、カ・ディンギルの情報を探し始める。
「おじさん・・・」
「直人?」
「カ・ディンギルなんですけど、作った者が見つかりにくい細工を施したとしても、存在が判明してからそれなりに時間が経って。
その中で、二課の情報網を駆使しても見つからない。おかしいと思いますよね?」
「あぁ、確かに」
「・・・灯台下暗し、じゃないでしょうか。
そう考えると、"塔"という高くて目立つものが全く見つからない理由に説明がつくと思うのですが」
「・・・・・・そう、だな。直人の言う通りだ。フィーネの正体は・・・やはり彼女か」
「確実にあの人です。そう考えないと、辻褄が合わない」
「・・・・・・俺達の考えが、間違いであって欲しい・・・」
「えぇ・・・」
直人と弦十郎は、フィーネの正体やカ・ディンギルの場所などについて、お互いの考えが一致しているのを確認した。
その時、警報が鳴り響く・・・。
「どうした!!?」
「飛行タイプの超大型ノイズが一度に三体・・・いえ、もう一体出現!合計四体です!」
メインモニターに東京都内の地図が表示され、ノイズを示す大きな赤い光点が現れる。
更にその直後、もう一つ赤い光点が現れた。
合計四つ、四体の大型ノイズの発生を知らせている。
「おじさん、僕も行きます!」
「あぁ、頼んだぞ」
二課を出る直人。弦十郎は心の中に様々な感情が渦巻いているが、気持ちを切り替えてノイズ討伐の為の指示に集中することにした。
東京スカイタワー周辺。
飛行タイプの大型ノイズの四体が集結したスカイタワーに響と翼とクリスが現着。
聖唱を歌い、シンフォギアを・・・ガングニール、天羽々斬、イチイバルを身に纏う。
うち一体はヘリから飛び降りた響の一撃によって粉砕された。
翼が蒼ノ一閃を放つが、大型ノイズよりも下を飛んでいる小型ノイズまでしか倒せない。
響の乗っていたヘリもノイズの攻撃によって大破してしまう。
地上にいるノイズと降ってくるノイズの撃退に尽力する二人。
クリスは空中の敵を撃ち落としていくが、数が多い小型に邪魔されて大型にまで弾丸が届かない。
「空飛ぶノイズ・・・どうすれば!」
「つーか、ちっちぇえの邪魔だ!」
「臆するな立花、雪音。防人が後ずされば、それだけ戦線が後退するということだ!」
「・・・ちっきしょうがぁ!」
クリスが大声を上げた直後、高くジャンプして歌いながら銃弾を乱射していく。
しかし、それはあまり効果が無く、本命に届かない事に変わりはない。
「雪音っ!」
翼はクリスを強引に地上に下ろす。
立ち上がったクリスに、翼は一発のビンタを当てた。
「っ・・・」
「翼さん!?」
「雪音、何を焦っているの?」
「・・・」
「ここ数日のあなたは、単独行動が過ぎる。一人でノイズを倒そうとする事が多い」
「・・・ない」
「・・・?」
「わからないんだよ!!」
叫ぶクリス。目には涙も溜まっている。
「最近になって一人じゃ無くなったから余計に考えちまうんだよ!
直人に頼ってばかりで、自分じゃ力不足で!そんな自分自身に腹が立って・・・!」
「それ、は・・・」
クリスの言葉に何も言い返せない翼。響も同じだった。
「それに、私は今まで一人だったんだ。今更誰かと一緒に組んで戦おうなんて言われて、はいそうですかって出来ねぇよ!」
キッと翼を睨み付けるクリス。
翼はクリスが抱えているものを理解した。
直人に頼ってばかりでいる申し訳なさ。自分では直人の力になれないという無力感。
そして、一人であったが故に協力する事がわからずにいる。
「一緒に戦うなんてどうやるんだ?この間まで殺りあってた者同士がそんなに簡単に出来るわけが・・・っ」
「できるよ!」
響がクリスが言おうとしていた言葉を覆す。
「誰とだって、仲良くなれる!」
そして響は反対の手で翼の手を繋ぐ。
翼とクリスは、今までにない自信に満ち溢れた響の言葉に驚き、言葉が出ない。
「私も直人さんに頼ってばかりで、申し訳ない気持ちで一杯。それは今も変わらないけど・・・クリスちゃん」
響はクリスに言う。
「誰にも頼らない事は、強いって事じゃないと思う」
「え・・・?」
「未来とすれ違った時、直人さんが言ってた。誰にも頼らないっていうのは間違ってるよって。
直人さんも最初から強い訳じゃなかった。たくさんの人と出会って、衝突して、和解して・・・。
その中で、心を通わせた人達と力を合わせて様々な困難を打ち破ってきたんだ。
だから、直人さんの今の強さがあるんだって」
「「・・・!」」
「それと・・・どうして私にはアームドギアが無いんだろう?ってずっと考えてた。いつまでも半人前はイヤだなぁって・・・。
でも、今はそうは思わない。何もこの手に握ってないから・・・こうして手を握り合える」
「仲良くなれるからね」
「ぁ・・・」
「手を繋ぐ事、それも力なんだって思うんです」
響は二人に宣言する。
「他者と手を繋いで、力を合わせて困難に立ち向かう。それが人間が・・・命あるものが生まれ持っている力で、私の思い描くアームドギア!」
響の宣言は、二人の心に確かに届いた。
繋がりを持って、手を繋ぎ合い、共に力を合わせる。
それは、人が生まれ持った可能性であり、力。
翼は響の成長を喜びながら、自らクリスに空いている手を差し出す。
クリスは戸惑いが抜けきれていないものの、自ら手を伸ばし、そっと握った。
微笑む響と翼、照れながらも手を離さないクリス。
今、この三人は確かに繋がっている。
その時、小型ノイズが一気に響達に達に向かってくるが、そのノイズ達は紅い一閃によって全て断ち斬られた。
「「「直人(さん)!」」」
「お待たせ!」
天叢雲剣のシンフォギアを纏った直人が、マシンキバーに乗って参上したのだ。
マシンキバーから降りて、三人を見て、心の音楽を聞いて納得した。
「良かったね、三人共。本当の意味で、わかり合えたんだね」
「立花のおかげよ」
「いえいえ、私なんてまだまだ・・・直人さんも!」
響が招き、翼とクリスが手を差し出す。直人は頷いて二人と手を繋ぐ。
直人を含めて四人全員が揃い、繋がった。
手を繋いだまま、四人は空を飛ぶノイズを倒すための作戦を考える。
「さぁ、あのノイズを何とかしないと!」
「親玉をやらないと、キリが無い・・・」
「だったら私に考えがある。私でなきゃできないことだ。
イチイバルの特性は"長射程広域攻撃"。派手にぶっ放してやる!!」
「まさか、絶唱を?」
「バァカ!!私の命は安物じゃねぇ!」
「ならば、どうやって!?」
「ギアの出力を引き上げつつも放出を抑える。行き場の無くなったエネルギーを臨界まで溜めこみ、一気に解き放ってやる!!」
確かに空を飛ぶノイズに対抗できる戦力を有しているのは、現時点ではクリスだけ。
力を溜めて、更に上昇させて放つその一斉攻撃は空中のノイズを大型も含めてすべて消し去ることができる。
「だが、チャージ中は丸裸も同然。これだけの数を相手にする状況では、危険すぎる」
「そう・・・だけど」
力を引き上げる間は攻撃も出来なければ防御もできない事。ノイズからしてみれば格好の的。
ならば・・・。
「僕達がクリスを守る!!」
「あぁ!」
「もちろんです!」
「・・・あぁ、任せた!」
直人と響と翼が守ってくれる事を信頼し、クリスは歌う。
その歌は今までの攻撃的な歌ではない。
"信じる大切さ"を感じたクリスの意志が現れた、優しい歌になっている。
(誰も繋ぎ繋がる手を持っている・・・。私の戦いは、誰かと手を繋ぐこと!!)
響がクリスに向かってくるノイズを拳とエネルギーの放出で打ち砕いていく。
(例え一人では意志も力も小さくても、集め束ねる事で無限の力になる!)
直人と翼は、二人で手を繋いで空中から向かってくるノイズに向けて技を放つ。
《蒼紅之一閃》
蒼と紅の斬撃が合わさり、二色の斬撃がノイズを一掃する。
(砕いて壊すも、束ねて繋ぐも力。立花らしいアームドギアだ!!)
(響ちゃん、翼、クリス、僕。四つの心の音楽が合わさって奏でられる四重奏。
それを可能にしたのは、響ちゃんの手を繋ぐ想いと力!)
クリスの力が臨界点に達する。
「「「行け!!」」」
三人の言葉に答え、クリスの纏うギアが大きく変形する。
両手に握られたガトリング、腰部から突出したホーミングミサイル発射砲、そして両肩に装備された4発の大型ミサイル。
その全てから全ての弾が、一斉に放たれる!
《MEGA DETH QUARTEL》
ホーミングミサイルからさらに小型の拡散弾が放たれ、小型飛行ノイズを全滅させる。
撃ち漏らしたノイズは両手にあるガトリングで撃ち抜き、大型ミサイルの一つが大型ノイズに直撃。
もう一体にも当たり、そして残った2発も最後の一体に命中し倒される。
空中にいたノイズは全て倒された。
「やったな・・・!」
「ったりめぇだ!!」
「やったー!」
「うん、やった!」
二課からも、全てのノイズの消滅を確認した報告が届く。
四人が喜びあったその時、グリズリーファンガイアが直人に奇襲を仕掛けてきた!
「おらぁ!」
しかし、直人はブラッディローズからの旋律で既にキャッチしており、手に持つアームドギアで一閃してカウンターを喰らわせる。
「ちっ」
着地したグリズリーと直人が睨みあう。
「よぉ、閃紅の魔皇。お前をぶっ飛ばしたくて来たぜ」
「・・・強いな」
直人はグリズリーの持つ強さを一目で見抜いた。
その言葉に、一瞬不安な気持ちが少女達の心によぎる。
「ほぉ、わかるか。俺は反対派の新たな幹部になりてぇんだ。お前を倒せば、一気になれそうだからな!」
「・・・キバット!」
「合点承知の介!キバってキバって、GO-ON!」
直人が右手を顔の高さまで上げて、その手をキバットが噛みアクティブフォースを注入。
出現したベルトにキバットは自分で飛んで、ベルトと一体化する。
「変身・・・」
静かに呟き、それに答えるようにキバに変身する。
グリズリーは余裕のつもりか、自分から仕掛けること無く動かない。キバが攻めてきた所を返り討ちにするつもりなのだろう。
「キバット、これでいくよ」
キバはフエッスルを取り出した。それは、赤く先端に金色のパイプオルガンみたいなのがついている。
「久しぶりにいきますか!」
「うん。いくよ」
「出番だぜ、タツロット!」
キバットがフエッスルを吹き、音色が響く。
「ビュンビュンビュ-ン!」
その瞬間、すぐにタツロットが駆けつける。ルシファーゴールド製の羽でグリズリーを斬りつける。
グリズリーは不意打ちを受けて倒れる。
「え、タツロット?」
「どうも響さん!翼さんとクリスさんもごきげんよう!」
「あ、あぁ・・・」
「つーか、私は家で挨拶済みだろが・・・」
「まぁまぁ」
「何でタツロットを?」
響が首を傾げて訪ねる。アームズモンスターを呼び出すものかと思っていたのだ。翼とクリスも同じ事を考えている。
「あぁ、皆さんには、私の"役割"を話していませんでしたね」
「役割?」
「見ればわかるぜ。それじゃタッちゃん、キバって~!」
「テンションフォルテッシモ!」
タツロットは飛びながら、キバの両肩のカテナを断ち切る。
プレートが開き、そこから金色のコウモリがたくさん溢れ出す。
そして、タツロットがキバの左腕の真紅のとまり木『パワールースト』に収まった。
「変身!」
キバの全身を、黄金の光の蝙蝠が飛び交い、その姿を『本来の姿』に変えていく。
全身に強大な魔皇力の影響で金色に染まったルシファーメタルにより、核爆発の中心地にいても無傷という、信じられない程の強度を持ち、装着者を守る装甲に変わる。
宙、水、地の魔皇石を固定するヘルズマウントは、キバの強大な魔皇力を最大限制御出来るように、右脚から身体の中心部に移動。
顔を覆う仮面は、並のファンガイアでは見ただけで戦意を喪失するとされる、キバ本来の禍々しき、それでいて王としての神々しさを感じさせる面構えに。
キバットも強大な力の影響を受けて、眼が虹色になる。
炎と共に背中に伸びた、血の如き真紅のマントを翻し・・・。
キバの
仮面ライダーキバ、エンペラーフォーム降臨!
(((王・・・)))
翼達に理屈抜きでそう思わせるほどの神々しい姿。
「裁きの刻だ!」
宣言と共に、キバはゆっくりとグリズリーに向かって歩いていく。
「・・・っ!」
先程まで余裕だったグリズリーは、キバの強大な力を感じ余裕を無くしていた。
しかし、このままではらちが開かないと思い、グリズリーは走って一気に距離を詰めて全力のパンチを叩き込む。
キバはノーガードでそれを受ける。しかし・・・。
キバには一切のダメージが無い。
グリズリーは驚き、何度も殴る。しかし、それでもダメージは無い。
キバが通常の状態だったら耐えられなかっただろう。アームズモンスターの力を宿した姿でも長くは持たない。
しかし、エンペラーフォームの防御力は素の状態でも核爆発の中心地でも無傷というほど堅い。
しかも、直人の持つ莫大な魔皇力が供給されることで、更に防御力を高める事が出来る。
黄金の皇の鎧は、悪の前に屈する事はない。
グリズリーのパンチが止まったあと、キバは一言。
「・・・くすぐったい」
「---!」
グリズリーがキバの言葉に激昂しかけた瞬間・・・。
「僕の番だ」
キバは宣言と同時に、グリズリーの腹にパンチを叩き込む。
魔皇力による強化を行わないパンチだが・・・。
そのパンチが当たった瞬間、その衝撃がグリズリーに大ダメージを与える。
「がぁぁぁぁぁっっ!!?」
大きな悲鳴を上げるグリズリー。
更に、キバは左手のパンチを顔に当てて、ふらついたグリズリーに右足のキックを当てる。
「ギィィ・・・」
「フッ・・・」
キバは更に追撃をかけていく。パンチを、キックを、手刀を。
様々な攻撃を繋げていき、グリズリーに反撃の隙を与えない。
「すごい・・・」
響が呟く。実際、それ以外の言葉が全く出てこない。
翼とクリスも、全く同じである。
三人は、キバの圧倒的な力と存在感に見とれていた。
「誉めてくれてありがとう。簡単に説明すると・・・」
キバは翼の隣に着地して、解説を始める。
「この姿は、キバのパワーアップじゃなくて、本当の姿に戻したんだ」
「え、パワーアップじゃないんですか?」
「うん。普段のは、黄金のキバが持つ強大な力で鎧が自壊しないようにリミッターを着けた状態なんだ」
「んで、タッちゃんの協力によって、リミッターを解除しても、俺とタッちゃんによって黄金のキバの力を安全にコントロール出来るようになったってところだ」
「私はキバの本当の力を覚醒させる鍵であり、同時に力をキバットさんと一緒にコントロールする、安全装置みたいな感じですぅ」
「へぇ~!すごいです!」
直人、キバット、タツロットの解説に納得と関心を見せる三人。
グリズリーはその間、ダメージから全く動けなかった。
解説を終えたキバは、グリズリーに止めをさすために、必殺技を発動する。
左腕のタツロットの頭を引っ張ると、体についているルーレットが回り、キバの紋章の模様で揃って止まる。
「WAKE UP FEVER!」
タツロットの声の直後、
キバの両足に多くの魔皇力が集中していく。
更に、空が紅黒い夜になる。
キバはジャンプして、両足揃えたキックを・・・『エンペラームーンブレイク』を発動した!
「ハアァァァァァ!!」
「ガアァァァァァ!!」
キックがグリズリーに直撃。その一撃でグリズリーは限界を超えて、体を破裂させる。
着地すると夜も明ける。
戦いが終わった。キバの圧勝で。
「やった!直人さんすごーい!」
「ありがとう」
「おいおい、俺も活躍しただろ!」
「私も忘れないでくださいよ響さん!」
「やはり、直人は凄いな。でも、追い付けるように・・・肩を並べられるように頑張らないと」
「だな・・・」
勝利後の穏やかな空気。しかしその空気は通信機の着信音、そしてその内容で破られてしまう・・・。
ピリリリリリ!
「はい!」
『響!?学校が・・・リディアンがノイズに襲われて、メチャクチャに-』
ブツっと切れる通信。
電話の相手は未来だった。だがその電話もすぐに途切れた。
響達の帰る場所がノイズによって荒らされ、壊され、そこにいる命を奪われていくというのか・・・。
「皆さん!!」
「聴こえていた!リディアンに戻るぞ!!」
「うん!クリスも一緒に行こう!!」
「お、おう!!」
事態は急変していき、戦いは拡大していく。
次回予告
「了子さん・・・?何言ってるんですか?」
「コレがカ・ディンギルだ!」
「これはヤバイ!」
第十六話 終末の魔女、月の呪縛
Wake up!運命の鎖を、解き放て!
エンペラーフォームが強いですが、スペックの強さや設定を考えると、これぐらいあっていいかな?と思いまして。
闇のキバは、これより強いです。
今後、エンペラーフォームより強い敵が出てくる予定です。
シンフォギア勢もパワーアップ予定です。
バランスが難しいですけど、なるべく崩れすぎないようにしたいです。
次回からいよいよ一期の終盤戦。頑張って書いていきます!