紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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第十四話 蒼き太陽、吼える巨竜

この日、風鳴 翼の復帰後初のコンサートが開幕する。

 

翼の復帰ステージであり、その会場は二年前にツヴァイウィングが歌い、ネフシュタンの鎧の暴走、ノイズの発生があったあの会場だ。

 

 

すでに修復されたその会場で、翼は再び歌うのである。

 

一人で、しかし・・・心に奏の思いを抱いて。

 

 

そんな中、ノイズの発生を感知。

響と直人とクリスの三人で現場へ向かうことになる。

 

翼には、歌という自分の戦いに専念してほしい、という響の意向のもと、知らせなかった。

 

 

現場に到着したとき、そこには多数のノイズがいた。

しかも、ノイズに襲われそうな一般人の存在も確認。

 

 

三人の連携によって、見事にノイズをすべて倒し、一般人を無事に救出出来た。

 

 

 

 

ハズだった。一般人の首に吸命牙が刺さるまでは。

 

 

 

 

一般人の背後からファンガイアが、ライフエナジーを吸命牙で吸っているのだ。

 

直人は急いで引き剥がすために動いたが、間に合わなかった。

 

 

人間は体の色を失い、ガラスのようにバラバラに砕け散ってしまう。

 

 

「「・・・ッ!?」」

 

ライフエナジーを吸われ尽くした人間の末路を初めて見た響とクリスは、ショックを隠せず、体が震えてしまう。

 

 

「・・・・・・」

ライフエナジーを吸ったファンガイアが姿を現した。

 

シマウマの性質を持つ、ゼブラファンガイアだ。

 

 

「・・・キバット!」

「おう!キバるぜ!」

 

「変身!」

 

キバに変身。ゼブラに攻撃を仕掛けていく。

 

ゼブラは無言で高くジャンプし、キバに踵落としを繰り出す。

 

キバは後ろに跳んで避けて、すぐ後ろにあった壁に足をついた瞬間に蹴る。

 

蹴った勢いを合わせて、右手のパンチをゼブラに当てる。

 

 

ゼブラは倒れたものの、すぐに起き上がって反撃に移る。

 

 

 

 

響とクリスは心を持ち直し、キバに加勢しようとした。

 

しかし、それは叶わなかった。

 

 

早く走っていた響の周囲を虹色の炎が囲い、キバとクリスから分断させたのだ。

 

 

まさに、虹色の炎で作られたバトルフィールド。

 

 

 

そのバトルフィールドを作った人物こそ・・・。

 

 

「美穂ちゃん・・・!」

「・・・」

 

浅間 美穂が、炎を上げて姿を表した。響を無言で見つめる。

 

 

「響ちゃん!」

「またあの幹部かよ!?」

 

キバとクリスが助けに向かおうとするが・・・。

 

 

「私は大丈夫です!直人さんは共存反対派のファンガイアを倒してください!クリスちゃんは直人さんのサポートを!」

 

 

響の鋭い声が届く。二人は一瞬考えたが、響の言う通りにすることにした。

 

 

 

「あの時、あんたに殴られた時から・・・あんただけは私の手で倒すって決めた。覚悟しろ、愚かな人間!」

 

 

「美穂ちゃん・・・あなたを止める!」

「やれるもんなら、やってみろ!」

 

 

 

直後、二人の拳が激突した。

 

 

 

 

「あのバカ、大丈夫なのかよ!?それに、こいつ結構強いぞ!」

 

 

「僕は響ちゃんを信じる。それに、助っ人も来てくれた」

 

「は?」

 

「聞こえるんだ。あの人の、心の音楽が」

 

 

直人がそう言った瞬間・・・。

 

 

 

 

《レ・ディ・イ》

 

「変身!」

 

《フィ・ス・ト・オ・ン》

 

 

電子音声とバイクの駆動音と男性の声が聞こえる。

 

イクサに変身した名護 啓介がイクサリオンに乗ったまま変身し、イクサリオンに乗ったまま体当たりを行う。

 

 

ゼブラはジャンプして回避。

イクサはイクサリオンから降りて、イクサカリバーから銃弾を放つ。

 

銃弾が命中し、怯んだ所にキバが殴り、クリスが銃撃をくらわせる。

 

 

「遅くなってすまない。・・・あの炎は」

「今、響ちゃんが戦っています。大丈夫、と言っていました」

 

「・・・そうか」

 

イクサは起き上がったゼブラを見る。

 

 

「このファンガイアは、青空の会でもマークしていた者だ。何人もの人を殺してきた。

 

こいつは俺にやらせてくれ」

 

「おいおい、あんた大丈夫かよ!?」

 

 

「問題ない・・・見せてやろう、イクサの更なる力を!」

 

 

イクサは宣言した直後、右手を口元へと持っていく。

すると、口元のパーツが折り畳み式の携帯電話「イクサライザー」に変わった。

 

 

1・9・3と数字を入力し、通話ボタンを押す。

 

 

《ラ・イ・ジ・ン・グ》

 

 

電子音声の後、胸部装甲が弾け飛び、システムのプロテクトが外される。

体の色も青くなり、頭のホーンも形を代えた。

 

イクサライザに青いフエッスル「ライザーフエッスル」を入れて、変身を完了した。

 

 

 

仮面ライダーライジングイクサ。

 

 

悪を砕き弱きを救う、蒼き太陽!

 

 

「その命、神に返しなさい!」

イクサは宣言したと同時、イクサライザーから強力なエネルギー弾を放つ。

 

直撃したゼブラはヤバい、と思い避難しようとしたが、クリスの放つ弾によって宙に浮く。

 

 

「・・・っ!?」

 

「~~~♪」

 

《MEGA DETH PARTY》

 

浮いたゼブラに、クリスは歌いながら腰部アーマーからたくさんの小型ミサイルを一斉に発射する。

 

 

ミサイルを何発も食らい、体から煙を上げて倒れるゼブラ。

 

起き上がろうとしたその時、ゼブラは体が動かなくなった事を自覚した。

 

 

体の左半身が、凍って地面とくっついているからだ。

 

凍らせたのはイクサだ。

 

 

イクサライザーの機能のひとつ、ブリザードモードを使い冷気を発射、ゼブラを凍らせて動きを封じたのだ。

 

 

動けないゼブラに、キバが魔皇力を集中させたパンチを叩き込む。

 

その威力は大きく、氷は全て砕け散り、ゼブラに大きなダメージを与える。

 

 

「トドメは俺にやらせてくれ」

 

イクサはイクサライザーからフエッスルを抜き取り、ベルトに入れて読み込ませる。

 

 

電子音声は出なかった変わりに短めのメロディが鳴り、イクサライザーにエネルギーが溜まっていく。

 

充分に溜まった所で引き金を引き、強烈な砲撃を・・・「ファイナルライジングブラスト」をゼブラに当てた。

 

 

その威力は大きく、ゼブラの体は砕ける寸前まで行き、イクサも反動で後ろへ吹っ飛んでしまう。

 

 

しかし、イクサはうまく体を動かし壁を蹴って前に戻り、キックの体制をとる。

 

反動と勢いを利用した強烈なキックによって、ゼブラの体は砕けた。

 

 

「すげー・・・」

「お見事です!」

 

クリスとキバの称賛に、イクサは嬉しそうに答える。

 

 

「俺の遊び心だ」

と・・・。

 

 

その直後、炎のフィールドが消えた。

 

響はボロボロだが、生きていた。

美穂はまた殺せなかった事に、憤りを感じていた。

 

 

「くそっ!」

「美穂ちゃん・・・!」

 

 

「・・・!!」

 

美穂は両手を上げて、魔皇力を貯めて魔術を発動。

 

 

「蘇れ・・・我が同胞の魂よ!」

 

瞬間、複数のライフエナジーの固まりと、砕けたファンガイアの体組織が集結し、大きな形になっていく。

 

 

「まさか!」

「あれを出すのか!」

 

「おいおい!あれって何だよ!?」

「美穂ちゃん!?一体何を・・・」

 

 

美穂は何も言わず、やるべき事を終えた直後にワープして消えた。

 

 

ライフエナジーの固まりと、ファンガイアの体組織が一ヶ所に集中している。

 

 

 

「響ちゃん!大丈夫!?」

 

「ちょっと痛いけど・・・へいき、へっちゃらです!

・・・あれ、名護さんが青い!?」

 

 

「簡単に言うと、イクサがパワーアップした姿だ」

「おぉ!」

 

 

「んなこと言ってる場合か!?形になっていくぞ、あれ!」

 

クリスが言った瞬間、集まっていたライフエナジーと体組織がひとつの形を成した。

 

 

それは、巨大な怪物。ファンガイアと同じく、ステンドグラス状の体組織を持ち、獣のような雄叫びを上げた。

 

 

「な・・・なんですかこれぇぇぇぇぇ!?」

 

「サバト。複数のファンガイアの死体とライフエナジーを組み合わせて作り出される、質量を持った悪霊だよ」

 

 

「こんなデカいのどうすんだよ!?」

 

 

クリスが叫ぶと、キバットがベルトから離れて語り出す。

 

「安心しろ!こういう時の対策も万全だ!

二人とも、戦隊ものだと巨大化した敵にはどうする?」

 

 

「いや、そういうの見ないから」

 

「もちろん、ロボに乗って戦います!」

 

 

『ロボは男のロマンだ!』

 

『司令の仰る通りです!』

『何言ってるんですか』

 

 

キバットの問いに、クリスは興味無さそうに言い、響は元気よく答える。

 

更に、通信越しに弦十郎と朔也も乗っかり、あおいは呆れ気味に言う。

 

更に、他の二課職員の苦笑する声も聞こえる。

 

 

「ま、そういうこった。デカいもんには、デカいもんで対抗ってことだ!直人、あいつを呼ぶぞ!」

 

「OK!」

 

「ならばこちらも」

 

キバとイクサ、二人がフエッスルを取りだし、それぞれのメロディを奏でる。

 

 

「キャッスルドラン!」

《パ・ワ・ー・ド・イ・ク・サ・ー》

 

 

まず、東京都内の高層ビルから、何と龍の首が現れた。

更に周りの窓も捲れていき、体が巨大な洋館となっている巨大な龍が姿を現した。

 

 

キャッスルドラン。

 

 

十三魔族のドラン族をファンガイアが捕らえ、移動拠点用に改造した存在。

 

次狼、ラモン、力の暮らす家でもある。

 

 

羽を羽ばたかせて、キャッスルドランは己を呼んだ主の元に急ぐ。

 

 

 

 

同時、キャッスルドラン内部。

 

 

「キャッスルドランが動いた。どうやら、サバトが出たようだ」

 

「やったね次狼、力!ライフエナジーがいっぱい取れるよ!」

 

「おい、やめろ」

 

 

 

「しかし・・・俺達が喋るのが、久しぶりな気がするなぁ・・・」

 

「僕達を書き忘れていたからじゃない?誰がとは言わないけど」

 

「メタはつげん、やめなさい」

 

 

というやり取りがあった・・・。

 

 

 

同時、都内の一角にある工場のような建物のシャッターが自動で開いた。

 

青空の会が所有する施設から、青空の会が開発したティラノサウルス型巨大重機「パワードイクサー」が自動操縦で発進した。

 

特別緊急車両として超法規的に認可されているパワードイクサーが、赤いランプを点灯させながら現場へと急行していく。

 

 

 

キャッスルドランとパワードイクサーが到着するのに、一分もかからなかった。

 

 

「「でっか~・・・」」

 

到着したキャッスルドランとパワードイクサーを見た響とクリスは、同時に同じ感想を呟いた。

 

「キャッスルドランとパワードイクサー。どちらも僕達の仲間さ」

「そういうことだ。では行くぞ!」

 

イクサはジャンプして、パワードイクサーの操縦席に着地。

椅子に座り、イクサナックルを起動キー兼操縦桿として接続。

 

パワードイクサーのコントロール権がイクサに移行。彼の操縦によって、勇猛果敢にサバトへ挑んでいく。

 

 

「二人とも、僕達も行くよ!」

「きゃっ!?」

「なっ・・・」

 

キバは響とクリスを両脇に抱えてジャンプ(二人とも、顔が赤くなっていた)。キャッスルドランの体の上に着地。

 

 

「わぁ・・・!」

「キャッスルドランは、ファンガイアが十三魔族のドラン族を改造して出来たんだよ」

 

「ファンガイアが・・・」

「どんだけすげぇんだよ・・・」

 

 

そんな会話をしていると、キャッスルドランが雄叫びを上げる。

その雄叫びに答え、小さなキャッスルドラン・・・シュードランが現れる。

 

 

「シューちゃん、カモーン!」

 

キバットが呼ぶと、幼体のシュードランはキャッスルドランと合体。キャッスルドランの抑えられていた本能が覚醒した。

 

 

大きくなった羽を羽ばたかせてパワードイクサーと合流。

体から複数のミサイルを、口からエネルギー弾を放つ。

 

パワードイクサーも、尾にあたる部分に設置されたコンテナの球体状爆弾を口にくわえて、サバトへ向けて放り投げ正確に命中させていく。

 

 

サバトも反撃としてエネルギー弾を放つが、キャッスルドランは飛行したまま、パワードイクサーは機動力の高さを活かして縦横無尽に動き、全てかわした。

 

 

そして、トドメとしてエネルギー弾、ミサイル、爆弾が一斉掃射される。

 

ついにサバトは限界を超えて、倒された。

 

 

ライフエナジーの塊が五つ放出される。キバはまた二人を抱えて今度は着地した。

 

キャッスルドランが三つ、シュードランが二つ食べた。

こうして、キバ達の戦いは終わった。

 

 

 

 

同時刻。翼は歌い終えた後、以前から抱いていた夢をファン達に明かした。

 

海外で歌いたい。世界中の人々に、自分の歌を聞いてほしい・・・。

 

 

 

「世界を舞台に、歌いたい!」

 

 

その夢は、ファンの皆に受け入れられた。

皆が歓声を上げて応援してくれる。

 

 

「皆・・・ありがとう!」

 

 

翼は新たな誓いを立てて、これからも歌い続ける。

 

 

 

 

 

「翼・・・君の心の音楽は、とても綺麗で、美しい音色だよ」

 

直人は翼の心の音楽を明確に聞き取り、ライブが成功したことを知った。

 

 

「これからも歌い続ける翼を、支えていこう。そして、皆が共に生きられるように・・・」

 

 

直人は新たな誓いを立てて、これからも戦い続ける。

 

 




次回予告


「手を繋ぐ。それも、力なんだって思うんです」

「久しぶりにやりますか!」

「テンションフォルテッシモ!」


第十五話 究極覚醒、黄金の皇帝


Wake up!運命の鎖を、解き放て!



次回は、一期の十話の話です。

あのフォームを出すときが来ましたよ!

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