第六話の投稿です。フォームチェンジが初登場です!
響と未来がファンガイアに襲われた事件から三日後。
直人は翼のお見舞いに来ていた。他愛のない話をしながらも、二人は共にいる時間を満喫していた。
「リハビリはどう?進んでる?」
「えぇ。まだちょっと痛いけど・・・順調よ」
「それは良かった。・・・よし、リンゴの皮剥けたよ」
「ありがとう」
翼はリンゴの乗った皿を受け取ろうとしたが、直人はそれを渡さず、爪楊枝にリンゴを刺して翼の口元に持っていく。
「翼、あーん」
「え・・・えぇ!?」
いきなりの「あーん」に、翼は顔を赤くして慌てる。
アーティストで防人と言えど、翼も一人の女の子。好きな男にそういうことをしてもらえる事は、恥ずかしい・・・でも嬉しい。
そんな感じで、慌ててしまう。
「ダメ・・・直人。は・・・恥ずかしいよ・・・・・・」
うつむき、小さな声で反論するが、直人には通じない。
「だーめ。ちゃんと食べておかないと、ね」
直人としても、かわいい翼を見たくて、ついつい意地悪をしてしまう。
やがて翼は意を決して、顔を上げて口を開けてリンゴを食べた。
食べ終えた翼は、小さく呟いた。
「直人は・・・」
「ん?」
「直人はたまに・・・・・・奏以上に意地悪だ・・・」
上目遣いで小さく、可愛らしく言うその姿に、直人もドキドキする。
ちなみに、この現場を様子を見に来たナースに目撃されており、凄く羨ましく思ったそうだ。
同時刻。
響は一人で放課後の町を歩いていた。ちょっとした散歩のつもりだったのだが、ここで1つの出会いを果す事になる。
突然、響の前で一人の女の子が倒れたのだ。黒髪の十歳位の女の子だ。
「だ、大丈夫!?」
響が駆け寄って抱き起こす。女の子は苦しそうに荒い呼吸をしていた。
「待ってて!すぐに―――」
救急車を呼ぼうとしたところで、女の子は響の腕を掴んだ。
女の子は、響を見つめていたが、急に顔にステンドグラスの模様が浮かび上がった。
「ファ、ファンガイア!?」
驚く響に向かって吸命牙を飛ばし―――
「だ・・・・・・だめっ!」
女の子はそう言って、自力で吸命牙を消した。
「はぁ・・・はぁ」
「・・・」
少しの間呆然としていたが、すぐに意を決して女の子を抱えて公園のベンチに寝かせた。
少しして、女の子は落ち着きを取り戻した。
「あ、あの・・・ごめんなさい」
「大丈夫だよ。・・・君も、ファンガイアなの?」
「!?・・・知っているのですか?」
「うん。直人さんに・・・王様から聞いたから」
「
「え?」
「い、いえ。・・・私は、ダメな子です。ライフエナジーを吸いたくて、しょうがないんです」
女の子は
両親と自分は、純血のファンガイアであるという。
自分の両親は共存に賛成しており、共存派に属している。自分も人間と仲良くすることに賛成している。
しかし、ライフエナジーを吸いたいという「本能」が強くなってきて、どんどん苦しくなってきたという。
そんな時、反対派のファンガイアに運悪く出会ってしまい、自分が共存派のファンガイアである事がバレてしまい、追いかけられていたが、何とか逃げられた。
その衝動に苦しんでいた所で、響に出会い、今に至る。
「人間とは仲良くしたい。でも、苦しいの・・・。ライフエナジーを吸いたくて、どんどん強くなって・・・!」
志穂は泣きながら伝えるが、響は志穂をそっと抱き締めた。
「え・・・お、お姉さん・・・?」
「私は、ファンガイアじゃないから、君の苦しみはわからない。でも、志穂ちゃんが優しい子だって言うのはわかる」
「わ、私は・・・人を襲っちゃうかもしれない。それなら私は・・・いなくなったほうが・・・」
「それはダメ!!」
「!」
「自分がいなくなればいいなんて、間違ってる!きっと、人間との共存はできる!だから―」
響が伝えようとしたその時、二人の前に、一人の男が現れた。
「見つけたぞ。共存派の子供」
そいつはサラリーマン風の優男。しかし、纏っている感じは普通ではない。どこか暗いオーラである。
男は響と志穂を見て、サイの性質を持つ、ライノセラスファンガイアとなった。
「共存派に属する者は、皆殺しだ。邪魔するものは、人間でも殺す」
「どうして・・・。こんなに優しい子を」
「下らん。優しかろうが、共存を望む者は我々にとっては全員始末する」
ライノセラスはそう言って、手にエネルギー弾を精製して、響達に向けて投げつけた。
爆発が発生。ライノセラスもこれで二人まとめて始末できたと思った。しかし・・・。
歌が・・・聖唱が歌われ、ガングニールを纏った響が志穂を守っていた。
「・・・・・・歌?」
「大丈夫。志穂ちゃんは私が守る。それに・・・きっと、人と共存できる。だから、生きることを諦めないで!」
「―――!!」
その言葉は、真っ直ぐ・・・そして強く、志穂の心に響いた。
「・・・下らん。本当に・・・・・・!」
ライノセラスは嘲笑い、響にむけて突っ込んで行く。
響はライノセラスに向けて真っ直ぐ突っ込み、右パンチを繰り出す。
ライノセラスはノーガードで受けるが、一族の中でも硬い体を持つライノセラスには何のダメージも無い。
「・・・痛くも痒くも無いが?」
「―――!」
響は連続ラッシュを浴びせる。パンチ、キックを次々と。しかし、やはりノーダメージ。
「弱いな」
そう言って、ライノセラスは響は響を殴った。
「―――っ!?」
ライノセラスは全力を出していない。しかし、響には重い一撃。
「がはっ・・・」
(これが、ファンガイアの攻撃・・・。直人さんは、いつもこんな奴らと戦って・・・)
「さぁ、次はお前だ。一撃で殺してやる」
「―――!」
志穂の方をむき、再びエネルギー弾を精製して志穂に向けて放つが・・・。
響がとっさに抱き締めて庇う。響が代わりに食らってしまう。
「くっ・・・!」
「お・・・お姉さん!?」
「ほぉ。そのつもりなら・・・」
ライノセラスはニヤリと笑うと、志穂を庇っている為抵抗できない響を執拗に攻めていく。
「ハハハ!いつまで持つかなぁ?」
「ぐっ・・・あ・・・」
「やめてぇ!!お姉さん・・・お姉さんを傷つけないで!」
志穂の悲痛の叫びは届かない。ライノセラスは笑いながら響を踏みつけ続ける。
「大、丈夫・・・、だから・・・!」
「さて、次はもっと強くしていくぞ!」
ライノセラスが足に力をためて一気に降り下ろそうとしたその時、マシンキバーがライセノスに体当たりして飛ばした。
直人だ。彼がライノセラスを吹っ飛ばしたのだ。
「響ちゃん!!」
「直人・・・さん」
「キング・・・お姉さんは、私を庇って・・・!」
「大丈夫・・・わかってるよ」
直人は傷ついた響を見て、速く駆けつけられなかった事への後悔が涌き出る。
「大丈夫・・・。平気、へっちゃらです!」
傷だらけでも、それでも笑顔で大丈夫だと答えた。
直人は響と志穂を起こし、後ろへと下がらせた。
「響ちゃん、遅くなってごめん。後は・・・任せて」
直人は今、心に沸き上がる感情のまま、ライセノスに向き合う。
起き上がったライノセラスは・・・
「・・・・・・許さない」
怒りの感情を放つ、直人を見た。
「キバット!」
「おう!キバるぜ!」
キバットも響を傷つけられた怒りのまま、直人の手に噛みつく。
「変身!」
キバに変身して、ライノセラスと戦う。
魔皇力を両腕に集中し、ライノセラスに殴りかかる。
ライノセラスも、今度は手加減無しの全力パンチを浴びせる。
お互い一歩も引かずに殴りあいを続ける。
しかし、パワー、防御力、全てがライノセラスの方が上だ。
次第にキバが追い詰められて・・・
「ふんっ!」
「・・・・・・!」
ライノセラスの右パンチを受けて、キバは倒れてしまう。
「直人さん!?」
「キング・・・!」
悲鳴のように叫ぶ響。今までファンガイアに勝ってきた直人が苦戦している事が信じられなかった。
しかし、キバはライノセラスの猛攻に苦戦を強いられている。
放たれたパンチをかわして、一旦離れて距離を取る。
キバも結構なダメージを受けている。
「直人、アイツ強いぞ!」
「わかってるよ。こういう時は・・・」
「あぁ!力には力だ!」
キバはベルトの右から、紫色のフエッスルを取り出して、キバットに吹かせる。
「ドッガハンマー!」
重い音が響渡り、音色はその者に届く。
同時刻。次狼、ラモン、力の三人はポーカーで遊んでいた。
「フフン、ストレートフラッシュ」
「あぁ、また負けた~。次狼、イカサマしてない?」
「アホか。誇り高い俺がそんな事をするはずがない」
「ほこり、たかい(笑)」
「よろしい、ならば戦争だ!!」
その時、部屋の中にフェッスルの音色が響き渡ると同時に、紫色に光る。
「はぁ、東京での初出勤はお前か。行ってこい」
「いってらっしゃーい」
「・・・いって、きます」
力は自身を真の姿に変える。全身が紫色で大きくゴツイ体をしている。
十三魔族の一つ、フランケン族の姿・・・ドッガだ。
更に、体を彫像態に変えて外へ飛んでいく。
高速でキバの元へ飛んできて、その力を解放してキバと一つになる。
ドッガの形が変わり、拳の様な、大きなハンマーの様な形になる。
それの柄を握ると、キバの両腕と胸元が分厚い装甲で覆われる。そしてドッガの姿とキバが重なり、キバットとキバの眼が紫色に変色する。
これによって、キバはフォームチェンジを完了した。
キバ・ドッガフォーム。パワーと防御力を兼ね備えた、雷の戦士!
「姿が・・・変わった・・・!?」
「・・・フランケン族の力・・・!」
フォームチェンジを初めて見る響は驚き、志穂はその力の正体を一目で見抜いた。
ドッガハンマーを引きずりながらライノセラスへと向かっていく。
ライノセラスは再びパンチのラッシュを喰らわせる。しかし・・・。
「・・・・・・」
「き・・・効いてない・・・だと・・・」
ドッガの装甲の前には、並大抵のパワーではダメージを与えられない。そして、パワーもかなり上がっている。
ただのパンチ一発でライノセラスに大きなダメージを与える。しかも、専用武器であるドッガハンマーを振り回し、ライセノスの体に強烈な打撃を連続で与える。
「これは、今まで襲われた人達の分!」
左右に二発ずつ。
「あの女の子の分!」
体を回転させてのスイングショットを三発。
「そして、響ちゃんの分だぁ!!」
さらにハンマーで突いて持ち上げて一気に上にぶん投げて、落ちてきたところを更にハンマーでぶん殴る。
「がはぁぁぁぁぁ!?」
その破壊力はかなりの物であり、数発でライノセラスの体にダメージが限界寸前までたまる。
「決めようぜ!」
「裁きの刻だ!」
ドッガハンマーの柄をキバットに噛ませて、アクティブフォースを注入して必殺技を発動する。
「ドッガ・バイト!」
ドッガハンマーを地面に刺すと、空が夜になる。そして、ハンマーのレバーを引くと手の部分が開いて一つ目が出現する。
真実の眼・・・トゥルーアイが現れ、そこから魔皇力による紫の波動によって、ライセノスの体は動けなくなる。
その一つ目に睨まれた者は、己の全てを知られ、全てを封じられる。
そして、周囲に紫色の雷が幾つも降り注ぎ、その中でハンマーから大きな拳の形をしたエネルギーの塊が出現。
キバは志穂と響を傷つけた者への裁きを下すため・・・怒りの鉄槌を振り回す。
ハンマーの振りに合わせて拳も動く。
そして遂に、ライノセラスに向けて雷の拳が振り下ろされ、一撃でライノセラスを粉砕した。悲鳴を上げることも出来ず、そのままライフエナジーの塊が空へ上がっていった。
「もう大丈夫」
「はい!」
「キング・・・すごい!」
こうして、ライノセラスとの戦闘は終了。
キバ・ドッガフォーム。非道な輩に雷と拳の制裁を下すその姿は、まさに処刑人である。
その後、志穂の両親と無事に合流。事情を知った両親にたくさんお礼を言われる直人と響。
「本当に、ありがとうございました!娘を守ってくれて!」
「ありがとうございました!」
「いえ、当然の事をしたまでですよ。それに・・・本当にお子様を守ったのは、あの子だから・・・」
少し離れた所にいる響に、志穂は響に近寄って手をそっと握った。
「ん?どうしたの、志穂ちゃん?」
「あのね・・・」
志穂はうつむいていたが、やがて顔を上げて・・・。
「お姉さん・・・私、本能に負けない。共存出来る様に、諦めない!」
「うん・・・頑張って!私も応援するからね」
「うん!それでね、あのね・・・」
志穂は、一番伝えたいことを伝えた。
「励ましてくれて・・・・・・守ってくれて、ありがとう!」
可愛らしく、穏やかで、希望に満ちた笑顔で・・・。
次回予告
「私は、どうしたいんだ・・・?」
「おいしそうな人間だねぇ」
「打ち抜かれる覚悟は、ある?」
第七話 赤い銃士、緑の銃士
Wake・Up! 運命の鎖を、解き放て!
次回もフォームチェンジが出ます。
あのヒロインとの関係が進む・・・?