一生懸命考えて、出来はこんな感じですが、是非ご覧下さい。
風鳴家での戦闘から少し後。
直人は響、弦十朗と一緒に二課に赴いて、愼二、あおい、朔也にもキバやファンガイアの事情を説明。
直人は実際にキバに変身をしてみせた。
皆が受け入れてくれた中、朔也は「かっこいい!!」とハイテンションに直人の変身した姿を褒め称えた。
どうやら、特撮ヒーローのような姿に興奮しているらしい。
しかし、この場に了子はいなかった。
その後。二課の廊下に置かれているソファに一人で座っていた。
今直人が考えているのは、翼のことである。翼が絶唱の後遺症で入院していると聞いてから、やはり心配が止まらない。
「翼・・・大丈夫かな・・・」
この心配が何回目かわからない。しかし、それでも・・・。
「それでね、その時に・・・」
「ハハハ!なんだよそれ、本当か!」
「いや~、響さんの周りは面白いことがたくさんですね!」
三人の話し声が聞こえる。
響とキバットとタツロットである。
響達にはすでにタツロットの事も紹介済みであり、一人と二匹はあっという間に仲良くなっていた。
「あ、直人さん!」
「やぁ・・・」
「どうしたんだよ、直人。・・・ま、大体想像は付くけどな。幼なじみの女の子のことだろ?」
「確か、風鳴 翼さんでしたよね?」
「うん。やっぱり、心配で・・・」
直人の話に、響はその時のことを思い出して、直人に謝りそうになるが、直人はそれに気づいて止める。
「響ちゃんは、何も悪くない。翼はその時に出来る最善の策を取ったんだ。翼はその事を怒ったりなんてしない。
だから、これ以上自分を責めるのは間違っているよ」
「そう・・・でしょうか」
「うん。翼は、優しい女の子だから」
(優・・・しい?)
今まで翼の、歌う場面を除いては尖った一面しか見ていない響は、そこは首をかしげざるを得ない。
「直人さん!」
そこに、新たな人物の声が響く。声の主は緒川だ。なにやら嬉しそうな表情で駆け寄ってくる。
「慎次さん?」
「はぁ・・・っ病院から連絡が入りました。つ、翼さんが・・・意識を取り戻しました!」
「!・・・ほ、本当ですか!?」
「はい、間違いありません。それで、病院に話を通しておきましたので、今からすぐにお見舞いに行けます。・・・・・・行きますよね?」
「もちろん、すぐに行きます!・・・響ちゃん、ごめん。僕、行くよ!」
「大丈夫です、行ってあげてください!」
「ありがとう!」
直人は緒川から病院の場所を聞き、走って病院へ向かっていく。
その必死な姿に、響は無意識に、ほんのわずかな胸の痛みを覚えた・・・。
「いや~、女のために必死になる男の姿って、見ててワクワクするな~」
「ですね~。青春の1ページとなりますね!」
「はぁ、俺も可愛いお嫁さんがほしいぜ」
「キバットさんに出来ますかね~?」
「んだとぉ!?俺だってその気になれば美女の一人や二人くらい・・・!」
「それよりも、直人さんと風鳴さんはお似合いだと思いますか?」
「そーだな。俺は会ったこと無いけど、写真とか見限り、かなりの美少女だから、きっとお似合い―――」
「・・・ねぇ、キバット、タツロット」
「「・・・・・・はい?」」
響が二匹をガシッとつかんで、とてもいい笑顔で話しかける。ただし、目は笑っていない。
「何かね、その手の話をされると、胸がモヤモヤするから、静かにしてほしいな~~~」
「・・・・・・あの、響さん、それってもしかして・・・ヤキモ―」
「ス○ラップ・フィ○トォ!!」
「「ウォーリアー!!」」
二匹は仲良く、乙女の拳によって壁に激突した。
翼 side
これは、夢だ。
私・・・風鳴 翼は、それがすぐにわかった。自分が水の中を漂っているような感覚の中、周りに様々な光景が映っている。
これは、私と直人、二人の出会いから始まっていた・・・。
『弦十朗、この子をお願い・・・』
『任せろ、俺が責任を持って面倒を見る』
叔父様と女性が話している。あの女性は確か、直人のお母さんだったわね・・・。
そんな中、当時の私は、叔父様の背中に隠れていたけど、なぜか小さな男の子・・・直人から目を離せなかった。
そんなとき、突然直人が私に話しかけてきた。私は驚きながらも、何とか話せたのよね。
『えっと・・・こんにちは』
『っ!・・・こ、こんにちは・・・』
それから、少しずつ仲良くなって、私も段々直人に心を開いていったんだ・・・。
一緒に遊んだり、学校の宿題で判らないところを一緒に解いたり。
共にいる中、直人は何度も私を助けてくれた。
吠え止まない飼い犬から、身を挺して守ってくれた。
雷を怖がっていたとき、側にいて「大丈夫だよ」って言って、鳴り止むまで側にいてくれた。
聖遺物起動実験の時、不安だった私の手を握ってくれた。それだけで、不安が消し飛んだな・・・。
同じ時を共に過ごした直人の存在が、私の中でどんどん大きくなって・・・。
胸がドキドキして、苦しくなって、切なくなって、熱くなって・・・。
私の中で、あなたのことを考えない時は無かった。
奏が加わって三人になってから、もっと光り輝く時間を得られて・・・。
防人として戦う中、奏と、直人と共に過ごす時間は最高の時だった。
でも・・・二年前のあの時、コンサート会場で二人を失った時から、私に残ったのは過去の思い出と、絶望と、虚無だけだった。
それからは、ソロ活動と、ノイズとの戦闘だけに集中する様になった。
二人が守り、残してくれた平和を、私が守っていかないと・・・!
そう思い、今まで頑張ってきた。でも、頑張れば頑張るほど、私の心が悲鳴を上げている。
『もう、やだ・・・』
・・・・・・。私は辛い。奏が、直人がいないことが。
『もう、つかれたよ・・・』
心の悲鳴がどんどん大きくなっていく。
その中で、私は気づいた。二年前から私は、二人を失った絶望をごまかすために、目を逸らすために歌っていた、戦っていただけだった・・・と。
私は、こんなに弱かったんだ。でも、私・・・いっぱい頑張ったよ。
『あいたいよ・・・あいたいよ』
「奏・・・私、辛いよ・・・」
こんなに弱気でごめんね・・・。でも、本当に辛いの・・・。このままじゃあ、本当に折れちゃうよ・・・。
「直人・・・会いたいよ・・・」
お願い・・・私の側にいて。私と一緒にいて。
『さびしいよ・・・ひとりはいやだよ』
一人は嫌・・・。もう、限界だよ・・・。
直人・・・・・・あなたに、会いたい。
その時・・・。
「え・・・」
私の手が、暖かい・・・。この温もりは知っている。昔からずっと・・・。
『ほら、いきなよ』
「!?奏!」
奏の声。でも、周りを見ても姿は見えない。
『いい加減、目を覚ませよ。あいつが帰ってきたよ』
あいつ・・・まさか!
『翼・・・ちゃんと伝えるんだよ。自分の、素直な気持ちをね・・・』
その言葉の後、目の前が光り出して・・・
「・・・・・・っ!!」
私はその光りに向かって進む。この先は、きっと・・・!
No side
翼は、自分の意識が戻っていくことが判った。そして、手の温もりもハッキリと伝わってくる。
翼が目を開けて、温もりのする方を見ると・・・・・・。
「翼・・・・・・!」
直人が、翼の右手を優しく握って、涙を流しながらも本当に嬉しそうな笑顔で翼の無事を喜んでいる。
「・・・・・・なお、と?」
「うん、そうだよ。僕だよ」
「本当・・・に?夢じゃ、ないよね?」
「夢じゃ無いよ。僕は、ここにいる」
翼は数秒掛けてようやく判った。直人が、生きている。帰ってきてくれた。こうして、手を握ってくれている。
それが、現実だと言うことを教えてくれている。
「・・・・・・っ!」
「翼!?」
翼は少々無理をして体を起こす。まだ痛がっているみたいなので、直人が支える。
上半身を起こした翼は、真っ直ぐに直人を見て・・・。
涙を、流す。
「・・・して」
「え」
聞き返そうとした瞬間、翼は直人に自ら抱きついた。直人は驚きながらも、そっと抱きしめ返した。
「どうして!どうして急にいなくなったの!?あなたと奏がいなくなって、私、どれだけ辛かったか・・・悲しかったか!!」
「・・・・・・ごめん、ごめんね」
「私、いっぱい頑張ったよ。あなたの分もいっぱい頑張ろうって思って・・・。
でも、悲しかった。一人だけ残されて、一人だけで戦う事が辛かった!」
「うん・・・本当に、ごめんね・・・ごめんなさい」
「・・・・・・会いたかった。会いたかったよ、直人」
「僕もだよ。僕も、翼に会いたかった」
二人は泣きながらも、向かい合う。そして・・・笑顔で・・・。
「ただいま、翼」
「お帰りなさい、直人」
一番言いたかったことをお互いに伝える。そして、もう一度優しく、強く抱きしめ合った。
直人と翼、二人は二年の時を超えて、ようやく再会することができた。
数分後。
「翼、本当に大丈夫?」
「大丈夫よ。もう、ちょっと過保護ね・・・」
「そうか、それは良かった・・・」
「ふふ・・・」
二人は今まで会えなかった分の空白の時間を埋めるように、たくさんのことを話している。
しかし、直人はキバやファンガイアの事は話さなかった。
今は、翼に会えたことを喜び、共にいよう。
今は、それで十分だから。
「翼、ソロ活動は大丈夫?」
「うん・・・そっちは大丈夫。直人はどう?バイオリン、上手くなった?」
「もちろん。翼の体がもっと良くなったら聞かせてあげるからね!」
「そうか・・・なら、頑張らないわけにはいかないな」
二人とも、心からの笑顔になっていた。翼も、年相応の、普通の女の子の様に、柔らかい口調で話している。
(直人・・・すごく大きくなってる。体つきも立派になって・・・そういえば私、そんな直人と抱きしめ合ったのよね・・・暖かくて、優しくて・・・・・・)
「~~~~~~っ!!」
「つ、翼!?どうしたの!?」
「な、何でもない!何でもないの!」
顔を真っ赤にして、それを隠す様にベッドに横になって掛け布団を顔までかぶる翼。
(うぅ・・・恥ずかしいよぉ・・・)
翼は、心も乙女であった。二年という会えない時間が、直人への好意を・・・愛を、大きく、強くしていた。
そんな翼は、掛け布団から顔を少しだけ赤い顔を出して、一言。
「直人・・・えっち」
「どうして!?」
甘酸っぱい、青春の1ページの光景であった。
次回予告
「これより、デュランダル移送計画の説明を行う!」
「あの男、強い・・・!」
「大丈夫、僕を信じて」
第四話 黄金の剣、悲しみの少女
Wake・Up!運命の鎖を、解き放て!。
次回は、あのツンデレヒロインの登場です。
では、次話でお会いしましょう。