紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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直人と翼の、再会の話です。
一生懸命考えて、出来はこんな感じですが、是非ご覧下さい。


第三話 想い合い、再会

風鳴家での戦闘から少し後。

 

 

直人は響、弦十朗と一緒に二課に赴いて、愼二、あおい、朔也にもキバやファンガイアの事情を説明。

 

直人は実際にキバに変身をしてみせた。

 

皆が受け入れてくれた中、朔也は「かっこいい!!」とハイテンションに直人の変身した姿を褒め称えた。

 

 

どうやら、特撮ヒーローのような姿に興奮しているらしい。

 

しかし、この場に了子はいなかった。

 

 

 

 

その後。二課の廊下に置かれているソファに一人で座っていた。

 

今直人が考えているのは、翼のことである。翼が絶唱の後遺症で入院していると聞いてから、やはり心配が止まらない。

 

「翼・・・大丈夫かな・・・」

 

 

この心配が何回目かわからない。しかし、それでも・・・。

 

 

「それでね、その時に・・・」

 

「ハハハ!なんだよそれ、本当か!」

 

「いや~、響さんの周りは面白いことがたくさんですね!」

 

 

三人の話し声が聞こえる。

響とキバットとタツロットである。

 

 

響達にはすでにタツロットの事も紹介済みであり、一人と二匹はあっという間に仲良くなっていた。

 

 

 

「あ、直人さん!」

「やぁ・・・」

 

「どうしたんだよ、直人。・・・ま、大体想像は付くけどな。幼なじみの女の子のことだろ?」

 

「確か、風鳴 翼さんでしたよね?」

 

「うん。やっぱり、心配で・・・」

 

直人の話に、響はその時のことを思い出して、直人に謝りそうになるが、直人はそれに気づいて止める。

 

 

「響ちゃんは、何も悪くない。翼はその時に出来る最善の策を取ったんだ。翼はその事を怒ったりなんてしない。

だから、これ以上自分を責めるのは間違っているよ」

 

「そう・・・でしょうか」

 

「うん。翼は、優しい女の子だから」

 

 

 

(優・・・しい?)

 

今まで翼の、歌う場面を除いては尖った一面しか見ていない響は、そこは首をかしげざるを得ない。

 

 

 

「直人さん!」

 

そこに、新たな人物の声が響く。声の主は緒川だ。なにやら嬉しそうな表情で駆け寄ってくる。

 

「慎次さん?」

 

「はぁ・・・っ病院から連絡が入りました。つ、翼さんが・・・意識を取り戻しました!」

 

 

「!・・・ほ、本当ですか!?」

 

「はい、間違いありません。それで、病院に話を通しておきましたので、今からすぐにお見舞いに行けます。・・・・・・行きますよね?」

 

 

「もちろん、すぐに行きます!・・・響ちゃん、ごめん。僕、行くよ!」

 

「大丈夫です、行ってあげてください!」

 

「ありがとう!」

 

 

直人は緒川から病院の場所を聞き、走って病院へ向かっていく。

 

その必死な姿に、響は無意識に、ほんのわずかな胸の痛みを覚えた・・・。

 

 

 

「いや~、女のために必死になる男の姿って、見ててワクワクするな~」

 

「ですね~。青春の1ページとなりますね!」

 

 

「はぁ、俺も可愛いお嫁さんがほしいぜ」

 

「キバットさんに出来ますかね~?」

「んだとぉ!?俺だってその気になれば美女の一人や二人くらい・・・!」

 

「それよりも、直人さんと風鳴さんはお似合いだと思いますか?」

 

「そーだな。俺は会ったこと無いけど、写真とか見限り、かなりの美少女だから、きっとお似合い―――」

 

 

 

 

「・・・ねぇ、キバット、タツロット」

「「・・・・・・はい?」」

 

 

響が二匹をガシッとつかんで、とてもいい笑顔で話しかける。ただし、目は笑っていない。

 

「何かね、その手の話をされると、胸がモヤモヤするから、静かにしてほしいな~~~」

 

「・・・・・・あの、響さん、それってもしかして・・・ヤキモ―」

 

 

 

 

「ス○ラップ・フィ○トォ!!」

「「ウォーリアー!!」」

 

 

 

二匹は仲良く、乙女の拳によって壁に激突した。

 

 

 

 

 

 

翼 side

 

 

これは、夢だ。

 

私・・・風鳴 翼は、それがすぐにわかった。自分が水の中を漂っているような感覚の中、周りに様々な光景が映っている。

 

これは、私と直人、二人の出会いから始まっていた・・・。

 

『弦十朗、この子をお願い・・・』

『任せろ、俺が責任を持って面倒を見る』

 

叔父様と女性が話している。あの女性は確か、直人のお母さんだったわね・・・。

 

そんな中、当時の私は、叔父様の背中に隠れていたけど、なぜか小さな男の子・・・直人から目を離せなかった。

 

そんなとき、突然直人が私に話しかけてきた。私は驚きながらも、何とか話せたのよね。

 

 

『えっと・・・こんにちは』

『っ!・・・こ、こんにちは・・・』

 

 

それから、少しずつ仲良くなって、私も段々直人に心を開いていったんだ・・・。

 

一緒に遊んだり、学校の宿題で判らないところを一緒に解いたり。

 

共にいる中、直人は何度も私を助けてくれた。

吠え止まない飼い犬から、身を挺して守ってくれた。

 

 

雷を怖がっていたとき、側にいて「大丈夫だよ」って言って、鳴り止むまで側にいてくれた。

 

 

聖遺物起動実験の時、不安だった私の手を握ってくれた。それだけで、不安が消し飛んだな・・・。

 

同じ時を共に過ごした直人の存在が、私の中でどんどん大きくなって・・・。

 

胸がドキドキして、苦しくなって、切なくなって、熱くなって・・・。

 

私の中で、あなたのことを考えない時は無かった。

奏が加わって三人になってから、もっと光り輝く時間を得られて・・・。

 

 

防人として戦う中、奏と、直人と共に過ごす時間は最高の時だった。

 

でも・・・二年前のあの時、コンサート会場で二人を失った時から、私に残ったのは過去の思い出と、絶望と、虚無だけだった。

 

 

それからは、ソロ活動と、ノイズとの戦闘だけに集中する様になった。

 

二人が守り、残してくれた平和を、私が守っていかないと・・・!

 

そう思い、今まで頑張ってきた。でも、頑張れば頑張るほど、私の心が悲鳴を上げている。

 

 

『もう、やだ・・・』

 

 

・・・・・・。私は辛い。奏が、直人がいないことが。

 

 

『もう、つかれたよ・・・』

 

 

 

 

心の悲鳴がどんどん大きくなっていく。

 

 

その中で、私は気づいた。二年前から私は、二人を失った絶望をごまかすために、目を逸らすために歌っていた、戦っていただけだった・・・と。

 

 

私は、こんなに弱かったんだ。でも、私・・・いっぱい頑張ったよ。

 

 

 

『あいたいよ・・・あいたいよ』

「奏・・・私、辛いよ・・・」

 

 

 

こんなに弱気でごめんね・・・。でも、本当に辛いの・・・。このままじゃあ、本当に折れちゃうよ・・・。

 

「直人・・・会いたいよ・・・」

 

 

お願い・・・私の側にいて。私と一緒にいて。

 

 

 

『さびしいよ・・・ひとりはいやだよ』

 

 

一人は嫌・・・。もう、限界だよ・・・。

 

 

直人・・・・・・あなたに、会いたい。

その時・・・。

 

 

「え・・・」

 

私の手が、暖かい・・・。この温もりは知っている。昔からずっと・・・。

 

 

 

 

 

『ほら、いきなよ』

 

「!?奏!」

 

 

 

奏の声。でも、周りを見ても姿は見えない。

 

 

『いい加減、目を覚ませよ。あいつが帰ってきたよ』

 

あいつ・・・まさか!

 

 

『翼・・・ちゃんと伝えるんだよ。自分の、素直な気持ちをね・・・』

 

その言葉の後、目の前が光り出して・・・

 

「・・・・・・っ!!」

 

私はその光りに向かって進む。この先は、きっと・・・!

 

 

 

 

 

 

 

 

No side

 

 

 

 

翼は、自分の意識が戻っていくことが判った。そして、手の温もりもハッキリと伝わってくる。

 

翼が目を開けて、温もりのする方を見ると・・・・・・。

 

 

 

「翼・・・・・・!」

 

 

直人が、翼の右手を優しく握って、涙を流しながらも本当に嬉しそうな笑顔で翼の無事を喜んでいる。

 

 

「・・・・・・なお、と?」

「うん、そうだよ。僕だよ」

 

「本当・・・に?夢じゃ、ないよね?」

「夢じゃ無いよ。僕は、ここにいる」

 

 

翼は数秒掛けてようやく判った。直人が、生きている。帰ってきてくれた。こうして、手を握ってくれている。

それが、現実だと言うことを教えてくれている。

 

 

 

「・・・・・・っ!」

 

「翼!?」

 

 

翼は少々無理をして体を起こす。まだ痛がっているみたいなので、直人が支える。

 

上半身を起こした翼は、真っ直ぐに直人を見て・・・。

 

 

 

 

涙を、流す。

 

 

「・・・して」

「え」

 

聞き返そうとした瞬間、翼は直人に自ら抱きついた。直人は驚きながらも、そっと抱きしめ返した。

 

 

 

「どうして!どうして急にいなくなったの!?あなたと奏がいなくなって、私、どれだけ辛かったか・・・悲しかったか!!」

 

 

「・・・・・・ごめん、ごめんね」

 

「私、いっぱい頑張ったよ。あなたの分もいっぱい頑張ろうって思って・・・。

 

でも、悲しかった。一人だけ残されて、一人だけで戦う事が辛かった!」

 

「うん・・・本当に、ごめんね・・・ごめんなさい」

「・・・・・・会いたかった。会いたかったよ、直人」

 

「僕もだよ。僕も、翼に会いたかった」

 

 

二人は泣きながらも、向かい合う。そして・・・笑顔で・・・。

 

 

 

 

 

「ただいま、翼」

「お帰りなさい、直人」

 

 

 

 

 

一番言いたかったことをお互いに伝える。そして、もう一度優しく、強く抱きしめ合った。

 

 

直人と翼、二人は二年の時を超えて、ようやく再会することができた。

 

 

 

 

 

数分後。

 

 

「翼、本当に大丈夫?」

「大丈夫よ。もう、ちょっと過保護ね・・・」

 

「そうか、それは良かった・・・」

「ふふ・・・」

 

二人は今まで会えなかった分の空白の時間を埋めるように、たくさんのことを話している。

 

しかし、直人はキバやファンガイアの事は話さなかった。

今は、翼に会えたことを喜び、共にいよう。

 

今は、それで十分だから。

 

 

 

「翼、ソロ活動は大丈夫?」

「うん・・・そっちは大丈夫。直人はどう?バイオリン、上手くなった?」

 

 

「もちろん。翼の体がもっと良くなったら聞かせてあげるからね!」

 

「そうか・・・なら、頑張らないわけにはいかないな」

 

 

 

二人とも、心からの笑顔になっていた。翼も、年相応の、普通の女の子の様に、柔らかい口調で話している。

 

 

 

(直人・・・すごく大きくなってる。体つきも立派になって・・・そういえば私、そんな直人と抱きしめ合ったのよね・・・暖かくて、優しくて・・・・・・)

 

 

 

「~~~~~~っ!!」

「つ、翼!?どうしたの!?」

 

「な、何でもない!何でもないの!」

 

 

顔を真っ赤にして、それを隠す様にベッドに横になって掛け布団を顔までかぶる翼。

 

 

(うぅ・・・恥ずかしいよぉ・・・)

 

 

翼は、心も乙女であった。二年という会えない時間が、直人への好意を・・・愛を、大きく、強くしていた。

 

 

 

そんな翼は、掛け布団から顔を少しだけ赤い顔を出して、一言。

 

 

 

「直人・・・えっち」

「どうして!?」

 

 

甘酸っぱい、青春の1ページの光景であった。

 

 




次回予告

「これより、デュランダル移送計画の説明を行う!」

「あの男、強い・・・!」

「大丈夫、僕を信じて」


第四話 黄金の剣、悲しみの少女

Wake・Up!運命の鎖を、解き放て!。


次回は、あのツンデレヒロインの登場です。
では、次話でお会いしましょう。

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