紅牙絶唱シンフォギア ~戦と恋の協奏歌~   作:エルミン

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お待たせしました。第二話です。
あと、少し長いです。


第二話 触れ合う心、王の戦い

一人の男が彷徨っている。一見すると普通の人間だが、顔にステンドグラスの模様が浮かんでおり、その顔は怒りに染まっている。

 

 

 

「クソ・・・共存派の奴らめ・・・人間との共存などという、愚かな考えに毒されやがって・・・」

 

 

二年前から新たな掟となった「共存」。

 

それに伴って、人間からライフエナジーを取ることが最大の禁忌となり、それを行った者は裁かれ、倒される。

 

改心の余地がある者は、ある程度の罰こそあるものの、処刑はされない。

 

しかし、反対派のファンガイアは8割以上が処刑される位にエナジーを奪っている。

 

彼もその一人だ。しかし彼は今、反対派のボスから受けた命令に従ってここに来ている。

 

 

キバを・・・共存の立役者である、紅 直人を倒すために・・・。

 

 

 

 

 

その頃。

 

直人と響は風鳴家の縁側に並んで座っているが、響は浮かない顔をしている。

 

「君のこと、おじさんから聞いているよ。翼の分も、一生懸命頑張ってくれているんだよね。ありがとう」

 

「い、いえ・・・」

 

直人にお礼を言われても、やはり浮かない様子の響だったが、やがて決心したように顔を上げる。そして、立ち上がり直人の前に立った。

 

 

「・・・?立花さん?」

 

「紅さん。私・・・紅さんに、謝らないといけないことがあるんです」

 

 

「え・・・?」

 

「私、心臓にガングニールの欠片が刺さっていて、そのおかげでシンフォギアが使えるんです」

 

「それは、おじさんから聞いているよ」

 

「でも、私・・・奏さんの代わりに戦うって決めたんですけど・・・それで、翼さんを怒らせてしまったんです」

 

「?・・・・・・あぁ、もしかして翼、そんなことを軽々しく言うんじゃ無い!・・・的な感じだった?」

 

直人の言葉でその時のことを思い出したのか、ますます縮こまる。

 

 

「はい・・・。私、翼さんの気持ちを考えないで、自分勝手な事ばかり言っていました。

それで、その・・・奏さんは、紅さんにとっても大切な人だったんですよね?」

 

 

「うん・・・」

 

「だから、その・・・紅さんにまた会えたら、ちゃんと謝ろうって、決めていたんです」

 

響は頭を下げる。

 

 

「大切な仲間である二人の気持ちを考えずに、代わりになるなんて生意気な事を言ってしまって、本当に・・・ごめんなさい!」

 

響の謝罪を受けて、直人は立ち上がり、こんな事を聞いた。

 

「立花さん、顔を上げて?」

「は、はい・・・」

 

響が顔を上げると、直人は微笑んでいた。怒られると思っていた響は、思わずキョトンとしてしまう。

 

 

「今の君は、前を向いて進もうとしている。おじさんに鍛えてもらっているのも、そのためでしょ?」

「・・・はい!」

 

「確かに翼の気持ちを考えなかったのは悪いことだけど、その罪を自覚して、新しい決意を持って戦おうとしているんだよね?」

 

「はい!」

 

「だから、一つ教えて欲しいんだ。今、立花さんはどうしたい?どんな気持ちで戦おうと思っているの?」

 

 

直人の質問に、響は今自分が抱えている決意を、直人にぶつける。

 

 

「私は、守りたい。助けたい。一人でも多く、たった一つでも・・・大切なものをを守るために戦います!受け継いだガングニールと、想いを胸に!」

 

 

 

「奏さんの代わりとしてではなく、『立花 響』として!最後の最後まで、頑張ります!!」

 

 

 

 

響のまっすぐな想い。それは、直人の心にも、大きく響いた。

 

 

「・・・うん、伝わったよ、立花さんの気持ち。それを忘れないで。

でも、一人じゃ限界がある。人は一人だけでは決して強くなれないから」

 

 

直人は知っている。「一人ではない」事が、どんなに心強いことかを。これまでの戦いを通じて、直人はそれを知っている。

 

 

「だから、僕も一緒に戦う。力を合わせて、一緒に頑張ろう!」

 

「はい!よろしくお願いします!」

 

 

響はようやく笑顔になり、直人と握手した。すると、直人は響の腕を引っ張り、優しく抱きしめた。

 

 

「え・・・えぇ!?あ、あのあの!く、紅さん!?」

 

突然抱きしめられ、顔を赤くして慌てる響。でも・・・。

 

 

「ありがとう・・・」

「え・・・?」

 

直人の言葉に、大人しくなる響。どうしてお礼を言うのかと思っていたが、次の言葉に、答えの全てが詰まっていた。

 

 

 

 

 

 

「生きていてくれて・・・・・・生きることを、諦めないでくれて、ありがとう」

 

 

 

 

 

 

「あ・・・・・・!」

 

 

それは、直人と奏が響に言った言葉。響はその言葉を胸に、今まで頑張ってきたのだ。

辛いこともあった。それでも、彼女は諦めなかった。

 

「ありがとう・・・」

「はい・・・・・・はい・・・・・・!!」

 

 

直人の胸元に顔を埋めて、涙を流す響。そして、ありがとうに込められた想いを知った。

 

奏の言葉を守り、生きていてくれた事への感謝の気持ちだ、と。

 

 

二人はしばらくの間、そのまま抱き合ったのであった。

 

 

 

 

しばらく後。二人はすっかり打ち解けており、会話も弾んでいた。

 

お互いを「直人さん」、「響ちゃん」と名前で呼び合えるくらいに。

 

様子を見に来た弦十朗も、二人が仲良くなった事を慶び、笑顔で見守っていた。

 

すると、弦十朗が直人の持ってきたバイオリンケースを持って二人の所へやってきた。

 

「直人。すまないが、良ければお前のバイオリンを聞かせてくれないか?」

「え?」

 

「二年ぶりに、な。いいか?」

「あ、私も聞きたいです!」

 

 

弦十朗の提案に、目を輝かせて賛成する。直人は苦笑しながら、「分かりました」と言って、準備を始める。

 

そして、準備を終え、二人のために直人は音楽を奏でる。

 

 

 

~~~♪

 

 

 

「わぁ・・・!」

 

響は、感嘆の声をもらす。バイオリンに詳しくない響も、直人の奏でる音楽がどれだけすごいかが分かった。

 

極限まで洗練されたその旋律に、響も弦十朗も、心からの感動を覚える。

 

ポン・・・と弦が弾かれる音を最後に、演奏は終わった。

 

「・・・どうでした?」

 

「すごかったぞ、昔より上手くなっている」

 

「・・・すごいです。私・・・バイオリンはよく知らないですけど、直人さんの演奏がすごいということは、分かります!」

 

「最高の褒め言葉、ありがとうございます」

 

 

恭しく一礼する直人。拍手する響。直人の成長を喜ぶ弦十朗。直人を中心に、穏やかな時間が流れる。

 

しかし、その時間は、一人の乱入者によって破られてしまう。

 

突然、直人が表情を険しくして、塀の方を睨むように見る。

響と弦十朗は、突然の直人の豹変に戸惑う。

 

 

しかし、直人には聞こえるのだ。「敵」の出現を知らせる、戦いの旋律が自宅のバイオリンから響き渡っているのだ。

 

 

「おおっ、来たな来たな~!東京に来ての、初仕事だー!」

 

 

その音を聞いて、キバットは窓から外へ飛んでいった。

 

 

 

 

 

そして直人達の前に、一人の男がジャンプして塀を跳び越えて着地した。

 

 

更に、体を怪人の姿に変える。

全身がステンドグラスで出来ているような、馬の怪人。

 

ホースファンガイア。共存に反対する男の真の姿である。

ホースは、正面にいる直人を睨む。

 

 

 

「え・・・えぇぇ!?」

「なっ・・・」

 

初めて見るファンガイアに驚く響と弦十朗だが、ホースは二人を無視して直人の方ばかり見る。

 

 

「見つけたぞ・・・キバ!ここでお前を殺してやる!」

「反対派のファンガイア・・・。僕を殺すつもりかい?」

 

「あぁそうだ!貴様を殺し、人間との共存などと、くだらない掟を壊してやる!」

 

「・・・・・・くだらない、か」

 

「なぜ・・・なぜ人間と共存などしなければならない!?」

 

ホースはありのままの怒りをぶつけるように叫ぶ。

 

 

 

「人間など、我々にとっては、ただの食料だ!食われるだけの家畜だっ!!なのに何で家畜如きと共存などしなければならない!?」

 

「人間は、俺達にライフエナジーを食われるためだけに、生きていればいいんだよぉ!!」

 

 

 

ホースの叫びに、響は段々と怒りが込み上がってくるのを感じる。

 

突然現れた怪人のことは分からないが、人と共に生きる気が無いということは分かった。

 

そして、人を家畜呼ばわりしたことを許せないという気持ちが強くなっていく。

 

 

しかし、誰も何も言えない。なぜなら・・・直人が誰よりも強い殺気を放っているからだ。

 

誰もが言葉を失う。ホースも、その殺気の強さに閉口する。

 

 

 

「・・・・・・そうか。ならば、裁く」

 

低い声で呟く直人は、ホースを強く睨み、宣言した。

 

「もう一人の王として、掟に背きし者に裁きを下す!キバット!」

 

「おう!キバって、行くぜ~~!」

 

直人の呼びかけに答え、キバットが姿を現す。そのまま直人の右手に収まる。

 

 

 

「コ・・・コウモリ?え、コウモリがしゃべってる!?」

 

響と弦十朗は、何が起こるのかを見守ることしか出来ない。

 

直人は自分の左手をキバットにかませる。

 

 

「ガブッ!」

 

 

それによって、直人の体に「アクティブフォース」という力が注ぎ込まれ、ファンガイアと同じステンドグラスの模様が手から顔に向かって走る。

 

 

お腹元に赤く、左右に三つずつ笛が納められているベルトが出現。そして・・・

 

 

 

 

「変身!!」

 

 

 

己を変える言葉を叫び、キバットをベルトに逆さまに付ける。そして、直人の体に鎧が覆われていく。

 

紅く染まった、王の証であるキバの鎧を身に纏い、仮面ライダーキバが降臨した!

 

 

 

「え、えぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!?」

「な・・・!?」

「キバ・・・!」

 

 

三者三様な反応の中、キバは宣告した。

 

 

 

 

「裁きの(とき)だ!!」

 

 

 

宣言し、キバは足に力を溜めて一気に駆け出す。ホースはそれに気づいて対抗しようとしたが・・・

 

ドンッッ!!

 

 

「ガっ・・・!?」

 

ホースでも、その早さに対応出来なかった。勢いのままホースを殴り、さらに蹴りつけてからの回し蹴りでホースをふっとばす。

 

 

 

 

「あ・・・ぐ・・・」

 

 

僅か三発でかなりのダメージを負ったホース。

キバの鎧は、己の体にある「魔皇力」という力をパワーに変換して戦える。

 

しかし、直人が持つ魔皇力は、莫大である。しかも、これまでの戦闘経験も相まって、力強く、それでいて洗練された戦闘を可能としているのだ。

 

 

 

「く・・・なぜ・・・なぜ、他の同胞は、共存を受け入れた?なぜ・・・お前ともう一人のキングは、共存を唱えた!?」

 

 

ホースの叫びに、キバは・・・直人は答えた。

 

 

「・・・出来ると信じたから。成し遂げたいと、心から思ったから。それを現実にするために、僕達はこれからも頑張り続ける」

 

二年の戦いと活動を経て、直人の中で「手を取り合い、共に生きる」。この想いを形にしたいという決意は揺るがないほどに大きく、強くなっていた。

 

 

 

 

「共存が理想論、綺麗事であるのは分かっている。それでも、僕達は諦めない。共に生きられる未来を、決して諦めない!!」

 

 

(すごい・・・。直人さん、あんなに迷い無く言い切れるなんて・・・。私なんて、迷っていることが多いのに・・・)

 

 

響は、まだ目の前で起こっていることの殆どが分からない。しかし、直人の迷い無き姿、そして心の強さに・・・段々、惹かれていた・・・。

 

 

心臓がトクン、トクンと鳴る。顔も赤くなる。その理由は、まだ分からない。

 

 

 

(直人・・・強くなったな)

 

弦十朗も事情は分からないものの、直人が強く大きく成長したことを、心から喜んだ。

 

 

 

「ぐ・・・黙れ・・・黙れぇ!!」

 

認められないホースは、自身の体組織から剣を生成。それを持ってキバに攻撃を仕掛ける。

 

キバは、メチャクチャな剣裁きを紙一重でかわし、頭上からの大ぶりの一閃をキバは左手の人差し指と中指で挟んで止めた。

 

 

片手版の、真剣白羽取りである。

 

 

「なっ」

「はぁ!」

 

そして、空いている右手でホースの顔にアッパーを食らわせ、よろめいたところへ右足のキックと空いた左腕のストレートパンチを食らわせた。

 

 

「ぁ・・・」

もう戦えないほど、弱まったホース。キバはとどめを刺すべく、動く。

 

 

「キバット、決めよう」

「OK!キバるぜ!」

 

 

ベルトに手を持って行き、様々な効果を持つ「フエッスル」という笛の中から、赤い笛・・・ウェイクアップフエッスルを取り出し、キバットに吹かせる。

 

 

 

「ウェイク・アップ!」

 

 

 

キバットの声と、フエッスルの音色が響き渡り、直人が身を屈めてポーズを取っている間に、なんと空が夜になり三日月が浮かぶ。

 

 

「よ・・・夜!?うそ、どうなってるの!?」

「これはまた・・・すごいな!」

 

もう、目の前で起こっている展開や状況は、二人の理解の範囲を完全に超えていた。

 

 

そんな光景の中、キバの右足の鎖・・・「カテナ」が弾け飛び、「ヘルズゲート」が開いて三つの翡翠色の石、「魔皇石」が露出する。

 

 

 

未知の力は、解き放たれた。

準備は整った。後は、最後の一撃を当てるのみ。

 

 

 

 

「ハァッ!!」

 

 

キバは高くジャンプし、右足を伸ばして跳び蹴りの体制になる。そして、真っ直ぐにホースへ向かい・・・必殺技、「ダークネスムーンブレイク」がホースに命中。

 

 

そのまま塀まで引きずり、壁に激突すると同時、右足から魔皇力が注ぎ込まれ、ホースの体を破壊すると同時に壁にキバの紋章を刻み込んだ。

 

 

そして、体からライフエナジーの塊が空高く飛んでいったが、それは体が城になっている巨大な竜に食われた。

 

 

「「・・・・・・」」

 

 

響と弦十朗が無言で見る中、砕けたホースのステンドグラスの体組織が雪のように降り注ぎ、キバはその中を二人に向かって歩いて行く。

 

 

 

 

 

圧倒的な・・・それでいて神秘的な力を持ち、世界の法則すらもねじ曲げる。

 

 

 

 

その存在は、まさしく・・・・・・「王」だ。

 

 

 

 

 

 

戦いが終わった後、変身を解いた直人は、キバットを二人に紹介してから事情を説明した。

 

ファンガイアの存在。キバの事。共存の現状について等を。

 

「はぁ~、すごいですね!直人さんが王様ですか!」

 

「響ちゃん、さっきの・・・怖くなかった?」

「全然、怖くなかったですよ。むしろ、かっこよかったです!」

 

「そっか・・・良かった」

 

 

「羨ましいな~直人。なぁ響、この俺様はどうよ。このキバットバット様は!イケメンだろ?」

 

「ん~~・・・普通?というか、チャラい感じ?」

「なん・・・だと・・・。俺は紳士なのに・・・」

 

「あはは♪ごめんねキバット、冗談だよ。キバットもかっこいいよ!」

 

「だよな!俺はかっこいいんだぜー!」

 

 

 

あっという間に仲良くなった響とキバット。

一方、弦十朗は、直人の話を真剣に考えていた。

 

「共存、か・・・」

「おじさんは・・・反対ですか?」

 

「そんなことは無いさ。お前が本当に成し遂げたいことなら、全力で頑張ればいい。もちろん、俺も協力する」

 

「直人さん!私も、人間とファンガイアの共存を、お手伝いします!」

 

「・・・ありがとう!」

二人が理解してくれたことを、直人は心から喜んだ。

 

 

 

これは、この東京での戦い・・・その始まりにすぎない。この先も、戦う事になるだろう。

 

 

ノイズと・・・ファンガイアと・・・それ以外の存在と・・・。

 

 

 




次回予告

「翼・・・大丈夫かな・・・」

「直人・・・会いたいよ・・・」


第三話 想い合い、再会

Wake・Up!運命の鎖を、解き放て!



この小説の中では、キバ・・・直人はかなりの強さとなっています。

公式サイトに載っている設定とか見ても、キバのライダーはすごいスペックを持っていますから、それを表現したいと思い、この様にしました。

イクサやサガ、ダークキバもかなりの強さを発揮しているように書くことを予定しています。

ですが、敵のファンガイアも強くし、直人達の無双にはならないように、なるべくバランス良く書いていくようにします。

シンフォギア奏者達の活躍の場も、ちゃんと書いていきます。

・・・まぁ、それでもライダー達が無双する方が多くなってしまうかもしれませんが。
なるべく、ご了承していただけると幸いです。



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