がっこうぐらし〜元自衛隊の用務員さん〜   作:魚魚

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自己満足の為に軽く書いたら予想以上に楽しかったので……
あくまで金次の方を優先にしたい(優先にするとはいっていない)


はじまり

 あの日の事は一生忘れることはないだろう。

 

当時、俺は巡ヶ丘学院高等学校の用務員をしていた。

 

用務員の仕事は忙しく、この学校は他の学校よりも設備が多く、更に忙しかった

今日も忙しい仕事を殆ど終わらせ、最期の仕事、屋上でソーラーパネルを見に来ていた。割れたりしていないかの確認の為だ。

隣では園芸部の生徒と園芸部の顧問の佐倉先生で一緒にいつもの様に作業していた。

 

いつもの光景だ。

 

傾き始める太陽、埃っぽい風。

 

"血の匂い"

 

血の匂い?

 

この匂いは覚えがある。

俺が嗅ぎ慣れた匂い、嫌いな匂いだ。

大量に人が血を流した時に出るこの匂いは……。

 

屋上の落下防止用の柵から見を乗り出して辺りを見回した。

 

「一条さん、何をしてるんですか?」

 

国語教師の佐倉先生が心配そうに話しかけてきた。

俺は辺りを見回し終えると佐倉先生に言った。

 

「…………佐倉先生、今から言う事を聞いてください」

 

「?」

 

可愛らしく首を傾げた佐倉先生。

やっぱり今何が起きているのか理解できていないようだ。

 

「俺が出て入った後、屋上のドアを閉めてください。殆ど開けないでください」

 

「一体どういう……」

 

「外を見れば分かります」

 

そう言って俺はドアまで走った。

階段を降りていく、その尻目には佐倉先生が地面にへたり込んでいる姿が目に写った。

 

ちょっと衝撃だったか?慰めないと立ち直れないかもしれない。

 

と思い足を止めようとすると女子生徒が先生の元に駆け寄っていた。

 

「大丈夫だな」

 

足のスピードを早めた。

 

 

 

 

 

 

俺が外で見た光景は、まさに地獄絵図だった。

 

人間が人間を襲っていた。

 

いや、あれは人間ではない。

 

例えるなら、そう "ゾンビ" だ。

 

 

 

三階に降りると五人ほどの男女の組が階段を降りようとしていた。

 

「おい!」

 

大きな声で呼び止めた。

 

「なんですか!?」

 

眼鏡を掛けた少年が返事をした。

 

「どこへ行くつもりだ」

 

「逃げるんですよ!裏口から!この階にもゾンビがいます!」

 

そう言うとまた階段を降りていった。

 

「……」

 

廊下に出ると何人かの血塗れの生徒が倒れた……服装的には女子生徒を囲んでいた。

 

「やめて!!」

 

悲鳴げに叫んでいた。

無慈悲に何人かの生徒は彼女を囲んで……

 

"食べ始めた"

 

「きゃああああああああああ!!」

 

女子生徒は血を噴き出しながら悲鳴をあげていたがいずれ、動かなくなった。

俺は動くことが出来なかった。

少し時間が経つと、俺に気づいた様でゆっくりと俺に向かって複数の生徒が歩いてきていた。

 

いや、もうあれは生徒ではない。

 

取り敢えず何か武器を、と思い辺りを見回すと消火器があったので消火器を手に持った。

 

「……仕方がない」

 

一番前に居る元男子生徒の頭に消火器を振り下ろした。

 

「ぁっ」

 

頭が歪み喘ぎ声を上げて地面に力なく倒れ、動かなくなった。

 

生徒はまだまだ居た。

 

俺は消火器を振り下ろした。

 

 

 

 

 

 

「はぁ……はぁ……」

 

辺りには生徒の死体が死屍累々と転がっていた。

消火器は塗装とは違う、黒めの血がべったりついていた。

 

「全部やったか……」

 

その時、俺は油断していた。

 

「……ぅ……ぉ……」

 

振り向こうとするが既に時遅し、俺は噛まれた。

 

すごい力で肩を噛まれたが痛みをこらえて肘を後ろに突き出してゾンビを振り払った。

直ぐに距離を取って対峙した。

 

それは、最初に襲われていた女子生徒だった。

襲われていた時とは違い、顔には血管が浮かび上がり、皮膚は千切れ、内臓を地面に引きずりながら俺を食べようとゆっくり歩いてくる。

 

「おらっ!」

 

思いっきり消火器を叩きつけた。

 

血で手が滑って飛んでいってしまったがゾンビの頭に当たった。

ゾンビは他の生徒と同じ様にゆっくりと地面に倒れた。

 

「これにて……おしまい」

 

俺はゆっくり階段を降りていった。

 

 

 

階段を一つづつ降りて行くが何にせよ体の調子が悪い。

これは疲れてるからじゃない、きっとさっきの噛まれたのが原因だ。

 

「はぁっ……はぁ」

 

あの子は噛まれてから比較的速いスピードでゾンビ化した。

俺もそうなる運命だろう。

 

階段を降りていく最中、ツインテールの少女と男子生徒が階段を登ってきた。

 

「こ、ここにも!?」

 

俺を見て二人は大きく驚いた。

 

違う……俺はまだゾンビじゃない。

 

と言おうとしたが、

 

「走って逃げるぞ!」

 

と男子生徒が声を上げて二人で俺の脇を抜け、駆け上がっていった。

 

どうでもいいけれども俺の格好は返り血で作業服は血塗れだった。

 

ゾンビと間違えられても当然か……。

 

そのままゆっくり用務員室へ向かうために一階へ向かった。

 

 

 

 

 

「用務員室……」

 

ドアを開けて中に入ると鍵を閉めた。

心臓の動悸がどんどん激しくなってきた。

 

「くそっ……」

 

目が霞んできた。

シャワールームに入って服を来たまま、シャワーを浴びた。

そのままシャワールームに座り込んだ。

体中に付いた血は流れたのでシャワーを止めた。

 

「……」

 

目は遂に真っ暗になった。心臓はバクバク言っている。

どんどん体が熱くなってくる。

 

だが思考は比較的にクリアだった。

 

二階にはゾンビがまだ居たと思う。

屋上の佐倉先生やあの階段を上がっていった生徒達は大丈夫だろうか?

 

脳裏を過ったのはまずは佐倉先生。

 

一緒にレンジャー訓練を受けた自衛隊の仲間、

 

この学校で出会った先生や生徒、

 

そして佐倉先生。

 

泣いている佐倉先生。

 

笑顔の佐倉先生。

 

しょぼくれている佐倉先生。

 

 

 

「ちょっとまて、どうして佐倉先生ばっかり出てくる」

 

とツッコミを入れる。

 

こうして目の前は完全に真っ暗になった。

 

 

 

 

 

 


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