吹雪がんばります!(史実版)   作:INtention

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鬼怒改二おめでとうございます。
凛々しくなりましたが、性格は変わらず明るくていいですね。阿武隈と同じ制服なのも姉妹愛があっていいです。

秋イベを挟んでしまいました。全海域をクリア(甲とは言っていない)、山風・朝風もゲットしました。しかし、春風と海風、浦風は来ませんでした。みんな風が付いてるので同型に見えますね。

しかし、「朝風」と言えば真っ先に東京-博多を結んでいた寝台特急「あさかぜ」を思い出します。初めてブルートレインという専用客車が用意されたこの列車、当時は"走るホテル"と呼ばれていました。誰か"朝風"と"走るホテル"で同人誌作ってくれませんかね?成人向けになりそうですけど…


第十八話 峯風型駆逐艦

 

1928年11月30日

 

鎮守府前には呉鎮守府に所属する艦娘が勢揃いしていた。

 

「これより出港する。一度に出られないので幾つかの群に分かれて向かう」

 

司令長官の谷口が演説する。

 

「予告通り潜水部隊、主力部隊、第一水雷戦隊、特設水雷戦隊の順番だ」

「これは実戦ではありませんが、気を引き締めて下さい」

 

秘書艦の扶桑が付け加える。

 

「では移動を開始する。横須賀で会おう」

 

司令長官が言葉を切ると全員が徒手敬礼をする。

谷口も答礼を返して下がった。

 

 

 

「私達はまだだっけ?」

「うん。一水戦の後だよ」

 

速度の関係で遅い潜水艦、戦艦の順に出撃していく。

目の前の桟橋からは扶桑、伊勢を中心とした呉鎮の主力部隊が出て行った。

 

「扶桑さんって格好いいよね」

 

吹雪がしみじみ言う。

 

「扶桑さんねぇ。長門さんの方が強いよ」

「そうだけど…」

「改扶桑型の伊勢さんの方が」

「いいでしょう!別に。白雲ちゃんは扶桑さん嫌いなの?」

「いやそういう訳じゃ」

「艦橋が格好いいよね」

 

薄雲がつぶやいた。

 

「そう!薄雲ちゃん。分かってくれる?」

「うん」

「ありがとう!」

 

「相変わらず仲いいわね」

「いい事だよ!うんうん」

 

阿武隈と鬼怒が話に加わる。

 

「私達は特設水雷戦隊なんですね」

「そうだよ。吹雪は向こうで司令駆逐艦になるんだってね」

「そうなんです。峯風型と聞いているのですが」

「睦月の前の型ね。いい子達だと思うわ」

「本当ですか!?」

「あたしの言うことは聞いてくれなかったけど」

「それいい子って言うの?」

 

鬼怒は呆れたように言う。阿武隈はムッとして返した。

 

「みんな足が早くて。特に4番艦?の島風という脚の早い駆逐隊さえ言う事聞いてくれればいい子なの」

「そうですか」

「何ノットですか?」

「確か40くらい」

「40!?」

 

駆逐艦の中では早い方の特型でさえ38ノットである。それより2ノットも早い

 

「他は38か39なのにあの子だけ40も出るのよ」

「へえー」

 

誰も横鎮の編成を知らないが、七人は何となく吹雪の担当する駆逐艦に島風がいる気がする予感がした。

 

 

 

1928年12月1日 横須賀鎮守府

 

「呉鎮守府所属の鬼怒、阿武隈、第一二駆逐隊、吹雪、磯波。着任しました!」

「ご苦労だったな」

 

横須賀鎮守府の司令長官、吉川安平中将が言う。

 

「どれが吹雪か」

「私です!」

 

吹雪が進み出る。

 

「そうか。君は今回峯風型を指揮してもらう。詳しくは彼から聞いてくれ」

「4駆司令の江口喜八大佐です。よろしく」

「吹雪です。よろしくお願いします」

 

西日本の訛りがある士官は笑って迎えた。

皆と別れ、二人で廊下を歩く。

 

「新型はやっぱりしっかりしとるの」

「そんな事は…」

「生まれはどこや?」

「舞鶴です」

「君が指揮する艦娘も皆舞鶴やな」

「そうなのですか」

「いや、夕風は長船(三菱長崎造船所)か」

「江口大佐は4駆の指揮を採ってらっしゃるのですよね?」

「そうだ」

「では…島風さんも」

「おるな」

「そうですか」

 

江口大佐は吹雪の表情を見て笑う。

 

「島風と聞くと皆その顔をする」

「あぁ!いや、すみません」

「可愛い奴なんだが。でも気持ちは分かる。マイペースやから同僚としては接しにくいかも知れん」

「はあ」

「だが今回ばかりは気にしなくてもええ」

「今回?」

「ああ。観艦式には3駆から汐風と夕風、4駆から灘風、島風が出るのだが…まあ取り敢えず会えば分かるさ」

 

江口大佐はある会議室の前で歩みを止めた。

 

「入るぞ」

 

ノックと共に二人が入ると四人の駆逐艦娘が待っていた。和服に袴姿なので峯風シリーズだと分かる。

 

「観艦式で司令駆逐艦となる特型の吹雪だ」

「よろしくお願いします!」

「峯風型の島風、灘風、汐風、夕風です」

 

頭にリボンを着けた艦娘が代表して名乗る。どうやらこれが島風らしい。

意外にしっかりしてると思ったが、よく見ると顔色が悪い。端の夕風も同じだった。

 

「大丈夫ですか?」

 

吹雪は心配になって尋ねる。

 

「夕風がぶつかって来るから…。沈むかと思った」

「ごめんね」

 

島風のつぶやきに夕風が謝る。

江口大佐は事情を知らない吹雪に訳を話した。

 

「10月の演習で衝突してな。直ったばかりなんや」

「そうでしたか」

「景気付けに観艦式に出したが、立ってるだけだし問題ないだろう。お前達。吹雪の指示に従うんだぞ」

「分かりました」

「3、4駆下がります!」

 

四人は敬礼して出ていった。灘風と汐風が二人を支えている。

 

「仲は良さそうですね」

「島風が大人しいのが珍しいんやろ。まあええ事や。じゃあ当日の説明をしとくわ」

「お願いします」

 

吹雪は島風の大人しさに呆気に取られてすっかり気が抜けてしまった。このまま行けば何の問題も無く観艦式を終えられるかも知れない。少し未来が明るくなった吹雪だった。

 

 

 




元気一杯な初代島風を出そうとしたら観艦式の2カ月前に衝突事故とは。しかもぶつかられてるとは島風らしくない気がします。という訳で大人しくなってしまいました。仕方ないですね。

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