それまで日常パートです。適当に撃ち合ってればいい(は?)戦闘シーンと比べて日常パートは腕の見せ所さんなんですが、もちろんありません。
しかも使えるキャラは限られています。
艦これに実装されている艦娘では戦艦と軽巡は比較的揃っていますが、空母(鳳翔さんのみ)と重巡(古鷹級のみ)、駆逐(睦月型と特I型のみ)、潜水艦(なし)は大分少ないです。水雷戦隊は峯風・神風型が主流な上に特型も未実装が多いです。折角実装された神風達ですが、横鎮なので出せず…。
これはオリキャラ不可避。
訓練を見終えた吹雪と球磨は庁舎へ戻った。長官の執務室にノックして入ると提督と吹雪の艦長はおらす、秘書艦の扶桑が一人で事務作業をしていた。
「旅行は終わりだクマ」
「ご苦労様。下がっていいわ」
「了解だクマ」
球磨は敬礼して出ていった。部屋は二人だけになる。
吹雪はどうして良いか分からず黙って立っている。
数分後、扶桑は仕事のキリが良かったのか手を止めてこちらを見つめる。
「では駆逐艦の施設に案内するわね」
「え、扶桑さん自らですか」
「あそこはね。駆逐艦の聖域なの。駆逐艦って元気で気性が荒いでしょう?」
「そう、なんですかね…」
「だから上司の軽巡であっても入れないの。秘書艦は特別だけどね」
「覚えておきます」
「では参りましょう」
扶桑は吹雪を連れて庁舎を出た。
「特型は他の駆逐艦と比べても大きくて強いようね」
駆逐艦の施設まで歩きながら扶桑が話しかけた。
「ええ。そう聞いています」
「どこか欠点はあるのかしら」
扶桑はチラッと吹雪の事を見ながら聞く。
「欠点ですか。そうですね…。今の所無いと聞いています」
「本当?」
「今の所ですが」
「そう。羨ましいわね」
途端に周りの空気が冷たく感じられるようになった。
「え?何か失礼な事を…」
「私は設計の時点で欠陥があったのよ」
「直そうとされなかったのですか」
「もちろん勝手に自沈する程の欠陥ではでは無いけれど、火力の代償でね」
「金剛型の1.5倍ですよね」
「そう。でもそれ以外はね…。フフッ、不幸よね」
突然の自虐に吹雪は笑う訳にも行かずただ相槌を打つ事しか出来なかった。
気まずい雰囲気は駆逐艦の宿泊施設まで続いた。
やがて駆逐艦舎に着く。かなり大きいが質素な建物だった。
「立派な建物ですね」
「艦娘の待遇は結構いいわ。でも駆逐艦は相部屋だけれどね」
「それは構いませんが」
「防犯はきちんとしているから安心して。駆逐艦が交代で官舎を見守りをするし、外周は陸戦隊が見回るから」
「厳重ですね」
「若い提督が忍び寄らないようにするためよ」
「は?」
吹雪は思わず聞き返してしまった。
「提督?」
「そう。大型艦だけでなく駆逐艦が好きという士官もいるのよ」
「……」
聞きたくない事を聞いてしまった気がする。
吹雪はとても驚いたが扶桑は何食わぬ顔で建物に入っていった。吹雪も慌てて後を追う。
中はまるで集合住宅のようであった。一列にずらりと扉がならんでいる。
「私は誰と一緒なのですか」
「本当は隊で固まってるのだけど特型はまだ揃ってないから今の所一人で使っていいわ」
「分かりました」
扶桑は奥の方の扉の前で止まる。鍵を開けて扉を開ける。
部屋の半分を二段ベッドが占めており、窓際に机と椅子が一組置いてあるだけの質素な部屋だった。ベッドにカーテンが付いていて申し訳程度しかプライバシーは確保されていない。しかし設備が拙い施設が多いこの時代では十分である。
「ここがあなたの部屋ね」
吹雪が歓声を上げる。
「お隣さん…はまだいないけど迷惑かけないで。あと消灯時間もあるし、たまに見回りもあるから規律は正しくね」
「はい!」
「では夕食に行きましょう。皆と顔合わせしないとね」
吹雪は支給された身の回り品を入れた鞄一つしか持っていない。それを部屋に置くと手ぶらになった。
食事は寮からほど近い
すでに夕食時なので呉所属の駆逐艦が集まっていた。話し声でとてもうるさい。
この風景だけを見ればどこかの女学校と変わらないように思える。
その喧騒の中を扶桑が堂々と入っていく。吹雪も慌てて後に続いた。それに気づいた駆逐艦娘が弾かれたように起立する。
「皆さんそのまま座ってて。今日は新人の紹介よ」
ザワザワと隣同士で会話をして吹雪へ好機の目線を向ける。
「は、初めまして。特型駆逐艦吹雪です。よろしくお願いします!」
緊張でガチガチだったが何とか言えた。しかし周りの駆逐艦達はまた特型かとあまり好意的では無かった。
「ええと…」
「特型駆逐艦の一番艦よ。みんな仲良くね」
扶桑がフォローを入れるがなぜ一番でないのかとさらに盛り上がる。
完全にアウェーである。吹雪の目からハイライトが消えようとした時、奥から拍手が上がった。一つのテーブルだけ吹雪を迎え入れてくれているようだ。
「彼女達はあなたの妹達よ。あなたはまだペアがいないからあの子達に混ざりなさい」
「はい」
奥で迎えてくれたのは吹雪と同じ制服を着た四人だった。
「ここに座って下さい」
「吹雪姉さんだ」
「遅かったねー」
「よ、ようこそ」
吹雪が座り、扶桑が庶務の連絡をして帰ると皆会話は元通りとなった。
「みんな特型に対してなんか厳しいよね」
「そうですよー」
「そうなんですか?」
「今までの駆逐艦とは性能が段違いですから。私が来た時は一人だったので居づらかったです」
「磯波は大々的に報道されて羨ましいよ」
「あなたは?」
吹雪がざっくばらな話し方をする少女へ尋ねた。
「あたしは白雲。8番艦だよ」
「7番艦の薄雲よー」
語尾を伸ばした少女が続く。
「私は6番艦の
「わ、私は9番艦磯波です。私はまだ独り身です…」
はきはきした話し方をするおかっぱの少女とおとなしそうな三つ編みの少女が自己紹介する。
「初めまして。1番艦の吹雪です。遅くなりましたが皆さんの長女として頑張ります!」
最後に吹雪が名乗って自己紹介は終わった。
「もう駆逐隊が出来てるんだね」
「はい。8月1日付で編成されました」
「8月…何月に竣工したの?」
「三人共6月末には…」
「大分早いんだ。でも駆逐隊って4隻と聞いているけど」
「多分上から4人ずつなんじゃない?」
「私達の前に一人入ると思うよー」
「じゃあ私は十一駆逐隊かな」
吹雪は先の事に思いを膨らませる。
「じゃあ私は十三…」
「十三駆は私達第一水雷戦隊の若竹型よ!勝手に変えないでくれる?」
「す、すいません」
磯波が続こうとすると向かいの小柄な艦娘が食ってかかって来た。磯波は思わず謝罪してしまう。
「最新だか知らないけど調子乗らないでよね」
「そうよ」
「そうだよ」
「そうわよ」
13駆の面々が便乗する。
吹雪が隣の東雲に小声で尋ねる。
「あの人達は?」
「13駆の二等駆逐艦若竹型の方たちです」
「廉価版神風よ」
「しー、声が大きい」
「何よ!」
白雲の失言に薄雲がたしなめるが時すでに遅し。隣の14駆までもが抗議してくる。
「水雷戦隊として支那の最前線に行くのは私達なんだからね」
「天龍さんに言いつけるわよ」
「馬鹿にしないでくれる?」
「そうだよ(便乗)」
「元二水戦(大正期)の俺に勝てるもんか」
「試してみる?私だって一等駆逐艦よ」
「も、もう空いてる十九駆でいいですー」
次々に参戦して口喧嘩を始める駆逐艦達に磯波が縮こまって降参する。
どうやら駆逐艦はかなりサツバツとしているらしい。大変な生活が始まるなと吹雪は感じたのだった。
就活が終わらないです。一度かなり大きなチャンスがあったのですが駄目でした。長良じゃないですけど「もっと(身体を)鍛えておけば…」って感じです。
さて、今回から駆逐艦バトルロワイヤル編開始です。
嘘です。味方で撃ちあったり、持ち物を隠したりというようないじめは私が嫌いなのでありません。
でも「クッ○ー☆」みたいな平和さよりは『陽炎、抜錨します!』並のサツバツさがあった方が面白いと思います。
~補足1~
1928年夏現在の水雷戦隊です。
第一水雷戦隊(岡本郁男少将)
天龍
13駆 若竹、呉竹、早苗、早蕨 (若竹型)
14駆 江風、谷風、菊、葵 (江風型、樅型)
15駆 萩、
26駆 栗、
第二水雷戦隊(館明次郎少将)
名取
22駆 皐月、水無月、文月、長月 (睦月型)
23駆 菊月、三日月、望月、夕月 (睦月型)
29駆 朝凪、夕凪、追風、
30駆 睦月、如月、弥生、卯月 (睦月型)
第二水雷戦隊は流石に最新の睦月型・神風型で揃えていますが、第一水雷戦隊は新しくはあるけど数合わせの二等駆逐艦ばかりと言った感じですかね。江風(もちろん先代)型は一等駆逐艦ですが峯風型の前級でかなり古いです(魚雷が45cmって…)
次の呉鎮守府の駆逐隊を見てもらうと分かると思うのですが、ほとんどが二等駆逐艦です。性能差などは次回載せます。
~補足2~
呉鎮守府所属の駆逐隊
11駆 (欠番)
12駆 東雲、薄雲、白雲、叢雲(未竣工) (特型)
13駆 若竹、呉竹、早苗、早蕨 (若竹型)
14駆 江風、谷風、菊、葵 (江風型、樅型)
15駆 萩、
16駆 朝顔、
17駆 海風、山風、
18駆 梨、竹、
19駆 (欠番)
20駆 (欠番)
『陽炎、抜錨します!』の14駆は1939年末に解散するまでは駆逐艦がいました。当然ですけど。
吹雪が入る11駆は6回も編成と解散を繰り返しています。忙しいですね。
ご覧の通り、見事に二等駆逐艦ばかりです。しかも