吹雪がんばります!(史実版)   作:INtention

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初投稿な上、拙い文章ですが良ければご覧下さい。

リアル艦これはじまります。


プロローグ

1942年10月

 

夜の海を5人の艦娘が滑るように進んで行く。

10月とは言え南洋の大気は暑く、時折降るスコールがさらに蒸し暑くしていた。

 

5人は先ほどの雨のために之字運動止めて直進していたが、警戒のため単縦陣の両脇に駆逐艦娘を配置した十字状の陣形を採っていた。

 

「予定より早く着きましたね」

艦隊の中央に位置した重巡古鷹が前の青葉に話しかけた。

 

「やっぱり速度を落とした方が良かったんじゃないの?」

最後尾の衣笠が具申する。

 

「うーん、でも後藤提督は攻撃時間を早めると言ってるよ。」

 

旗艦の艦娘(青葉)と提督は特殊な技術によって脳波で繋がっており、提督は内地にいながらして艦娘を指揮できるようになっているのだ。

ちなみに旗艦が被害を受けた時に脳波で繋がっている提督がどうなるかは、読者諸兄の想像にお任せする。

 

「じゃあヘンダーソン基地砲撃は続行ですね?」

艦隊の左翼を守る駆逐艦娘がうれしそうな声を上げる。

 

この艦娘こそがこの物語の主人公であり、特型駆逐艦一番艦の「吹雪」である。

 

「わたしも楽しみです」

右翼を守る吹雪の妹である二番艦白雪も微笑む。

 

「よーし、青葉突撃しちゃうぞ!」

 

「もう対地用特殊砲弾を装填しちゃったの?敵艦が現れたらどうするんですか」

古鷹が不安そうに言った。

 

「でも日進さんは敵影なしって言ってたんでしょう?」

 

衣笠が言う日進とは水上機・甲標的母艦であり、千歳型の改良版として建造された艦娘である。

第六戦隊の少し前にガダルカナル島への物資輸送隊を率いて同島に先に進出している。

 

「昼は米軍に制海権を取られてるけど、夜はまだ私達の物よ。」

 

「そうですね」

吹雪は強気な青葉型に心強さを感じた。

 

 

 

数分後、前方にサボ島と思われる島影が見えて来た頃、吹雪は違和感を感じていた。

 

「青葉さん。何か、誰かに見られてる気がしません?」

 

「え、そうかな。気のせいじゃない?」

 

「そうですかね…」

吹雪にはそうは思えなかった。より目を凝らして探していると、複数の人影が見えて来た。

 

「左十五度、艦影3、針路南西、距離100(1万m)!」

 

突然の大声に周りの艦娘に動揺が走る。

 

「そんなはずは…ここには誰もいないはずだよ!」

「日進さん達かも知れません。艤装が似ていませんか?」

「でも針路が逆方向よ。そっちに向かうのはおかしいわ」

「確かに」

 

「提督!どう思う?

...了解です!みんな、味方かも知れないから同航戦に持ち込んで識別信号を送るよ」

 

「了解。面舵!」

 

艦隊が謎の艦隊に並ぶように右へ進路を変える。その間先頭の青葉は発光信号を送る。

 

「ワレアオバ、ワレアオバ…。うーん、返事がないよぉ。」

 

「本当に味方なの?」

 

「三水戦隊所属の私の妹達はもっと、ち…小さい気がします」

 

衣笠と吹雪が訝しんでいると、

「青葉さん!これは敵です!」

 

白雪が叫んだ瞬間、辺りが昼のように明るくなった。

 

「うわっ、しょ…照明弾」

 

「Open firering!」

「FIRE!」

聞き慣れない掛け声で相手の艦娘が発砲する。

 

砲弾は正確な弾道で青葉に向かっていく。ほぼ全弾が青葉に命中し、青葉は湧き上がった10メートル以上の水柱に包まれた。

 

「くぅ!味方に誤射するとは。取材の価値がありそうですね。」

 

「青葉さん危ない!」

 

敵の砲弾は先頭の青葉に集中しているようだ。

()()()()()()()()()()()()()()()()()正確に撃ち込まれてゆく。

 

「提督との回線が切れちゃった!」

 

「青葉さん!」

砲撃で艤装をもぎ取られ混乱する青葉を古鷹が庇う。

 

「青葉さん!旗艦はあなたです。どうするかの方針を!」

 

「分かった。とにかく砲撃から逃れるために煙幕を展開しながら転進するよ!」

 

「なら私は敵を引き付けるわ」

 

「衣笠さん!」

 

「私達も引き付けます。」

吹雪も同調する。

 

「分かったわ。青葉・古鷹、この衣笠さんに任せなさい!左砲戦用意!」

 

「白雪ちゃん、私達は同航戦に入るよ!」

 

「分かりました!」

 

吹雪型と衣笠は敵の前後に向かうように分かれる。

 

「煙幕を展開したよ。古鷹さん入って!」

 

「私は酸素魚雷に引火しちゃったから消火しないと。先に行ってて」

 

古鷹は唯一無事な高角砲で反撃しながら答える。

 

「そんな、古鷹さん!」

 

「大丈夫です。私達は重巡洋艦ですから!」

 

「……分かった。じゃあ後で必ず会おうね」

 

青葉は上部兵装こそ全滅しているものの足周りが無傷なので34ノットで北へ離れて行く。

 

 

敵艦隊と激しく撃ち合う吹雪達。

数人の敵艦娘が炎上しながら離脱して行く。

 

「私が止めを!」

落伍した駆逐艦娘に接近する。

 

「吹雪ちゃん逃げて!」

 

気がつけば敵まで1500メートルしかない。雷撃すると急いで反転した。

 

「がっ!」

背中に強烈な痛みが走る。振り返ると敵重巡洋艦が砲門をこちらに向けている。

 

思わず恐怖で目を見開く。

「嫌…! いやだよぉ……」

砲弾が弾薬庫に命中。大爆発を起こして吹雪は夜の海に沈んで行った…。




いきなり主人公死んでますが、これで終わりではありません。
次はいつとは決まってませんが、続けていこうと思うのでよろしくお願いします。
(主力艦の歴史は腐る程あるんですが駆逐艦、特に吹雪に関する資料が無くて困ってます)

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