IS×仮面ライダーW 〜二人で一人の探偵達+αが転生しました〜   作:prototype

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お待たせしました!


恐らく今年最後の投稿となります!





第四十六話

ーーーーセシリア・オルコットが、今日この条件を整えるために課せられたハンデは大きい。

 

 

そもそも、この生徒会企画、『シンデレラ』の意義は、あくまで全ての生徒を楽しませることであり、賞品…または賞人以外で個人の願望を叶えることはない。

 

 

セシリアが望んだのは一対一、誰にも邪魔されない決闘。

 

当然、このゲームは闘いありきのものではない。むしろ、結果はさておきどんちゃん騒ぎを楽しむタイプだ。

 

それに、ISを用いた闘いを持ち込めば、当然専用機持ちを始めとした、代表候補生が余りにも有利になってしまう。そして当然、それをセシリアが指摘されない訳はなかった。

 

 

様々な物議の結果として、アリーナ内においての戦闘自体は許可された。

 

 

理由は幾つかあるが、やはり有力なのは、ISの戦闘の観戦を楽しむ生徒が多いことだろう。

 

このゲームは、賞品として捕まえた男子生徒との相部屋の権利を掲げている。勿論その需要は高いが、全ての生徒が望んでいる訳ではない。当然だ。単純に男性に興味のない生徒もいれば、かなり少数だが既に恋人がいる生徒もいる。

 

 

そんなところを考えない生徒会長では無く、ゲームの賞品としては、相部屋の権利の他、食堂のデザートフリーパス、『織斑先生の特訓、一週間コース』、『成績向上特別講習権』などある程度広い需要を満たすものが揃っている。

 

そして、そこまで考える生徒会長が、世界大会モンド・グロッソの華、ISバトルを娯楽に組み込むのはそう可笑しな話ではなかった。

 

一度ISバトルが発生すれば、校内放送で即座に校内に伝わり、各所にあるモニターや、観客席で観戦可能な仕組みだ。

 

まあもっとも、ゲームが始まった現状に置いても、アリーナにて待ち構える女生徒はセシリア・オルコットを含めほんの数名程度だが。

 

 

 

アリーナの利用者に関するルールは……

 

一つ、男子生徒がアリーナに入った場合。その男子生徒と、その時点でアリーナもっとも長くいた生徒、または、男子生徒の後に初めてアリーナに入った生徒が戦闘を行う権利を得る。

 

 

二つ、機体は、専用機持ちの生徒は専用機を、それ以外の生徒は訓練機を使用する。そのため、使用できるアリーナには訓練機一台を常備する。

 

三つ、女生徒が勝利した場合、その男子生徒の王冠を受け取る権利を得る。男子生徒が勝利した場合、男子生徒に10分間の自由時間が与えられ、この間は男子生徒を追跡、捕獲はできない。

 

 

四つ、専用機を所持する生徒は、敗北した場合、その時点でゲームの参加権を失う。その他の生徒は敗北後、12分の間、ゲームへの参加権を失い、12分の経過後は行動可能。このバトルが終わった12分間は『アリーナにいた時間』にカウントされない。

 

 

 

と、土壇場であるために公平とも言えず、色々と問題はあるが、このようなルールが作られた。

これらのルールにより、男子生徒側にもバトルをするメリットが一応ある。基本的に追い回されるこのゲームに10分の休憩時間は大きい。

もっとも、戦闘の後ではそう遠くにはいけないだろうが、あまり時間が長くても企画自体が終了してしまうため、このようなルールになっている。

 

男子生徒のバトルにおける消耗は、バトルに参加しない生徒に取っても捕まえやすくなるメリットである。

 

 

一方、バトルをする人間には、目当ての男子生徒と戦えるかは分からず、偶然アリーナに入った程度ではまず戦闘の機会を逃すので、アリーナで待ち伏せをすることになるが、当然その間、追跡には参加できないというわけだ。

 

 

しかしセシリアはゲームが始まったその瞬間から、この第三アリーナから動いていない。当然、翔太郎との交戦権は彼女が得たのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

戦闘開始の合図が校内に響く。

 

校内のほぼ全員が、その戦いに驚愕し、注目した。

 

 

企画の中での戦闘行為を提案したのがセシリアであることは、周知の事実。全員がそのルールを理解していたとはいえ、男子生徒がアリーナに入ることはないだろうと思っていた生徒が多かったようだ。

 

 

しかも、そのカードは学園中の人間が知っていると言っても過言ではない、左翔太郎vsセシリア・オルコット。かつてビットの誤差動の影響で、試合こそセシリアの勝ちだが、勝負としては有耶無耶になった試合だ。

 

 

しかし、生徒達が注目したのはそこだけではない。以前まで、左翔太郎の使用するISは、貸し与えられた訓練機の『打鉄』だったはずだ。しかし……

 

 

 

 

 

「…… おし!いくぜ、セシリア。」

 

 

 

 

「はい……、手加減は無用ですわよ?」

 

 

 

翔太郎がその体に纏うのは、『打鉄』とは全く違う形状の黒いIS…。どちらかと言えば、そのデザインは対峙している『ブルー・ティアーズ』に近い。

 

 

しかし、近いと言ってもそれは背部のスラスターや、非固定浮遊部位(アンロック・ユニット)くらいのもので、その機体はほぼ全身装甲(フルスキン)とも言えるほどの形状だ。

 

 

 

 

 

「さあ、共に踊りましょう! 私とブルー・ティアーズの奏でる円舞曲(ワルツ)で!」

 

 

 

 

 

『ブルー・ティアーズ』から、六基のビットが放たれる。おそらく観戦者の殆どが、かつてのクラス代表決定戦を思い出しただろう。

 

 

しかし、今放たれたのは六基…即ち、『ブルー・ティアーズ』の全ビットである。加えて……

 

 

 

 

 

「っ! ビットを動かしながら……撃ってくるか!」

 

 

 

 

「いつまでも進歩のないセシリア・オルコットではありませんわ!」

 

 

 

 

 

セシリアは六基のビットをフル稼動させながら、自らもその手に持つレーザーライフルで翔太郎を狙う。

 

別に『ブルー・ティアーズ』が強化された訳ではない。単にセシリアの集中力の賜物だ。

 

勿論いくら集中したとは言え、セシリア自身の射撃の精度は普段のそれと比べ、格段に落ちている。しかし、それでも翔太郎からすれば、一つ砲門が増えるというのは大きな問題だ。

 

 

かつては四つのビットを簡単に撃ち落とした翔太郎だが、数も精度も高まったセシリアの攻撃に、段々と押され始めていた。

 

 

 

 

 

「…この数じゃビットを撃ち落とすのは無理か…? …だったら!」

 

 

 

 

いくつかのレーザーの直撃を受け始めると、翔太郎が武器を取り出す。武装の名前は『スター・ブレイカー』。

 

強奪されたイギリスの新型機…『サイレント・ゼフィルス』に搭載された物と同型の狙撃銃だ。

 

 

翔太郎が狙いをつけるのは、ビットではなくセシリア本体。引き金を引くと同時に、翔太郎はセシリアに接近した。

 

 

 

 

 

 

「くっ! やはり潜り抜けてきますか!」

 

 

 

 

 

 

 

「おぉお…らぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

「ハァッ!」

 

 

 

 

セシリアが銃撃を回避し、ビットの動きが鈍る瞬間。翔太郎がレーザーに晒されながらも『スター・ブレイカー』の先端の銃剣で切り掛かるが、セシリアはそれを呼び出した『インターセプター』で受け流す。

 

 

しかし、そこで止まる翔太郎ではない。

 

 

 

 

 

「本命はこっちだぜ!」

 

 

 

 

 

 

「くぅぅ!」

 

 

 

空中で体を回転させた翔太郎の回し蹴りがセシリアに炸裂した。本来格闘戦など想定しない筈のISにしてはその威力は凄まじく、セシリアがアリーナの中央から外壁近くまで吹き飛ばされた。しかし…

 

 

 

 

 

「っ、まだです!」

 

 

 

 

 

 

「っ! うおっ!?」

 

 

 

 

意識が吹き飛ばされるセシリアに向かっていた翔太郎の背を、複数のレーザーが襲う。

 

 

 

 

「…食らっちまったか。吹き飛ばされながらビットを動かすなんてな。」

 

 

 

 

 

 

「あら、進歩のない私ではないと先程言ったばかりですわよ?」

 

 

 

 

 

 

「そうだな…。ああ…強いなセシリアは。」

 

 

 

 

 

 

 

「その言葉は決着の後に。さあ、休んでいる暇はありませんわ!」

 

 

 

 

 

 

 

セシリアの声と共に、翔太郎の背後からミサイルが放たれる。丁寧にミサイルの回避ルートにはレーザービットが仕込まれていた。

 

 

 

 

「チッ! どう転んでもって訳かよ!? ……まだこっちのがマシだ!」

 

 

 

 

 

 

腕の装甲を盾に、翔太郎はレーザーに突っ込む。その時だ。

 

 

 

 

 

 

「読めています!」

 

 

 

 

 

 

翔太郎の脇を通り抜ける筈のミサイルを、別方向からのレーザーが貫いた。

 

 

 

 

 

 

 

「何っ!?うおおお!?」

 

 

 

 

 

 

結果炸裂したミサイルの爆風に呑まれ、翔太郎は地面に落下していく。

 

 

 

 

 

 

「勝機!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

落下していく翔太郎へ、『インターセプター』を展開したセシリアが迫る。

 

 

 

 

 

 

 

「させ…るかぁ!」

 

 

 

 

 

 

 

セシリアの渾身の一撃は、翔太郎のISの掌によって受け止められた。翔太郎の手に突き刺さるはずの攻撃は、黒いISの手の平の光に止められていた。

 

 

 

 

 

 

「っ! ……成る程、…全身を覆う装甲の厚さと、さらにそれより硬い腕部、脚部のエネルギーシールド。そのISの特徴……でしたわね!」

 

 

 

 

 

 

翔太郎に攻撃を止められたセシリアが後退する。

 

 

翔太郎の黒のISは翔太郎の半専用機というだけあり、その機体の本領は格闘戦で発揮される。

 

 

本来、ISに格闘戦は想定されていない。拳につけるような武器ならいくつかはあるが。

 

理由としては、単に女性にそういうことを得意とする人間が少ないのもあるが、何かしら武器を使った方がより威力が高い上、効率的だからだ。

 

それに、攻撃を受ける度にシールドエネルギーを消費するISで殴る蹴るを行えば、当然自分にもダメージは跳ね返る。シールドエネルギーの数値で勝敗を決めるISバトルには不利であることは疑いない。

 

 

しかしだ。ならば、腕や脚の防御を高めればいい。そんな単純な発想だ。

翔太郎のISは一般的なISと比べ、手が小さい。生身と同じ感覚で扱うためだ。当然装甲も薄めとなるが、その強度は一般のそれより高い。

 

更に加え、その硬さは装甲だけから来ているのではない。打撃部に電気的なシールドをまとわせ、シールドエネルギーを相殺できる様にしてある。

 

本来こういった防御機構は、BT兵器使用時において使用者を守るために設計されたものである。……それがこんな形での応用となるとは想定されたことなど無いだろうが。

 

 

 

 

 

 

「らぁぁ!!」

 

 

 

 

 

翔太郎が大振りにセシリアに殴り掛かる。本来、翔太郎はISを装着しているとはいえ、顔も見えている女性を殴るのには抵抗があるだろうが……、ことセシリアとの"本気の勝負"においては、そんな抵抗は彼にない。しかもその一撃は大振りの一撃といっても、ISによる加速のタイミング、攻撃位置を調整できるため、回避は決して容易では無い。

 

 

 

 

 

 

「ううぅ!」

 

 

 

 

 

 

咄嗟に呼び出したライフルを盾にするセシリア。ライフルは悲鳴を上げながら拳に沿って凹んでいく。

 

セシリアはライフルを放棄すると、翔太郎から距離を取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「恐ろしい物ですね…。確か私達を守るシールドエネルギーの転用とは聞きましたが……」

 

 

 

 

 

「ああ、盾と盾がぶつかれば硬い方が勝つ。単純だが、中々どうして正論だ。面白い武装だと思うぜ。今までなかったのが不思議なくらいな。」

 

 

 

 

 

「ふふっ、使いこなせるのは貴方くらいのものでしょうに。」

 

 

 

 

 

「そう言ってもらえると……ありがたいね!」

 

 

 

 

 

 

再び翔太郎が突っ込もうとした瞬間、翔太郎の眼前に光の柱が見える、上空のビットからのレーザーだ。

 

 

動きを止めた翔太郎を、さらなるレーザーとミサイルが襲う。

 

 

 

 

 

 

「くっ! 改めて敵に回すと厄介だな!ビットってのは!」

 

 

 

 

 

 

先程の二の舞を恐れ、翔太郎は後方に下がることでミサイルを回避する。そのまま地面を滑る様に移動し、さらなる攻撃に備えた。

 

 

翔太郎のISの機動力は、装甲の所為もあるが、『ブルー・ティアーズ』を下回る。よって、こうして『待ち』の戦法を取っている。

 

 

しかし、セシリアはそれを許さない。セシリア本体は射撃を行えないが、まだビット六基は健在だ。

 

 

 

翔太郎がライフルで狙おうにも、翔太郎にはISで動きながらセシリアを正確に狙撃できる程の技量は流石にない。それをすれば、瞬く間に彼をレーザーが貫くだろう。

 

 

 

腕を盾にすればレーザーをある程度耐えられるが、それもやはりいずれジリ貧になるだけだ。しかも、ライフルを失い、回避以外の集中力をビットに全て回せる様になったセシリアのビットの精度は更に上がる。

 

 

 

 

 

 

「やっぱ数を減らすしかねえか!」

 

 

 

 

 

 

翔太郎が選択したのは、周りのビットを撃ち落とすことだった。

 

しかし、翔太郎のハイパーセンサーに移るセシリアは、ライフルを取り出した翔太郎に急接近した。

 

 

 

 

 

 

「っ! セシリア!」

 

 

 

 

 

「はあああああ!!」

 

 

 

 

 

 

翔太郎が一度ライフルを収納し、拳を構えた瞬間、セシリアの体がブレる。

 

 

 

 

 

 

 

「……ミサイル!?」

 

 

 

 

 

 

 

セシリアがブレた場所はミサイルの射線上、しかもすでにミサイルは発射されていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「う…おおおおおお!!」

 

 

 

 

 

 

避けるのが間に合わないと判断し、両手を前に構える翔太郎。そんな翔太郎をミサイルの爆風が襲った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ!……セシリアは!?」

 

 

 

 

 

さしもの黒のISの腕も、ミサイルを直撃を受け止めるのは無理があったか、装甲への明確なダメージが見て取れた。

 

 

そして……

 

 

 

 

 

 

「チェックメイト……ですわね。」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあっ!」

 

 

 

 

 

 

爆風が晴れる。翔太郎の周りを取り囲むレーザービット。そして背後のセシリア。翔太郎は背部のスラスターを深々と切り裂かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

「……すげえな、コイツは……流石だぜ。」

 

 

 

 

 

「これで……決着です!」

 

 

 

 

 

「ああ……だが、最後にもう一足掻き…させて貰うぜ!」

 

 

 

 

 

 

 

一斉に照射されるレーザー、ミサイルの雨。その中に翔太郎が突っ込んで行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そしてーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「試合終了。勝者セシリア・オルコット。」

 

 

あの時と同じアナウンスがアリーナに、学園中に響く。

 

 

 

 

ーーーー 左 翔太郎、脱落。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「はっはっは……負けちまったか。」

 

 

 

 

 

「ええ、今度こそは私の勝ちですわね。」

 

 

 

 

 

「ああ、文句無しだな。」

 

 

 

 

 

 

セシリアに敗北した俺は、そのままアリーナでセシリアと語り合っていた。 いやぁ、正直負けるつもりは無かったが……あそこまで強くなってるとはな。参ったぜ。

 

 

 

 

 

「翔太郎さんも、専用機、かなり使いこなせていた様ですね。」

 

 

 

 

 

 

 

「つってもこれのコアは『打鉄』だ。そう難しくはなかったぜ。ま、負けちまったけどな。」

 

 

 

 

 

 

前の時にビットを早く処理できたのがどれだけ楽だったのかよく分かったぜ。

 

お互いに笑い合うと、セシリアの顔付きが真剣なものに変わる。

 

 

 

 

 

「…では。話を変えて……よろしいですか?」

 

 

 

 

 

 

「……ああ、いいぜ。どんと来いだ。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「翔太郎さん。……私は貴方をお慕い申し上げておりますわ。……どうかこの私と……交際して頂けませんか!」

 

 

 

 

 

 

 

「ああ……勿論いいぜ。セシリア。」

 

 

 

 

 

 

この言葉を言うためだけに、数ヶ月。長かったな、俺。

 

考えてみれば、遠慮も何もいらなかった。こんなにまで俺の事を想ってくれる女性がいてくれる。それだけでよかった。しかもそれがセシリアならもう言うことなしだ。

 

馬鹿だな……俺は。こういう時こそカッコつけなきゃいけないってのに。気の利いた台詞の一つにも出てこなかった。

 

 

 

 

 

「……!ありがとうございます!!」

 

 

 

 

 

 

 

「うおっ!お、おいおい。」

 

 

 

 

感極まったのかセシリアが抱きついてきた。い、一応学園中に見られたんだよな?これ。……まあいいか。

 

 

 

 

 

 

「待たせて悪かったセシリア。ごめんな。」

 

 

 

 

 

「もう、本当ですわよ?……これからたっぷり、償ってもらいますわ。」

 

 

 

 

 

「ああ、そうさせて貰うぜ……でもその前に、だ。」

 

 

 

 

 

セシリアを一度放し、その前に跪く。

 

 

 

 

「俺の王冠を受け取ってくれるかい、お姫様?」

 

 

 

 

「!……ええ、勿論。受け取らせて頂きますわ…」

 

 

 

 

セシリアの手が王冠に触れる。悪いなフィリップ、一夏、俺はここまでだ。

 

 

 

 

 

そして王冠が取り去られーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

「あ。マズイかも………」

 

 

 

 

 

 

「なに?お姉ちゃん。今良いとこなのに。」

 

 

 

 

 

 

「……い、いやぁ〜〜〜、王冠の電撃スイッチはどこやっちゃったかな〜って。」

 

 

 

 

 

「……まだ、解除してなかったの!?」

 

 

 

 

 

「もうセッシー王冠取っちゃうよ〜〜?」

 

 

 

 

 

 

「だからあれほど一度使ったら切っておけと!」

 

 

 

 

 

 

「待って待ってね〜〜…………、あった!!間に合え!!」

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ビリリリリリリリリリリ!!

 

 

 

 

 

「アババババbbbb!??」

 

 

 

「しょ、翔太郎さーーん!!」

 

 

 

 

 

 

 

なん……でこうなるんだぁぁあ!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「おお、来人、翔太郎が脱落した様だぞ?」

 

 

「……そうか、勝ったんだね、セシリアさん。」

 

 

 

「と、言うわけでそろそろ取らせて貰う。」

 

 

 

「……なら、逃げさせて貰おうかな?」

 

 

 

 

アナウンスで翔太郎の脱落が放送されたころ、僕はラウラちゃんに追いかけられていた。

 

 

 

女性の大群をガジェットを使って撒いたのは良かったけど、ラウラちゃんは引っかからずこうして追ってきている。

 

 

 

「ラウラちゃんは僕との相部屋を希望しているのかい?」

 

 

 

「別に来人との相部屋が嫌な訳では無いが……私の目的は違う。何、教官の訓練を受けられるいい機会なのでな。それに……」

 

 

 

ラウラちゃんの手が、危うく僕の身体を掠める。

 

 

 

 

「姉さんとパパが見ている行事だ。本気で臨まねばなるまい。」

 

 

 

「それで狙いが僕……。合理的な判断だ。」

 

 

 

 

「悪いな。」

 

 

 

「いや、身体能力で僕が他の二人に劣っているのは自覚してるさ。気にすることじゃない。」

 

 

 

ましてラウラちゃんは軍人……はっきり言って比べるのも烏滸がましい。……衣装がドレスなせいで少し動きづらそうなのが唯一の救いかな? ……いや、ドレスでも無ければ最初の女子の集団に僕は飲み込まれていただろう。

 

……そろそろ真面目に限界が来そうだ。単純な鬼ごっこ……これが敵なら、ガジェットなりファングなりで対抗できるけど……遊びの範疇では僕の苦手分野だ…。

 

 

 

 

「動きが鈍ったな。頂く!」

 

 

 

 

……ここでリタイアかな?と思ったその時。廊下の奥から数人の影が現れた。

 

 

 

 

「ああっ!? 園咲くんだ!」

 

 

 

「ほ、ホントだ!」

 

 

 

「ま、まだチャンスは残ってたわね!」

 

 

 

 

彼女達は確か……さっき翔太郎を追っていた面子だ。おそらく翔太郎が脱落して他の所へ行く途中……

 

 

 

 

「む? …どうやら見つかってしまったようだな。」

 

 

 

「…これは好機…な訳でもなさそうか。」

 

 

 

 

気を取られたラウラちゃんの動きが鈍ったのはいいものの、結果的に追っ手が増えてる。

しかも翔太郎を狙っていた人達にとって、今の疲労した僕はこの上ないチャンスだ。

 

こうも見られてちゃガジェットも効果無いだろうし………? あれは………

 

 

 

 

 

『待ちなさい一夏ぁ!』

 

 

『観念しろ!』

 

 

『『『織斑く〜ん!!!』』』

 

 

『だから皆目が怖いって!?』

 

 

 

 

 

ラウラちゃんの脇を抜けて走り出す。走りながら外を見ると、未だ女生徒の大群に追いかけられている一夏の姿があった。なにやら賑やかなので、僕の周りの人も気付いただろう。

 

当然僕の追っ手も追ってくる。持って二、三分……。せめて一夏に近づいて、彼の負担を軽減しようか。

 

 

 

昇降口を抜け、外に出る。脇目もふらず、一夏の近くへ駆け出した。

 

 

 

 

「あ、あれって園咲くん!?」

 

 

「何か疲れてない?」

 

 

「……と言うことは!!」

 

 

 

流石に一夏自身に近づくことは叶わなかったけど、何人かはこっちに気付いたようだ。…………あの集団の先頭は篠ノ之箒と鈴ちゃんか。道理であんなに騒がしい訳だ。

 

 

おっと、感慨に耽っている暇はない。彼女達を引き付けないと……。

 

 

そう思って走り出すと、僕の前に人影が現れた。

 

 

 

 

 

「……はぁ…はぁ……や、やっと見つけたよ…」

 

 

「シャル!?」

 

 

 

それは、目に見えて疲れを見せるシャルだった。いや、シャルだけじゃない。彼女の後ろからも、何人かの生徒が見える。……意図せずとはいえ、挟み撃ちになってしまったらしい。

 

 

 

 

 

 

ふう……流石にここまで……かな。先に休ませてもらうよ、一夏。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーー 園咲来人、脱落。

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

「えぇえ!? もう俺一人ぃ!?」

 

 

 

「一夏ぁぁ!!」

 

 

 

「あのなぁ!なんで皆そんな疲れないんだよ!!」

 

 

「疲れてるわよ!」

 

 

 

「じゃあちょっとくらいスピード落としてくれよ!」

 

 

 

「女にはねぇ……譲れないものがあんのよ!」

 

 

 

「「「「同じく!!」」」」

 

 

「やっぱり何か怖いって!………あ、待て待て反対からも!?」

 

 

 

「「一夏!」」 「「「織斑君!」 」」

 

 

「う…アリーナに…いや無理だろこれ!」

 

 

 

『『『織斑君!!!』』

 

 

 

 

「ウワァァァァァァ!!」

 

 

 

 

 

ーーーーーーーー 織斑 一夏、脱落。

 

 

 

生徒会企画『シンデレラ』 終了。

 

 

 

所要時間、一時間三十二分。

 

 

左 翔太郎→ セシリア・オルコット

 

 

園咲 来人→ ラウラ・ボーデヴィッヒ

 

 

織斑 一夏→ 多人数同時のため、判定待ち。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

『克己、そちらは大丈夫か?』

 

 

 

「ああ。これで五体目だ。」

 

 

 

『私も似たようなところだ。その無人機に変わっていたことはあったか?』

 

 

 

「いや、無い。精々速く硬くなったくらいだが、完全な時間稼ぎだ。…既に敵が中にいることも考慮するべきだな。」

 

 

 

『入場者の確認は私が保証するが?』

 

 

 

「…篠ノ之束だ。……案外地下あたりから来るんじゃ無いか?」

 

 

 

『否定は出来んな。だが生徒会長が見張っている。気付けば此方にも連絡が来る。』

 

 

 

「そうか。ま、企画が無事に終わったんだ。多少は楽になる。生徒の避難は?」

 

 

『完了してる。シールド付きのアリーナの中だ。園咲のハッキング対策もある。それに、何かあれば私が駆け付けられる場所だ。………ふふっ。』

 

 

 

「何だ?」

 

 

 

 

『生徒思いになってきたな、克己?』

 

 

 

 

 

「…………切るぞ。」

 

 

 

『何だ? 否定はしな…』

 

 

 

 

 

 

 

「……さて。ネズミを探してみるか………」

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

IS学園の地下。生徒の中の内通者から合図があった。

企画学園の終わった気の緩みに漬け込む…らしいが、どうせそう変わらない。

 

 

 

 

「よし、終わったみたいだ。いくぞお前ら。」

 

 

 

「「「了解。」」」

 

 

 

周りの雇われ兵どもが準備を進める。自分達がメモリの実験台で、ここで確実に死ぬだろうことなんか分かってないんだろうな。

 

 

 

「オータム様。この覗き野郎はどうします。」

 

 

 

「『船』の中にぶち込んどけ、若いし実験台くらいにはなるだろ。さっさといくぞ。」

 

 

 

 

さっき来た赤髪が乗って来た『船』に乗せられる。あいつも見たりしなけりゃ、それなりの人生を送れたろうに。もう真っ当には無理だろ。少し同情してるやるよ。

 

 

 

 

「そう急くな。…随分気合が入っていると見える、オータム。」

 

 

 

「…手前には関係ねえ。M。」

 

 

 

…やっぱコイツは気に食わねえ。死神の次くらいにな。

 

 

 

「……スコールにいいところを見せないとな?」

 

 

 

「……そんなに死にたいのか?」

 

 

 

「…フフフ…」

 

 

「チッ…!」

 

 

 

 

本当にコイツは気に食わねえ……! ……だがな。今は我慢だ。『白式』を手に入れて、余裕ぶっこいてるコイツも死神もぶち殺す。必ずだ。

 

 

 

 

必ず……、ISもメモリも…何もかもを手に入れるのは、私とスコールだ!

 




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