IS×仮面ライダーW 〜二人で一人の探偵達+αが転生しました〜   作:prototype

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一ヶ月も空けてしまいすいません。投稿ペースはひどくなる一方ですが、エタるつもりは無いのでご安心を。


第四十五話

IS学園、学園祭。

 

俺たちの喫茶はかなりの盛況ぶりだった。

 

 

入場許可証は生徒に一人一枚ずつ配られていると言ったが、実際に学校を回る人間には生徒も混じる。それなりの人数が来るし、赤字にはならねえだろう。

 

 

因みに現在俺とフィリップがウェイター、一夏が厨房で働いてる。

 

まあメイド喫茶の時点で想像は出来てたが、俺とフィリップは執事服だ………そういやフィリップは女装したこともあったっけか。

 

 

「織斑一夏の特性オムライス、お待ちどう!」

 

 

「……おお!これが織斑君の!?」

 

 

「と、というか左君と園咲君の執事服の威力が高いわ…!し、写真はオッケーよね!?」

 

 

ここに来るお客さんは大体こんな感じだ。見事に一組に揃っている俺たちが客引きになった形で、鈴のやつは羨ましがってたな。

 

流石にそろそろ男性操縦者が学園にいる状況にも慣れてると思うんだがな。ま、こういう状況が嫌って訳でもないが。強いて残念なのは、俺とフィリップのシフトの時は殆どのウチの女子が裏方に行っちまうくらいだ。お陰で今は完全に執事喫茶だな。

 

 

だが、こうして盛り上げたりはしゃいだりしてると、クイーンとエリザベスを筆頭にした面子を思い出す。

 

 

……いけねえ。虚しくなるだけだ。生きてるだけ、今を楽しまなくちゃな。

 

 

 

「左君!料理上がったよ!」

 

 

「ん。すぐ行く!」

 

 

 

 

 

……そういえば、弾達はもう来てるのか?

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「……え、えーっと……どこだ?ここは。」

 

どうしてこうなった………。折角IS学園の土を踏めたってのに……。

 

 

 

「くそぅ!それもこれも男子トイレが少ないせいだ!」

 

 

 

そう、これだ。IS学園にやっと入れたと思ったら、緊張したからか腹が痛くなった。慌ててトイレの場所を聞くと、男子トイレは、嫌がらせかっていうくらい入り組んだ場所にあるし、だからこうして一番近い職員用のトイレまで来たんだが……

 

 

 

「どうやってきたっけ……確か……ここは……右?嫌でも見たことないような……」

 

 

来る分には問題ないが、この学園の構造はかなりややこしい。まあ、本来展示されるところじゃないみたいだし……つっても近くに地図くらい置いてくれよな……

 

 

「……階段昇って来たし、一回降りて下に出ちまえば分かるだろ。」

 

 

嫌……一度トイレの位置まで戻った方がいいか?

はあ……こんなことなら地図持ってくれば良かった。蘭に預けなきゃなあ…

 

 

「よっ……と。取り敢えず降りてみたが……外への出口は……向こうか?」

 

 

明るいしな。まあ迷ってるつったって所詮は校舎内だ。何とかなるだろ……

 

 

 

ガガガガ…………

 

 

 

 

「ん?……何だ、今の音…」

 

 

 

突然、地面から響くような音が聞こえた。小さかったが俺も伊達に『私設・楽器を弾けるようになりたい同好会』のベース担当じゃねえ。少しは耳のいい方の筈だ。

 

 

 

「ははっ、まさかIS学園の地下には秘密の研究室が〜、みたいな?」

 

 

一夏達三人がIS学園に行っちまった後、色々学園について調べてた時期があった。……決して僻んでた訳じゃない。ああ違うとも。だからまあ、ネットの掲示板に乗るような都市伝説なら多少は知ってる。

 

 

「……ホントに地下に何かあるのか?」

 

 

仄かにデンジャラスな香りがするが、そこは俺だ。スリルを求めるのは男の性ってな。……というかこんだけ回されたんだ。偶然迷ったっつって、ちょっと見たってバチはあたんねぇだろ……

 

 

とか考えて自分をやり込めつつ、俺は地下への階段を探すのだった。

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「中学での文化祭も中々興味深かったけど、高校のものも素晴らしいね。ゾクゾクするよ。」

 

 

「確かに雰囲気は違うだろうが……来人、お前店回る度に何か買い食いしてたらいつかみてぇに太るぞ。」

 

 

 

「……ふう。安心したまえ翔太郎。流石の僕もあの一件では懲りた。食後には運動もするさ。」

 

 

「食わねえ選択肢はないのかよ……」

 

 

 

 

取り敢えず二時間程のシフトしてが終わった俺たちは、学園祭を回っていた。

 

 

予想してたが、やたら色んな人から『お誘い』を受けた。まあ俺もフィリップもそう安請け合いはしないが。

フィリップには半ばデュノア社がついてるみてえなもんだし、ISの武装も調整も自分でするから問題なし。

 

俺もこいつがあるからな。付き合うとしても彼処だけだ。

 

因みに生徒からの『お誘い』は断らず、なんだかんだ全部の企画を回って来てる。今は三年の喫茶で休憩中だが、さっきは簪のクラスの企画の菓子屋にも行った。そんな感じで溜まりに溜まった食物を今消化してるって訳だ。

 

 

 

「そういや……今頃一組は大変だろうな」

 

 

丁度俺たちのシフトの終わりに、蘭に鉢合わせた。

 

次は一夏が執事のシフトだと伝えると、目の色変えて突っ走ってった。……俺たちがここにいる……つまり教室には一夏以外に女子しかいないと気付いたらしい。

 

 

確か……箒も同じシフトだった筈だし、鈴の奴だってあいつのことだ。シフトの情報を仕入れて自分のところのシフト合わせるくらいはやるだろう。

 

まあ……あの三人に限らずだが……最後に決めるのはあいつだ……俺にも言えることだが。

 

 

「来人、次のシフトはいつだった?」

 

 

「?ああ、生徒会長が来た時、君は部屋にいたか。実はシフト決めの日、君とセシリアさんが帰った後、生徒会長が来てね。僕と君、一夏の三人は12時ぴったりに第四アリーナに集合だ。」

 

 

「…おいおい、大事な連絡なら……」

 

 

「彼女は詳しいことは言わなかった。人目があったこともあるかもしれないが……なんにせよ、この学校の行事だ。外部からの干渉がないとは限らない、恐らくその辺りの対策の話だと思う。まだ時間はあるけどね。ここを出次第向かってもいいよ。」

 

 

「オーケーだ。」

 

 

そう言って俺も、手持ちの菓子を頬張る。

 

一応俺たちにもISの携帯は許可されてるし、恐らく大道やクロエは警備に回ってる筈。

 

 

流石に今回くらいは平和な行事にしてほしいもんだ。

 

 

12時ねえ。確か昼休みの後は生徒会の企画だった筈だ。

案外、平和な話かもな。

 

 

 

一通りの食物を片付け、俺とフィリップは生徒会室へ向かった。

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「そろそろ12時か。じゃあ皆、後はよろしく!」

 

 

「え?一夏さん行っちゃうんですか!?」

 

 

「ああ、アレ(・・)ね……」

 

アレ(・・)だな……」

 

 

アレ(・・)だ…」 「アレ(・・)だ…」「アレ(・・)だ…」

 

 

「えっ!?な、何なんですかアレって!一夏さん何かやるんですか!?」

 

 

「蘭……貴方には関係のない話よ…」

 

 

「鈴音……譲らんぞ…!」

 

 

「な、何で二人の世界に入ってるんですか!」

 

 

 

 

何かざわざわしてたけど、会長から言われた時間が近くなったから、俺は皆に挨拶して、教室を後にした。

 

いやぁ、執事の役なんてやったこと無かったけど、セシリアと一緒で良かったなぁ…。やっぱり本物の執事さんとかセシリアの家にいるのかな?

 

 

暫く歩いていると、すぐに生徒会室は見えてきた。そっか、昼休みが近いから、どこも一段落なんだな。道理で道が空いてる訳だ。

 

 

ここの学園祭は、午前の部と午後の部に分かれてて、間に生徒の休憩と、生徒会の企画を挟むらしい。多分そのことで呼ばれてるんだと思うけど…何するんだろ?

 

 

 

「失礼します。……え?千冬姉?それに大道……先生まで?」

 

 

「……行事中だから注意はしない…が、いい加減覚えろ。」

 

 

「ご、ごめん……」

 

 

「おっ、織斑君。よし、これで揃ったわね。」

 

 

 

俺が中に入ると、会長に簪、のほほんさんとそのお姉さんっていう生徒会メンバーと、翔太郎、来人、千冬姉、そして大道がいた。

 

 

 

「えっと……てっきりこの後の企画の話かと思ってたけど……何か問題でも起きたんですか?」

 

 

生徒会メンバーと翔太郎達は兎も角、千冬姉と大道までいるとなると、事件でも起きたのか疑うのは仕方ないと思う。

 

 

「ん〜ん〜、企画の話ってことは〜間違いないよ〜?」

 

俺の質問に首を振ったのはのほほんさん。その言葉を紡ぐように、簪が声を出した。

 

 

「本音の言う通り……。今回は企画への協力を頼むために呼ばせてもらった…。でも協力というより………お願い?」

 

 

 

「「「お願い?」」」

 

 

俺や翔太郎達の声が重なる。

 

 

「ズバリ!『生徒会企画で皆の不安をぬぐっちゃおうぜ計画』!!」

 

 

バッと扇子を開いて会長が言う。扇子には今言った計画の名前が……、あの扇子どうなってんのかな?ISの一部だったりして……

 

 

「……ノーリアクションはお姉さん辛い、辛いわ。」

 

 

会長が落ち込みながら言うから、みんなの方を見回すと。

 

うん……何か微妙な顔してる…。

 

 

「それで、その計画というのは?」

 

 

「…容赦無いのね園咲君……まあいいわ。文字通り、今回の企画を通して、この学園の人を元気づけることよ。」

 

 

「元気づける?」

 

 

聞き返した来人に、更に会長は続けた。

 

「今年はこの学園始まって以来とも言っていい程のトラブル続き。学年行事の度に何かしら問題が起こってる。ここまではいいわね?」

 

 

 

俺、翔太郎、来人の三人が頷く。……確かに考えてみれば、平和に終わった行事が無い気がする。クラス代表決めの時でさえ翔太郎倒れたし。

 

 

「直接事件に関わり、解決できた人達はまだいい。でも、折角の行事を、訳の分からない理由で潰されたり、危険に晒されて怖い思いをした子が沢山いる。今では落ち着いたようだけど、一時期自主退学を考えてた人までいるわ。」

 

 

 

……そうだよな、クラス対抗とか臨海学校の時は特に、いつ人が死んでもおかしく…なかったんだよな。

 

 

「だからこそ、こうして華の男性操縦者を使って皆を元気にしよう…そう思ったの…」

 

 

真剣な顔で喋る会長。……やっぱりこの人も生徒を大切に思ってるんだな。普段が普段なだけにちょっとアレだったけど再確認したよ。

 

「会長……よし、分かりました、何でも言ってください!」

 

 

「ああ。この学園の生徒の為ってなら、俺たちが一肌脱がないわけにはいかねえよな。」

 

 

「ふふ、君たちなら言うと思った。僕も同意見だ。乗ろう。」

 

 

 

 

「三人とも……本当にありがとう!!」

 

 

 

 

 

前言を撤回したくなる出来事が起こるのは、この時から約20分後………生徒会の企画が始まった、まさにその時だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「うおおおおおおお!?」

 

 

 

「予想以上だね……、これはマズイかもしれない…!」

 

 

 

「これ時間一杯もつのかよぉ!」

 

 

 

俺たち三人は逃げる。ひたすら逃げる。

 

 

 

追ってくるのは女子の大群。いや、波?その狙いは俺たちの被る王冠だ。

 

 

 

「これさぁ!何か会長が楽しみたいだけな気がするんだけどぉ!?」

 

 

「だが!現に彼女達は高揚していて如何にも楽しげだ!その点では、彼女の目的には合っている!」

 

 

 

「だからってなぁ……、限度があるだろうが!」

 

 

 

 

企画名『シンデレラ』

 

 

この名前を聞いた時、正直俺は劇か何かと思った。

 

というか、この題名から、今のこの現状を察するのはフィリップだろうと無理だぜ。

 

ルールは単純、王子に扮した俺たちが逃げる。残った全学年の全女生徒が俺たちを追う。

 

王冠を手にした人間は、その男と相部屋になる権利を得る……。まあ確かに俺たちからの承諾は必要なわけだ。

 

 

別に逃げるのは女生徒と相部屋になるのが嫌なわけじゃない。日が短かったが、俺たちは三人とも女生徒との相部屋を経験してるし、特別何か俺たちが困ることはない。

 

 

 

問題は、始まって数分後の会長の台詞だ。

 

 

 

『あ!因みに、王冠には国家機密級の情報が保存されてます!もし自分で他の人にあげようとでもしたら、きっと心の清い王子様のこと……あまりの自責の念で雷に打たれたようなショックを受けるでしょう!』

 

 

……要するに、ギブアップは無い。逃げなくても同じことが起きるらしい。しかもあの会長の事だ。絶妙に手加減したとしても、何かあるに違いない。つまり、生徒を楽しませるためにも、俺たちの身の安全の為にも、走らにゃ、ならん。

 

 

 

ルール説明がその感じだと、下手すると生徒会長の気まぐれで増える気がする。

 

 

いま分かってるのは、さっきも言った大まかなルール。

 

 

『基本的には』俺たちも他の生徒もISの使用はできないという不安なものだけだ。

 

 

……取り敢えずいまは目の前の状況をどうにかしよう。

 

 

 

「二人とも!どうする!」

 

 

「取り敢えず別れるぞ!集団から逃げ回ってちゃ、いずれ三人纏めて囲まれるのがオチだ!」

 

 

「了解!」

 

 

「翔太郎……お互い生き延びよう!」

 

 

 

フィリップと一夏、俺が分かれる。恐らく女子も…ぴったりとは言わないが三手に分かれるだろう。

 

 

さて……俺の逃げ方だが……、さっきはああ言ったが、俺たちが囲まれる程になるのは時間がもう少しかかるはず。

 

 

本来なら、探偵仕事にも逃走は付き物だ。 今より数は少ないが、こっちは生身、向こうは怪人、そんなハードな状況も何度か経験した。

 

 

だが、それとは別だ。一応この学園の地図は分かってるつもりだが、相手にはここで三年過ごした上級生もいる。裏をかかれないとも言い切れない。

 

それに数ってのは無視できない問題だ、一夏やフィリップよりは体力に自信はあるが無限じゃねえ。ヘトヘトに捕まるよりかは……

 

 

 

「アリーナで撒いた方がいいか?」

 

 

 

アリーナは広い。多くの人の目に触れる。出口も多いし、そう囲まれることも無いだろう。今回の俺たちの役目は盛り上げ役。ガジェットも持ってるが、意地でも逃げ切るよか、アリーナで華々しく負けた方が良いのかもな。まあわざと負けるわけじゃねぇが。

 

 

 

ここから一番近いのは……

 

 

「第三アリーナ、だな。」

 

 

 

 

ダダダダダッ!!

 

 

 

「アスリート組か?早いなおい!」

 

 

 

急いでアリーナに急行する。

 

改めて実感するが、俺は前の世界での全盛期程の運動能力を持ってねえ。もう少し鍛えてみるかね。戦いの方なら千冬さんや大道(あいて)には事欠かないんだが。

 

 

 

 

おっともう着いたか。

 

 

ん……?

中に誰かいるのか………っ!?

 

 

 

 

 

 

成る程な。『基本的に』ってのはそういう意味か!

 

 

 

だが、これは感謝するぜ、生徒会長。

 

 

 

俺の罪の償いの時が来たわけだ………!

 

 

 

 

 

 

 

 

「お待ちしておりました、翔太郎さん。」

 

 

 

 

 

「………来たぜ、セシリア。………これはつまり、そういうことでいいんだな?」

 

 

「ええ、今こそ、この私の想いと、あの日の決闘に真なる決着を!この決闘、お受けしていただけるかしら?」

 

 

 

「ああ……勿論だ………望むところだぜ!!」

 

 

 

 

 

俺がセシリアに、セシリアの覚悟に本当に向き合う時が!

 

 





次回、翔太郎vsセシリア

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