IS×仮面ライダーW 〜二人で一人の探偵達+αが転生しました〜   作:prototype

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100.000UA! 連載1周年!
皆様ありがとうございます!

更新は遅れ気味ですが、完結目指して頑張っていきますので、皆様よろしくお願いします!




第四十話

…………………………

 

 

『……丈夫、…く……から。箒ちゃんは……………に…………なれるんだからーーーー』

 

 

 

………………………………………

 

 

……なんだ?これは………、姉さん……?

 

 

 

 

 

「箒さん!一人そっちに行った!」

 

 

「!…はぁっ!」

 

 

照井さんの声で我に帰る。目の前に迫っていたのは、赤黒い、両手に武器を構えた怪人だった。

 

 

 

そうだ、確か私たちは、あの広間から離脱したんだ。

 

怪人たちの中の一人。燃え盛る炎のような姿をした怪人が、火山の噴火の如くマグマを撒き散らしたので、私たちは閉じていた扉を切り開き、あの場から逃れたのだ。

 

 

 

そして、そのまま広間から遠ざかりつつ、入った部屋で………っ!

 

 

「ふっ!………っ!そこだ!」

 

「…………」

 

 

「っ!ガトリング……?……くっ!」

 

 

怪人の両手の武器が大剣からガトリング砲に変わる。

…どうやらそれがこいつの能力らしい。確かに強い、だが!

 

 

「それだけならば、シャルロットには遠く及ばない!」

 

 

『状況に合った武器を即座に装備する』程度の相手なら、常に二手三手先を読みながらそれを行うシャルロットの方が数段やりにくい。

 

 

空裂と雨月を振り払い、怪人に深く切り込んだ。

 

怪人はそのまま、武器を大きく構えた照井さんの元へ吹き飛んでいく。

 

 

「照井さん!」

 

「!よし!」

 

 

『ENGINE! MAXIMAM DRIVE!』

 

 

「はぁっ!ふっ!…でやぁ!」

 

一撃ごとに赤い軌跡を残す斬撃が炸裂する。

 

「「………!!」」

 

 

あらかじめ照井さんと交戦していたカブトムシの怪人ごと、照井さんが赤黒い怪人を斬り伏せた。

 

 

これで一先ずこの部屋に入って来たのは全て倒したな。次が来ないのを見るに、どうやら向こうも別れて探しているらしい。

 

扉の方を警戒していると、横にいた照井さんが話しかけてきた。

 

「箒さん、さっきの戦闘の音を聞きつけ、じきに残りのドーパント達がやってくる。…だがその前に聞きたい。」

 

 

照井さん足元に落ちていたメモリを踏み砕くと、こちらを向いてそう言った。その手には、先ほど私が見たものが握られていた。

 

 

「この、コネクタ手術用の手術器……。これを見たとき、君の様子が変わった。……何故だ?」

 

 

 

そう。私たちが入った部屋は、どうやら怪人の実験室らしい。怪人が暴れても大丈夫そうなほど頑丈そうに見える水槽のようなものや、数多の薬品。すでに照井さんが調査用のものを残して砕いてしまった、多量のガイアメモリなどがあった。

 

 

その中で、私の目に入ったものがそれだった。

 

 

私は、そんなものを見た覚えがない。にも関わらず、何故かそれを見た瞬間。頭の中で何かが見えた。

 

人。それも女性。声からするとあれはーーー

 

……その女性の手にはその手術器が握られていた。

 

 

確かに、一夏から聞いたことによれば、福音などはメモリの力に酷似した力を使っていたし、メモリだって存在はしている。

 

 

だが……、だからといってその手術器に反応などするか?

特に私がメモリと関わっといえるのは、その福音の件だけだ。何より、ガイアメモリそのものを見ても何もなかったというのに。何故その手術器に反応する?

 

 

「……すみません照井さん。…自分でも分かりません。」

 

 

「……そうか。左達が言うには、そちらの世界にもメモリがあるらしい。何か事件でもと思ったのだが……。まあいい。仮に隠したい事だとしても、これ以上追求はしない。……ただ、ここは敵地だ。俺も君を守るが、注意だけは怠らないよう、気をつけてくれ。」

 

 

「…はい。」

 

 

君を守る…か。こういう事を自然に言うあたり、この人も一夏に近いのかもしれ………いや、そもそもこの年齢差ならば、一夏のような見境い無しとは違って、何というか、娘に対するそれのような………あ。

 

 

 

「どうした?顔が赤いぞ。何かあったのか…?まさか…ドーパントに何かやられたのか!?」

 

 

「い、いえ!違います!な、何でもありません!」

 

 

そういうことか!うぅ…我ながら少し恥ずかしい、そうか、私は照井さんに父を重ねているのか……。道理で若い姿を見てる左達とは印象が変わる訳だ。

この人が私を守ると言った時の安心感にも納得がいったぞ…。

 

だが、父とは会えなくなって久しい……、こんな感情を抱くのも無理はない……筈だ。

 

 

 

人が少しーー余り良いものばかりではないがーー思い出に浸っていると、騒がしい音が外から聞こえてくる。

 

 

 

走っているような音ではなく、耳障りな羽音と、時折聞こえる壁を蹴りつけるような大きい音。…間違いなく奴だ。

 

 

開いている扉から、黒い弾丸が飛び出す。

 

奴らのリーダー格。ホッパーと呼ばれた怪人だ。

 

 

「っ!照井さん!」

 

壁を蹴り付けたようで、ホッパーは猛スピードで照井さんに突っ込んでいく。あれは……避けれない!?

 

 

「何!?」

 

 

「っ!?」

 

しかし、照井さんの動きは、私の想像とは食い違っていた。突っ込んでくる怪人に臆することなく、車のエンジンの様な轟音と共に、前に加速することで、ホッパーの攻撃タイミングをずらしつつ、さらに一撃を加えたのだった。

 

 

 

「……おお!」

 

 

口から自然と感嘆の声が溢れる。咄嗟の判断、そしてそれを実行しうる度量。どちらかが欠けていたら、あんな行動はできはしない。

 

 

「……チィッ!」

 

 

斬撃を受け吹き飛んだホッパーはすぐに起き上がり、後方に跳躍し、壁に張り付く。

 

そのまま跳躍し、対岸の壁へ。……どうやら、撹乱するつもりのようだ。

 

 

 

扉からは、分かれていた残りの怪人達三体が入ってきている。

その中には、私たちが広間を離れる原因となったマグマの怪人もいた。私たちでもキツイというのに、そこで横たわっている先ほど倒した人達にマグマが当たればひとたまりもないだろう。

 

 

どちらに気を取られ過ぎてもダメか…!

 

「照井さん…、この場はどうする?」

 

 

「いくらISでもマグマと戦うのは危険だろう。……まずは奴を速攻で片付ける。」

 

 

「なら、私が援護を……」

 

 

「いや、一撃で大丈夫だ。あの飛ぶ斬撃で、マグマの脇の二体を阻んで欲しい。ホッパーには十分注意してくれ。」

 

 

「……それだけ?」

 

 

「ああ……。10秒で…終わらせる。さあ思い切り……」

 

 

 

 

 

 

『TRIAL!』

 

 

 

 

 

「振り切るぜ」

 

 

 

 

 

「……了解した!」

 

 

どうやら秘策があるらしい。信じてみよう…!

 

 

『TRIAL!』

 

 

「っ、はぁ!」

 

照井さんが奇妙な形の道具を、ベルトに装填しながら駆け出す。それに合わせ、マグマと他の二体を分けるように、斬撃を放った。

 

 

「………ふっ!」

 

当然背を向けたことで、ホッパーが襲いかかる。だが!

 

 

「捕まえた!」

 

 

背部に展開させたのは、鈴に使ったワイヤー付きのシザーアームを、発射機構を無くし、パワーを上げたものだ。

 

敵を捉えるという点において、先日のアームは中々便利だったからな。紅椿も学習してくれたようだ。

 

 

 

「………くっ!ぬぁ!」

 

 

ホッパーはもがいているが、アームはそれなりに長い。手足を振り回した程度では私には届かない!

 

そして!

 

 

「はぁぁ!」

 

 

薙ぎはらうように斬撃を食らわせる。先ほど照井さんに斬られて箇所だ。硬い甲殻を持っていようが、よく効くだろう!

 

 

「まだだ!」

 

 

さらに間髪入れず、ホッパーを地面に叩きつける!

 

 

「ぐ…あ…!貴…様!?」

 

 

 

叩きつけた衝撃でホッパーはアームから逃れてしまうが、何も問題はない。

 

 

 

「小娘がぁ……!」

 

 

 

 

 

すでに来てくれている(・・・・・・・・・・)からな。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ぐあああっ!?」

 

 

『TRIAL! MAXIMAM DRIVE!』

 

 

「9.9秒。ギリギリだったが…。それが、お前達の絶望までのタイムだ……!」

 

 

 

 

 

 

 

「ぐっ……うああああ!!」

 

 

 

 

照井さんがいつの間にやら宙に投げられていたタイマーのようなものを掴み、空中に数字が浮かぶと同時に、私に切られた傷をさらに上から切られたホッパーが爆散する。

 

同時に、後ろからも爆発音が聞こえた。ハイパーセンサーで確認できる、背後の熱源は三つ。

 

……つまりそういうことだ。

 

 

「……すごい人だ。貴方は。まさか10秒でここまでとは…」

 

 

「これを使うときは敵よりも時間との戦いになる。君の協力なしではまず出来なかったことだ。ありがとう。」

 

 

ホッパーのメモリを砕きながら、青い姿になっていた照井さんが言う。

 

……なんとも凄まじい人だ。警察と言っていたが、一体どれほどの修羅場を経験すればここまでになるのだろうか?

 

 

「う…」

 

 

「お前に聞きたい。他の行方不明者はどこだ。左達のところか?」

 

 

倒れたホッパーの男の胸ぐらを掴み、照井さんが尋ねる。しかし、男は不敵な笑みを浮かべ始めた。

 

 

「……ふっ、いい気に…ならんことだ。鳳様には切り札がある。出来ればそのISだけでも回収して置きたかったが…」

 

 

 

「御託はいい!早く答えろ!」

 

 

「すぐに分かる!もっとも……分かった時には既に手遅れだろうがな!」

 

 

「どういう……ことだ!」

 

 

 

「俺の仮面は特製品でね……!」

 

 

 

ピッ、と音がする。…この状況でその音は、嫌な予感しかしない!

 

 

照井さんが咄嗟に手を離し、私の前に立ち塞がるように構える。

 

 

 

「はっはっはっは!」

 

 

 

 

ボォンッ!

 

 

 

 

 

 

数秒後。そこまでの規模ではなかったが、爆発音が聞こえた。

 

 

「箒さん。君は……見ないほうがいい。」

 

 

 

「いえ……このくらい位は……うっ……」

 

 

 

見たくなくとも見えてしまう。

 

 

照井さんが咄嗟に手を離した時、背中から倒れた男。

 

その体に首は無く。本来それがあるべき場所には、赤黒いシミがあるだけだった。

 

 

「……こんな姿の遺体を残すか……。悪趣味だな……!」

 

 

照井さんの手が震えている。……あの仮面は、口封じのためもあるが、こうした精神ショックを相手に与える目的があるのようだ。

 

 

込み上げる吐き気を抑えながら、倒れている五人の男を確認する。

 

照井さんと一緒に爆弾の有無を確認し、一先ずの安心を得た私たちは、五人を背負い、広間への道を暗い気持ちで進むのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

「………逝ったか。オリムラ。いい仕事だったよ。」

 

 

目の前のモニターに映る、大きく『DEAD』と表示された男の顔を見て、ふと、呟いていた。

 

 

「これで彼の『作品』は全滅か。いや中々に感慨深い。」

 

 

……そういえばIS乗りの一人も『オリムラ』だったな。妙な縁もあるものだ。

 

 

さて。奴らがここに来るまで五分……いや、被害者を地上に戻すだろうし、もう少しかかるか?

 

出来れば起動前にISが欲しかったが……まぁいい。

 

 

さあ仮面ライダー。どちらが地球の記憶を背負うに相応しいか。勝負と行こうじゃないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 

大広間。残っていたデカブツを翔太郎達が一瞬で倒してしまった後、暫くして照井さんと箒が合流した。

 

照井さん達も、気絶した男の人を何人か抱えていた。

 

 

「照井、そっちは大丈夫だったか?」

 

 

「ああ、箒さんもいい助けになった。」

 

 

「いえ…そんな、助けと言うほどでは……」

 

 

「そんなことはない。胸を張っていいことだ。」

 

 

 

どうやら箒も向こうで上手くやれたらしい。いやぁ、無事で良かった。

 

その時だった。

 

 

 

「……役立たずは私だけってことね…」

 

 

 

俺の後ろにいた鈴が、ボソっとそう言った。

 

 

「…………鈴?」

 

 

「え?いや、違うわ、何でもないの。」

 

 

取り繕ってるけど…、元気が無いのがすぐに分かるぞ。

 

 

 

[鈴。]

 

 

[……何よ。]

 

 

[気にすんなって、誰も責めないよ。鈴が無事なだけで良かったよ。]

 

 

考えなしにやったから気の利いた台詞は言えないけど、何か言っておかなくちゃな。

 

 

[……どうせあんたには分からないわよ。]

 

 

しかし鈴はそう言うと通信を切ってしまった。思わず顔を向けると、プイと顔を逸らしてしまう。

 

……鈴が本気で拗ねてる……。

 

過去には二、三回くらいしか見たことは無いけど、今の鈴の様子はそう感じた。

 

 

 

「さて、織斑くん達は、この人達を上まで持っていくのを手伝ってくれ。あらかじめ照井が呼んだ応援が来てる筈だ。その後亜樹子と合流したら、そのままその場にいてくれ。」

 

 

鈴の方を暫く見ていると、翔太郎がそう言い出した。

 

 

「ちょっと待ってください!ここまでやったんだ。最後まで協力するよ!」

 

 

「私も一夏と同意見です。」

 

 

流石にここまで来ては…なあ?

 

 

 

「ダメだ。今までは鈴音ちゃんがいるから一応許可したし、対ISでも、助けに間違いなくなったが、もう彼女は助かったし、残るのは恐らくドーパントの鳳だけ。後は俺とフィリップ、照井で何とかなる。まだ何人か囚われてる人がいる筈だから、それを運ぶのだけ、後で手伝ってくれ。」

 

 

うう……翔太郎達を言いくるめる時に鈴のこととIS戦の経験をゴリ押しした反動かもしれない。

 

 

「でも、ほら、敵の黒幕ってんならやっぱり凄い奴なんだろ?だったら……」

 

 

 

『だったら尚更、一般人。それも依頼人である君たちを危険には晒せないさ。』

 

 

………論破は……俺じゃ無理だなこれ……

 

 

 

 

結局その方向に話は固まり、俺と箒、鈴はそれぞれ何人か男の人を持って、照井さんの部下に渡しに行った。

 

篠山だけは持ち方が雑だったのは許して欲しい。

 

このままいけば事務所で待つだけ。

そう思い、そのアジトの入り口から遠ざかる際だった。鈴がこういったのだ。

 

 

 

『私は鳳の場所を知ってる。』

 

 

 

そのまま鈴は、感覚だから口頭じゃ伝えられないとか、早くしないと記憶が薄れるかもなんて言って、無理やり三人を頷かせた。勿論俺と箒も便乗した。

 

さっき言われた手前、翔太郎達に対して申し訳無いし、どっちかと言うと翔太郎達も、勝手に動かれるよりは、ってのが強かったっぽいけどな。

 

照井さんによれば、大広間から出た廊下は結構複雑だったらしいから、案内がいるのだろう。

 

 

 

 

と思ってたけど、実際は違った。要するに広間で分断された時に、鈴や篠山が通ってきた、広間の上の方にある通路を使ったんだ。そういえばそうだよな。怪人はみんなそこから出てきたんだったら、繋がってるよな。翔太郎達も多分そう気づいたようだ。

 

それを飛んで行って無理やりこじ開け、中に入っていった。

 

 

 

さらに暫く道を進むと、部屋にたどり着く。大きなカメラと、それに移されるだろう壁の模様から見て、多分鳳が広間で出てきた時にいた部屋だろう。

 

 

その部屋にたどり着くと、待っていたかのように、壁の一部が隠し扉のように開いていく。その秘密基地チックな感じは、ここが本当に悪の秘密基地じゃなきゃカッコよく思ったかもしれない。

 

 

中には階段がある。ぐるぐると螺旋状になっているみたいで、俺たちはISの邪魔な部分を収納して、その階段を下っていった。

 

 

 

そして、漸く、先ほど見た顔が現れた。

 

 

 

「やあ、また会ったね。思ったより遅くて安心したよ。」

 

 

穏やかそうな笑みを浮かべるそいつ。鳳がそこにいた。

 

だけど俺たちの目は、それより後ろの機械に向く。

 

 

 

「五人……残りの行方不明者達か……。」

 

 

照井さんが言う。あの大きな機械に繋がれるように眠っている彼らが残りの被害者達らしい。

 

 

「これが気になるかい?……なに、その力は身をもって体感して頂くさ。」

 

 

よく見ると鳳が何かを持っている。…メモリだ。

 

 

「さぁ、話は終わらせたからね。早速始めよう。」

 

 

 

『GAIA!』

 

 

 

鳳が首筋にメモリを指し、光に包まれる。それと同時に、後ろの機械が反応し、緑色に光りだした。

 

 

 

現れたのは、緑の人形。

 

そう、例えるならマネキンみたいな。これまでのドーパントとは全く違う、文字通り『人の形』のドーパント。

 

顔には鳳の面影はなくて、無表情なのが少し不気味だ。

 

 

 

 

「これが、ガイア・ドーパント。君たちのエクストリームを参考に完成し、制作した。かつてのゴールドメモリ、エターナルメモリを超え、全てのメモリの頂点に立つメモリだと、自負している。」

 

 

声が聞こえるが、やっぱり無表情の顔の口は動いていない。訂正だ、正直、かなり不気味だ。

 

 

『新しいメモリ…?まさかガイアゲートを掘り当てたと?』

 

 

「その通り。この装置の下の下…その先に申し訳程度だが存在する。規模が小さいために、メモリの製造にはほぼ使えないがな?」

 

 

「だったら、てめえのそのメモリは何だっつうんだ。」

 

 

「ふふふ、身をもって体感して頂く、と……言ったはずだ!」

 

 

緑の異形が迫ってくる。それに先陣を切ったのは照井さんだった。

 

照井さんが手に持った剣でガイア・ドーパントに斬りかかる。

 

 

その剣は吸い込まれるようにして、ドーパントの左手に収まった。

 

 

「解析……完了。」

 

 

「何!?ぐっ!」

 

 

次の瞬間、奴の空いた右手に、照井さんの剣が現れ、照井さんがその斬撃を受けた。

 

その隙を狙い、剣を抑えていた左手が今度は照井さんの体に触れる。

 

 

「解析……、完了ぉ!」

 

『ACCEL…!』

 

 

緑色の体が一瞬赤く光ると、その姿は、鎧のようなものを見に纏い、背中に車輪があり、照井さんに若干近い。

 

 

「貴様……まさかアクセルを!」

 

 

バイクのエンジンのような音と共に、熱気を撒き散らすドーパントは、照井さんを吹き飛ばした。

 

 

「あの感じ、ただのマネっこって訳じゃあ、無さそうだな……!」

 

 

『解析…?いや、それこそガイアメモリを解析できるのは…………まさか!?』

 

 

フィリップが何かに築いたようにそう言う。

 

 

「そうだ。私は今、ガイアゲートと直接リンクしているのだ!」

 

 

ドーパントは笑った。残念ながらガイアゲートがどうこうはあんましわかんないけど、翔太郎達の様子からすると、いいことじゃ無いんだろう。

 

 

 

「だとしたら……その装置はそのための……!」

 

 

 

「またまた正解だ。流石は仮面ライダー。彼ら五人は皆、それぞれの違うメモリの過剰適合者。風都中の会社員の中ではたったの五人しかいなかったがね。」

 

 

『過剰適合者…つまりそれはより地球の記憶に馴染みやすい人間だ…。小さいゲートから、彼を介して……あの装置は恐らく、過剰適合者の力を借りて、彼とガイアゲートをリンクさせるものだろう…』

 

 

 

「そうだ。どれほど如何に強いドーパントがいたとしても、あくまで地球から切り離された端末。地球の記憶と直接リンクしている君たちにはどうしても不利だ。いわばこの装置は、地球の記憶の吸出し機なのだ。」

 

 

 

ガイアは床に触ると、床と同じ素材でできた槍のようなものがガイアの背後に展開される。

 

 

「ガイア・ドーパントは触れた、もしくは直接取り込んだデータを地球の記憶から引き出し、再現する。」

 

 

ガイアが指を鳴らすと同時に、槍がこちらめがけて飛んできた。

 

 

俺たちは皆、各々の武器でそれを弾く。しかし、弾き終えた頃には、すでにガイアは急接近していた。

 

 

『EDGE…!』

 

 

濁ったような音声と共に、ガイアの背中から、先端が剣になっている腕のようなものが飛び出す。

 

 

「そして勿論!接続した過剰適合者の適合しているメモリの力を、同じ適合レベルで操ることもできるのだ!」

 

 

予め手に持っていた照井さんの剣と合わせて三つの刃が俺たちを襲った。

素手だった翔太郎達が後退する。

 

 

『TRICERATOPS…!』

 

 

「うわぁ!」

 

 

俺は剣は防いだが、直後に投げられた棒のようなもので、吹き飛ばされてしまった。

 

 

 

 

「くそっ!」

 

 

『TORIGGER!』 『CYCLONE! TORIGGER!』

 

 

「無駄だ!」

 

 

『JUEL…!』

 

 

翔太郎達の放った光弾は、ガイアの光の壁に防がれてしまった。

 

 

「ジュエルか…!面倒な!」

 

「ふふっ、本来ならそのダブルの力こそ私の最も欲する所ではあるが…何せ初めてでね。加減は……間違えてしまうかもな?」

 

 

『ENERGY…!』

 

光の壁を移動させ、襲いかかった箒と鈴を弾きながら、遊んでいる子供のように、ガイアは言った。

 

その手には光が集まっていく。…何かやばい!

 

 

咄嗟に斬りかかるが、俺の斬撃は奴の体から現れた宝石の鱗の様なものに阻まれる。

 

 

「っ!斬れない!?」

 

 

「無駄だ!ジュエルの守りは砕けんさ!」

 

 

そのまま光の集まっていた手がこちらに向けられる。

 

 

…気がつけば、すでに吹き飛んでいた。

 

 

 

「ぐっ…あ……!」

 

 

「「一夏!!」」

 

 

腹に何か食らった…!絶対防御がなきゃ今頃…!

 

 

俺が冷や冷やしていると、ガイアの方では、照井さんと翔太郎達がガイアと斬り合っていた。

 

だが、武器をコピーされるとあって、若干翔太郎達の戦い方は消極的だった。

 

 

「くそっ、どこまでもデタラメな!」

 

 

『落ち着くんだ翔太郎、ここまでの力、必ずデメリットがある!』

 

 

「デメリット…?ふーむ…、二つほどあるな。」

 

 

フィリップの呟きに、ガイアは反応した。

 

 

 

「一つ。当然ながらあの装置が壊れるか何かすれば、私の力は消滅する。」

 

 

 

余りにもさらっと言ったそいつ。言葉の節々から余裕の色がありありと見えるようだ。

 

 

 

「二つ……君たちには、こちらの方が重要かな?……持って十五分だ。それ以上は、私は兎も角、彼らが先に死ぬだろう。」

 

 

 

「てめぇ!」

 

 

「隙が出来たな!」

 

 

装置に接続された人々に目を向けながらそう言ってのけたガイアは、翔太郎が憤慨して動きを止めた一瞬につかみ掛かった。

 

 

「君たちのエクストリームを取り込めば……その問題も解決できるかな?だが……今は!」

 

 

翔太郎達がすんでの所で避けるが、今度は銃がコピーされてしまった。

 

俺を吹き飛ばした棍棒がいつの間にかガイアの手元に戻っていて、それで翔太郎達に一撃を加えると、切り掛かっていた箒に銃を向けた。

 

 

「ふっ!」

 

 

「うっ!?あああ!」

 

小さいとはいえ、竜巻を打ち出すその銃を、箒に向かって乱射する。防御を崩された箒は、そのまま吹き飛んでしまった。

 

 

 

「自分でもここまでとは思っていなかったが、素晴らしい!これならあいつらにISの回収など任せなくてよかったかもしれん!」

 

 

『ENGINE! MAXIMAM DRIVE! JET!』

 

「ぬぅん!」

 

 

「甘い!」

 

『EDGE…!』

 

 

照井さんの放った赤い一撃を、生えた腕を盾に防ぐ。

 

しかし今度は、鈴がガイアに迫る。

 

「龍砲!」

 

 

「君の装備はもう把握済みだよ凰くん!」

 

 

再び展開される光の壁が龍砲を防ぐ。そのままじわじわとガイアは距離を詰めた。

 

 

 

「地球の記憶の外。異世界の技術。データを取っても唯一解析出来なかったそのコアごと解析してやる…。……是非ともライダーを倒す前にやっておきたい!」

 

 

「やめろぉ!」

 

 

鈴が若干怯えた表情になるのが見えた!これ以上鈴に辛い思いなんかさせるかよ!

 

 

しかし、鈴向かって展開された壁がこちらへ向きを変えると、あっさり攻撃を跳ね返されてしまう…!なんなんだよこの硬さは!

 

 

 

「来ないで!これ以上近付いたら……!」

 

 

「短い間とはいえ、私達は仲間だろう?そう拒絶しないでくれ……すぐ終わるから……!」

 

 

ガイアが鈴の甲龍に触れる。

 

間に合わなかった…!

 

 

そう思いながらも、無駄だと分かっていながらも、また剣を壁に振り下ろす。

 

 

 

 

「えっ!?」

 

 

 

しかし、剣が弾かれることはなかった。

 

 

 

光の壁は消え、驚くほどあっさり、俺の剣はガイアの背中を斬りつけた。

 

 

 

しかし、斬りつけられたガイアは何も反応しない…、結構バッサリいったと思うけど…

 

 

 

 

だが、すぐに気づく。ガイアの様子がおかしい。

 

 

 

 

 

口が動かないから分かりにくいが、ハイパーセンサーがその呟きを捉えていた。

 

 

 

「何だ…?何なんだ!?何故こんなものが…?いや違う…これは……!」

 

 

 

 

「何…言ってんのよアンタ!?」

 

 

 

鈴の言葉に耳も貸さず、今度ははっきり聞こえるくらいの大声で、ガイアが叫び始めた。

 

その手は頭痛を抑えるように頭を抱え、その体からは突き出るように甲龍の腕や足が突き出ていた。

 

 

 

 

 

 

「やめろ……やめてくれぇ!嫌だ!こんな訳の分からないものに私が……、わ、私は!地球の記憶を!手に入れ…お?おおおおおおおおォォォ!?」

 

 

 

 

 

 

気がつけば、被害者達の繋がれた装置から、さっきとはまた違う雰囲気の緑の光が溢れ出した。

 

 

「下がれ!皆!」

 

翔太郎の叫びにハッとして、鈴の機体を無理やり掴んで後退する。

 

 

溢れ出した緑の光は、ガイアを…鳳を包んでいく。

 

 

 

もう叫び声は聞こえない。装置が動く時にしていた音も無い。俺たち皆が息を呑んでその『変貌』を見ていた。

 

 

 

 

 

 

無音の中にそいつはいた。

 

 

 

 

 

 

巨大な人の上半身。身体には肉がなく、肋骨が剥き出しだ。

 

 

 

 

更に、腕がない。手首から先の部分が、本来の腕のある場所に浮いている。その手は見覚えがある。丁度甲龍の手の部分を大きくした感じだ。

 

 

 

 

 

肩の部分にもにも、甲龍のパーツのようなものが浮いている。

 

 

 

 

 

 

更に見れば、首もなく、頭のある場所には球体。よく見れば、複眼見たいな模様がうっすらとついている。

 

 

 

 

 

体は生物チックなのに、手や頭のそれは無機物だ。

 

そして何より、燃えている。

 

音もなく、骨の部分も、機械の部分も、頭も、ただ、紅く。

 

 

 

 

 

そんな"ナニカ"が鳳のいた場所にあった。

 

 

そんな"ナニカ"はゆっくりと宙に浮かんだ。

 

 

改めてデカイ。4〜5メートルはあるだろうな。

 

 

ゆっくりと体を回転させ、おそらく正面だろう部分をこちらに向ける。

 

 

"ナニカ"は喋らない。

 

 

 

だからその『音』は、"ナニカ"の攻撃を意味していた。

 

 

 

 

 

放たれた龍砲を開戦の合図とするように、"ナニカ"が俺たちに牙をむいた。

 

 

 







次回で風都編は終わり……のはず。

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