IS×仮面ライダーW 〜二人で一人の探偵達+αが転生しました〜   作:prototype

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大変長らくお待たせしました!





第三十九話

風都グレートホール。

 

名前だけ聞けば、市民会館とかの多目的ホールに聞こえるかもしれねえが違う。今から大体九、十年ほど昔、とある『化け物』が冗談抜きに『地球の中心』までぶち開けた大穴のことだ。

 

流石に底はもう以前より深くは無いだろうが、それでも下が見えないほど深いし、埋めるのにも莫大なコストがかかる。結局、辺り一帯ごと立ち入り禁止にして放置されてるって訳だ。

ま、それでも風都タワーから見えるし、アイツを見た奴だって一人や二人じゃねえ。『炎の巨人とグレートホール』なんて都市伝説なんかが一時期流行って、怖いもの見たさの学生が何人か不法侵入で捕まってたはずだ。

 

確かに危険ではあるが、唯の穴であるだけに余り調べたことはなかった。

考えれば、ドーパントをはじめとする怪人の力を使えば、まぁアジトと呼べるレベルの建造物が出来てもおかしくは無い。

 

 

 

現に、こうして見てる訳だからな。

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

「本当だ……穴に穴が空いてる……」

 

 

翔太郎達に、鈴をああした犯人のアジトの話を聞いた俺は、ゴネにゴネて、下手に目を離さない方がいいからって理由で、何とか連れて行ってもらえることにした。

 

リボルギャリーとかいう、何だかカッコいい車?に乗せられて、事務所に置いておく訳には行かなかった拓也くんも連れて、アジトのある場所に運ばれた。

 

連れてかれたのは底の見えないくらい深い穴。立ち入り禁止って書いてあるのも分かる気がする。

申し訳程度にガードレールが付いてるだけで、もし落ちたら……

 

 

翔太郎に言われ、アジトを探すと、すぐに見つかった。大穴の壁面のある場所に、無理やり開けたような横穴が開いていた。

 

 

「あの中に鈴が……」

 

 

翔太郎達から、あの茶色の怪人の能力を聞いた。確かに鈴がいきなりあんなことを言ったのも、自信に満ち溢れてた訳も分かる。

 

……正直そんな人の心を変えちゃう能力まであるなんて信じられないよな……。でも、翔太郎達はずっと戦ってきてた訳で…。連れてきて貰った以上、精々足を引っ張らないようにしないとな。

 

 

ちょっと気の毒だけど、キツくないように大きめの手錠をかけられた拓也くんを亜樹子さんに任せ、翔太郎達の変身を見守る。

 

 

刑事の照井さんが変身した方は初めて見るけど、翔太郎達の言う通り、赤い仮面ライダーだった。そして俺と箒がそれぞれのISで、翔太郎達を持ち上げて入り口らしき穴に向かって行った。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

アジトの中は、かなり整備されている。……正直、悪人のアジトというのだから、ゴツゴツとした洞窟のようなものを勝手に想像していたが。

 

左達の持つセンサーのガジェットやらで罠に警戒しながら進むが、そんなものは何一つ無く、進むことができた。

 

 

そして進むこと数分。いかにもと言った風貌の大きな扉が私達の前に現れた。

 

 

 

「……開けるぞ。」

 

 

待ち伏せを警戒して、先頭に左達、殿に照井さんという配置のまま、扉を開ける。

 

 

中には通っていた中学の体育館くらいの広いスペースが広がっていた。しかしその割には何もなく、ただドアの向かい側にスクリーンが設置してあるだけだった。

 

 

「ようこそ。仮面ライダーとIS乗りの諸君。」

 

 

 

突然、スクリーンに男が映る。…年齢は父さんくらいだろうか。少なくとも顔だけなら悪い人間には思えないが。

 

 

 

「自己紹介しておこうか。私は鳳、鳳 誠(おおとり まこと)だ。君たちは知らないかも知れないが、仮面ライダーとはかなり長く関わってきている。」

 

 

鳳と名乗ったその人間は、こちらに目を向けながら話を続ける。どうやら、テレビ電話のように、こちらの姿が見えているらしい。

 

 

「……自己紹介なんてどうでもいい。鈴は何処だ!」

 

 

「そう急かさないでくれ給え。織斑君だったかな?何、折角だ。君達には無縁かも知れないが、ここに至る経緯を話してあげよう。」

 

 

「はっ、バカ言え。どうせ会話の途中で篠山に攻撃でもさせるつもりだろ?」

 

 

「………人を疑い過ぎるのは探偵の悪癖だ。君達だって今までの事件の事情を知りたいはずだがね?」

 

 

「つまり今までの事件にお前が関わっていたと認める。そういうことだな?」

 

 

「…まぁ、今更だ。篠山が色々と喋ったようだからね。」

 

 

『何故会社員を?』

 

 

「始めは単なる篠山の私怨さ。まぁ、単なる一つの指標だよ。会社員を粗方試し終えたら他に移すつもりではあったが。」

 

 

「他だと?………そこまでの人数に試せる程のメモリ、何処で手に入れやがった?」

 

 

「…ほら、やはり私の話を聞いていて正解だっただろ?……私の専門はメモリの複製でね?」

 

 

私にはあまりよく分からない話だが、要するに、鳳は近頃起きていた『事件』とやらの犯人らしい。

 

そしてメモリの複製?とやらの重大さは、他人事程度にしか分からないが、左達にとっては衝撃だったらしく、仮面の上からでもそれが分かる。

 

 

「……どうだ?中々衝撃的だっただろう?」

 

 

「……長く関わってるってのはそういう意味か。いつからやってやがる…!」

 

 

「まだミュージアムが健在の頃から、さ。何を隠そう、私は元々財団の人間でね。君達始め、仮面ライダーとの戦いの際には、私のマスカレイドが重宝されたものだ……」

 

 

マスカレイドというのは、恐らくメモリの名前なのだろう。それを恍惚とした表情で、武勇伝のように語る鳳は、成る程確かに悪人らしい。

 

 

「……だが、それも昔の話。最早ガイアメモリは財団から戦力外の烙印を押された。私もお払い箱というわけだ。が、人間慣れ親しんだところには戻りたくてね。一連の事件はその為の……いわばアピールだよ。」

 

 

 

「あんなにも規模に差がある事件でか?メモリの性能を証明したいのなら、考慮の余地はまだあると思うが……」

 

 

「はっはっは、あんなものはただの余興だよ。だが、あの間抜けな犯人たちのお陰で随分とこちらに時間ができた。感謝はしておかないとね?」

 

 

「何が『犯人たち』だ……!仕立て上げたのはテメエだろうが!」

 

 

「ああ、その通りだとも。だが篠山はあくまで自分の欲望に正直にさせただけ。あんな犯罪を起こすのは結局本人の心なのだよ。………さて、こんなところか。そろそろ、真面目にしようじゃないか。」

 

 

 

……何故奴はあそこまで余裕たっぷりなのだろう?…一応ここに入ってからは、私と一夏はハイパーセンサーを稼働させ、全方位を確認しているが………、特に誰かが待ち伏せするでもなく、罠があるでもない。左が言ったように、会話の途中で不意打ちなど出来「危ないっ!」

 

 

ズシャアアアアン!

 

 

不意に後ろに手が引かれ、私の丁度いた場所に、鉄の壁が振り下ろされる。

 

 

「な……何が…」

 

 

突然のことに、頭が混乱する。取り敢えず、引っ張られた方向を見ると、先ほど声を上げた照井さんがそこにいた。

 

 

「良かった。怪我は無いようだな。」

 

 

「…はっ!あ、ありがとうございます。」

 

 

どうやら照井さんに助けられたようだ。……天井か。一応警戒はしていた筈だが…、気付けなかった………私の所為、か。

 

 

「…見事に分断されてしまったな…。」

 

 

 

「………はい。」

 

 

 

どうやら左達と一夏は向こう側のようだ。声も聞こえないあたり、相当壁が厚いのか……?

 

 

「はっはっは、キチンと二人組に分かれてくれたね。いや、押し潰してしまわないかと心配だったのだが!」

 

 

どこからともなく、また鳳の声が響いた。

その声を聞いた照井さんは、私に背を向け、あたりを警戒する。その後ろ姿は、私に奇妙な安心感をもたらしてくれれる。

 

 

………ほんの短い時間だが、彼のことは何故か信頼できる。初対面で、会話も必要最低限だというのに。一夏や、私を助けてくれたから?だとしたら、そう思うのは左達のように、因縁めいた物が無いから?……自分が嫌になるな。

 

 

だが、今はそんなことは重要じゃない。今は少しでも先程の恩に報いよう。

 

 

「……」

 

「お前がホッパーの強化体か……!」

 

 

私達の頭上から、鈴音が倒したのとはまた別の黒い怪人が降り立つ。

 

しかし、それだけではない。

 

 

ホッパーと呼ばれた怪人を皮切りに、様々な生き物や、物を模した怪人が次々と現れる………その数は、七。

 

 

「成る程。人を誘拐していたのは、こうしてメモリの適合者を集めるのが目的だったというわけだな。」

 

 

「適合……?…いや。むしろ此奴らも不適合者だ…」

 

 

「何……?どういうことだ!」

 

 

「…素直に教えると思うか?」

 

 

「ならば聞き出すまで!」

 

 

ホッパーと照井さんは会話を終え、照井さんは武器を構えると、怪人の群れに突っ込んでいく。

 

私もまた、遅れまいとその後を追う。幸い、ここの天井は広い上に、火器を自粛する必要もない。昨日の路地裏よりは戦いやすい。…いける。

 

 

「行くぞ!」

 

こちらに跳びかかってきたカエルの怪人を切り裂き、わたしの戦いは始まった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

照井竜と、篠ノ之箒がドーパント軍団と戦闘を始めた時。

 

 

翔太郎、フィリップ、一夏達のサイドでもーーーー

 

 

 

「はぁぁ!」

 

 

「くっ!流石に重い!…負けるかよ!」

 

 

「『織斑君!』」

 

 

「グァァァァ!!」

 

戦いの火蓋が切って落とされていた。

 

 

 

緑と青のWと白式の前に立ち塞がるのは、鈴音が駆る甲龍と、その操り主たるライアー・ドーパントこと、篠山。そして、アンモナイト、トリロバイト、マンモスの三体のドーパント。

 

 

篠山は不意打ちを外し続けてきたからか、今回は正面をきっての登場だった。他の三体共々、例の如く強化アダプターを使用し、背中から槍のように巨大な針が突き出ている。

 

 

ライアー以外の三体は巨大化し、ライアーに近づけさせない作戦であるようだ。

 

 

さらに、一夏達には不利なことがある。

 

 

「っ!空いたか!?」

 

 

「させないわよ!」

 

 

先程から、三体の巨大ドーパントの合間を縫ってWが攻撃しようとするが、ライアーへの攻撃をハイパーセンサーによって感知した鈴が、その機体と身体でもって庇ってしまうのだ。

 

 

当然、その間も巨大ドーパントは待ってはくれず、翔太郎とフィリップは、ISの操縦者を傷付けない力加減が分からない。当然隙ができ、また防勢となる。

 

 

一夏も動こうとはするものの、箒と分かれ、この世界で唯一とも言えるエネルギー補給手段がなくなった今、その一撃を確実に鈴に当てたいが為に、ドーパントを攻めきれずにいた。

 

 

 

(くそっ!ISだけでもどうにかなれば後はエクストリームでいけるってのに!)

 

 

(かといって、エネルギー効率の悪いと言っていた織斑一夏をこのまま戦い続けさせる訳にはいかない!)

 

 

 

翔太郎達には、手段として、エクストリームがある。その必殺技たる、ビッカーファイナリュージョンなら、多数のドーパントを一気に仕留められる。が、もし鈴が健在ならば、たとえISが解除されていようが、『自分から』当たりに行かねないのだ。

 

 

「デカブツだけでもーー、堕とさせてもらうぜ!」

 

 

『HEAT! HEAT! TRIGGER!』

 

 

多数の足で迫り来るトリロバイト・ドーパントに対し、ヒートトリガーの火炎放射が炸裂する。

 

宙を浮き、翔太郎達に襲いかかるアンモナイト・ドーパントのように、トリロバイトも環境への適応力は上がっているのだが、それでも元は水生系のドーパント、以前、高熱は苦手としている。

 

 

 

「ムゥゥゥア!」

 

 

暴れまわるトリロバイトの炎を、マンモス・ドーパントが、その鼻からでる冷気でもって消火する。マンモス・ドーパントは、実際にいたであろうマンモスよりも、一回り大きく、また、強化の影響からか、全身から、(アイスエイジには及ばないが)冷気を放つことができるようになっていた。

 

 

だがそのために、二体のドーパントは接近してしまう。それは、翔太郎達にとって格好の的であった。

 

 

「まずは二体だ!いつもより強めでいくぜ!」

 

『ああ!』

 

 

『TRIGGER! MAXIMAM DRIVE!』

 

 

「『トリガー! エクスプロージョン!!』」

 

 

「ギュァアアアア!?」

 

 

Wの誇る多数の必殺技の中でも、最大級の威力を誇る爆炎は、まずトリロバイトに命中する。手負いのトリロバイトは耐えられる筈もなく爆散した。

 

 

 

『っ!……危ない危ない』

 

 

そのままWは照準をマンモスに合わせようとするが、その時、フィリップが空いた手を使って、針を受け止める。ライアー・ドーパントのライニードルだ。

 

 

「やはり混戦だと厄介だな!」

 

 

ライニードルの介入で、熱線がマンモスを仕留めることはなかった。冷気でダメージを抑えられたのも一因ではあるが。

 

 

ライアーもライニードルを防がれて終わりではない。

巨大な口を模した、ライスピークスを手に取ると、そこから光弾を連射する。アップグレードによって、威力、弾速は、下手な直接戦闘系のドーパントと同レベルだ。

 

 

「くそっ!だったら!」

 

 

『LUNA! 』 『LUNA! TRIGGER!』

 

メモリを変え、ルナトリガーとなったW。打ち出した光弾を目の前に停滞させ、一時的な盾とした。更に後方にも何発か光弾を撃っておく。

 

 

「突っ込むぜ!フィリップ!」

 

『分かってる!』

 

『METAL!』 『LUNA! METAL!』

 

 

更にメモリを変え、武器をメタルシャフトに持ち帰る。

伸縮自在のメタルシャフトを振り回し、段々と距離を詰めていく。

 

 

そして、ライアーの身の危険となれば……

 

 

「篠山さんには指一本触れさない、って、言ってんでしょうが!」

 

 

上方から降下した鈴が、Wの前に立ちふさがる。

 

咄嗟に鈴と戦っていた一夏の位置を確認する翔太郎達。

しかし、一夏はアンモナイト・ドーパントに組みつかれ、振りほどくのに必死のようだ。

 

しかし、予め放っておいたルナトリガーの光弾が一夏とアンモナイトに向かう。最早精密なコントロールは出来ないそれに気付いたか、一夏も身体を回転させ、アンモナイトの殻を光弾に当て、脱出に成功した。

 

 

「!?一夏!?」

 

 

「鈴!」

 

 

そして、一夏は鈴の位置を捕捉すると、爆発的な加速でもって、Wすら追い抜き、鈴に体当たりをかました。ライアーとWの間はガラ空きになるが、以前、後ろから二体の巨大ドーパントが迫っている。

 

『道は開けた!』

 

 

『CYCLONE! 』 『CYCLONE! METAL!』

 

 

『SPIDER』

 

 

メタルシャフトが元の長さに戻ると同時に、目にも止まらぬ早さでガジェットを装着させる。

 

それと同時に放たれたワイヤーは、正確にライアーの口に巻きついた。

 

 

「ムグゥ!?」

 

 

『METAL! MAXIMAM DRIVE!』

 

 

「往生しやがれ! 」

 

 

「『メタルツイスター!!』」

 

 

後ろの二体も巻き込むほどの疾風と共に、Wがライアーに迫る。

 

 

「っ!………へっ!」

 

 

「…!」

 

 

しかし、メタルツイスターの当たる直前、なんとライアーは自らその変身を解いたのだった。

 

「ひいっ!?こ、これで攻撃出来ないんだ………ろ?」

 

 

「『…………』」

 

 

『……♪♪』

 

迫るメタルシャフトにビビりながらも勝ち誇った顔をする篠山。……しかし。

 

電子音が響くと、メタルシャフトにつきっぱなしだったスパイダーショックが動き出す。

 

 

「!?あ、ああ!?」

 

 

メタルシャフトから飛び出したスパイダーショックは、華麗に篠山の手からメモリを奪い取った。

 

 

「…ふん!」

 

 

「あぁ!?俺の…俺のメモリィ!」

 

Wは、手に取ったメモリを真下に叩きつけると、そのまま踏みつけてしまった。

 

 

「俺たちをビビらせたいならもっとマシな手を使うんだったな。」

 

 

醜くメモリの残骸にすがる篠山を一瞥し、その後ろに目をやる。鈴はISを収納しており、どうやら漸く解放されたらしい。

 

 

「さて、残りを片付けるぜ。」

 

『ああ、心置きなく行こう』

 

 

メタルツイスターの疾風で遠ざけられた二体。どうやらライアーなど関係なしに、メモリの力で暴走しているようだ。

 

そんな二体に、Wは向き合う。

その時。

 

 

『♪〜〜♪〜〜』

 

 

先ほどのスパイダーショックとは違った、また独特な電子音が響く。予め着いて来させていた、最後のアイテムだ。

 

 

そして、それの登場は。

 

 

 

 

 

 

 

『XTREME!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

Wの勝利を意味している。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 





おかしい…、風都編は精々三、四回で終わらせるはずが……、終わりが……見えない……だと?


ps.先週のゴーストで、グレイトフルに惚れた人、惚れ直した人。作者と握手。


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