IS×仮面ライダーW 〜二人で一人の探偵達+αが転生しました〜   作:prototype

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はい。お待たせしました。申し訳ありません。

前の話のあとがきでも書きましたが、若干番外編風味で、かなり無理矢理な設定があります。(本編もですが…)

MOVIE大戦を見るくらいの気持ちでご覧下さい。


5/11 描写追加。何故追加したかは、仮面ライダーチェイサーを見た方なら分かるはず。


※この話は仮面ライダーチェイサーのネタバレをほんのすこしだけ含む様になりました。ご注意下さい。


第三十六話

「ここが………鳴海探偵事務所か……」

 

ウォッチャマンって名乗ったおじさんに、色々答えてもらう代わりとして、風都の名所を回って写真を撮られた。

 

そして最後に教えて貰ったのがこの場所だ。困った時はここに来れば間違いないらしい。かもめビリヤードと水色とピンクの看板が目印だから、ここだよな。

 

 

『鳴海探偵事務所』

来人から聞いた話と一致した。それならもしかして………

 

 

「ちょっと一夏、アンタさっきから何か隠してない?」

 

「えっ?……いやぁ、まだ分からないから……」

 

「?どういうことよ、それ。ま、いいわ。取り敢えず入るんでしょ?」

 

 

ビリヤード場の脇から二階に上がると、探偵事務所のドアがあった。だけど………

 

 

「………只今依頼解決中。御用の方は暫くお待ち下さい。」

 

 

箒がドアの前に貼られた紙を読み上げる。タイミングが悪かったかな?

 

 

「はぁ…、まあでも、私達が本当に異世界に来ちゃったなら、探偵にどうこうできるとは思えないんだけど。」

 

 

「かといって今の私達は……文字通り猫の手でも借りたい状況だ。せめてあの猫の手掛かりでも見つけねばならない。」

 

 

「取り敢えずここで待ってても仕方ないよな。時間あけてから、また来よう。」

 

 

貼り紙には連絡先も書いてあるけど、多分こっちじゃ携帯使えないだろうからな……。俺たちが会話する分にはISがあるから良いんだけどな。

 

そんな訳で、俺たちは取り敢えず外に出た。

 

すると………

 

 

「ん?何やら向こうが騒がしいな……」

 

 

箒に言われて見ると、確かに騒がしい、それに何か近づいて来ているような………

 

「ひったくりか何かでもあったのかしら?見に行かない?」

 

 

鈴の意見に、俺も箒も特に異論はなかったか、取り敢えず近づいて見ることにした。

 

あの角を曲がれば………ん?

 

 

バコン!

 

「……いってぇ!」

 

「うわぁぁ!」

 

 

突然何かが、丁度角を曲がった俺に当たった。声からすると、人と当たったのか?

 

 

「えっと、す、すいませ………あれ?」

 

 

謝ろうとして人を探すけど、近くには鈴と箒しかいない。

おかしいな、確かに男の人の声だったんだけど。

 

 

考えてる間に、もう一つの何かが近づいて来ていた。

 

 

「そこまでだな。下田。観念しやがれ!」

 

 

そこにいたのは、見たことのある二色の人型。今は緑と青だ。

 

 

「あれって…!」

 

「ああ、あれは左達の……」

 

『DENDNEN』

 

 

これまた見たことのある機械を人型が弄ると、そこから光が溢れ、俺たちの目の前、丁度俺が何かと当たった場所に、人の姿が見えた。

 

 

「ひ、ひぃぃぃぃ!」

 

 

「そこのガキンチョ!離れてろよ!」

 

 

「だ、誰がガキンチョよ!」

 

 

「お、おい鈴!離れろって!」

 

 

詰め寄ろうとした鈴の襟を掴んで離れる。人型は持っている銃にメモリを挿入させた。

 

 

『CYCLONE! MAXIMUM DRIVE!』

 

 

「「トリガーエアロバスター!!」」

 

 

銃から出た竜巻の弾丸が現れた人を貫く。だけど、人体は傷付くことなく、その場に倒れ込んだ。

 

 

「うっ……あ……」

 

 

「ふぅ。さ、牢屋でしっかり反省するんだな。」

 

『お疲れ様、翔太郎』

 

 

人型がベルトからメモリを抜くと、一人の男が現れた。俺たちの知る人によく似ている…。やっぱり……!

 

 

「翔太郎!」

 

 

いつも見てる時や、大道克己の記憶で見たときよりは年が上みたいだけど、間違いなく翔太郎だ!

 

 

「んん?何処かであったか?自慢じゃねぇが、人の顔はよく覚える方のはずなんだが……」

 

 

「あ……、いや…えっと…」

 

「私達は依頼人よ!アンタの話を聞いたの!」

 

 

な、ナイスフォロー!鈴!……後で説明するからそんなに睨まないでくれ!

 

「ほぉ……依頼ねぇ…、まぁ依頼人を名乗るってんなら、依頼は聞いてやる。だがまずはこっちが先だ。」

 

 

「う、ううん……」

 

 

な、何とかなって……ないよな。疑いの目だ。でも、少なくともこっちに敵意は無いし、何とかできたら……

 

翔太郎がさっき攻撃を受けて倒れた男を立たせる。

 

 

「お疲れ様、翔太郎くん!」

 

さっき翔太郎達が走ってきた道から、もう一人女の人が現れた。

 

「ああ、亜樹子、俺は下田を連れてく。あと、この少年少女が次の依頼人だ。案内頼むぜ。」

 

 

「了〜解!さ、三人共、事務所へ上がって?」

 

 

亜樹子と呼ばれたその人に着いて行き、さっきは入れなかった事務所の中に入った。

 

 

おおう、何だかホントにそれっぽい……というか本当に探偵事務所なんだけどさ。

 

 

「はい、取り敢えずコーヒーね。ミルクとお砂糖はそこにあるから使って。」

 

 

「あ、これはご丁寧にどうも……」

 

 

鈴が敬語使ってる……あれ、何だかすごく久々に見た気がするぞ。さっきは突然だったけど、俺の知ってる翔太郎よりも年上そうだったしな…。ちゃんと敬語使わないとな。

 

 

「じゃあ、自己紹介から始めるわね?私は照井 亜樹子。ここの所長よ。」

 

 

「俺は織斑一夏です。」

 

「篠ノ之箒です。」 「凰 鈴音です。」

 

 

「織斑くんに篠ノ之ちゃんに凰ちゃんね。じゃ、早速依頼の内容を聞きたいんだけど……」

 

 

「あの……それなんですけど……俺たち、どうやら異世界から来ちゃったみたいで……」

 

 

ウォッチャマンさんに案内され撮影されながら風都を回るときに、インターネットを弄る機会があった。IS学園は勿論、ISなんてものは、この世界に無いらしい。情報通だって言うウォッチャマンさんも知らなかった。

結局、ここは何処かの異世界だっていう、随分アレな結論になったんだ。

 

 

「異世界からね〜。じゃあ、依頼は元の世界に戻りたいって感じ?」

 

 

「え!?し、信じてくれるんですか?」

 

 

「うん。さっきも言ったけど、そういう人が前にもいたのよ。それに、特別今日は何も無いのに二人は浴衣。更に織斑くんは謎のガントレットなんか付けちゃってるから、何となく結構な訳ありとは思ってたし。まあ、驚きはしないわね。」

 

 

そ、それでいいのか?

 

 

「それで、戻る方法なんだけど……残念ながら、あんまり力にはなれなさそうね。」

 

 

「そうですか……」

 

 

そういうの(・・・・・)の専門家に心当たりはあるけど、その人にはいつでも会える訳じゃないし、方法があっても、異世界だって無数にあるわ。ちゃんと貴方達の世界に帰れるかどうか……」

 

 

ダメか………。まあでも、考えてみれば、『異世界から来たから元の世界に帰りたい』なんて話、まともに聞いてもらえるだけありがたいのか。

 

 

「一夏、やはりあの猫を探すしかないようだな。」

 

 

「ああ、そうなるかな?」

 

 

「猫?」

 

 

「ああ、俺たちがここに来ちゃう前に、猫を追っかけてたんです。そして気づいたら風都に……」.

 

 

「猫かぁ……。猫探しなら、ウチの十八番よ?まあ、取り敢えずどんな猫か教えてくれる?」

 

「と言っても、灰色の猫ってことくらいしか……」

 

 

「流石にそれだけじゃあ……うーん…」

 

 

どうしようか悩んでいると、事務所のドアが突然開いた。

 

「うーっし、戻ったぞー。」

 

「ただいまー!」

 

「あ、翔太郎くん、春奈!お疲れ様ー!」

 

 

戻ってきたのは、さっき見たばかりの、ちょっと年上に見える翔太郎と、小学生くらいの女の子だった。

 

 

「ママー!」

 

「どう?春奈、今日も学校楽しかった?」

 

「うん!」

 

翔太郎は持ってる書類みたいな紙束を机に置いて、春奈って呼ばれた女の子は、亜樹子さんの胸に飛び込んだ。どうやら、春奈ちゃんは亜樹子さんの娘らしい。

 

「春奈とは帰りであってな。そっちの依頼人は何だって?」

 

 

「異世界から来ちゃったから、元の世界に戻りたいって。」

 

 

「……そりゃまあ、随分と突飛だな。」

 

 

翔太郎がジロッとこちらを見てくる。まあ、さっき名前呼んじゃったしな………。よく見ると…うーん…三十代…くらいかな?

 

 

「それで?何か手掛かりは?」

 

 

「ここに来る前に猫を追いかけてたらしいんだけど…、それ以上は何もないわね。」

 

 

亜樹子さんは春奈ちゃんを膝に置くと、そのまま話を続けた。

 

「キツイな。異世界じゃあ【本棚】も使えない。猫は探しておくとするが。今まで他の世界から来た奴は、自分から帰るか、突然戻るかしてる。帰れなかったなんて話はまだ聞いたことがねぇ。今回もそうなりゃいいんだが。」

 

 

「今までが偶然って言えばそうなんだけどね。」

 

 

「まあな。じゃ、亜樹子、もう暫く話を聞いててくれ。俺は下に行ってくる。」

 

 

「また検索…ってことは、今回も?」

 

 

「ああ。いよいよクサくなってきたって照井と話してきたところだ。」

 

 

翔太郎はそういうと、奥のドアを開けて、中に入っていった。検索って言ってたし、やっぱり来人が中にいるのかな?

 

 

「翔太郎くんはああ言ってたけど、もう日も落ちかけてるしね。そう言えば、君達、今夜泊まるくらいのお金は持ってる?」

 

 

「「「あ。」」」

 

 

「………まあそんな格好じゃあ突然来たんだろうし、学生には無理かな。しょうがないか。野宿されるのもそれはそれで困っちゃうしね。ちょっと待っててね……」

 

 

亜樹子さんは膝の上にいた春奈ちゃんを横に座らせて、何やら紙に書いている。暫く書くと、その紙と、地図をこっちに持ってきた。

 

 

「ここがウチの事務所で、ここに風都ホテルがあるわ。あのホテルで一回事件を解決したことがあってね。その時のサービス券が残ってるの。私達は使わないしね。照井亜樹子から渡されたって言えば大丈夫だから。使って?」

 

 

「ええ!?い、いや、そんな…悪いですよ。」

 

 

「いいから。大人の言うことは聞いておきなさい。あ、後ね……」

 

 

亜樹子さんは地図に赤いペンで丸をした。

 

 

「明日でいいんだけど、ここにあるペットショップで、猫の品種だけでも調べてくれるかな?流石にこれは見た人じゃないとね。ま、他にもやることあるだろうし、明日また、空いた時間に来てね。」

 

 

おおう……何だろう。何か大人の女性って感じがする……、来人の話と印象が違うな……

 

 

「あ、あの………」

 

 

亜樹子さんから地図とサインの入ったサービス券を受け取ると、隣の鈴が声を出した。

 

 

「何?」

 

 

「私達、夏祭りに行ってたところを来ちゃったもんだから……、依頼の報酬って………」

 

 

………それもあったかぁ…。屋台を回ったりするための、ちょっとのお金はあるけど……、私立探偵への依頼ってどれ位かかるんだろう……ああもう!何で白式は持ってきてるのに金はないんだ!?

 

 

「ああ、そのことね。こっちも仕事だけど、流石に私だって、無いお金を出せなんて言わないわ。明日までには、何か考えておくから。よろしくね?」

 

 

「は、はい!」

 

 

凄いなこの人……、いきなり出てきて『異世界から来ました、お金もありません』なんて俺たちにここまでしてくれるなんて………なんとか俺たちも頑張らなきゃな。

 

 

「あ、後、最近また物騒になって来たからね。何か事件に巻き込まれたら、連絡して?」

 

俺たちは改めてサービス券と地図を受け取り、ホテルを目指して、事務所を出たのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

一方、鳴海探偵事務所のガレージでは。

 

 

「おうフィリップ。」

 

 

「おかえり翔太郎。今回も無事解決………と言いたいところだけど、その顔だとまたかい?」

 

 

「ああ、まただ。下田の奴、自分はやろうと思ってなかった。自分でも何をしたか、何でしたかは分からないだとさ。たかだか下着泥棒のためにインビジブルなんて高いおもちゃを買いやがったってのにな。」

 

 

翔太郎達が言っているのは、ここ最近に起きたドーパント騒ぎのことである。

 

 

『上司を怖がらせるため』にドーパントになったり。

『会社を休みにするため』にドーパントの力で職場を荒らしたり。

規模が大きいのでさえ、スーパーで強盗する程度。

 

今回は下着泥棒のためにわざわざ決して安くないメモリを使っているのだ。

 

しかも、犯人は捕まると、口を揃えて、自分のはこんなことをやる気じゃなかった。いつの間にかやっていた。という。

 

メモリには中毒性があり、使っている人間の精神を汚染し、本来なら凶悪な犯罪に使われるケースが殆どだ。たとえ購入した理由が前述のようなものでも、段々エスカレートしていく筈だ。

 

つまり、彼らは揃いも揃って、中毒にはまだならないほどの段階で、事件を起こし捕まっていることになる。だとしたら、余程一連の犯人に計画性が無いのか?

 

 

過去、ミュージアムがメモリを風都にばら撒いた時は、もう少し凶悪で巧妙な犯罪が起きていた。

 

それだけ平和になったという人もいるだろうが、小さい事件だろうが、ドーパント退治にはライダーが必要である以上、翔太郎達からは決して無視できる問題ではない。

 

そんな理由で簡単にメモリを手に入れられる状況があるにしても、何らかの別の要因があるにしても、厄介極まりない。

 

「翔太郎はこの事件どう見る?」

 

 

「俺は裏に真犯人がいると思ってる。今回の犯人達はそこまで裕福でもねえ。実際、初めの事件と、他幾つかの犯人の家はすっからかんだ。メモリのために売っぱらっちまったらしい。本人もどうしてそんなことしたのか分からないらしいが……。それにだ。」

 

 

翔太郎は、ホワイトボードの隅にある、何かの表をを取り出した。

 

 

「行方不明者も増えてる。こっちも殆ど何かの会社絡み。これも無関係には思えねぇ。」

 

 

「成る程。確かにそこまでしているなら、誰かが犯人を陥れようとしていると、考えるのが自然だ。行方不明者と容疑者の差は何処にあるのだろう。」

 

 

「ああ。それも調べるさ。だが、まずは今回のからだ。照井が街中に目ぇ張っくれてる以上、細かい調べはできるだけやってやりたい。無駄になるかもだが。」

 

 

「分かった。検索してみよう。」

 

 

フィリップが目を閉じると、心なしか、フィリップが下から照らし出されるように見える。

 

 

「キーワードはまず、下田 智之。」

 

 

「下田 智之」

 

 

「メモリはインビジブル。」

 

 

「インビジブル。」

 

 

フィリップが翔太郎の言葉を復唱する。フィリップの脳内には、忙しなく動き回る大量の本棚が浮いていて、やがてその数を減らしていく。

 

 

 

「ああ、そういえば翔太郎、上で少し話が聞こえたけど?」

 

 

「ああ、次の依頼人だ。まあ、暫く手はつけられねえかな?」

 

 

「依頼の内容は?」

 

 

「元の世界に帰りたいんだと。」

 

 

「元の世界か。とすれば、また大きな事件が起こりそうだね。」

 

 

「まぁな。異世界から誰かが来た時には、大体いつもロクでもないことが起きる。今回は違うといいがな。」

 

翔太郎達の経験上、異世界から来た人間が現れると、やれ世界の滅亡の危機やら、仮面ライダーの歴史が変わるやら、仮面ライダー同士で戦う羽目になるやらで、平穏に終わったことがない。

 

 

「後で彼らに着いても検索するかい?」

 

 

「やめとけ、異世界の人間ならどっちにしろ【本棚】には出てこない。時間の無駄だ。警戒しとくに越したことはねぇがな。ほら、次のキーワード行くぞ。」

 

「了解だ。翔太郎。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

日も落ちた夜。ホテルの一室にて、一夏達は休息をとっていた。

 

 

「ふぅ………なんだかどっと疲れが来たな……」

 

 

「ホントよ……まさか、こんなことになるなんて……」

 

 

照井亜樹子の名前を出すと、即座にホテルは三人用の部屋を用意した。従業員曰く、時たまこういう時があるらしい。

 

 

「………なぁ一夏。少し気になることがあるのだが。」

 

 

各々がベッドで休む中、箒が声を出した。

 

 

「……ああ〜、箒、多分私も同じこと考えてると思うわ。」

 

 

「何だ?」

 

 

「ここのことを、お前は知ってるんじゃないのか?」

 

 

「………まあ知らないって言ったら嘘になる。」

 

 

「それで?翔太郎がいることは?説明できるの?」

 

 

「……こんな状況になったら、話すしかないよな。俺も教えて貰ったのは結構最近なんだけど………」

 

 

一夏は、何となくバツの悪そうな顔をしながら、フィリップや翔太郎から聞いた、彼らの事情を話し始めた。

 

 

「まず、この世界は、翔太郎や、来人達から聞いた世界と似てるんだ。翔太郎と来人は、…後、大道……先生は、元々は別の世界にいたんだって。」

 

「別の世界………つまりここか?」

 

 

「いや、分からない。翔太郎達の話だと、翔太郎は年をとって死んで、それから俺たちの世界に子供になって来ちゃったらしい。来人と大道先生も似たような感じだといってたな。」

 

 

「つまり、昼間見た普通の大人の翔太郎がいるのはおかしいって訳?」

 

 

「そうなるけど……単に、俺たちの世界と時間を合わせただけだと思う。ほら、大体年と月日は同じだったろ?」

 

 

この世界での月日は、一夏達の世界と一致していた。一夏がフィリップから聞いた話では、フィリップ達が前の世界を去ったのは、一夏が老人になっているくらいの年だった。

 

 

「?つまり翔太郎達は、もっと先の未来で死に、過去の私達の世界に来たと?」

 

 

「いや、流石にそこまでは分かんないけど……亜樹子さんの言ってた通り、ただ単に異世界が沢山あるだけで、たまたま俺たちがこの時代のこの世界に来ただけかもしれないしさ。」

 

「アンタが知ってるようで知らない世界の可能性もある訳ね……。ますます帰れる気がしなくなったわ。」

 

 

「鈴音、そう弱音を吐いても始まらんだろう。一夏、まだあるか?ないのなら、こちらから、あの二人に関して幾つか聞いていいか?」

 

 

「ん。流石にこれだけ言っちゃったし、俺に答えられる範囲なら。」

 

 

「ではまず………メモリとは何なのだ?」

 

「うーん………俺も詳しい仕組みを聞いた訳じゃないけど、人に凄い力を与える道具なんだって。地球の記憶してがどうとか……」

 

「いきなり壮大になって来たわね……」

 

 

「翔太郎達は元の世界で、メモリを使った怪人、ドーパントと戦ってたんだと。」

 

 

「メモリ………そういえば、昼間の透明人間からも出てたわね。あんなのが怪人なの?」

 

 

「いや、来人の話じゃ、かなりの種類がいたみたいだ。」

 

 

「なら、この世界にいる間は警戒すべき、か。そういえば、私達の世界にもメモリがあるが……。」

 

 

「あのメモリは、大道先生が持ってきた物らしい。何で持ってるのかは、分かんないけど……」

 

 

 

「アンタに聞くより、戻って翔太郎達を問い詰めた方が良さそうね。………そろそろ眠くなって来たわ。明日はどうする?」

 

 

「一先ず、ペットショップと探偵事務所には行くとして……。その後は……どうしよう?」

 

 

「どうすると言っても……、猫を探すしかないだろう。あるいは、ここに留まることになった時の為に、少しでも働くか?」

 

 

「それは今考えても仕方ないわね。明日また考えましょう。」

 

 

鈴のそんな言葉を皮切りに、一夏が部屋の電気を消し、三人は各々のベッドに入る。

 

 

底なしの不安を感じながらも、三人は眠りにつくのだった。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

朝だ。目を覚ますと、俺はホテルのベッドにいた。

 

 

「あれ?どこだここ………、…ああ、そっか、風都に来ちゃったんだっけ。」

 

 

箒達はまだ寝てる。取り敢えずその間に、顔を洗って、着替えて、必要な準備を終えることにした。

と言っても、浴衣なんだけどな。

 

「ん………おはよう、一夏。」

 

 

「おはよう箒、俺、部屋の外で待ってるから、準備したら出てきてくれ。」

 

 

「分かった……、起きろ、鈴音、朝だぞ。」

 

 

箒が鈴を起こそうとするのを後ろ目に、俺は部屋の外に出た。

 

 

壁にもたれかかりながら、取り敢えず手につけた白式を見ていた。

 

 

「エネルギーは満タン。武装は来人に預けたファングも含めて全部入ってる……、益々分からないな…」

 

 

まあファングに関してはメモリも無いから本当に動かなそうだけど。

 

 

「待たせたな、一夏。」

 

「ん〜…おはよう。」

 

暫く待ってると、昨日の浴衣をそのまま着た箒と、まだ眠そうな顔をした鈴が出てきた。

 

 

「う〜ん……先に服を買った方がいいかな?」

 

 

流石に昨日のままの服……しかも浴衣だし、夏だし、女の子ってそういう風なの気にしそうだからな。

お金は正直心許ないけど、何とか安い服くらいなら…?

 

「むう…確かに不満はあるが、贅沢は言わない。シャワーを浴びられただけでも十分だよ。」

 

 

「アンタ達は浴衣だったわね。暫く帰れないこともあるんだし、私が買って上げてもいいわよ?」

 

 

「それは流石に鈴に悪いよ…」

 

 

「いいのよ、カードは使えないだろうけど、私は代表候補生よ?それなりの金額は財布に入ってるわ。むしろ私はこういう時こそ使うべきだと思うんだけど。」

 

 

「そうか?でも…」

 

だったらホテルの代金も払えたんじゃ………っていうのはやめておこう。長く留まるかもと考えたらお金は大事にしないとな。

 

「はいはい、ゴタゴタ言わないの。この鈴様に甘えておきなさいっての!」

 

「分かったよ。でも、いつか必ず返すからな。」

 

 

「済まないな。鈴音。」

 

 

まだ流石に探偵事務所に行くには早いしな。……正直ずっと浴衣着てても人目を引いちゃうだけだからな。

 

 

ホテルの朝食を食べて、ホテルのフロントさんから、朝からやってる安い服の店を聞いて、外に出た。ウォッチャマンさんと一緒に街の名所巡りをしたからか、割とすぐに着くことができた。

 

箒達と分かれて、幾つか服を探すことにした。

 

「………一番安いのはこれだな。」

 

 

取り敢えず安いものを選んでいると、確か、昨日ウォッチャマンさんが言ってた、風都のご当地マスコットの、ふうとくんってキャラクターのTシャツがあったので、それを着ることにした。案外かわいいな。

 

それとズボンと下着をいくらか買った。ホテルの人の言う通り、そこまで高くない値段で用意できた。

 

箒と鈴にも割と好評だった。よかったよかった。あんまりファッションを気にする方じゃ無いと思うけど、流石に変な奴だとかは思われたく無いからな。

 

箒も、涼しそうなノースリーブの服を着ていて、鈴も服装が変わってた。なんでもついでらしい。

 

二人とも美人だからな。どんな服着ても似合うんだな。

 

そう言ったら鈴に軽く頭を叩かれた。なんでなんだ…?

…弾が前に呼んでた本では、取り敢えず女の子の服は褒めるべきって書いてあったのにな…

 

大体11時くらいに、俺たちは昨日言われたペットショップに向かった。

 

何故か店番の人ははサンタクロースの格好をしてて、ガチャガチャででるおもちゃみたいな、この街のシンボルの風都タワーのフィギュアを貰った。

 

 

そこで貸してもらった動物図鑑と、そのサンタさんの協力で、猫の品種が分かった。

 

 

 

『ブリティッシュ・ショートヘア』って言うらしい。

 

サンタさん曰く、数年前まで翔太郎達も飼っていたらしい。………偶然?なのかな……

 

 

取り敢えず、品種も分かったし、また探偵事務所に向かおうと思ったその時だった。

 

 

「キャーーー!!」

 

 

突然、悲鳴が聞こえた。近くにいたサンタさんもと一緒に、声のした方へ行くと………

 

 

 

「ハハハハハ……」

 

 

「こ、来ないで!」

 

 

黒い虫みたいな怪人が、女性に近づいていた。

 

 

「た、大変だ!し、翔ちゃん呼ばなきゃ……!」

 

 

「お、お願いします!」

 

サンタさんが大急ぎで携帯をいじる。俺たちに出来ることは…、兎に角あいつをどうにかしないと!

 

 

「そこのお前!」

 

 

俺の声に反応して、黒い虫の怪人はこっちを向いた…。口に出してはいないけど…これゴ◯ブリだよな………

 

 

「ん!?何だお前達は!?」

 

 

何だと言われると……今の俺たちって……

 

 

「えっと…俺たちは…」

 

 

「一夏!真面目に考えてる場合か!?」

 

 

「わ、悪い。兎に角!その女性に危害は加えさせない!」

 

 

「危害?危害なんか加えない…。彼女は俺の運命の人なんだからな。俺と彼女は一緒になるんだ……!」

 

 

「うわ…アンタストーカー? その女の人、どー見たって嫌がってるじゃない。」

 

 

「黙れ!彼女は素直じゃないだけだ……」

 

 

「ひ、ひいい、来ないで、来ないでよ!」

 

怪人が近付いても、女の人は怖がるだけ………そりゃ、そうだよな…

 

「はぁ……気持ち悪いのは見た目だけじゃないみたいね。一夏、箒、私一人で十分よ。」

 

 

「おい鈴!」「鈴音!」

 

「甲龍!」

 

俺と箒の言葉も聞かず、鈴は甲龍を展開した。

 

「な、何だそれは!」

 

 

「覚悟しなさい。一夏、箒、その女の人、よろしく頼むわ!」

 

 

「に、逃さ……ゴバァ!?」

 

 

女性を追いかけようとしたゴキブ◯の怪人を龍砲が吹き飛ばした。

 

「おい鈴!街のど真ん中で龍砲なんか……」

 

 

「キチッと安全にやってるわ。幸いここも開けてるしね。」

 

 

確かに今人っ気ないし、開けてるから大丈夫っちゃあ大丈夫なんだけど……

 

取り敢えず女性を庇いながら、俺と箒は武装だけを展開した。

 

 

「クソォ!何をしたんだ!」

 

 

吹き飛ばされた◯キブリの怪人は怒った様子でこっちに向かってきた。モチーフがモチーフだからか、スピードがすごく速いんだけど……

 

 

「いくら速くても、真っ直ぐな突進じゃね!」

 

 

「な!?どこから武器を!?ぎゃあああ!?」

 

でも結局、怪人は受け止められて、また龍砲を受けた。うわ…至近距離で…

 

 

「うう……痛え……痛えよぉ〜〜……」

 

流石に至近距離の龍砲は堪えたのか、怪人は倒れながらもがいてた。

 

 

「ほら、メモリとかいうのがあるんでしょ?これ以上痛い目見たくなかったら……」

 

 

「い、嫌だ!こ、このメモリは渡さな…「へー、そう」…ひっ!?」

 

 

怪人の言葉を遮るようにして、鈴が青龍刀を怪人に向ける。

 

おい鈴……それじゃあどっちが悪者かわかんないって…

 

 

「わ、分かった。渡す、渡すから!」

 

 

「分かればいいのよ。ほら。」

 

 

「ああ出す………訳ねぇだろ!」

 

 

一度武器を下ろした鈴を背に、怪人は猛スピードで駆け出した。

 

 

「へっ!馬鹿め!渡す訳ねぇだろこの貧乳!」

 

 

「………は?」

 

 

あっ………

 

 

「へへ……もう俺に追いつけはしな……へ?」

 

 

「聞こえなかったんだけど………私が……私の胸が………何ですってぇ!?」

 

 

「空、飛んでへぶぅ!?」

 

 

飛行して追いつかれた怪人に、鈴の全力の峰打ちが炸裂した。

 

そして、怪人はあえなく気絶。運良くメモリは外に出たので、何とかこの場は収まった。

 

 

遅れてきた翔太郎と、真っ赤な服を着た警察の人には、どうやって倒したか聞かれる前に、今回みたいに倒せるのは運が良かっただけだってしこたま怒られた。本来なら、メモリを出すのも壊すのも一苦労らしい。

 

さらに、本当ならあの怪人は超スピードを持ち、手からでる粘液で人を窒息死させる凶悪な怪人らしい。あの人が使いこなせてなかったのは本当に運が良かった……

 

因みにメモリは砕かれ、怪人だった人は連れてかれた。

 

そして俺たちは翔太郎に連れられ、事務所に向かうことになった。聞きたいことがあるらしい。それってやっぱりISのことだよな……。

 

幸いに目撃者は、あの女性と怪人だった人しかいない……けど、まあいつかどうせ全部喋らなきゃいけなくなると思ってたし、いいか。

 

 

ふう………朝からこんな感じか。

怒られて少し不満気な鈴と、気を張ってたからか、もう既に疲れた様子の箒と一緒に、探偵事務所に向かうのだった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

先ほど騒動のあった場所。三人の音が立っていた。

 

「あの女の使った『何か』……あんまりにもおざなりな素人のドーパントとはいえ倒してしまうとは………」

 

 

一人の男がそう言うと、隣の男がニヤニヤと笑いながら言った。

 

「はっ、だが見たか?ただのガキンチョじゃねえか。恐るるに足んねえよ。」

 

 

「思い上がるな。誰がお前にそのライアーのメモリを売ってやったと思ってる。」

 

 

しかし、ニヤつく男を第三の長身の男が制する。

 

「チッ……で?どうすんだよ。」

 

 

「あの女の見えない攻撃……。それだけでは足りないだろうが、あれは対ライダー用の戦力に欲しいな。」

 

 

「了解………では、あの女を誘い込む、で、よろしいのですね?」

 

 

「ああ、頼む。おい、お前にも働いてもらう。」

 

 

「はいはい」

 

 

「仮面ライダーダブル……、必ずやその首を頂く……、この私の名誉を取り戻すためにな……!」

 

 

はじめに言葉を発した男……その男の服は、色が抜け落ちたように『真っ白』だった。




次回、W×IS!

という次回予告をやろうとしたけど、必ず自分の首を絞めることになりそうなので断念………

コックローチの扱いが悪いのは許して下さい。
再生?怪人だから!きっとそのせいだ!

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