IS×仮面ライダーW 〜二人で一人の探偵達+αが転生しました〜 作:prototype
ひょ、評価の色が変わってる!
おのれディケイドォ!
「あれが福音か!」
先行していた一夏と箒は、今まさに福音に接触していた。
「そのようだな。準備はいいか一夏?」
「いつでもいいぞ!箒!」
「行けっ!一夏!」
「応!」
紅椿に捕まるようにしていた一夏が、真っ直ぐ福音の元へ飛んで行く。
福音も接近する一夏に気付いたのか、真っ直ぐ一夏の方へ向かって行く。
「っ!喰らえ!」
一夏が零落白夜を発動させた雪片弐型を振るう。
しかし、その一撃は福音に躱されてしまう。
「外した!くっ!」
「……………!」
一夏の剣を躱した福音は、そのまま回転し、無数の光弾を放った。
「うおっとっと!」
一夏は自分に直撃するであろう光弾を、雪片弐型で打ち払うと、後退し、箒の紅椿に接近した。
「あれが『
「その必要は無い!私と一夏。紅椿と白式がいるのだ!あの程度の敵、私達だけで片付けられる!」
そう言うと、箒は、福音に向かって突撃していく。
「あっ!箒!待てって!」
先行した紅椿が、福音衝突する。
再び福音から無数の光弾が放たれるが、箒は一気に加速することでこれを躱した。
「私と紅椿なら行ける!まだまだ力を感じる!」
「落ち着けって箒!」
ある時は飛ぶ斬撃で、またある時はレーザーで、一夏の援護を受けた紅椿に、確かに福音が追い詰められていく。
そして遂に、
「一夏、今だ!」
紅椿が福音に競り勝ち、明確な隙が生まれる。
「一夏!早くしろ!」
しかし、一夏はその場から動かない。箒が急かすが、一夏の目は、海上に向いていた。
「箒!船だ!船がある!」
「船だと!?」
一夏に言われ、箒も下を見るが、確かに一艘の船が浮かんでいた。福音はこの隙を逃さず、光弾を打ち出す準備をしていた。
「海域は封鎖された筈…!ならばあれは密漁船か!一夏、構うことはない!集中しろ!例え何があろうとそいつらの自業自得だ!」
「箒…!………俺には出来ない!」
「!?一夏!くっ!」
福音によって発射された無数の光弾の幾つかは、確かに船への直撃コースだった。
密漁船もそれに気付いたか、大急ぎで陸へ向かって進行するが、どう考えても間に合わないのは明白であった。
「うぉぉぉぉ!!」
一夏が気合いの入った雄叫び共に、船に降り掛かる光弾を切り落として行く。
「今の内に早く行ってくれ!」
一夏が船に向かいそう叫ぶと、聞こえたかどうかは分からないが、船は離れていった。
それを見た箒は一旦福音のもとを離れ、一夏に近寄る。
「どういうつもりだ一夏!折角のチャンスをあんなものに!」
「あんなもの……?どうしてそんなこと言うんだよ!」
「何?」
一夏と箒が話す間も、福音の光弾はますます数を増して飛んできている。
「例え犯罪者でも!だからって見捨てていい訳が無い!くっ!数が多過ぎる!」
「一夏……!」
光弾の幾つかは捌ききれず、徐々に白式にダメージを与えている。一方紅椿は、展開装甲によって器用に光弾を防御していた。
「持ってくれよ白式…!来人達が来るまでの辛抱だ!」
「…!まだそいつらを頼ると言うのか!もういい!例え私一人だろうと福音を止めてやる!」
「箒!待て!一人じゃ無理だ!」
「私には紅椿がある!姉さんがくれた第四世代機だ、負ける筈は無いのだ!」
紅椿は二種類のブレードを構え、福音に突貫していく。隙を作るため手加減をしていた先程の攻撃とは威力が違う。
しかしーーー
「くっ!当たれ!このっ!何故だ!」
福音とて全く学習しない訳では無い。ブレード『空裂』『雨月』と、そこから出るエネルギー刃やレーザーによる、近〜中距離戦が紅椿の持ち味だ。
先程追い詰められた福音が例え手加減しなくなったところで、例えスペックがかなり上の紅椿であろうとも、ましてや焦り、冷静さを欠いた箒の一撃を、福音が躱せない訳がなかったのだ。
そして当然福音も躱すだけでは無い。着々と攻撃の準備を進めていた。
「何!?」
不意に福音が紅椿の足を腕で掴む。そのまま振り回す形となり、箒も抵抗を試みるが、福音は器用な動きでその攻撃を躱してしまう。そして、福音に捕まるということは、先程から多用されている無数の光弾、『
「っ!離せっ!このっ!」
箒も福音の攻撃準備に気付くがもう遅い。
箒は光の中に消える。この戦闘を見る者がいたら誰もがそう思っただろう。
「い、一夏…?」
だが、結果として紅椿に大きなダメージはなかった。
「………グフッ…!……ほ…うき…」
一夏が箒と福音の間に割り込み、箒を庇ったからだ。
僅かに発光していた雪片弐型の光が消える。咄嗟に零落白夜で光弾を消し去ろうとしたのだろう。しかし、一夏の白式に見えるダメージが、それが気休め程度にしかならなかった事を伝えてくる。
「い…一夏ァァァァァァァァ!!」
一夏の体はそのままゆっくりと、海に向かって落下していった。
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「白式の反応が消えました!織斑君が!」
その頃、ブリーフィングルームでは、二人の教師と四人の代表候補生が、戦況を見守っていた。
しかし、今にも泣きそうな顔の山田麻耶が語った現状の所為で、只でさえ険しかった皆の顔が更に険しくなった。
「一夏…!来人達はいつ着くのよ!」
「ま、間も無く接触する筈です!」
「山田先生。来人に一夏の救出を依頼してくれ。それと、更織、念の為翔太郎を探して呼び戻しておいてくれ。」
そう口調では落ち着いている千冬だが、一夏やフィリップ、翔太郎の呼び方がプライベートのそれになっているのを聞くに、やはり落ち着いてはいられないようだ。
「翔太郎さんを探しに行くのであれば、私が!」
実際に依頼された簪が返事をするより早く、セシリアが名乗りを上げた。
「何?オルコット!オルコット!待て!」
千冬の制止も聞かず、セシリアはドアから出て行ってしまった。
「ハア……。あの馬鹿め。更識、ついでにアレも連れ戻せ。彼奴のブルーティアーズも必要になる。」
「分かりました。」
改めて千冬から依頼された簪も、ドアからセシリアを追って出て行った。
「凰、ボーデヴィッヒ、出撃の用意をしろ。」
「分かったわよ…!」
「了解しました教官。」
残った二人の生徒も出て行き、部屋には二人の教師が残された。
「織斑君……大丈夫でしょうか…?」
「分からない‥…頼むぞ…来人……!」
二人の教師に出来るのは、何もする事の出来ない無力を呪う事と、生徒の、弟の無事を祈ることだけだった。
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「!一夏!」
フィリップが一夏の姿を捉えたのは、丁度彼が海へ落ちていく最中だった。
山田麻耶から一夏救出の依頼を受ける前に、既にフィリップは動いていた。
フィリップは海中に思い切り入ると、一夏の体を掴み上げ海上に現れた。ISは水中では多少動きに難があるが、フィリップはそれを加速して飛び込むことによって、素早く救出することに成功した。一夏は完全に気を失っているが、まだ息はある。治療次第では充分助かる見込みはあるだろう。
しかし、問題は時間であった。フィリップのISも、既に福音と交戦を始めているシャルロットのISでも、一度戻るには時間がかかり過ぎる。となると、選べる方法は一つだけだった。
フィリップはラファールを飛翔させ、未だ宙に浮く篠ノ之箒の紅椿に接触したのだった。
「篠ノ之箒。頼みがある。」
「……私は悪くない私は悪くない私は悪くない私は悪くない………」
フィリップが一夏を抱えたまま箒に話しかけるが、どうやら箒にはその声が届かなかったようだ。
「篠ノ之箒!」
「っ!お、お前か…!何をしに来たのだ!」
「篠ノ之箒。落ち着いてくれ。君に頼みがある。」
「だ、誰が貴様の頼みなど……!」
「君が僕をどう思っているかは分からないが、それでも今は一夏のために協力してくれ!君の紅椿なら、誰よりも早く、戻って一夏を治療出来る!」
「!」
「一夏を頼むよ……!」
「………………くそっ!」
フィリップは一夏の体を箒に預けると、シャルロットに加勢すべく、福音の元へ飛んだ。
「行くよシャル、僕が前に出る。君は援護を!」
「了解!」
緑と橙の二色のラファールが、福音と対峙した。
一方、箒も一夏の体を抱え、真っ直ぐ拠点へ向かって行った。
「私は……!私は……!一夏……!」
腕の中で眠る一夏に心を傷付られながらも、抱えるようにして一夏を守りながら、現行のISを凌駕するスピードで進んでいった。
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セシリア・オルコットは、千冬の話を聞いてすぐ飛び出した。
セシリアは、篠ノ之束を警戒していた。ここ最近の学園の事件に、篠ノ之束が関わっているという噂があったからだ。無人機などという現代の技術の枠を外れたモノは、確かに篠ノ之束が作ったのだと思うのは、仕方ない事だろう。
その上、姿を見せた篠ノ之束の目的は、実の妹に専用機を与える事だった。しかも現行のISを凌ぐ第四世代機を。それに合わせるように今回の事件も起きている。噂を知っているセシリアからすれば、怪しく見えて当然だろう。
そんな束と翔太郎が二人で話すと聞き、セシリアはずっと心配していたのだ。
そして、セシリアのその心配は、決して杞憂ではなかった。
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「ハァ!」
「………………」
仮面ライダージョーカーに変身した翔太郎は、束のゴーレム改を相手に攻めあぐねていた。
ゴーレム改は、束によって小型化し、ステルス機能に特化した機体だ。しかし、小型化といっても、一般的なIS程のサイズはあり、ジョーカーとはリーチが違う。
更に、全てのISに共通する、装甲だけでない、シールドエネルギーによる防御は、パワーやスピードをテクニックで補うジョーカーとは相性が悪いのだ。
「クソっ!埒があかねえ……!」
マキシマムドライブならダメージを与えられるだろうが、隙もある上、飛んで逃げられれば当たらない、しかし、篠ノ之束の目がある以上、戦いを長引かせるのも危険だと翔太郎は感じていた。
故に翔太郎が取った手段はーーー
「お!メモリを変えるんだね?青ーー確か銃だったかなあ?」
メモリを変える事だった。翔太郎にはジョーカー以上に適合率の高いメモリは無いが、多少のスペックの減少を無視してでも、トリガーの高威力の遠距離攻撃を翔太郎は欲したのだ。
篠ノ之束の煽るような言葉に耳を貸さず、翔太郎はそれを握り締める。
(ジョーカー以外でやるのは始めてだ。上手くいってくれよ ……!)
『TORRIGER!』
「だけど………先ずはそれを貰おうか?」
「…っ!ガッ!」
トリガーメモリを装填しようとした翔太郎の手から、鈍い音が響いた。篠ノ之束の手には、何処から出したのか明らかに彼女の外見に不釣り合いな程の大きさの銃が握られており、その銃弾が翔太郎の手に炸裂したのだ。
トリガーメモリは宙を舞い、余程銃に威力があったのか、遠くの地面に落下する。篠ノ之束は銃を何処かへしまってしまうと、落ちたメモリに向かって一目散に駆け出した。
「アレはもーらい!」
「っ!させるかよ!」
『STAG』
慌て篠ノ之束を追いかける翔太郎。当然ゴーレムが立ちはだかるが、翔太郎はスタッグフォンを起動させ、ゴーレムをすり抜け進ませた。
スタッグフォンが篠ノ之束を追い越そうとする、まさにその時だった。
「翔太郎さん?これは……一体?何がどうなっているのです!?」
翔太郎を呼びに、セシリアが現れた。不運にもそこは、地面に落ちたトリガーメモリのすぐ側だった。意図せずセシリアは、メモリを狙う篠ノ之束の前に立ち塞がる形となる。
セシリアの目の前には、こちらに迫る篠ノ之束、奥には黒いISと、Wを何度か見たからか、なんとか翔太郎だと分かる黒い異形。そんな現状を見て、セシリアは困惑しているようだ。
「セシリア!?今すぐ逃げろ!」
「アイテムゲットの邪魔だよ!金髪ぅ!」
「えっ!?きゃあ!」
容赦無い束の蹴りがセシリアの顔に炸裂仕掛けるが、驚いたセシリアが体制を低くしたことによって蹴りは空を切った。
そして体制を低くし、目線も低くなったセシリアは、視界の端に移る、青いモノを見つけてしまう。
(アレは……確か翔太郎さんの!)
セシリアはガイアメモリに見覚えがある。クラス代表対抗戦の時に、エターナルが使用していたし、彼女はWの変身解除も目撃している。そのため、青いメモリが翔太郎の物であると、そして、篠ノ之束の「アイテムゲット」という言葉から、あのメモリこそ篠ノ之束の奪おうとしているモノだと、セシリアはすぐに理解できた。
翔太郎によって、余り熱心でなかった対人戦の訓練も積んでいる彼女は、すぐさま立ち上がり走り出すことが出来た。そして、地面に落ちる、青いメモリに手を伸ばした。
この時、セシリアがメモリを見つけず、逃げていたら。あるいは、翔太郎を見つけるのが遅れていたら。
翔太郎が、自分達が八十年以上ぶりにその手に取ったその道具のもう一つの危険性に気付くのに遅れることなく忠告できていたら。
篠ノ之束が、キックを外し、体制を崩したために、走り出すセシリアを止めるのが遅れていなかったら。
こんな出来事は起こらなかっただろう。
「えっ?」
『TORRIGER!』
セシリアの手の平に、メモリが吸い込まれていく。
翔太郎でさえ、咄嗟には頭に出てこなかった、T1には無い、T2メモリの性質。
青い異形となったセシリアが、ここに現れたのだった。
如何でしたか?
次回の更新も遅くなる……かも。
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