IS×仮面ライダーW 〜二人で一人の探偵達+αが転生しました〜   作:prototype

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第十五話

シャルルとルームメイトになってから三日、観察していたが目立つ動きがなかったので、こちらから勝負をかけることにした。

 

僕が使っているラファールのコア。もちろんダミーだが、これを部屋に置いておく。もし彼女がデータの抽出などを行えばスパイ。そうでなければそれはそれでよし。そう、翔太郎と決めた。

 

 

「来人、ただいま!」

 

 

「おかえりシャルル。今、シャワーを浴びてるんだ。寛いでいてくれ。」

 

 

コアは僕のベッドの上に置いてある。質感まで再現した僕の自慢の一品だ。

 

 

「?来人、ベッドの上に何かあるよ?落し物?」

 

 

「ああ、それは僕のラファールのコアさ、何か勉強の参考になるか思ってね。ほら、僕のデータが詰まってるみたいだし。」

 

 

 

ちなみに僕はバスルームにいるけど、別にシャワーを浴びてる訳じゃない。シャワーを出したまま、スタッグフォンを見ている。

スタッグフォンが繋がっているのは、ちょうどベッドが映る位置に置いてあるバットショット。いわば即席の監視カメラだ。さて、どう出るか…

 

 

 

シャルルは少しの間動かなかったけど、ゆっくり動くと、ダミーを手に取った。そして何やら機器を取り出して、ダミーに当て始めた。

 

 

……僕個人としても、信用したかったんだけど、仕方無いね。

 

 

「あれ?おかしいな、上手く行かない………」

 

 

「それはダミーだからね。」

 

 

「!」

 

僕の声を聞くと、シャルルは驚いて後ろに飛び退く。

 

 

「来人……!」

 

 

「残念だけど、データは渡せないな。シャルロット・デュノア。」

 

 

「!!どこで僕の名前を!」

 

 

「企業秘密、かな。さて、こうして証拠も手に入ったことだし、出来れば事情を話して貰いたいな。」

 

 

「………そう、だね。」

 

 

シャルル、いや、シャルロットは諦めたようにベッドに座り込むと、身の上を話し始めた。

 

 

 

 

「僕は、父親に………デュノア社の社長に命じられてここに来たんだ。これはもう分かってるのかな……」

 

 

「ああ。すでにデュノア社の社長令嬢であることは知っている。」

 

 

「僕が妾の子だってことも?」

 

 

「!?妾の…子?つまりそれは………」

 

 

「そうだよ。僕は望まれない子供なんだ。社長令嬢なんて言うのは何も知らない人だけだよ。」

 

 

篠ノ之束がいる以上、検索には十分気をつける必要がある。流石に細かい家族構成までは知らなかったな……。やはりリスクがあっても調べるべきだったのかな………。

 

 

「デュノア社は今経営難なんだ。第三世代のISを作れていない。そこに現れたのが、君達、男性操縦者だった。」

 

シャルロットの顔が、どんどん俯いていく。声のトーンも落ちる 。

 

「………そのデータを欲しがった会社が用意したのが僕。いわば僕は、ただの道具なんだ。」

 

 

「………………」

 

 

「僕の役目は、男性操縦者のIS、そしてあわよくば、他国の第三世代ISのデータを盗みとること。それでみんなに接触したのさ。………ごめんね。こんなことして。すぐにいなくなるから。」

 

 

「君は、この後自分がどうなるか、分かっているのかい?」

 

 

「さあ?良くても牢屋行きじゃないかな?どうせ会社は僕を切り捨てるだろうしね。」

 

 

………彼女の雰囲気に、覚えがある。何もかもを諦めたあの目に。

 

 

「おそらく君は、長くは生きられないだろうね。」

 

 

「………え?」

 

 

「もし、僕がデュノア社の社長なら、会社が行ったこの不祥事についての多くを知る君を生かしては置かないだろう。」

 

 

「たとえ僕が喚いても、デュノア社に影響なんか無いと思うよ?」

 

 

「君一人ならね。大きな会社と言うのは、それだけ恨みも買っている。この機会に付け込もうとする輩は沢山いるだろう。」

 

 

彼女は、いわばデュノア社の不正の証拠そのもの。ISで世界第三位のシェアを誇るデュノア社。その弱みを握ろうとするものは数多だろう。

 

 

「そうなんだ………。…でも、当然の報いかもね。僕は犯罪者だもん。……じゃあね来人。楽しかったよ。」

 

 

「君は、死ぬのが怖く無いのかい?」

 

 

「………怖いさ。だけど、どうしようも無いんだ……!」

 

 

彼女の声に感情が籠っていく。

 

 

「僕のお母さんが死んで、いきなり黒服の人達に連れてかれて、父親を名乗る男に雇われて!正妻社長夫人に虐められて!それが嫌で、自分ひとりで生きるために必死にISの技術を身につけた!それでも僕は、デュノア社の手の上で踊っているだけだ!」

 

 

「では、どうして君は何もしない?君は今までの人生に満足しているのかい?」

 

 

「何もしない………?満足かって………?僕の力で何が出来るっていうのさ!ああそうだよ!満足なんかする訳ない!知った風な口聞かないでよ!どうせ来人には分からない!僕の気持ちなんて!来人は………

実の親に道具の様に使われたことがある!?

信じられる人もいない!そんな僕の気持ちが!来人に分かる!?」

 

 

「わかるさ………。」

 

 

「……………え?」

 

 

彼女になら…話して見ても良いかもしれない。

 

 

「シャルロット・デュノア。君に僕の…いや、僕達の秘密を教えよう。」

 

 

「…秘密?」

 

 

まだ、一夏にも話して無いんだけどね。

 

 

「僕と翔太郎、正確にはもう一人いるけど、僕達は、別の世界からこの世界に生まれ変わった。」

 

「何を……言ってるの?」

 

 

「僕はね、子供の頃、事故に遭って、ある体質が身に付いた。僕の父はそれを利用し、ある道具を作り始めたんだ。」

 

「!」

 

「さらに父は、僕を完璧な道具にする為に、僕から記憶を消した。人間らしい記憶の全てを。」

 

 

彼女と僕ではもちろん環境が違う。しかし、何かを僕の話から見出して貰えれば………

 

「そして僕は、その道具を開発する為の『機械の部品』になった。その道具が、多くの人を傷つけることを知っていながらね。」

 

 

「…………………」

 

 

「僕は何とも思っていなかった。たとえ僕の作ったもので人が傷つこうがどうでも良い。どうせ逃げても殺されるだけならここにいた方がマシだ。そう思っていた。」

 

 

「……思っていた?」

 

 

「ある人に、僕の実の母に依頼された男と、その弟子が、僕を助けに来た。説教されたよ。僕の罪は、何も決断しないことだ。ってね。」

 

 

「決断しないことが、罪?」

 

 

「だけど、僕はそれでも躊躇った。そのせいでその依頼された男は死んでしまった。」

 

 

「!」

 

 

「僕は漸く分かった。自分の罪が。目の前で自分の為に人が死んで、漸く。そして僕は、残されたその弟子と一緒に逃げ出した。その日に、初めて僕は人間になれたんだ。」

 

 

あの日、鳴海荘吉が死ななかったら、翔太郎が強引に僕を連れ出したりしなかったら。運命は変わっていたかもしれない。

 

「シャルロット・デュノア。君は人間かな?それともただ使われるだけの道具かい?君が決断を迷っていると、いつか自分を失う。そして傷付く人間が必ず出ることになる。」

 

「ぼ、僕は………」

 

 

「シャルロット・デュノア。さあ、お前の罪を数えろ。」

 

 

「僕の、罪………」

 

 

「そう、君が償わなくちゃならない罪だ。」

 

 

「………皆を騙して、ISのデータを盗もうとしたこと。何も決断せずに、ただデュノア社の道具でいたこと。それが僕の罪なのかい?」

 

 

「ああ、そうだ。」

 

 

「でもね、来人。君の話が本当だとして、一つだけ無理なことがあるよ。」

 

 

シャルロットが、暗い目でこちらを見つめる。

 

 

「君には、自分を助けようとしてくれる人がいて、実際に助けてくれた。………僕にはいない。助ける様に頼んでくれるお母さんも、助けてくれる人も、僕にはいないんだ。」

 

 

………確かに、僕の家族は、歪みこそあれ、決して家族を愛していなかった訳じゃない。父さんが道を誤ったのは、家族を思うあまりの暴走だ。

 

 

「それにね、仮に僕が助かったとして、それでも僕に居場所はないんだ。世間にきっと公表されるだろうからね。スパイを信用して、居場所をくれる人なんかいる訳ない。」

 

 

ああ、おそらくそうだろう。だけど、だけどそれでも、ビギンズナイトで、鳴海荘吉は、翔太郎は居場所をくれた。僕がどういう人間か知りながら。

 

 

「ごめんね来人。僕はフランスに帰って、やるだけやってみるよ。ありがとう。」

 

「待ってくれ!」

 

「?」

 

 

「僕は、きっとこの言葉を言わなきゃいけない。まだ償いきれない僕の罪を、少しでも償うために。」

 

あの日、翔太郎達がそうしてくれたように!

 

 

「シャルロット・デュノア!君に居場所がないのなら、誰も君を受け入れないのなら!僕が君の居場所になろう!」

 

「!!!」

 

彼女は、置かれている状況は違うが、何処か僕に似ている。ふっ、翔太郎のことをとやかく言えないな。

 

 

「…………………いいの?」

 

 

「勿論、君自身の罪は償ってもらう。だからそれまで、決して君を傷つけたり、殺させはしない。必ず君を守ろう。」

 

彼女は罪を犯した。それは変えられない。裁きも受けるべきなのだろう。だけど、せめて、僕がそうだったように、小さな居場所だけでも、彼女に与えてあげたい。

 

「来人………!」

 

 

「シャルロット。決断の時だ。君は、どうしたい?」

 

 

「僕は………僕は!皆と一緒にいたい!もう道具なんて嫌だ!………僕を助けて!」

 

 

「…………確かに、君の依頼は聞き届けた。」

 

 

シャルロットの心からの言葉を聞いた。やることは一つだ。懐からスタッグフォンを取り出す。

 

 

「……………翔太郎かい?………いや、少し事情が変わった。………依頼だよ翔太郎、シャルロット・デュノアからの依頼だ。………………いや、ちょっとね。………ああ。分かった。」

 

 

「どうしたの?」

 

 

「翔太郎に連絡をつけた。これから君の厄介事を片付けてくる。何かあれば、一夏に言ってくれ、翔太郎が彼に事情を説明しているはずだ。」

 

 

「決着をつけるって…………まさか!」

 

 

「目指すはフランスのデュノア本社だ。行ってくる。」

 

 

前の世界以来の大仕事だ。何、ミュージアムと比べたら遥かに簡単さ。さあ、行こう、フランスへ!

 

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「行っちゃった………」

 

シャルロットは、フィリップが出て行ったドアをポカーンと見つめる。

 

頭の中には先程の言葉がループしている。

 

『僕が君の居場所になろう!』 『必ず君を守ろう。』

 

 

「殺し文句………言われちゃったな……」

 

そう言ってシャルロットは枕を抱え、フィリップの事を想うのだった。

 

 

 

 




如何でしたか?
Wの決め台詞がやっと出ましたね。
若干フィリップがキャラ崩壊してるような気がしないでもないです。

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