あれ? これって『ラブライブ!』だよね   作:片桐 奏斗

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第2話 転入生として

 

 

「ねぇねぇ、これなんてどうかな? かっこよくない?」

 

「んー? えー、確かにかっこいいけど、衣装のシャツに合わせた色のブーツはちょっとねぇ。シャツは悪くないんだけど、黄緑や水色のブーツはちょっと……。それなら、こっちの方がいいんじゃない?」

 

 

 

 放課後の教室――。

 

 

 ことりが見せてくれたファーストライブで着用する予定の衣装のデザインを俺に見せてきたので、最初に言われた通りに自分の意見を言った。

 

 全体的に白が多めで、下に着用するシャツが黄緑、薄めの赤色、水色と三色あり、それに合わせたブーツだったので、ブーツの色を白に統一し、白のボトムズにそれぞれの色のワンポイントをつけた。

 

 そのデザインをささっと描きあげて、ことりに見せる。

 

 

 

 

「光莉ちゃんって、絵も上手なんだね! うん、この衣装とっても良いよ」

 

「まぁね。一応、美術も得意だし。……あんがと」

 

 

 

 少し照れ臭くなって、ことりから視線を逸らしながら礼を言う。

 

 そんな俺らの掛け合いを傍から見ていた穂乃果と海未は、じーっとこちらを見ていた。海未はそこまで熱心に見てはいなかったみたいだが、視線を逸らしたり見なかった振りはしなかったので、絶対に見ていたのだろう。

 

 

 

「……なに?」

 

「べっつにー。なんか二人、良い空気作ってるなぁって」

 

「別に作ってないよ。ただ単にことりと衣装の意見を出し合ってただけだよ。高坂君も自分が着る衣装なんだし、かっこいい方がいいでしょ?」

 

「そう、それだよ!!」

 

 

 

 いや、どれなんだよ。

 

 助けを求めようとことりに視線を向けるが、俺が描いたデザインを見ながらあれよこれよと呟いていたので、もう既に作る算段を立てているのだろう。ってことで、ことりは味方になってくれないようだ。

 

 

 

「ことり君は名前で呼んでるのに、俺らは呼んでくれないの?」

 

「……いや、許可もらってないのに呼ぶのはちょっと、ねぇ」

 

「じゃあ、許可出すから呼んでよ。光莉ちゃん」

 

 

 

 ここで許可出されても……。

 

 しかも、この雰囲気は呼ばないといけないような雰囲気だし。密かに海未のちょっとだけ気分がこっちに向いてるみたいだから呼ばないとダメだよね。

 

 

 

「ほ、穂乃果……。海未」

 

 

 

 前世の俺なら別に気にせず呼ぶことが出来た気がするが、今は妙に恥ずかしくて呼ぶ際にちょっとだけ緊張した。

 

 

 

「か、可愛いなぁ。もう」

 

「これは……珍しく穂乃果を褒めないとダメだね。こんな可憐な女の子が応援してくれると思うだけで」

 

「でしょでしょ!!」

 

 

 

 穂乃果と海未の二人は何故かテンションが上がっているみたいだけど、俺は相手をするのが面倒になり放置することにした。

 

 可憐とか言うなし。とか何とか思っている俺だが、自然と頬は上がってしまう。

 

 女扱いされるのはなんか嫌だけど、外見とか褒められるのはちょっと、本当にちょっとだけ嬉しいかな。

 

 

 

「……あ、そういえば今日、生徒会に挨拶行こうと思ってたんだった」

 

「生徒会に? どうして」

 

「理事長や先生には挨拶回ったんだけど、生徒会の人達には行ってないからしとこうかなって。生徒の長なんだから一応、ね」

 

「そっか。生徒会室は三階だよ」

 

「わかってるー」

 

 

 

 鞄は置いていくから、待っててよ。そう言って俺は教室を出て、階段を駆け上がる。

 教室から出た後からずっと、男子生徒の視線を感じて悪寒がしたので、さっさと生徒会への挨拶を終えようと自然と足は速くなっていた。

 早く終わって早く帰ろう。そんな気持ちが先走って後先考えずに急いでいたからだろう。

 

 

 

 

「あっ……」

 

 

 

 階段を踏み外し、前に倒れそうになり体勢を立て直そうと後ろに仰け反った瞬間――。

 

 

 前世のように男だったならば、耐えられたのを女になり力が思った以上になかったのかが原因かは、わからない。けれど、今の俺の体は後ろに倒れかけていて、踊り場に転倒しかけていた。

 

 

 

(もう、ダメかな。……痛そうだな)

 

 

 

 

 迫る床をチラっと確認してしまった俺は来るべき痛みに備え、目をぎゅっと閉ざす。

 

 

 

 

(……痛いのはやだな)

 

 

 

 

 

 そう思ったのも束の間。

 

 既に体は床に激突していてもおかしくないのに痛みは来ない。

 

 足が床についている時点で体が床についていないとおかしい。なのに、なんでこんなにも暖かいんだろうか。

 

 恐怖よりも好奇心が勝った俺は、恐る恐る瞼を開ける。

 

 

 

 

「間にあって良かったなぁ。お姫様」

 

 

 

 

 瞳に映ったのは、迫る床でも、白い天井でもなく、少し紫がかった短髪の少年だった。

 

 

 

「あ、ありがと……ございます」

 

「ええよ。それよりも怪我せんでよかったよかった」

 

 

 

 ふわりと抱き留められるように体全体を覆われ、暖かく安らぐことが出来る空間であった。……ある一点を除けば。

 

 

 

「……えっと、そろそろ離してもらってもいいですか? さっきまでのは助けてもらったので、体勢なんて気にしてられませんでしたけど、今から揉んだりしたらセクハラで訴えますよ?」

 

「おっと、これは堪忍な。手がそこにあったもんやから、つい、ね」

 

 

 

 ついという言葉で許されるなら警察はいらないんだよ。内心そう思わないこともなかったが、助けてもらったのは事実なので、今回は見逃してあげよう。

 

 別に元男だからそこまで悪く思っていないというのもあるし、かっこいい分類に入る人だったから嫌悪感もなかったし、絶対に報告しなきゃいけないってこともないからね。

 

 

 

「ところで、そんなに急いでどうしたんだい?」

 

「生徒会室を探してて。でも、この学校の女子って私一人じゃないですか。視線がちょっと……」

 

「あー、なるほどね。隅々まで見られるような視線が嫌で、急いでたら足を踏み外して転んでもうたと」

 

「そうなんです。あ、自己紹介がまだでしたね。私は片桐 光莉です」

 

 階段の踊り場で横になってたままかっこいい男子に抱えられている可愛い女の子ってのは、第三者からすれば絵面になるかも知れないが、今の自分は抱えられている当人なので、一刻も早く離れたいが故に立ち上がる。そして、真新しい制服に埃やごみがついてはいけないので軽くパンパンと払う。

 

 

「光莉ちゃんね。『東條 希(とうじょう のぞみ)』よろしく」

 

「希……。良い名前ですね。希先輩」

 

 

 

 生徒会室までの道程をゆっくりと歩きながら二人で話し続ける。

 

 話している最中、注意力が散漫になり、物に躓いたりしないように俺の足下を確認している希先輩が気配り上手でかっこよく思う。

 

 

 

「希先輩? どうしたんですか」

 

「ん。いや、特に用事はないよ。あ、もう生徒会室につくよ」

 

「そうみたいですね。希先輩、ここまでありがとうございます!」

 

 

 

 実際には希が生徒会副会長であることを知っている俺だったが、こちらでは知らない設定なので別れる前提で話を進める。

 

 

 

「ええよ。ここに用事があるから」

 

 

 そういって、生徒会室のドアを勢いよく開ける。

 

 

 

 

「ようこそ、生徒会へ」

 

 

 

 

 




……おっかしいなぁ。関西住なのに、関西弁の男が書けないぞー(笑)
ってことがあり、完全に執筆が止まってました。





てか、一番悩んでるのが希君の一人称なんですよね……。どうしましょ。

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