読者の皆様、お久しぶりでございます。
すみません。仕事が忙しく執筆が出来る状況ではありませんでした。
そして、もう一点。
続きを書こうとしたのですが、何処までいったっけなぁ。という感じで最初から見直していくと、今更になってあれ、これちょっと物語上おかしくないかにゃぁ?という結論になったので、新しく書き直すことにしました。
以前の物はそのまま残しておきますので、何処か変わったか見比べてみてくださいな。
プロローグ
――俺は今、絶賛後悔している。
俺こと『
死因である交通事故だが、それも信号が変わる際にブレーキを掛けようとしたトラックが、何故か操作不可な状態に陥り、横断中の少女に突進しようとしているのを目の当たりにしてしまい体が勝手に動いてしまったのだ。その少女を庇うように突き飛ばし、彼女が大きな怪我をしていないことを確認し、俺の意識は無くなった――。
そんな理不尽な死を突き付けられた俺だったが当然、納得出来るわけがなく、まだ生きていたかった。俺が大好きな『ラブライブ!』をもっともっと堪能したかった。死ぬなんて嫌だよ。
この願いを神様が聞き届けてくれたのか。何故なのかは知らないが、気付けば俺は再度生き返っていた。
トラックに当たってグチャグチャになったであろう五体は、充分に動かすことが出来るし、ちゃんと景色も見えるし、嗅覚も、味覚もしっかりとしている。
ただ……一つだけ。
――何故か、俺は女になっていた。
◇
「初めまして。今日からこの音ノ木坂学院に転入してきました『
俺、『片桐 光』改め、『片桐 光莉』は音ノ木坂学院にやって来た。
この世界が『ラブライブ!』だと頭が理解した後の俺の行動は凄まじく早かった。母親に必死に頼み込んで、音ノ木坂学院に転入させてもらうことにした。というのも、理由もなしに頼んだわけではない。今はまだ限られた人にしか知られてないが『μ’s』の一人と一緒で、父親が転勤を伴う仕事をしているので、必然的に家族皆で引っ越しという話になっていた。が、俺は絶対に『ラブライブ!』の舞台となる神田町から出たくないと思っているので、引っ越しを断った。
それでも食い下がって来る両親を説得させる為に出した切り札が、音ノ木坂学院への転入だったわけだ。
そもそも何故、これが切り札なのかと言うと、音ノ木坂学院の理事長とは母親が旧知の仲であり、信頼の置ける人物だと言っていたし、今住んでいるアパートからこの学校が一番近いのだ。
尚且つ、音ノ木坂学院は"女子校"。断られる原因がない。
「……まぁ、そういうことなら仕方ないわね。取り敢えず掛け合ってみるわ」
妙に渋った表情を浮かべる母親。
当時はそんな表情を浮かべた理由が皆目見当もつかない俺であったが、今ならはっきりとわかる。
本当ならここで追求するべきだったのだと数日後の俺は後悔する事となる。
その間の数日間は憧れの音ノ木坂学院へ入れると舞い上がっていた。まぁ、ぶっちゃけ本当は男として転生させてくれた方があわよくば『μ’s』の誰かと恋仲になんて事を考えていた俺だけども、逆の発想で女であるが故に『μ’s』が通っている音ノ木坂学院に転入出来るじゃん。そこで普通のカップルという夢は潰えたけれど、ユリの花を咲かせることは出来る。という結論に至った。
その舞い上がっていた俺の脳内では致命的な矛盾点を見出す事が出来なかったのだ。
まず第一にさっき言った母親の態度。
そして、次に理事長が直々に家まで来て対談した際の会話。この時は原作というかアニメと同じで「理事長、やっぱり綺麗だなぁ」とか脳内で考えていた為に気にしていなかったが、制服のデザイン一覧に目を通してどれが良いかという話だった。――女子校なら、女子の制服は一つに定められているだろうという当たり前な考えが浮かばなかったこと。
それらの矛盾点に気付かぬまま、数日の夜を過ごし、『ラブライブ!』の世界に置ける物語が今、始まった。
「片桐光莉さんは、音ノ木坂学院の共学化のテスト生として転入して貰います。なので、皆さん。粗相のないように」
担任の先生の紹介を受けた俺は目の前に広がる光景に、口角を微かに上げながら苦笑を浮かべる事しか出来なかった。
そう、俺は『音ノ木坂学院』のテスト生だ。しかも、共学化の。
この世界に置ける『音ノ木坂学院』は女子校ではなく、男子校であったこと。物語で必要な廃校寸前という問題は同じだが、在籍する生徒の性別が逆であったことが何よりも俺を失望させた。
そりゃあ、『μ’s』の誰かと恋仲になりたいなとか考えていたけどさ、そういう意味じゃないんだよ。俺が男で、『μ’s』メンバーが女の子であることが大切なんだよ。
(ここって本当に音ノ木坂学院で、『ラブライブ!』の世界で合ってるんだよね……。恨むよ、神様)
「片桐、君の席はあそこだ」
そういって担任の教師が指差したのは、アッシュ色の髪を携えたかなりの美少年の隣の席。
何となく俺はこの美少年が誰なのか、把握してしまった。
自分の席までの道程を歩こうとした際、担任に腕を握られ引き留められた。
「ま、そんなわけだが、色恋に積極的なお前らのことだ。この美少女に質問したいだろう? ってことで、今の時間から一時間目終了までは、転入生への質問コーナーとする」
別に一時間目は私の授業だし、いけるだろう。と楽観的に言い放った担任だったが、俺からすれば冗談じゃない。
どんな質問が投げかけられるのかも、女の子らしい答えも何もかも理解してないのに、適切な回答なんて出来ないんだからやめてよ。
『はいはーい!!』
教師の一言によって、教室中の男子生徒の手が挙げられた。
「そうだな。じゃあ、最初は高坂からいこうか」
……高坂。この音ノ木坂学院で、二年生でありつつ、高坂という苗字を持つ人を俺は一人しか知らない。
『ラブライブ!』で本人は皆がリーダーでセンターと言っているが、メンバー全員がリーダーと認める『μ's』のリーダー。
「俺、
そういって席を立った橙色に寄っているような茶髪を短く切り揃えている美少年が声をあげた。
やはり『μ's』のリーダーで発起人である高坂穂乃果なんだね。てか、前世の俺よりもイケメンでちょっと泣きそう。この世界に置ける俺は、今の自分が言うのはなんかナルシストっぽく聞こえるから嫌なんだけど、結構可愛い容姿をしている。だから、別に気にしてはないんだけど。ちょっと、前世と比べちゃうからやだな。
穂乃果でこの容姿なのだから、他の『μ's』のメンバーもそうなのだろう。
穂乃果からあまり視線を逸らさないように、少しだけ教室内を見回すと、肩口まで綺麗な黒髪を伸ばしている少年やアッシュ色の髪でショタっぽい顔付きの少年がいた。おそらく彼らがそうなんだろうねと納得した俺は再び視線を穂乃果に戻す。
「光莉ちゃんはさ、スクールアイドルって興味ある?」
「はい?」
男女逆転でもスクールアイドルがあることにビックリなんだけど。というか、初対面で良く名前呼びが出来るよね。……穂乃果だから、仕方がないか。
音楽室で真姫ちゃんと会った後、勧誘している際は西木野さんって呼んでたはずなんだけど、気のせいかな。初対面で女の子を名前呼びって、ちょっとプレイボーイ臭がするね。
「スクールアイドル、ですか?」
「そう。ここらで有名なのは『UTX学院』の『
やっぱり『A-RISE』のメンバーも男女逆転に巻き込まれているんだ。
これで俺の予想は当たっている可能性が高くなってきた。ここに転入してくる際に理事長の姿を見たけれど、変わっていなかった。つまりはそういうことなのだろう。
言い方は悪いけれど、理事長は話に関わらない。『音ノ木坂学院』は女子高であったが、男子職員がいないわけではなかった。だけれど、『Love Live』に出場する人は全員女子だった。
この世界では教員などは性別が変わっていないが、女子しか参加していなかった企画に参加していたグループはすべて性別が逆転していると考えられる。
「――光莉ちゃんさえ良かったら、俺達『μ's』のマネージャーになって一緒に廃校を阻止してくれないかな」