あれ? これって『ラブライブ!』だよね   作:片桐 奏斗

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過去最長話となったはずです。

盆休み最終日からちょくちょくと書いていたのを投稿します。後のことは後で考えますww



……ストックした方が良かったかな(本音


第21話 部活動紹介

 

 

 

「……え、えっと、これっていったい」

「ほら、笑って笑って」

 

 にこ先輩が正式に『μ’s』に加入した次の日。

 アイドル研究部に入部する届けを『μ’s』全員が提出し、晴れてアイドル研究部の部員兼『μ’s』として活動する旨を了承せざる得ない状況へ追い込んだ。

 否定したい気持ちは少なからずあるだろうが、こうなってしまった以上は認めてしまうしかない絵里先輩の気持ちはまぁ、わからないこともないけど、これも活動を存続させるためには仕方ない。

 そんな感じに提出した時のことだ。

 希先輩の方から『μ’s』の練習風景を撮影したり、インタビューをしたいという提案がされたのは。

 

 そして今に至る――。

 

 

「でも、なんで私なんですか! 私は『μ’s』であってもマネージャーですよ?」

「えぇ、いいやん。『μ’s』の美少女マネージャーってことで」

 

 いや、美少女って……。

 てか、インタビューって普通はメンバーにするものじゃないの。って言うと、穂乃果らは揃って「いや、俺ってインタビューとか苦手で、練習風景で許してくれるっていうから」と言った。あ、勿論、台詞は一律していないけれど、内容はほぼほぼ似たような感じだ。

 その代償として、インタビューは私に一任すると。

 

「……今日の練習メニュー、倍にしてやる」

 

 練習メニューの管理をしているマネージャーを怒らせたことを後悔するといい。

 特に今日の練習は撮影してくれるみたいだし、念入りに行わないとねぇ。真面目に活動していて、『μ’s』は本気であることを学校中にアピールして応援してくれる人を増やすことから始めないと。

 

 

「そんなに照れ隠ししなくてええやん。相手もうちなんやし気楽にやろ」

「でも、録画したらそれが全部視聴者に伝わるわけじゃないですか」

「まぁ、そうやけど。うちは普段通りの光莉ちゃんの言葉で、ありのままでええと思うな。着飾らなくても光莉ちゃんは魅力的だし、きっと『μ’s』の魅力も伝わるよ」

 

 ありがとう。と短く礼を言って希先輩との対話を終える。

 早々に終えないと何を言われるかわからないから、ちょっとでも早く逃げたかったのかも。このままズルズルと引き摺っていても、希先輩は絶対に折れないことを理解していたからだろうか。私は軽く諦めが入っていた。

 自分の意識を通したいという気持ちが半分を占めていて、半分ぐらい諦めが混じっていた。そして、ほんのちょっとの羞恥心。先輩は“やらない”というこの意見を通してくれないと思っていたから。それならきっと、一緒に住みだしたからこその弊害だろう。

 希先輩ならこうするああ言うと言った行動が安易に想像がつくようになってしまった。

 ――だけど、嬉しかった。

 

 

(……あれ、私って元々こんなだったっけ?)

 

 

「……そんなお世辞を言っても今日のメニュー一品も増やさないからね」

 

 一緒に住んでいることは二年生組以外には言っていないので、小さな声で希先輩にしか聞こえないぐらいに呟く。

 

「えー。って、今日の当番はうちじゃん」

「いいの。今日ぐらい」

「素直じゃないなー」

 

 これ以上喋っても終わりは訪れない可能性が高く、時間を更にかけるわけにはいかないので諦めて取材に応じることにする。

 

 

 取材は悉く一般的なもので大喜利のように面白いわけもなく、真面目に質問と応答を繰り返していた。

 途中で何度かネタを入れたいなという目を希先輩はしていたが、睨みつけるような視線を送ることで止める。それも質疑応答の最初の方だけ。最後の方は真面目に取材をしてくれた。

 今覚えば、ふざけた態度を取っていたのも私が緊張しないように気を回してくれたのかもと思う。

 

「……こんな感じかな。良い記事出来そうや」

「それなら良かった」

 

 もしかして希先輩が作るパターンなのかなと思っていたが、実際に部活動紹介として取材記事を纏めて制作するのは、新聞部だそうだ。

 新聞部さん、ごめんなさい。上手く纏めてくれると助かります。私って結構、口下手だから内容がわかりにくいかも知れないけど。

 

 

 ――私の取材で『μ’s』をきちんと理解してくれたらいいな。

 

 

「さてと、私のインタビューが終わったところで、早速練習始めるよ」

 

 インタビューを受けている最中に思いついた少しハードな練習メニューを実行することにしよう。

 特に傍からニヤニヤと口角をあげながら見ていた穂乃果の練習は誰よりも辛いものにする。これは絶対だ。

 練習が開始される前の軽い打ち合わせから録画するつもりなのか、希先輩はビデオカメラの電源を入れ、録画ボタンを押していた。何故、録画中なのかわかったのかというと、録画中はランプが光る仕様になっていたからで、実際に録っているのかはわからない。レンズをこっちに向けている時点で録画はしていると思うのだけどね。

 

「準備運動と柔軟は終わってるだろうから、さっそく振り付け練習からいくよー」

 

 にこ先輩が加入する前から制作に掛かっていた新曲の振り付けを少しずつ考えていたので、その練習をすることにする。

 新しいPVを作る際はその曲でPVを作って、新しいメンバーの紹介をしたいし。

 

 歌詞も少しずつ海未が描いていっているみたいだし、作曲の方も順調に進んでいる。衣装は海未と真姫の意見を入れて曲に合わせて随時制作中らしい。ことり曰く『不思議の国のアリス』をモチーフにしてるみたい。……何故か、私の衣装まで用意されているみたいで、それだけが少し理解不可能だよ。制作費の無駄遣いでしょ。って思ったんだけど、何でも臨時収入があったらしく、上機嫌で作業していたので止められなかった。ちなみに私の衣装は『アリス』だって。

 穂乃果と真姫が帽子屋。花陽と凛がチェシャ猫。にことことりが海未が白ウサギをモデルにしている。女子から男子になったことで、配役といいますか衣装のデザインが急変したり、誰がどの衣装を着るかがだいぶ変わってしまっている。

 

「あ、これ、にこ先輩が持っていてね。皆には既に渡してあるやつと一緒だから。余裕があったら練習しててね」

 

 練習を始める前ににこ先輩に手渡した紙は、『これからのSomeday』の振り付けを自己流に纏めているものだ。と言っても、作詞作曲が終わっているところまでなので、途中から書けてない。一応、私は記憶力が良い方に属するのか前世で何度もライブ映像を見ていたおかげで完璧に覚えていたのが幸いした。

 

「任せてな。今日明日で完璧に踊れるようにしてやるよ」

 

 自慢げに言い放ったにこ先輩に一抹の不安を覚えつつも、練習を開始する。

 これ以上、無駄話を増やして、『μ’s』の印象が悪くなるのは避けたい。あのツンツン時期の絵里先輩に見られなどでもしたら、火に油を注ぐ結果になるのは明白。

 

「じゃ、いくよ。全員揃ったところからだから、サビからね」

 

 スイッチが入った『μ’s』メンバーの顔から“お遊び”等の色は抜け落ち、“真剣”という色に染まっていた。

 一度、スイッチが入ると彼らは本気で練習に取り組んでくれる。が、その分、スイッチがオフになると彼らは一気にだらける。穂乃果なんて極端に、だよ。「疲れたー」なんていって汗だくなまま私に抱き着いてくるんだし。別に汗臭いから離れろとか引っ付くなとか思わないけど、休憩中に真姫が鋭い目付きでこっちを見てくるんだよ。言葉を付けるなら「……何やってるの」って感じかな。しかも、無茶苦茶、機嫌が悪いパターンね。

 ことりもなんか様子が変だし、海未はまたですか……って呆れるし、凛と花陽はいいなぁって期待の眼差しで見てくるんだよ。

 

 

 振り付けの練習は遅くまで行い、予め設定されていた収録時間めいっぱいまで続いた。

 途中で何度か休憩は挟んだものの、彼らの披露はピークに達していた。

 希先輩が戻る時間になった今では、建物に背を預け、四肢をだらんとさせながら座り込んでいるメンバーがいた。というか、ほぼ全員だった。練習中に何回も叱咤し、他のメンバーよりも厳しく指摘した穂乃果がここまで粘ったのには驚いた。別に個人的な恨みがあったわけではないんだけど、彼にはちょっとしたことでも言った。でも、弱音を一切吐かずに一途に努力し続けた。

 

 

(その頑張りに免じて、今日は許してあげようかな……)

 

 

「みんな、お疲れ様やね。ちょっとナレーション入れてもたけど、結構良い出来やと思う」

「それなら良かったです。これで少しでも『μ’s』の知名度がアップすると万々歳なんですけど」

「……上がるよ。絶対に」

 

 きちんと動画が再生されるかどうか確認した後、ビデオカメラを閉じた希先輩はこう言った。

 

「カードがそう告げるんや。『μ’s』は高みへ昇っていくって」

 

 スピリチュアルな希先輩が言うのなら、絶対にそうなのだろう。

 最初から『μ’s』が埋もれるなんて思っていたわけではない。けど、やっぱり有名になる以外に廃校を救う方法がない以上、色んな手段を用いてでも、注目度は上げておきたい。そんな私の心が、ほんの少しネガティブにさせた。

 

 

「じゃ、また後でね。光莉ちゃん」

「うん。また後で」

 

 今から生徒会室に寄って、新聞部に寄ってから家に帰ってくるのだろうなと考えながらも、私にしか出来ない今の仕事をやろうと思う。

 希先輩がこの場から去るのを見届けた私は、練習がハードで死屍累々と化している休憩所へと向かう。

 私が近付くと条件反射のように穂乃果が抱き着いてきた。動くのしんどいならさっきのまま、壁に凭れていればいいのに。

 

「光莉ちゃんの鬼畜ー。途中から俺ばっか指摘し出したよね」

「あ、バレてた。てか、重い。立ってよー。あ、姑の如く指摘したのは、インタビューのとき、ニヤニヤしてたのがちょっとイラついちゃって」

 

 仕返ししちゃった。と、下をペロリと出しながら、可愛く言ってあげると、穂乃果は少し照れたのか頬をじんわりと赤く染めていた。

 こういう調子で彼らを弄ってあげると面白いかも。いつもラッキースケベ展開で美味しい思いをしている彼らなんだし、これぐらいしても良いよね。

 新しい遊びに目覚めつつあると、穂乃果が耳元へ囁くようにこう言った。

 

 

「……もう、立てないよ。光莉が激しくするから」

 

 

 耳元というガードが緩い場所へ、色っぽく囁くように言われた私の体はビクリと大きく震え、心臓が脈打ち始める。

 男性恐怖症が再発したわけではない。ただ純粋に、『片桐光莉』の部分が反応しているだけ。

 

「な、なな、何言ってるの!? 良いから離れ……って、真姫君は何やってるの!」

 

 変なことを言う穂乃果を強制的に離そうと、手に力を入れて、穂乃果を拒絶するも、男女の力の差は翻らない。そればかりか、ついには真姫までも私に引っ付き出すようになってしまった。

 後ろには穂乃果がいて、前からは真姫がしがみつくように抱き着いてくる。

 

「んー。何でもない。ただ、抱き着いてみたかっただけ」

 

 今までも何度か穂乃果が抱き着いているのを目撃しているので、どんな感じの抱き心地か感じてみたかったんだろうな。

 

「あー、真姫君。ずるい! おれも混ざるー!」

「僕も……いいかな」

 

 死体のように凭れ掛かっていたのに、凛が元気よく私のサイドにきて抱き着いて来た。それに便乗するかのように、花陽も逆サイドへ。

 これが所謂、四面楚歌というものか。と、若干ギャグに走らないと自分の中で何かが収集がつかないような状態に陥りながらも、私は常に笑っていた。穂乃果に悪戯されたせいで、顔は赤くなっているかも知れないけど。

 

 

 

 ――こんな日々、いいな。

 

 

 如何にも青春っぽいこんな学院生活、前世でも送りたかったなと不意に思ってしまう。今は前世を振り返ろうと無意味なのに、何故かそう思ってしまったんだ。

 

 

 

 

 


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