あれ? これって『ラブライブ!』だよね   作:片桐 奏斗

19 / 30

盆休み中は更新しないと次回更新は来週だと今朝は言ったな。だが、嘘だw


さすがにあの文字数じゃあ、少ないなと思ったので急遽更新します。


第18話 こころとからだ

 

 

 

 翌日の朝――。

 早朝からいつも通りに『μ’s』の朝練を終えた私達は、一緒に音ノ木坂学院へ向かった。

 その際に新しくメンバーに加わった、凛と花陽、そして真姫の三人とも一緒に話していたけれど、見事なまでに個性がバラバラであることに気付いて面白かった。

 

「……そういえば、真姫君」

「何ですか? 高坂先輩」

「俺が勧誘してた時は『オコトワリシマス!』って断ってたのに、さっくり入ってくれたよね。なんで~」

 

 通学路を一緒に歩いている最中に、穂乃果が投げ抱えた質問。

 それは二年生組全員が疑問に感じていたことだろう。凛と花陽が迷っていた際にも口添えしてくれた真姫。彼の心中にどんな変化があったのか。

 

「ん。マネージャーが可愛かったからですよ。光莉ちゃんが可愛くおねだりしてくれたので、入ることに決めたんです」

「なっ! 誰がおねだりしました!? 誰が!」

「え? だって、最初だって歌詞を俺に渡して可愛い声で『……待ってる』って言ってたじゃないですか。それに、講堂の時でも……」

「歌詞カード渡した時のはおねだりじゃなくて、お願いだし。講堂の時は褒めただけだよ。後、私、先輩だからね!?」

 

 いきなり私を弄りだす真姫に、必死になって弁解する。怒りか羞恥心か、もしかしたら両方の気持ちが存在しているからかも知れない。頬を赤く染め、気付かれないように振り払うように大声を出す。

 若干照れ隠しが入っていたため、怒鳴るように言ってしまったが、誰一人として気にすることなく聞き流していた。

 最近になって私を弄ってくることが多くなってきた気がする。

 

 

「……練習ついて来れそう?」

「え?」

「ほら、私が結果的に強引に誘ったみたいだし、練習について来れそうかなって。勿論、凛君と花陽君もだけど、練習きつくなかった?」

 

 不意に思った疑問を打ち明けるように一年生組に呟くように問い掛ける。

 真姫、凛、花陽の三名は互いに顔を見合わせ、同じタイミングで苦笑を浮かべた。人がせっかく心配しているのに、打ち合わせしたように笑うとは……。そんな態度取るなら、もう心配してあげないから。

 

「大丈夫ですよ。凛は元運動部でしたし。かよちんはアイドルに憧れて体作りしてたもんね」

「凛君っ!? なんで知ってるの。黙ってやってたつもりなんだけど」

「かよちんは甘いよー。誰にも気付かせずにやるならもっと徹底的にしないと」

 

 そっか。そういえば、凛は『μ’s』のファーストライブの日、花陽を陸上部の見学に連れ出そうとしてたっけ。

 風貌も運動部系って感じがするし、納得した。

 花陽君が練習について来れているのも、憧れから来る意識なら合点がいく。

 

「真姫君は?」

 

 一年生組で何やら話し合っていた際に、お互いを名前で呼ぶことを決めたのだろうか。凛が真姫を名前で呼び、質問していた。

 

「俺はまぁ、普通ですよ。ハードな練習なら多少はキツイって思うかも知れないですが、今のところは普通ですね」

 

 凛や花陽となら距離が少しだけ縮まったかも知れないけど、やっぱり二年生組とは距離を取っているのか間に壁のようなものが見えた。

 彼が本当の意味で『μ’s』に溶け込める瞬間はいつになるのか。凛は運動部で、花陽は他のアイドルファンと仲良くした経験でもあったのか、コミュニケーション能力は良かった。

 おそらく立場や境遇が影響しているってのは、確かにあるんだけど。距離を保とうとする言動を控えて、積極的にこっちに来てくれたら良いのに。

 人付き合いが苦手な今の真姫君には、難しい問題なのかな。まぁ、時期に気難しい問題はすべて解決すると思うし、今は放っておいても大丈夫だよね。

 ファーストライブの時とは違い、これは時間を掛けてじっくりとやって良い問題なのだから。

 

 

「光莉ちゃんもすればいいのに。一緒に練習」

「あー、えっと、一度やってみたんだけどね……。海未君に断わられちゃって」

「当然ですっ!」

 

 一緒に練習したいなぁと言い出した凛に私が練習に参加しない理由を口にしていると、話の中で名前が出た海未本人が会話に参加してきた。

 私が練習に参加しないで練習メニューなどが記されたバインダーや記録表を手にしているかというと、これには深い理由(わけ)があったはず。

 

「あれは最初の練習日のことだったのですが、四人で一緒にランニングをして着替える際のことです。……僕達がいるにも関わらず、この子は一緒に着替えようとするんですよ!?」

 

 ――うん。思っていた以上に深い理由なんてなかったよ。

 

 簡単に言ってしまうと、その当時はまだ女の意識なんてなくて前世と同じような感覚だったんだよね。

 今は……うん。

 あんな恐怖体験をしたせいか、わからなくなっちゃった。

 元男だから仕方がない一面もあるのだけど、現女としてはやっぱり男の意識が隙を作ってしまったが故にあんな騒動に巻き込まれたんじゃないかと思って、女らしくして、きちんとガードも強くしようと思って今の私がいるわけなんだけど。

 

 

 どちらが正解なのか。そもそも正解があるのかすらわからない。

 今のまま『片桐光(じぶん)』を隠して、『片桐光莉(おんな)』の振りをするのが良いのか、『片桐光(おとこ)』を通した方が最善なのか。

 あの不法侵入者の件があるまでは、一人の際自然と『俺』って言えてたのにな。今は意識しないと俺って言えないようになってしまっている。知らない中年の男に追われて、情緒不安定になったからかな。

 事件が解決して安らぐ時間があるからこそ、今はこうやって冷静に振り返ってみることが出来る。そう考えると、私って希先輩に助けられてばかりかも。

 

 

 階段から転落してしまった時から今に至るまでずっと……。

 

 

 さりげなく胸とか触ってきた事例があるわけだけど。本気で嫌だったわけじゃないし。以前はいきなりのことだったから、びっくりして早く手を離して欲しかったわけで、最初から意識してる今だったら別に……って、何考えているんだろうね。

 

 

 ――でも、やっぱり何度も助けられると、ちょっとね。意識しない方が難しい。

 

 この『片桐光莉(からだ)』に精神が引っ張られてきているのかな。こんなにも希先輩に好意を抱いているのは。

 今も一緒に登校している穂乃果にも、好意を抱いているのもきっとそうなのだろう。

 

 

 

「……光莉ちゃん。何してるのさ」

 

 過去にやらかしてしまった失態を数日経った後、掘り返されるという悪魔の所業をしでかした海未を軽く睨み付ける。それから、呆れるような表情を浮かべている真姫に必死に訴える。

 隣を歩いているため、必然的に首は上向きになり、少し首が痛い。

 

「ちょっとうっかりしてたんだよ。最近はそんなことしてないよ。だから、心配しないで」

「別に。心配してるわけじゃないし」

 

 ふふっ。本当に素直じゃないなぁ、真姫君は。

 見た感じだと少し照れ隠しが入っているみたいだし、満更でもないってところかな。

 真姫君もほっとけない感が全身から溢れ出てて、好意的になっちゃうかな。

 この子、放っておいたら人付き合い関係で問題が出て来そうで、若干怖いんだよね。まぁ、穂乃果みたいに目を離した隙に何かしらトラブルを引っ提げて帰ってきそうなやんちゃっ子じゃない分、まだ扱いは楽だけれども。

 

 

 

 七人で一緒に登校し、学校に着いた瞬間。

 私は見知った顔を見つける。相手はまだ学校に入る前で、真反対の道をこちらに向かって歩いて来ていた。

 約束をしていたので、六人に先に行っておいてと一言残して、私だけ校門から先へ入らずにその人の方へ走っていく。

 

「おはようございます。先輩」

「あ、アンタは……あの時の」

「これ、約束の物です」

 

 そういって鞄に大事に保管していた『A-RISE(アライズ)』のサインボールを渡す。自宅に侵入者がいたので、もしかしたら荒らされていてなくなっているかも知れないと危惧していたのだが、あって良かったよ。もしも、なかったらにこ先輩に嘘吐き扱いされて、裏切り者認定されていたかも知れない。

 『μ’s』が夢を叶えることこそが私の望み。それなのに、自分でその望みの翼をへし折るなんてミス絶対にしたくない。

 廃校問題までに猶予はあまり残されていない。けど、焦りは禁物。一つ一つ物事を慎重に進めなければ。

 

「……ホントにあったんだな。ありがとう」

「いえいえ。それでは、私はこれで」

 

 鞄のファスナーを閉めて、何故か校門前でこちらを心配そうに見ている六人の下へと向かおうと踵を翻し、歩き出そうとした瞬間。

 真後ろにいるにこ先輩から「なぁ」と呼び止める声が聞こえて、足を留める。

 

「大丈夫なのか? 部屋……変な奴に侵入されてたんだろ」

「……大丈夫とは言えないよ。今もちょっと男性は怖いし」

「だったら……っ!」

「でもね。やっぱり今は幸せだから」

 

 ほぼ初対面に近いような関係である私のことをここまで心配してくれるにこ先輩は本当に他人想いな人だ。

 人一倍努力家で、必死で、ひたむきなにこ先輩。

 アイドル研究部だって、趣味があった人と一緒にやっていこうと思っていたはずだ。でも、人一倍真剣だったが故に、他の人がついて来れなかった。

 

「……それは、あいつらがいるから?」

 

 あいつら。それは直感で『μ’s』のことを指していることは安易に予想できた。

 だから、私は嘘で塗り固めるような無粋な真似はせずに、首を縦に振る。

 男性が苦手になって『μ’s』をやめそうになっていた私を止めてくれた穂乃果、私を『μ’s』に誘ってくれたことり、私の悩みを律儀に聞いてくれて適切なアドバイスをくれる海未。

 私の言葉を信じて入ってくれた三人がいて、希先輩が助けてくれた。だから、今の私がいる。笑って言えるんだ。

 

 

「うん。『μ’s』が大好きだから!」

 

 

 私の満面の笑みと共に口から放たれた言葉が心底嫌だったのだろう。にこは少し悔しそうな顔をした後、目線を下に下げ顔を隠したまま校舎へと向かっていく。

 『μ’s』のメンバーが勢揃いしている横を通る際、「アンタらは絶対に認めない」そう言い残して――。

 

 

 






・作者の脳内

現在、フラグが立っているのは、ことり・真姫・穂乃果・希です。
フラグが立っていないのは、海未・にこ・凛・花陽・絵里となっています。


また、海未のフラグはいまだに立っていません。初期メンバーであるのにこの扱い……というわけではなくて、フラグを立てる場所は予め決めているのでそれまでは立てる予定はないです。

にこは次回から本格参戦ですね。

凛・花陽はもしかしたら二期までフラグが立たない可能性がww

絵里は……お察しの所までないですね。




とまぁ、こんな感じとなっています。若干のネタバラシをしちゃった感がありますが、大体の話は原作に寄せているので問題はない……と思います。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。