今回の話はかなり短いです。
「……後はこれを買ったらオッケーかな」
「ねぇ、希先輩。どうしてボクを連れてきたの。指名までして」
希先輩の家から数十分程歩いた先に点在していたスーパーにいるボクと希先輩の二人。
侵入者騒動が解決した記念に光莉ちゃんの好物を作って、皆で盛り上がろうと考えている希先輩だけど、その買い物に連れていく人選の基準がわからない。
穂乃果君と海未君を光莉ちゃんに付けておきたかったのか、それとも、ボクを一人引き連れることが目的だったのか。ボクとしてはおそらく後者が当たっていると思う。
――それも、きっと光莉ちゃんの件で。
「ことり君は、光莉ちゃんの何処に惹かれたん?」
「何処って。真っ直ぐなところです。……穂乃果君とは似て非なる真っ直ぐさですけど、行動力があって、一途って感じがして魅力的に思えましたし、外見も可愛くて」
「あー、もうええよ。うちと大体一緒やったし、穂乃果君や他の人と一緒やな」
穂乃果君が光莉ちゃんに好意を持っていることは知っていたけど、他の人って誰のことだろう。
ボクの目の前にいる人と穂乃果君だけでも手強い人らなのに、他にもいるなんて……。
「でも、だったら尚のこと今のことり君では、諦めた方が無難だと思うよ」
「え……?」
「……カードがそう告げてるんだよ。生半可な想いで接すると、お互いが不幸になるって」
何食わぬ顔で食材をかごに入れていく希先輩を呆然と見つめるしか出来なかった。
カードが告げているとネタのように言っていたけど、生半可な覚悟というワンフレーズのせいでボクの体は硬直してしまった。
彼女が自宅侵入された時、ボクはなんて思った?
――可哀想。
決して彼女を心配するような言葉じゃなかった。彼女を憐れむような思いでいた。
穂乃果君がお見舞いに行こうと言っていた時もそう。
ボクの意見は海未君に寄っていた。男性恐怖症になっているかも知れないから、今はあまり触れない方が良いんじゃないか。ボクが無理やり頼んだ『μ’s』のマネージャーも辞めさせるべきじゃないかって。
でも、穂乃果君は辞めなかったし、男性恐怖症に陥り掛けていた光莉ちゃんに殴られつつも体を張ってでも彼女を安心させた。
その時の穂乃果君と光莉ちゃんを見て、ボクはなんて思った?
――羨ましい。
何も自ら率先して動こうとせず安全地帯を歩いていただけのボクに、それだけのチャンスが巡ってくるわけがない。
穂乃果君はいつだってそんなボクを見たことのない世界へ連れ出してくれた。けど、こればかりは彼に頼っていられない。
「……希先輩。やっぱりボクは光莉ちゃんが好きで、諦められないし、諦めたくもない」
「うん。知ってる」
「だから、あなたにも負けません。穂乃果君にも、誰にも」
幼少期から穂乃果君にはかなりお世話になっているし、自分一人ではたどり着けない高みへ連れてってくれる憧れの人でもある。そんな彼に対して恩を仇で返す真似はしたくないけど、光莉ちゃんは渡したくない。それ以外なら、どんなことでもなんでもする。
でも、光莉ちゃんだけは絶対に誰にも譲りたくない。
「……良い目になったやん。こりゃあ、うかうかしてられんなぁ」
決意を新たにしたボクだけど、今は廃校をどうにかして、音ノ木坂学院を存続させるためにスクールアイドルを頑張ろう。
そして、それが叶ったら……ボクは光莉ちゃんに告白する。
今日から盆休みに入りましたので、執筆祭りじゃー!
……といきたいところですが、連続でイベントが入っているのでまったく書けないのですよねぇ。ホント、辛い。
次回更新はおそらく来週ぐらいになると思われます。
そして、次回予告ですが、にこはまだ出ないです(確定
おそらく出番は二・三話後になります。