あれ? これって『ラブライブ!』だよね   作:片桐 奏斗

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おはようございます!


今日はちょっと早めに目が覚めて、仕事に行くまでに時間があったので書きあげて完成しました。なので投稿してから行くことにします(笑)


※修正しました。指摘の方ありがとうございました。





第15話 後始末

 

 

「……ごめんなさい、穂乃果」

 

 すっかり落ち着いた私は殴ってしまった穂乃果の頬を優しく撫でながら、謝り続ける。殴ってしまった時の記憶は残ってる。殴った感触もある。手が赤くなってるし、痛かった。

 何より心に深く突き刺さるものがあった。

 

 自分の身すらも犠牲にして、あんなにも優しくしてくれたのに、私は過剰なまでに拒絶してしまった。穂乃果の頬を殴ってまで……。

 

「やっぱり、私は……」

 

 幸せになるべきじゃないんだよ。だから、『μ’s』のマネージャーも辞める。そう言い掛けたのだが、声に出すことは叶わなかった。

 

 

 

 涙で濡れた私の目には、間近にまで迫った穂乃果の顔しか視界に広がっていない。今までにない至近距離で“男”の顔を見ているのに、何故か彼のことは恐怖の対象ではなかった。

 きっと、下心のない真っ白な心のままに私のことを大切にしようと考えているからなのかな。それか、暴力を振るってでも避けようとしていたのに、強引にだけど光の下へと引っ張り出そうとする彼には安心しても良いと思ったのかな。

 

 

 ――本当に彼は強引だよ。

 

 

 

「んっ!?」

 

 違和感に気付いたのは、その行為をされてから数分を催した。

 今までにない程の至近距離、言葉にしようと声を発したつもりなのに出なかった言葉、現在進行形で口に広がる違和感。

 穂乃果の予想外な行動に、頭が更に混乱し、それを理解するのにも時間が掛かった。

 

 

 

(……私、穂乃果にキスされてるんだ)

 

 

 

 何故、そんな強引な手段に出たのかはわからないし、理解しようとしたくない。けど、優しく包まれているような気分になって気持ちが良かった。

 キスをして何分経ったのか気にしていなかったが、穂乃果の後ろで佇んでいたことりと海未が呆然としていたのだけ視界の端っこに映り込んだ。海未はいきなりな穂乃果の行動に驚きを隠せないのだろうけど、ことりは……違う気がした。

 なんでそう思ったのか不思議で仕方がないんだけど、何か別の感情が渦巻いているんじゃないかってそう思ったんだ。

 

「……光莉ちゃん。俺はね。君が好きなんだ」

「えっ?」

 

 数分間もの間、キスをした後、穂乃果が口にしたのは突然の告白だった。

 

「でもね。今はその返事を聞きたくもないし、聞く気もない。……けど、自分の感情を我慢して、辞めようとする君の姿は正直、嫌いだよ」

「……穂乃果」

「君はその名の通り、『μ’s』を明るく照らす『(ひかり)』なんだからさ。君が暗くなってしまったら俺らはきっとダメになる。だから、俺は絶対に君を離さない。言ったでしょ?君は一人じゃないって」

 

 穂乃果の心のうちを聞き終えた私は、やっと涙腺が止まり落ち着いたと思ったけれど、また泣きそうになる。

 そこまで考えてくれてたなんて夢にも思わなかったから。

 

「ありがとう、穂乃果……」

「おう。何度だって力になってやるから、辞めるなんて言うなよ。俺もことり君も海未君も、真姫君も凛君も花陽君も。誰もが悲しむ未来なんて嫌だから」

 

 勿論、光莉ちゃんもね。

 

 付け加えるように呟いたその一言だけで、どんなに救われるか。

 私はずっと幸せになってはいけないと思ってた。不幸にしてしまった少女の償いはしないといけないと。

 それでも、穂乃果はきっとそんな私を叱るでしょうね。決してその悩みは口に出来ないけど、穂乃果ならどんな言葉を言うのか安易に想像がつく。

 

「……うん。ごめんね。変なこといって」

「別にいいよ。俺の大事な人の悩みはいつだって聞いてあげたい、力になりたいと思っているから。また、いつでも言ってよ」

 

 見る者すべてを安心させるような笑みを浮かべた穂乃果。

 さっきのセリフも合ってか、物凄く照れ臭くって、穂乃果から目を逸らす。穂乃果が気付いているかどうかはわからないけれど、個人的には気付かないでいて欲しい。……こんなにも頬がカァーッと赤く染まっている私の姿なんて。

 

 

「あ、そうだ。ことり君」

「……な、なにかな。光莉ちゃん」

「手出してみて」

 

 私の突然の言葉に驚いたものの、ことりは私の言った通りに恐る恐るだけど手をこちらに向けて差し出してくる。

 それをギュッと握り締めて、確認を取ってみる。

 

「ひ、光莉ちゃん!?」

「ほら、海未君も手を出して」

 

 ことりの件もあって、海未は何をするかわかっているようなので、素直に何も疑問を感じずに差し出す。

 海未の手も握ってみるけれど、拒絶反応は出てこない。

 

 さっきまでは穂乃果ですら拒絶反応を示してしまったのだけど、今は出てこない。

 私自身の精神状態が結果に影響が出ているのか、穂乃果のお蔭で平気になったのか。どちらにせよ、ことりと海未は大丈夫なことがわかったので一安心だね。

 

 

「……ところで、三人はどうやってここへ? 希先輩しか鍵を持ってなかった気がするけど」

 

 居候である私は希先輩から合鍵をもらっていたので、カウントしない。私以外の人でならって意味ね。

 脳裏に浮かび上がるのは、彼らもまた、侵入してきたのかなと最悪な展開だった。

 考えることはしないでおこう。そう思っていたのに、どうしてかな。やっぱり頭に浮かんでしまう。

 

「希先輩から借りてきたんだよ。……最も、希先輩は難しい顔して、どこかへ行ったけど」

 

 のらりくらりとしている彼がそんな表情を浮かべながら何処かへ行ってしまったのなら、十中八九何かしらが起きたのかも知れない。けど、今の私が出歩いても邪魔にしかならないと思うので、やめておくことにする。

 階段で落ちた際に希先輩に抱き締められるように支えられたけど、あのときに感じた体の感触からすれば、不良に喧嘩売られても百パーセント希先輩が勝つと言えるぐらい逞しい体付きをしてたので、安心出来た。

 

「本当に何処へ行ったのでしょうね。希先輩」

「無茶をしてないと良いけど」

 

 

 ――希先輩。早く帰って来てくれないと夜、ずっと泣いてやりますからね。それが嫌なら、元気な姿を早く見せてください。

 

 二年生組の台詞が妙に真剣味を帯びていて、本当に事件か何かに巻き込まれていたらどうしようという一抹の不安が過る。

 

 

 

 ◇

 

 

「……エリチ、ごめんな。突合せちゃってさ」

「別に希の頼みだし、気にしないでよ」

 

 目の前には抵抗する意思を挫かれた中年の男性が後ろ手に手錠を掛けられ、路地裏に転がっていた。

 抵抗する意思を刈り取ったのは、意外なことにエリチで、手錠を掛けたのがうちだ。

 この男は連続侵入者事件の実行犯で、今回も実行しようと思っていたらしい所を現行犯逮捕したっていうわけだ。

 うちの持っている連絡網とエリチが持っている連絡網に、この男の特徴を伝えて一斉送信したら、今回偶々ヒットした感じだ。

 

「それにしても、良くこの男が犯人だってわかったよね」

「んー? 昨日ね。あの子が急いで神社に入っていったから何かあったんかなって思いながら近くに寄ったらね。あの子をこの人が血相を変えて追ってたから特徴は覚えてたんだよ」

 

 最近、世の中物騒だし覚えておいた方がええかな思って。と付け加えるように言うと、エリチはふーんと声をあげる。

 

「じゃあ、それは納得したけど。なんで手錠なんて持ってるの」

「エリチと初めて会った頃、うち……”東條希”が転勤族って話はしたやんな?」

「したね」

「うちが転勤族なんって、父親が凄腕の警察官なんよ。だから、色んな地方に行かないといけなくなってね。手錠は新しい支部に行く際に最初は持参してたんだけど、どうせ新しい地方に行く際に支給されるんだから置いていくわって言ってたのを聞いてパクッてたんよ」

 

 同時に近くに誰もいないか確認をし、エリチにだけわかるように指で合図を出す。

 彼と一緒にいる時間が一番多いため、言葉を発せずとも意思疎通が出来るようになってきた。今回、エリチに出した合図は『今のは嘘だから』という意味。

 こんな嘘を付いても通じるかどうかは微妙だったけれども、警察官の『東條』といえば、結構有名なので、今回は使わせてもらった。

 犯人から事情聴取した際にそんな話が出たらごめんな。と内心、父親に謝りながらも、父親と大好きな彼女。どちらを取るかなんて決まってる。

 彼女がこちらを見る可能性は限りなくゼロに近いかも知れない。けど、自分を見てくれないからと言って見過ごすわけにはいかない。

 うちは笑ってる彼女が好きで、彼女の泣いた顔はもう見たくない。

 

 

 『神田明神』で彼女の号泣した姿を目の当たりにして、うちは胸が苦しくなって、彼女をこんなにも泣かせた奴を捕まえて、滅してやろうかとも思った。

 彼女から笑顔を消す要因はなくしたい。

 

 そう思って、色んな人に協力を求めて今に至る。

 

 

 現在進行形でエリチが警察に連絡を入れていた。

 これはエリチから聞いた話だけど、うちの父親の友人らしき人がここの支部にいるらしく、すぐに向かいますと連絡をいただいた。

 その際に警察官の方には、おもちゃの手錠でですが捕まえていますので、よろしくお願いしますと告げている。

 

 

 これで一件落着だけども、警官が来るまでに時間がかかってしまう。

 しきりに携帯を見て時間を確認してしまう。嫌な予感がして仕方がない。穂乃果君らに任せたけれど、やっぱり自分が行きたい。行って彼女を安心させたい。

 

「……行って来たら」

「え?」

 

 話を聞き終えたエリチは小さな声でそう呟いた。

 

「あの子が心配なんでしょ。行って来てもいいよ。事情聴取があったなら、こっちでそう説明しておくし。もしかしたら、希の名前を借りることになるかも知れないけど」

「ありがとう。じゃあ、任せるわ。……今度、ご飯でも奢るわ」

「ハラショー! 楽しみに待ってるよ」

 

 満面の笑みを浮かべながらうちを送り出してくれる親友の心温かい気遣いに、とても感謝している。

 一刻も早く彼女にあって安心したい。安心させたい。その思いが溢れ出たのかな。警察官がつくのを今か今かと待ち望んでいた。――結果、エリチにまでバレる始末。

 

 

「ほんま、光莉ちゃんには責任取ってもらわないとなぁ」

 

 こんなにも人の心を奪っておいて、自分一人のうのうと生活を送っているのはちょっと納得できへんな。

 穂乃果君らが男性恐怖症をなんとかしてたら、キスの一つでも強請ってみてもええかも知れへんな。

 原因となった侵入者は捕まえて事件は解決したし、色々と頑張ったうちにご褒美の一つや二つあってもええよな。

 

 

 

 ――光莉ちゃん。うちな、どうしようもなく君のことが好きになってしまったよ。

 

 

 

 この事件が解決したら。そして、『μ’s』の抱えている問題を解決したら、この気持ちを伝えようと思う。

 でも、やっぱり侵入者騒動は解決したのだから、キスは強請ってもええかな。

 

 

 

 






ついに主人公がキスを……ハラショー!!



これは穂乃果ルートかな(フラグ)

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