あれ? これって『ラブライブ!』だよね   作:片桐 奏斗

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今日はもう、更新がないと思いました?

残念でした。もう一話あるんだなぁ。これがww


と、見てくださっている読者様を煽るような発言をしましたが、ノリだと思ってください。










第14話 もうひとりじゃないよ

 

 

 

「……はぁはぁ」

 

 

 一日の授業をすべて終えた俺らは、一年生には自主練だと連絡を入れて即座に希先輩の下へと向かう。

 学年が違う一年生にも話が行き届いていたのか、理由は聞かずに納得してくれた。

 おそらく光莉ちゃんが関与していなかったら、三人共聞いてくれてなかったんだろうなと頭の片隅で考えていた。

 素直じゃない真姫君も光莉ちゃんのお蔭で少しずつだけど、自ら率先して人と接するようになってきたし。凛君も花陽君も、彼女のお蔭で後押しされて『μ’s』に入ってくれた。

 

 

 今の『μ’s』があるのは『光莉(ひかり)』があったから。

 

 

 彼女の明るい光に照らされているから、俺らは頑張れるんだ。

 スクールアイドルを、『μ’s』をやって廃校を阻止しようと意見を出して行動し始めたのは俺で、ことり君と海未君も加入した。そこで、転入生として彼女が現れた。

 

 何から手を付けて良いのか全く何もわかっていない俺らで、どうしようかと路頭に迷っていた。そんな時に現れた……正しく『光』だと思ったよ。

 彼女が示す(ひかり) を共に歩んでいたら、見たことのない世界へ連れてってくれるんじゃないかと、そんな期待が心を占めた。

 

 

 だから、『μ’s』のマネージャーは彼女じゃないとダメだし。彼女以外は考えられない。

 

 

 

 そんな彼女に不穏な影が差していると朝に希先輩から聞いた瞬間から居ても立っても居られない状態が続いた。

 早く授業が終わって欲しかったし、彼女の無事な顔を見ないと心の底から安心出来なかったから。

 

 

「希先輩っ!」

 

 ことり君と海未君がちゃんとついて来ているかを確認することなく、前だけを見つめて一目散に走って来た。

 日々のランニングで培った体力をこんな時に使うとは思わなかったけど、結果的には力になっているので良かった。

 三年生の希先輩が所属している教室の扉をガラッと勢いよく開けて、希先輩の姿を確認する。

 

「……早いなぁ。そんなに彼女のことが心配なん?」

「ええ。彼女は大切な人ですから」

 

 『μ’s』にとっても、俺にとっても。

 

「本当に一直線で羨ましいわ。……穂乃果君。住所は教えるし、鍵も貸すから。君達だけで先に行ってくれへん?」

「希先輩……?」

「うちも用事を済ませたらすぐに行くから」

 

 ズボンのポケットにカードをしまって、代わりに自宅の鍵を俺に手渡す。

 他人なのに鍵を託しても良いんですかと質問が口から出そうになったが、寸前の所で留まる。

 希先輩の顔付きがいつもよりも厳しく変わっていたからだ。

 いつもはこんなに難しい表情をしない印象だったのに、なんで……。

 

 

「……っ! わかりました。直ぐに向かいます」

「ん。彼女をお願いするわ」

 

 そういって住所をササッと走り書きで書き記したメモを俺のポケットに入れて、希先輩は急いで教室を出ていく。

 俺は彼の後ろ姿やさっきの表情を目の当たりにして、嫌な予感がした。

 彼があんなにも真剣な眼差しをしていたのを目にしたのは、ほぼ皆無と言っても良い。……今朝を除いて。

 

 そして、そんな険しい表情を浮かべていた今朝の話題は、不法侵入者の話。被害者は光莉ちゃん自身。

 いくらバカと称され続けている俺でも、理解してしまった。

 

「はぁはぁ、待ってよ。穂乃果君。置いていくなんて酷いなぁ」

「……どうしたの。穂乃果」

「光莉ちゃんが危ない!」

 

 数分遅れて、ことり君と海未君が到着するも、俺はとっても簡単に理解してもらえるように簡潔に内容を纏めて、二人も一緒に急がせる。

 家主である希先輩から光莉ちゃんを頼まれたんだ。

 彼女が無事であることを祈りながら、全速力でメモに書かれている家へと向かう。

 

 

「穂乃果! 光莉が危ないというのはどういうことですか!」

「言葉通りの意味だよ。朝に海未君は言ったよね。男性恐怖症になってるかもって」

「ええ、言いましたけど」

「……それって、俺らも当て嵌まるんだけどさ。彼女の脳裏に残っている男性にも当て嵌まるよね」

 

 ましてや昨日の今日で、あの出来事を忘れるなんて不可能だと思う。

 希先輩から今朝に聞いた話だと、下着類も物色されていたみたいだし、思わず逃げた光莉ちゃんを追い掛けていたこともあって、きっと恐怖を感じていただろう。

 恐怖を感じた相手を忘れるなんて、出来ない。

 

「……何らかの拍子で思い出してしまって、精神的に不安定になっているかも、と?」

「そう。……ことり君には無茶を言うかも知れないけど、急ぐよ」

「大丈夫。そういうことなら急ぐべきだと思うから」

 

 今まで朝練で出したこともないような速度で俺らは走りきり、階段を一気に駆け上がって、希先輩から借り受けた鍵を使って家の中へ入る。

 中の様子を窺っただけでも、異常だとわかるような静寂。

 当たって欲しくなかった予想が当たってしまったと、内心で舌打ちをしながら中へ入っていく。

 

 

 

 廊下を突き進み、扉を開けると、そこは――。

 

 

「光莉ちゃんっ!!」

「ほ、のか……?」

 

 リビングだろうか一回り大きい部屋のソファーの上で蹲るように小さくなり、涙でぐしょぐしょになった瞳をこちらに向ける光莉ちゃんがいた。

 体は小刻みに震え、困惑した眼差しを浮かべる彼女の姿を見て、考えていた悪い予感が的中し、精神的に悪化していると悟った俺は、彼女にゆっくりと歩み寄って、優しく抱き締める。

 

 

「い、いやぁっ!! 離して!!」

 

 本気で嫌がっているのだろう。

 本能で男を嫌っているのだろう。

 

 ――無理もない。変態おじさんに家に侵入されて、追い掛けられて、男に恐怖を感じないわけがない。

 

 彼女の腕には思っていた以上の力が篭っていて、当たり所が悪かったら俺が怪我をするかも知れない。それでも、俺は絶対に彼女を離さない。

 

「……ごめん。俺がもっと君の傍にいたら、こんなことにならなかったのに」

 

 ファーストライブを終えた日――。

 

 反省会を行うにしても、彼女を含めた四人で行うべきだった。

 そして、俺らの誰か一人でも彼女と一緒に帰るべきだったんだ。

 

 

 

「いくらでも傷付けてくれていいよ。そんなことで償えるとは思ってないけど、いくらでも貸すから」

 

 自分が今行っていることを脳が正常に理解したのか、彼女の動きが急に止まり、俺の顔を見た途端に号泣した。

 彼女が拒絶の為に殴った俺の頬は赤く腫れ、外部から見たらかっこ悪いかも知れないなと思いながらも、彼女を救えた実感を得た俺は、背中にある彼女の暖かい手の感触を感じながら、彼女が泣き止むのを待つ。

 

「……俺さ、絶対に君を一人にしないよ。だから、安心して」

 

 俺の話を聞いてくれているかわからないけれど、泣きじゃくる彼女を優しく撫でながら、俺は誓うよ。

 

 

 

「もうひとりじゃないよ。君を護るから」

 

 

 何を代償にしても、俺は君を護る。

 君は『μ’s』を明るく照らす光で、俺にとっての『太陽』だから。

 

 

 

 

 





今回のサブタイトルは主人公っぷりを披露した穂乃果のソロ曲から取りました。



……やっぱり、主人公は主人公でないとね。

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