りゅうー(本物)だった者です
諸事情で前のを消してリメイクさせていただきました
暖かく見守っていてください
リィン・シュヴァルツァーは中庭にあるベンチに座って悩んでいた。
「......んっ...」
膝の上、俗に言う膝枕の状態で気持ち良さそうに寝ている猫のような少女、フィー・クラウゼル。
「...すぅ...すぅ...」
フィーがいる逆側に座ってリィンの肩に寄りかかり、寝ていながらもどこか凛とした雰囲気を漂わせている少女、ラウラ・S・アルゼイド。
太陽の朗らかな陽気が気持ち良く、すこしだけベンチで休んでいたら寝てしまい、目を覚ましたらこのような状況になっていた。
(さて、どうしたものか...)
2人を起こしてどいてもらおうと思わないのがこの男の良いところなのだろうか。
リィンは気持ち良さそうに寝ている少女達を起こさないように注意しながらため息を1つ吐いた。
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エレボニア帝国はトリスタにあるトールズ士官学院。
ここは帝国中興の祖「ドライケルス大帝」によって創設された、貴族・平民を問わない優秀な人材育成を目指す帝国屈指の名門校である。
白の制服を見に纏うは貴族出身の生徒、一方で緑の制服が平民出身の生徒。
両者は学業成績や武術訓練、クラブ活動などで競い合っていた。
貴族と平民という身分の差はあるが、まだ学生だからなのか大人達ほど確執があるわけではないので両者の間にはそれほど大きな隔たりはない。
しかし、近年エレボニア帝国における”貴族派"と"革新派"の水面下での対立が激化しており、”貴族派"と"革新派"両方の理事をもつトールズ士官学院の生徒たちにも影響を与えていた。
それを受けて、貴族と平民が同じ学び舎にいる以上いつその隔たりが大きくなるか分からない。
そこで学院は1つの特別クラスを作った。
その名も特科クラス《Ⅶ組》
新型オーブメント《ARCUS》の性能を試すという名目のもと、貴族平民関係なく集められたクラスであり、冒頭の少年少女──リィン、フィー、ラウラ達もそのクラスの一員である。
始めこそ貴族と平民が差別なく同じ教室で学ぶことに戸惑いはしたが、彼らは他の生徒とは違ったカリキュラムを受けたり特別実習をこなしていくに連れて、仲が深まって行っていった。
リィンもまた、己の出自や身分、内に秘めるものを皆に話し、時には仲間内のいざこざを仲介し、事件や問題を率先して解決していった。
まぁ、その結果
それはさておき、話は冒頭に戻るがその前に。
トールズ士官学院の中庭は丁度三方向を「コ」の字型に建物で囲まれており、冬は風に吹かれないため暖かく、夏は木陰ができて涼しい。そのおかげか、どの季節でもお昼時になると生徒達がベンチに座り談笑などをしているのがよく見られる。
そんな場所で、2人に体を預けられ身動きが取れない状況、しかもその2人ともが美少女で、校内では色々な意味で有名なのだ。
正直ものすごく恥ずかしい。誰かに見られでもしたら根も葉もない噂が飛び交うことだろう。美少女を2人も侍らしているということでリィンの悪い噂を主にして。
出来ることなら問題が起こる前に2人を起こしたい。が、リィンは思う。こんなにも気持ち良さそうに、自分に身を任せて寝ている2人を起こすことなど出来るだろうか?
(いや、無理だろう...)
というわけで、リィンは現状維持を選んだ。せめて、2人が早く起きてくれるか誰かが来るのを祈りながら...
さてさて、ここでⅦ組の制服について話しておこう。
実は、特科クラス《Ⅶ組》の制服は他の2種類のどちらにも当て嵌まらない。
では何色なのだろうか?
『赤』なのだ
白、緑の中に赤である。
はっきり言って目立つ。
そのため、誰でも制服を見るだけで"Ⅶ組の誰か"とまでは分かるのである。
さらに、リィンは自由行動日に生徒会の手伝いとして学生や街の人たちからきた依頼などをこなしており、トリスタに住んでいるほとんどの人たちと面識がある。
それに加え、良く女の子と一緒にいるのを目撃されており、さらにさらに、見かけるたびに前とは違う女の子を連れているので皆リィンの事を早い段階で覚えてしまった。
女誑しと言う情報と共に。
まぁ、あまり悪い方向で広がってないのはリィンの人徳が成せるものなのかもしれないが...
ともあれ、だからだろうか、中庭という人が集まりやすい場所にも関わらず、誰もリィン達のもとに行く者はいなかった。
桃色空間に入りたくなかったのである。
このことは本人が知る由も無かったが。
少したって陽が傾いて来た頃、膝の上で寝ていたフィーと目があった。
「...おはよう、リィン」
「おはよう、フィー。いきなりで悪いんだか、そろそろ膝から降りてくれないか?足がしびれてきたんだが...」
「ん、わかった...」
そう返事するとフィーは体を起こし、ふあぁというあくびと共に背筋を伸ばした。
同時に、人の動きを感じたのか、リィンに寄りかかって寝ていたラウラも目を覚ました。
「ん...」
「ラウラも起きたか。おはよ...」
そう言いながら左を向いたリィンは固まった。
(か、顔が近い...)
それもそうだ。ラウラは今までリィンの肩に頭を乗せて寝ていたのだから、横を向けばすぐそばに顔があるのは当たり前である。
「ん...?リィンか。おはよう...」
寝起きでまだ視界が悪いのか目をこすりながら言ってくるラウラ。
何も言えずに固まっているリィンを見て今だ思考がまとまっていなかったラウラだったが、意識がはっきりとして来たとたん彼女の顔は真っ赤に染まった。
「リ、リィン!?そなた、ち、近いぞ!?」
「すごい密着して寝てたからね。」
ジト目でリィンを見つめながら理由を述べるフィー。
そこでフィーがいることを思い出したラウラはさらに顔を赤く染める。
「あ、あはは...。とりあえず2人とも、体を伸ばしたいから離れてくれるか...?」
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「ところで、2人ともどうしてここに?」
体を伸ばし、スッキリしたリィンは今だ顔が赤いラウラと若干不機嫌なフィーの2人に聞いた。
「ちょうど部活が終わってギムナジウムの前を通ったらラウラと会った。」
「う、うむ。そこで少し話をしていたら中庭のベンチで眠るリィンを見つけてな。」
「初めは起こそうと近づいたんだけど、気持ち良さそうに寝てるのを見てわたしも眠くなっちゃって。」
「フィーがリィンに近づいたと思ったらいきなり膝枕で寝始めたからびっくりしたぞ...」
「反省はしてる。後悔はしてない。」
「そ、そうだったのか...。あれ?じゃあ、どうしてラウラは俺の隣で寝ていたんだ?起こしてくれれば良かったのに」
「そ、それはだな...なんと言うか、その、ね、寝顔が...」
「?」
「それを聞くリィンはやっぱり唐変木。」
「な、なんでだ...?それとフィー、なんだか不機嫌じゃないか?」
「知らない」
プイッとそっぽを向くフィー
いきなり唐変木呼ばわりされたが、あまり意味の分かっていないリィンは「はぁ」とため息をついた後、何かを思い付いたのか空気を変えるために2人に向き直った。
「そうだ2人とも、これから暇か?」
「う、うむ。私は大丈夫だが...」
「わたしもオッケー」
「もしよかったらキルシェで夜ご飯でも一緒に食べようかと思ったんだが、どうだ?」
「ふむ、そういう誘いなら喜んで受けよう。」
「やった。リィンのおごり?」
「フィー、さすがにそれは...」
「あぁ。大丈夫だラウラ。こんな時間まで付き合わせてしまったからな。そのお詫びってことで。」
「そなたがそう言うのであればいいが...」
「それにこの3人で食べるってのもなかなか無いしな。」
「そういえばそうかも。」
「リィン、そなたに感謝を。ならばシャロン殿には私の方から連絡しておこう。」
「お願いするよ、ラウラ。」
「それじゃ、準備が出来次第出発だね。」
こうして3人は学校を後にし、夕日を背に、街にあるキルシェへと2人でリィンを挟み仲良く向かっていった。
キルシェ店長であるフレッドに美少女を2人も連れている事をからかわれたり、ご飯を食べ終えて寮に戻ったら、女性陣─特にアリサ─にいろいろ聞かれたがそれはまた別の話。
〜fin〜
ちなみに...
リィン「それにしても、どうして中庭にいたのに誰も話しかけてくれなかったんだろう...」
夜、リィンは1人寝落ちするまで考えていた...
誤字脱字、キャラの違和感などがありましたら気兼ねなくお教えください
感想待ってます