一条家双子のニセコイ(?)物語   作:もう何も辛くない

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正月は飛ばしました。
あのイベントは楽一人が被害者になるからこそ面白いものだと思いますし…。

後、今回はバレンタインではありません。
その後の展開を描きやすくするための繋ぎ(?)の回です。
ではどうぞ。









第46話 オトナリ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

本日は冬休み明けの学校初日、始業式の日である。

あの小咲のお泊りからは陸には特に事件も何もなく平和な日々を過ごしていた。

 

ともあれ、無理やり特筆するとしたら正月、年始の日だろう。

陸は家に挨拶をしにやってくる人たちを一征と共に応対していた。

あのマダムフラワーが経営する企業から二人、幹部と名乗る男が挨拶をしに来た時は驚いたものだ。

まぁ、一征は毎年人は違うが挨拶しに来てるぞと言った時はもっと驚いたが。

 

とにかく今年陸は初めて一征と一緒ではあるが組に挨拶をしに来る人たちの対応を経験した。

 

これが冬休み中に起きた事件である。

楽の部屋に行った時、何故か楽が寝込んでいて本人に聞いても理由は覚えていなかったらしいが…、陸に起きた事件は他にはないのである。

 

 

「よーし、皆よく聞け―。これから席替えするぞー」

 

 

そして今、始業式を終え、配布物を受け取りホームルームも終えたと思ったその時、キョーコ先生がそんなことを言い始めた。

 

 

「いやぁ~、私としたことが二学期にすっかりやり忘れちゃってねー。早く帰れると思った皆には悪いけど、ちゃっちゃとやっちゃおうか」

 

 

クラス中から不満が垂れる中、キョーコ先生はクラス委員にくじを作る様に指示する。

 

そんな中、陸は椅子の背もたれに体重を預けながら天井を見上げていた。

 

 

(席替えか…。そういえば確かに、二学期にはやらなかったな)

 

 

もうこの席にいるのが当たり前のように感じていた。

大分後ろの方の席だったため、居心地もよかったし正直あまり席替えしたくないというのが陸の本音。だが…

 

 

「はぁーい!私は楽様の隣の席が良いですわー!」

 

 

「席替えだって言ってんでしょー。自分の運に祈りなさい」

 

 

立ち上がり、手を上げながら言う万里花の様に席替えを望む人も少なくないはず。

むしろ席替えをしたくないという人の方が少ないと思われる。

 

現に、先程まだ帰れないのかと不満を垂れていた人たちのほとんどは今では笑顔を浮かべてくじが完成するのをまだかまだかと待ち構えている。

 

 

(…まぁ、キョーコ先生の言う通り自分の運に祈るとしますかね)

 

 

こうなってしまっては仕方がない。何としても後ろの席を、出来れば一番後ろで窓側の席になる様に祈り、そしてついにくじを引く。

 

その結果は────────

 

 

「きゃ~~~~~!楽様がこんなに近くに~~~~~!!」

 

 

「おいおい…、いつもの面子が勢揃いって感じだな…」

 

 

「よろしくね、皆」

 

 

「うっひょ~~~!俺らツイてんな~~~!!」

 

 

「何故貴様の近くになど…」

 

 

顔を真っ赤にして喜んでいる万里花。

何処か呆れ顔を浮かべて、でもその表情には確かに喜が浮かんでいる楽。

笑顔を浮かべて周りの人に挨拶する小咲。

両手を上げてはしゃぐ集。

不満げな口調のように聞こえるが、頬を僅かに染めている鶫。

喜ぶ五人を眺めているるり。

 

この六人が教室の前、それも真ん中という位置的には最悪な場所とはいえ固まっている。

これはテンションが上がるだろう。

 

さて、楽が言ったいつもの面子。残る二人がどこになったかというと…。

 

 

「桐崎さん、隣の席の山田です」

 

 

「前の席のゴリ沢です、よろしく」

 

 

千棘は廊下側の端から二番目、一番後ろの席になった。

それも、周りを全て男子に囲まれた状態。

 

 

(うわぁ…。気の毒に…。気持ちはわかる、うん)

 

 

頭を抱え、現実を嘆く千棘の姿を見て同情する陸。

そう、同情できてしまうのだ。

 

 

「ち、千棘。近くの席になったな。よろしく」

 

 

「り、陸~…」

 

 

何故なら、陸は千棘の隣の席になった体。

陸の席は廊下側の一番端、そして一番後ろの席である。

つまり、千棘を囲む男子の中の一人となってしまったのだ。

 

何故だか申し訳ない気持ちになる陸をよそに、この席替えの結果に不満を持つクラスメートたちが現れる。

 

 

「え~!俺のまわりに女子全然いないじゃん!」

 

 

「俺も、こんな前の席嫌だよ!」

 

 

「私、前じゃないと黒板の字が見えないよ…」

 

 

男子二人の意見はどうでもいいが、女子の意見は取り入れなければならない。

 

 

「やり直しを要求する!」

 

 

目が悪い女子だけをどうにかすればいいと思うのだが…、クラスの誰かがそんなことを叫んだ。

 

 

「ふふ…、ごねても駄目ですわ皆さん。席替えにやり直しなどというものは…」

 

 

「いいわよー」

 

 

「え!?」

 

 

万里花がどや顔で要求を突っぱねようとするも、キョーコ先生が机に顔を載せながらだらけた表情で要求を受け入れる。

目を見開いて驚愕する万里花をよそに、キョーコ先生はクラス全員からくじを回収し再びくじ引きの準備を始める。

 

 

「いやまぁ?三学期ともなりゃあんた達にも色々とあるだろうし?生徒の自主性を重んじて、ね?」

 

 

「え~~~~~~~~~~!?」

 

 

万里花が明らかな不満を顔に表している。

 

それを眺めてから、陸はこっそり隣の千棘に目を向ける。

 

 

(あ、やっぱりホッとしてる)

 

 

明らかに安心し、胸をなでおろしている千棘の姿があった。

 

そして再び始まるくじ引き。その結果は…。

 

 

「鶫ーーーーー!!」

 

 

「お、お嬢…」

 

 

「うわっと、あぶね…」

 

 

後ろの席で千棘、鶫、楽と左から順番で並んでいる。

小咲は窓側から二番目の真ん中の席。万里花は一番窓側。集が廊下側の一番後ろの席で、るりが小咲の隣の席に位置していた。

 

そして陸は…

 

 

「やり直しを要求します」

 

 

「なっ!?貴様、一条陸!何の理由があって…」

 

 

手を上げながらキョーコ先生にやり直しを要求する陸。

鶫が立ち上がり、陸に指を差しながら怒鳴る。

 

 

「俺、一番前の席は嫌なんで。もう一回くらいやり直してもいいでしょ」

 

 

「いいわけあるかー!」

 

 

「いいよー」

 

 

「はぁ!?」

 

 

どこから聞いてもどうでもいい理由。

鶫がさらに激昂するが、キョーコ先生はやり直しを認める。

 

折角楽の隣になれた鶫は、ショックで顔を青くするのだった。

 

 

(すまん)

 

 

そして陸は心の中で謝罪するのだった。

 

 

「先生、やり直しを要求します」

 

 

次のくじ引きでも、今度はるりが結果に不満を持ったらしくキョーコ先生にやり直しを要求する。

隣の集の戸惑いの表情が面白かった。

 

その次のくじ引きでは、千棘と万里花が隣同士になり二人がやり直しを要求した。

 

何度やっても誰かが不満を持ち、やり直しを要求する。

生徒の自主性を重んじている(?)キョーコ先生はその要求を受け入れる。

 

そんな感じで何度やっても席が決まらない。

流石のキョーコ先生も、痺れを切らす。

 

 

「は~い、もう時間がないからこれが最後の一回ね~。もう恨みっこなしだよ~」

 

 

ついにラスト一回が宣告される。

皆の表情が緊張感に満ち、手に汗を浮かべながらくじを引く、

 

 

(いや、何でそんなに緊張してるんだよ。…いや、俺も後ろの席になりたいけどさ)

 

 

例外も一人いるが、その例外も内心の欲は抑えきれない。

くじを引く番になると、僅かに手に汗を滲ませる。

 

 

「じゃ、皆くじを開いてー」

 

 

皆がくじを引き、キョーコ先生がくじを開くように言う。

 

果たして、結果はどうなったのか。

 

 

(…よっしゃーーーー!一番後ろ、それも窓側の端じゃねえか!)

 

 

陸にとっては最高の位置を取ることができた。

 

陸は嬉々としながら、気が緩めばスキップしてしまいそうなほど心を躍らせながら新たな自分の席に腰を下ろす。

 

 

(うわぁ、夢にまで見たこの席…。もう離れないからな!)

 

 

…少し行き過ぎている。気持ち悪い。

 

 

「あれ?」

 

 

「?」

 

 

机に頬擦りしていると、隣から戸惑いの声が聞こえてきた。

陸はその声に我に返り、自分の行動を顧みて僅かに頬を染めながら声が聞こえてきた方へと振り向く。

 

 

「り、陸君…」

 

 

「小咲?」

 

 

何と、隣の席に座っていたのは小咲だった。

そして陸は小咲の前に座っている人物を見て目を丸くする。

 

 

「お、千棘も近いのか」

 

 

「小咲ちゃん!陸も!」

 

 

千棘は、後ろに座る小咲に声をかけた後、小咲の隣の席に座る陸に目を向けて挨拶する。

 

 

「…何だこれ」

 

 

さらに、これだけではなかった。

千棘の隣、そして陸の前に座る人物。

楽が千棘、小咲、陸と並ぶ面子を見て目を丸くしながら呆然としていた。

 

 

「…何だこれ」

 

 

「ら、楽!あんた、席ここなの!?」

 

 

「あ、あぁ…」

 

 

「一条君も近いんだね、よろしくね?」

 

 

知らぬは本人たちだけ。

傍から見れば、どこか運命さえ感じさせるこの並び。

 

 

(…静かには過ごせなさそうだな)

 

 

陸は、小咲の向こう側で口論を始める楽と千棘を見て思う。

 

 

(でも、悪い気はしないな)

 

 

自分が一番望んでいる静かな時は諦めなければならないようだが、まったく悪い気はしない。

むしろこれからの三学期が楽しみになってくる。

 

始まる前はどうなることかと思っていた席替えだったが、無事乗り越え、さらに最高ともいえる結果を手に入れた陸なのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やぁるりちゃん。近くになったよ、やったねるりちゃん」

 

 

「…」

 

 

 

 

「何故貴様の隣になど…」

 

 

「それはこちらのセリフですわ」

 

 

 

 

いつもの面子、その他の結果である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




ということで席替えです。
この後の展開もそうですが、陸小咲楽千棘の四人が一カ所に固まる席順を作りたかったんや。
そのためだけにこの回を描いたんだ、悪いか!(笑)

次回は今度こそバレンタイン回です。




それと、ニセコイには関係ありませんが活動報告である報告があります。
興味がある方は覗いてみてください。

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