――懐かしい、夢を見た。
『ねぇ、お義姉ちゃん。おとうさんとおかあさんって、何?』
それはまだシオンが物心ついた頃の事で、この質問に、義姉はとても困ったように、悲しそうにしていた。
どんなヘンテコな問いかけにも、一生懸命考えて、唸りながらも答えてくれたあの人が、唯一言葉に詰まったもの。
『そうね……あなたを何より愛してくれていた人達、かしら』
『えー? それってお義姉ちゃんよりもー?』
当時は親の愛なんて物があるとは知らなかった。
義姉さんから与えられる愛情だけが全てで、それ以外の物が存在するなんて、想像する事さえできなかったから。それだけで十分だったからだ。
母のように、姉のように、友達のように。年齢的に妹と恋人は無理だったけど――仮にやれたとしても困るだけだが――それでシオンは、幸せだった。
『そうよ。……最期のその時まで、あなたを案じていた。あなたの幸せを。あなたの輝かしい未来を願っていた。その姿を見れないことを……悲しんでいたの』
『……?』
今ならこの言葉の意味がわかる。
『今は、わからないか』
だけど、それを理解するのは、
『だけど、いつかきっとわかるから。だから安心して。あなたは、誰より親に愛されている子なんだから』
あなたが死んでしまった時だなんて――思ってもいなかったよ、義姉さん。
「……今更、なんでこんな夢を」
そんな呟きと一緒に、目が覚めた。同時に、目から零れ落ちた涙を乱雑に手で拭う。久しく思い返さなかった大切な家族との記憶。
それはとても大事な物で、だからこそ、思い返すのを禁じていた。
――わかって、るのに。
シオンは未だに忘れられない。輝かしい日々を、それを失った灼熱の地獄を。……そこから這い上がった、血と泥に塗れた道を。
傍から見れば、シオンは順調に一流の冒険者への途上を歩んでいるように見えるだろう。時折嫉妬の陰口が余人から発されるのを知っている。
けれど、それは。
シオンからすれば、ただの逃避に過ぎない。
目標がある。それを支える決意がある。それだけの覚悟を持っている。でも、だけど、根本的な部分で致命的に間違っていると、シオンは、無意識に気付いている。
でも、気付いてしまえばきっと自身が破綻してしまうという事もわかっているから――シオンはこの思考を、打ち消した。
何も知らない。何も気づいていない。だから、自分はまだ大丈夫。
「……外に、出るか」
シオンの異常はパーティメンバー全員に伝えられている。だから、シオンはほぼ完治しても様子見を強要されていた。とはいえベッドで横になっていろという訳ではなく、ダンジョン攻略や無茶な運動を止められている程度だ。
外に出るくらいなら、特に問題もなかった。
ベッドを出て、着替える。あまり着飾る気が起きず、いつもより遥かに簡素な装いとなった。一瞬髪を縛る事も考えたが、やめた。そんな気が起きなかったから。
護身用に短剣をベルトに差し込んでおく。それから小さなポーチを腰に巻き、そこに針に糸、回復薬等、それから財布を入れて、部屋を出た。
ホームを出て、オラリオを見渡す。正直言ってしまうと、どこに行くかなんてアテは無い。ほとんど気紛れで出てきただけなのだ。
仕方なしにアテも無く歩き始める。
――他のメンバーは今頃25層辺りだろうか。
上の空で思い浮かべるのは、ティオナ達のこと。シオンがいないから無茶はしない、と言っていたのであまり心配はしていないが、それでも不安ではある。
「……あの男は行動しないと思うが」
突発的に何かやってくる可能性はあった。しかし考えすぎて身動きが取れないなんて、それこそ本末転倒だ。
シオンは溜め息を一つ吐き出して、それからふと思い浮かべた。
――昔の友人に会いに行くのも、悪くないかな。
恐らくこの時間から働いているであろう彼女の顔を思い浮かべ、シオンは足をそちらへ向けた。
『豊饒の女主人』、という酒場がある。西のメインストリート沿いに建つ建物の中でも、一際大きいとすぐにわかる物だ。何年前からあるのかはさっぱりだが、少なくとも十年単位の昔から存在しているとわかる。
シオン自身、何度か立ち寄ったが数える程でしかない。味は美味しいし、従業員と、何より酒場の名前通り女主人の強さによって安全でもある。
それでも立ち寄らなかったのは、偏に後ろめたさがあったからだ。
別に悪いことをしたわけじゃない。ただ、彼女と顔を合わせるのが、辛かった。
「……シオン?」
「……久しぶり、シル」
友人――少なくともシオンはそう思っている――との、数か月か一年以上ぶりの再会は、どこかぎこちない笑顔で始まった。
いらっしゃいませ、そう従業員らしい接客態度と笑顔で店の中へ案内されたシオンは、まず客の少なさにそんなもんかと思ってしまった。
そもそもここは酒場である。一日の終わりに酒を呑んで、色々とはっちゃける場所。朝と昼であれば多少の人は見かけるが、今はその中間の微妙な時間帯。人がいる方が珍しい。
一人用のカウンター席について、シオンは酒でも頼もうかと血迷った。子供の体には悪いが、生憎とシオンには『耐異常』スキルがある。酒にも有効かは知らないが、まぁあれば大丈夫だろうという思考があった。
普段ならば絶対にしない思考回路。適当にビールやらエールを頼もうとして、
「――生憎だけどガキに出す酒なんて無いよ。もっとでかくなってから出直し的な」
「~~~~~~~~~~ッ!??」
ドゴンッ、と凄まじい腕力で脳天に拳を叩き込まれた。その勢いは凄まじく、踏ん張る事もできずに額を板の上にぶち当てて、更に悶絶させられる。
うわぁ、というシルの声が微かに届いた。それほど容赦が無かったのだろう。
「……ッ、別におれなら頼んでも問題ないはずだが」
痛みを堪え、そう反論する。
「あんたが頼んだ姿を見て他の奴に注文されたら困るのさ。欲しいなら大人に代わって貰うんだね」
要するに、『飲むのは勝手だが他のガキにせがまれたら迷惑だ。大人に注文して貰えば勝手にしてくれ』という事だが、シオンは一人。実質断られたようなものだった。
苦虫を噛み潰したかのような顔をするシオン。しかし、これ以上の反論はできない。
何故なら、言った相手がこの店の女主人、ミア・グランドその人だからだ。ドワーフでありながらシオンの倍以上あるのではないかという身長、数倍はある恰幅。
その見た目に負けない肝っ玉っぷりであり――直接聞いたことはないが、シオンよりも、遥かに強い。戦えば一瞬で負ける姿が想像できた。
「母さん、それでもいきなり殴るのはちょっと……」
「ふん、こんなしみったれた顔したガキにゃこんぐらいがちょうどいいのさ」
シルとミアの間に血縁は無い。無いが、この酒場で働く従業員から、ほぼ全員に母さんと呼ばれているミア。それだけ信じ、頼られているのだろう。
「……ふん、子供はこれでも飲むのがお似合いさ」
とん、とコップが置かれる。中身はオレンジを絞ったジュースだった。目線で伺えば、これだけは奢りにしてくれるらしい。
素直に礼を言って、飲む。前にティオナが作ってくれたりんごジュースも美味しかったが、やはり年季が違う。素材選びからして違うのだろう。何かが、ティオナのそれとは違った。
黙々とジュースを飲むシオンを一瞥し、ミアは言った。
「シル、昼まで暇をやる。友人との会話くらい、したいだろう?」
「いいの? 母さん。私の昼休憩はまだ先のはずだけど」
「この人の無さだ、私ともう一人で足りるよ。ただし、客が来たら切り上げだ、当然だけどね」
そう言ってそっぽを向く。シルはその対応に少し擽ったそうな表情を浮かべると、前掛けと外してシオンの隣の席に座った。
それからミアに頼み、賄いとしていくつか軽い物を作ってもらう。ミアは無言で了承すると、どう見てもシル一人では食べきれない量を渡してきた。それに感謝しつつ、貰ったいくつかをシオンの方へ移動させる。
「いいのか?」
「こんな量、私一人じゃ食べきれないって」
軽い確認の後、シオンはシルから受け取ったサンドイッチを食べる。朝から何も口に入れていなかったせいか、妙に美味しく感じた。
会話は、無い。二人会話の共とっかかりが見つけられなかったのだ。相手が嫌いな訳じゃない。ただ、今の二人は立場があまりに変わりすぎた。
片や【ロキ・ファミリア】に所属し、頭角を現し始めた者。
片や貧困街出身で、無名のアルバイトに過ぎない者。
数年という乖離はあまりに長すぎた。これが最初の頃であれば、まだ幼い子供特有の距離感と遠慮の無さで何とかなったが、分別がつく今の年齢では、少し厳しい。
顔を合わせても、その相手を認識するだけで挨拶すらしない。そんな関係となってしまった今、雑談一つするのにも、苦労してしまう。
それでも今の状況を打破したいと思い、先に動いたのは、シルだった。
「そういえば、シオンって今Lv.3なんだよね? どんな感じなの?」
その問いかけに、シオンは少し口籠った。自身が一般的なLv.3とは違いすぎるというのを、本人は良く自覚していた。
だから、個人の間隔だけど、と前置きして、
「身体能力が大分上がったな。それに五感が鋭くなった。特に視覚・聴覚・味覚が、意識的に抑えないと少し面倒だな」
遠くの物が見える・聞こえる。口に含んだ物の味が濃すぎる。【ランクアップ】の恩恵はありがたいと同時に、少し不便でもあった。
「へぇ。やっぱり不便?」
「ダンジョン攻略では、便利だな。日常生活では不便だ。数KM先を見たり、毒を含んだ物を味覚で察する必要なんて無いし」
うわぁ、と思わず声が漏れた。たまに店でダンジョン内部での事を誇張して自慢する人達がいるのだが、シオンの話を聞くと強ち間違っていないような気がしてくる。
「そっちはどうなんだ? 働いてもう数年だろ?」
「お仕事には慣れたけど、どうしてか厨房には立たせてもらえないんだよね。だから、やってるのは専ら注文取りと、お掃除と、買い出しくらい。本当にたま~に、ヘルプで野菜とか果物を切るって感じ?」
何故か味付けの段階になると一切関わらせてくれない、と言う言葉を聞いて、シオンは何となく察した。料理下手か、と。
「客に絡まれたりとかは?」
「お酒で酔っぱらった人くらいかな。それにあんまり迷惑な人は母さんが叩き出しちゃうから」
そう言って笑うシルは楽しそうで、幸せそうだ。
職場環境は良好らしい。良いことだ、貧困層の人間は大概悪辣な仕事を押し付けられ、それを低賃金でこなす事になる。
それを思えば、シオンもシルも、幸運だったのだろう。手を差し伸べてくれる相手がいて、そこから道を開けたのだから。
そう、幸運、だったのだ。シルは。
シオンは――少し、違う。
愛された、という意味でなら幸運だろう。しかし、その後の成長でできた環境は、幸運に恵まれた物では決してない。
そもそも当時は疑問にすら思わなかったが、ただの貧民層に住む子供が、【ロキ・ファミリア】の団長たるフィンと友人になるなどありえない。
けれど、例外的にそうなるよう手を回せる人物がいた。
そう、【殺人姫】たる、彼の義姉。彼女が、フィンに頼めば、不可能な話ではなかった。
義姉は『闇派閥』に所属する人間を片っ端から殺しまわっていた過去があるという。だからあの人には名声と悪名が混ざり合っていた。普通ならそんな人間と会おうとは思わない。
しかしフィンは、噂等に振り回される人間ではない。実際に会って、そして、彼女の大切な家族を頼むと言われ――受け入れた。
偶然でも幸運でも何でもない。ただただ義弟を心底から想っていた義姉が、己がいなくなっても大丈夫なように保険をいくつも用意していただけなのだ。
だからこそシオンは今、ここにいる。シオンという存在は、本当に、与えられてばかりなのだという事実を実感する。
「おれは……守られてばっかりで、何も返せなかった」
生まれついてから、五年経たず。それで一体何を返すのかと聞かれれば、何もできないとしか答えられない。
それでも何かを返したかった。与えられた愛情に、報いたかった。結局シオンは何もできないまま、自分を守って死んでしまったあの人に、あなたに想われて生きた時間は幸せだったと伝えたかったのに。
「死んでしまったから、もう、言葉すら届けられないんだ」
……それを聞いていたシルは、大体の部分を察した。
シオンが奇妙なまでに生家――実はまだ維持され、残っている――に帰らないこと。それに伴ってかシル達と顔を見せようとしなかったこと。
そう、シオンは未だにあの件を吹っ切れていない。思い出す度に心が痛み、精神が沈み、感情が泣く。
だから彼は――来なかったのだ。来れば、義姉の顔がチラつくから。
彼女でなければ、きっと察せられなかっただろう。
ティオナ達ではわからない過去を知る、彼女でなければ。
それほどまでに、あの女性は強烈だった。シル自身、あの人には今でも感謝している。だからシオンには悪いが、一足先にこの恩を返させてもらおう。
「母さん、厨房、使ってもいい?」
「――」
ミアは一瞬、驚いた。シルはよく料理がしたいとボヤくが、直接厨房を借り受けたいと言った事は一度もない。
彼女自身、自分の料理の腕前は然程でもないとわかっているからだ。
だからこの言い分に驚かされた。だがミアはその驚きを表層化させず、シルの方を面倒臭そうに振り向いた。
その顔に、シルは真剣な眼差しを返す。ここで引けば、ミアは決して厨房に踏み入らせないだろうと予感していたから。
やがて、ミアは息を吐き出しながら、こう言った。
「……ハァ。掃除と洗い物。使った食材は自腹で買い直し。あと、客が来たら退いて貰う。それでいいなら、構いやしないよ」
「それくらい当然だよ。ありがとう、母さん!」
真剣に言えば、応えてくれる。そんな母に心底から感謝を示しつつ、自然笑顔になったシルはシオンに言う。
「しばらく待ってて。今から良い物、作ってあげるから!」
力強い言葉だった。沈んでいたシオンが、顔を上げて呆然とするくらい。
そんな珍しいシオンの姿に気付かぬまま、シルは厨房へと駆け足で入っていく。丸くなった目をパチクリと瞬かせ、シオンはいいの? とミアに目で問うた。
「中途半端な感情で言ったならぶん殴ったけどね」
察しの悪いシオンに、ミアは仕方なく答えた。
「――『友達の力になってあげたい』、そんな色が見えたら、仕方ないさ」
答えを聞いたシオンは、絶句した。
【ロキ・ファミリア】へ入団してから滅多に会わなくなった。それも個人的な事情で、本当ならもっと来れたのに。
そんな相手に、何故。
ミアの言葉が嘘だとは思わない。だからこそ、尚のこと疑問が浮き出てくる。
「こんな薄情な奴に、どうして」
鈍い。というか察しがあまりに悪すぎる。ミアは詳しい事情を知らないが、何となく聞いて予想はしていた。
つまりトラウマなのだろう。親しい者が死んで、怖くなったのだろう。
好意を失う、ということが。
だから鈍くなったし、察せなくなった。
それを伝えるのは簡単だ。口に出すだけなら、数秒で終わる。だが、ミアは敢えて何も言わず、黙った。
「その答えは、あんた自身で出すか、あの子から直接聞くんだね」
そうするのが筋だと、思ったから。
それに対し、シオンは無言になる。無言になって、考え続けて――結局答えなど、出なかった。
沈黙したまま、残されたサンドイッチを口に放り込む。味わうという様子が微塵も無く、作り甲斐の欠片も無い姿ではあったが。
やがてシルが持ってきたご飯――少量の米と、小さな肉の塊と、ほとんど何も入っていないスープを見て、変わった。
「……おい、シル。これ、まさか」
驚愕。その一言で全てが伝わるシオンの顔に、シルは苦笑しつつ頷いた。
「レシピ。実は教えてもらってたんだ」
こんな質素というか、貧しい料理にレシピも何も無い、そう思った者は浅慮に過ぎると断定してやろう。
シオンは震える指先で、箸を掴んで、肉を口へ持っていく。
噛みついて、思った。
――全然美味しくない、と。
「……ッ……ああ、とっても……不味い、な」
「うん、そうだね」
シオンの言葉は、率直で、飾り気も何も無かった。けれどシルはそれに怒りもせず、どこか寂しそうに同意した。
――不味い。
それは、だって当然だ。このレシピは、シオンの嫌いな物を、何とか食えるレベルにするために考えられた物なのだから。
シオンは――超がつくほど、野菜が嫌いだった。
子供らしいといえばらしいのだろう。だがシオンは一部の野菜ではなく、ほぼ全ての素材を口にできなかった。
それでも食べなきゃ成長できないからと、義姉は考えた。
野菜その物を食べさせるのは厳しい。だから、他の物と一緒に何とかしよう、と。
素材は限られていた。貧民街に住んでいたあの時は、使っていたお金も相応にしていたため、選択肢は無いに等しい。
それでも必死にやり繰りして、磨り潰した野菜を、わかりにくいくらいの量にして潰した肉の中に入れ、肉団子にしたり。
スープに魚の味を染み込ませ、その後液状にした野菜を、味に不和ができないよう、何度も作り直したり。
それでもシオンから帰ってきた答えは『不味い』で、苦笑していたのを、覚えている。
「シオン」
ポロポロと泣いているシオンに、シルは、穏やかにその名を呟いた。
「大好きな人のこと、忘れたくないんだよね」
シルは、シオンの周囲にある噂の大半を聞いたことがある。良いことも、悪いことも、全て。
「でも、死んでしまった時を思い出すのは、とても痛くて、辛い」
だけどやはり、シル・フローヴァという少女にとって、シオンという人間は、あの頃一緒に、無邪気に遊んだ時のままだ。
「それでいいんだよ」
一緒に食べて、一緒に遊んで、一緒に寝て……泣いて、怒って、笑って、楽しんだ。
「それが、普通なの」
見上げることも、見下すこともしない。
「無理に忘れなくて、いいんだから」
冒険という『非日常』ではなく、ただの『日常』における友人。
「だからね。もし、義姉さんに何かを返したいっていうのなら」
その程度でいい。いや、ずっと、これから何年経っても、そういう関係でいたい。
「シオンの大切なものを守って、それができた時の姿を、誇ればいいんだよ」
あの人は、愛情に見返りを求めていなかった。きっと、与えた何かで、幸せになった姿が見られれば、それで良かったのだろう。
「……ああ」
だから、『やってやったぞ』と自分を誇っていれば、それだけで、恩返しになる。
「本当に、それでいいのか、なんておれにはわからないけど」
そう告げると、シオンは少しだけ、吹っ切れたように笑っていた。
「あの頃義姉さんの近くにいたシルの言葉だから、信じる」
まだどこか憂慮を纏ってはいたけれど、ずっとずっと、マシに見えた。
「友達とか、家族とか。皆を守って、それで誇った姿を、見てもらう」
言って、シオンは残りを食べた。まずいまずいと言いながら、懐かしそうに。
「……なぁ、シル」
「なぁに? シオン」
けれど。
「――ありがとう」
「――どういたしまして」
シルは、気付いていなかった。
シオンが冒険している時の姿を、見たことがなかったから。
それこそが、致命的なズレを生み出した。
その事を後悔する時は、近い。
「――またね、シオン――」
実は野菜嫌い、という設定追加。普段はそれを隠しながら食べています。まぁ本編に密接に絡む事はありません。今回ぐらいです。
後先週ネタで書いてる(?)『彼女を見てしまう~』更新しました。内容が全然進んでいないので、もしかしたら明日も更新するかもしれません。
ベートがガチモンのTSしているだけなので、見たい人だけ見てね! 忠告したよ! 見た後に文句言われても私知りませんからね!
次回もお楽しみにノシノシ