英雄になるのを望むのは間違っているだろうか   作:シルヴィ

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……書きすぎた。


風纏う者

 「そういえば、シオン達はもう12層か。まだ九ヶ月しか経ってないのに、随分と強くなったと思うよ」

 フィンは過去に思いを馳せるかのような声音ですぐ傍にいた旧友二人に言った。それはかつての自分達の苦労を思い出させてきて、苦笑いが浮かんでしまう。

 「あの頃の私達はまだお互いを認められなくて、いがみ合ってばかりだったな。全く、シオン達とは大違いだ」

 「ガッハッハ。良くも悪くも儂等は大人じゃった。認めることも、認めさせることも難しかったからの。体面など考えず殴り合えるあやつ等が、少し羨ましいわい」

 【ロキ・ファミリア】において最年長の三人組は、相応以上の苦労を背負っていた。フィンは自身の目的のためだけに、リヴェリアはあまりに狭すぎる(セカイ)から抜け出したくて、ガレスはまだ見ぬ闘争を。

 打算と目的によって集まった三人は、罵り否定し溜め息を吐かない日など無く、苦労が重なる日々の連続。

 「だけど、それを乗り越えたからこそ僕達は固い絆を結べたと思っている」

 「否定はせんよ。まあ、そうなれたのはロキと、命を失いかけたからというのがなんとも情けないところだが」

 あまりに仲が悪すぎた三人に強引に己の内心を吐露させ誓いを結ばせたロキ。それでも蟠りを残していた三人は、目の前に迫った脅威によってやっと一つになれた。

 「ふん、今でもあの時の事は思い出せるわい。恥ずかしくもあるがな」

 ボロボロになって、やっと脅威を退けた時に、三人は口にするのも恥ずかしい言葉を口にした。けれどそれさえ、今は良き思い出だ。

 「しかし、だからこそ思ってしまうんじゃな」

 「ああ。僕達はかつて、一つでも間違えれば死んでしまうような状況に陥った。だからこそ、同じ苦労を味わって欲しくないんだ」

 「だが私達にはどうもできん。あの子達に私達と同じ苦労を味わうことがないよう、祈るしかあるまい」

 ――無事に帰ってきてくれれば、私達は何も望まないのだから。

 

 

 

 ぴちゃん、と水滴が跳ねる音がした。それが自分の顎から落ちた汗だと気づくのに数秒かかり、それでやっと自分が焦っているのだと理解する。

 ――どう、すればいい。どうやればここから生き延びれる!?

 他の冒険者の姿は、無い。たった4人。自分達だけで、この怪物から生き延びなければならないのだ。魔法という切り札もなく、【ステイタス】だけを頼りにして。個体によってはLv.2にも届くというモンスターと戦うなんて、経験したことがない。

 今この時ほど、シオンは自分の背中を頼れないと思ったことはなかった。

 ――ギリッ!!

 「全員戦闘準備! 呆けてたら死ぬぞッ、生き延びたければ動け!」

 剣を持ちインファント・ドラゴンから見て右斜めに移動する。それは三人から離れる事も意味していた。

 「シオン、一人で突出してんじゃねえぞ!」

 「うっさい! むしろコイツ相手に固まってる方が危険なんだよ! 一発で全滅するのが目に見えてるんだからなッ」

 そう、恐らくこの怪物は全能力値が自分達の誰よりも上だ。尻尾の薙ぎ払い、爪のひと振り、牙のひと噛みで死ぬだろう。

 ならば的を分散させておくのが戦力的にちょうどいい。それを理解した三人は苦渋に歪んだ顔のまま動き出す。

 それでもなお、インファント・ドラゴンはその瞳孔をシオンに向けたままだ。

 ――コイツの狙いはおれか……!?

 なら自分が囮になって、と思ったが、そんな思考は甘すぎるのだと、直後に知る。

 「――え」

 ゴスン! と背中に巨大な物がぶち当たる。それに押し出されて地面に倒れたシオンは、背中に当たったのがダンジョンの壁に使われる石なのだとわかった。

 ――どうして、こんなのが。

 「シオン避けろ!」

 混乱する頭の中に聞こえたベートの声。ほぼ条件反射で転がった瞬間、シオンがいた場所に尻尾が叩きつけられた。

 ――そうか、尻尾で壁を叩いて壁を砕いたのか!

 多分小さい体が幸いになった。大人よりも小さい体故にモンスターは目測を誤って頭上を通り過ぎた尻尾が別の目標にぶつかっただけなのだ。

 ゾクリと背筋が泡立つ。こんな幸運何度も続かない。いずれ相手も慣れて、こちらの体を捉えられる。

 「シオンを、よくも!」

 インファント・ドラゴンが更なる行動に出る前にティオナが大剣を振りかぶって攻勢に出る。このまま逃げ惑うよりは勝ち目がある、そう思っての行動だ。

 大半の魔物はひと振りで屠った一撃。ハード・アーマードは流石に無理だったが、それでもシオンから目を逸らす程度の事はできるはず。

 「せいや!」

 ……けれど、現実は無情だ。

 ガキン!! という音が剣身から響き、弾かれる。琥珀色の鱗には傷一つ浮かぶ事無く、ダメージなど当然ありえない。

 「嘘、でしょ」

 「ティオナ、避けなさい!」

 ダメージはなくとも衝撃は通る。小さな一撃と言えどもうざいと感じるのは生き物として当然であり、だからこそ狙われる。

 大雑把に上げられた手がティオナ向かって振り下ろされる。当たれば即死、しかしありえない現実にショックを受けていたティオナは回避行動に移れない。

 ――あれ、私、死んじゃ……?

 呆然と目の前に迫る爪を見ていたティオナは、自分が死ぬと幻視した。

 「死にてえのかテメエはぁ!?」

 「ベート……!?」

 だからこそ、遊撃手のベートが動く。ティオナの脇腹に爪を突き立てるようにしてでも無理矢理引っ張り攻撃範囲から逃げる。

 『死』という恐ろしさから解放されたティオナは知らず震えた。それを見たベートは慰めの言葉をかける――など、ありえない。

 「シオンが言ってただろが、呆然としてんじゃねえ! 敵を前にんな足手まといになるならさっさとどっかに行ってくれた方がまだマシだ!」

 「……ごめん、なさい」

 「――クソッ、謝るくらいなら最初からあんな真似するんじゃねえよ」

 俯いているティオナに周囲の状況を把握する事はできない。だからベートの様子もわからない。彼は何かに対して苛立たしいとばかりに吐き捨てると、

 「シオン、やっぱテメェがどうにかしろ!」

 「お前の不悉末おれに押し付けるか普通!? っていうかお前はまず言い方変えろよッ、それで大体解決するから!」

 ベートが駆け出しシオンの横を通る。その刹那、

 「俺が励ますなんて、ガラじゃねえんだよ」

 シオンにだけしか聞こえない、小さな声でそう言ってきた。そのまま回復薬をシオンの背中に叩きつけると、インファント・ドラゴンに向けて行ってしまった。

 『ガアアアアアアアアアアアアアアアァァァァッッッ!??』

 その時聞こえたのは、叫び声。それも悲鳴に近いものだった。

 「なんだ、誰が何を……!?」

 シオンからは影に隠れて見えない人物。彼女はインファント・ドラゴンを見上げると、

 「――チッ、やっぱりダメみたいね」

 期待できない結果に対し、そう吐き捨てた。ナイフを投げた姿勢で残身を取りながら、インファント・ドラゴンを見上げる。その巨体の指と爪の間には、彼女が投げたナイフが刺さっていた。

 ――鱗とかは固くても、指と爪の間なら柔らかいのは人間と同じ、か。

 ただし、当てるのは非常に難しい上、あの巨体相手ではナイフなど人間でいう小さな針と似たようなものだ。痛みはあるが、致命傷には程遠い。

 『ッ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!?』

 「あーもう、ホントうるっさい。今キレたら死んじゃうからキレる事もできないし、ストレス溜まるんですけど」

 そう嘯くティオネだが、額から溢れる汗は拭えていない。恐怖で震える体を押し殺し、強がっていないと今にも泣いてしまいそうだ。

 ――団長がいてくれたら、なんてもう言えないんだから、私は。

 頼るだけの自分はもういない。彼を守れるだけの力が欲しいのだ、自分は。そのためには、この程度の恐怖心、捨ててみせる!

 「来なさいよデカブツ。ぐっちゃぐちゃに潰してあげる」

 湾短刀を構えて挑発する。インファント・ドラゴンの視線が完全にティオネに固定されたのを見て、彼女は思う。

 ――ティオナは任せたわよ、シオン。

 妹のために、彼女は自ら死地へと身を投げた。

 

 

 

 「クソッ、どうする。ティオナでも貫けねえ鱗を俺がやれるわけもない。下手に刺激して暴れられたら本末転倒、か。本格的にやることねえぞ!」

 チクショウが、と唾を吐くも、何もできない自分に歯噛みする。ティオネが見出した指と爪の間という弱点も、近づかなければならないという観点から自殺行動と断定。

 身軽な遊撃手は今、ただ周囲を飛び回る蝿以下と化していた。

 ――今は、何もできねえ。危なくなったら助けに飛び込むくらいしか。

 その程度しかできない自分に苛立つが、

 ――抑えろ。この怒りを。情けなさを。いずれチャンスは来る、絶対に。シオンが作る!

 そして、決める。

 ――それまで俺は影になれ。喉元を食い千切る狼になるために。

 瞬間、ベートの気配が消えた。

 

 

 

 「シオン、ごめんなさい。やっぱり私は、足手まとい、なんだよね」

 シオンはただ、驚くことしかできなかった。

 シオンにとってのティオナはいつも笑っていて、元気を、勇気を分けてくれる女の子で。こんな風に弱気なところを見せるなど、一度も無かった。

 だから、戸惑ってしまう。どんな言葉をかければいいのか。時間は無い。ティオネが必死になって稼いでくれている時間は長くないのだ。

 「ティオナは、何に謝ってるんだ?」

 結局こぼれるのは、そんなありきたりな言葉。だけど、わからないのなら聞くしかない。遠回りをしてでも、自分の想いを伝えてもらわなければ、相手を理解するなどできないのだから。

 「ベートが言ってたみたいに、敵の前で呆けて、死にかけちゃったし。でも、私一人だけ逃げるなんて嫌。だけど足手まといになるのは、もっと嫌だ」

 その言葉にふぅ、と溜め息を返す。ビクリと震えたティオナに悪い反応をしたなと多少の罪悪感を抱きながら言う。

 「アレはベートの言い方が悪いな。ベートのアレは『無駄死にするなら無様でもいいから生き延びろ』とか、そんな感じだぞ。ティオナだってわかってるだろ?」

 「うん……わかるよ。だって、なんだかんだ私を気にかけてくれたのは、ベートだし。だから私もベートに頼むことが多いんだよ? 助けてくれるって、知ってるから」

 そう、ティオナがシオンとティオネが殺し合った時、真っ先に頼ったのはベートだった。しかし嫌っている相手に普通、頼みごとをするだろうか。特に一匹狼で気性が荒いと思われているベートにだ。

 その理由は、ティオナがベートに助けられたことがあったから。

 本が好きで、外で遊ぶよりも中で静かにする方が好きだったティオナはそれをからかわれたことがあった。

 そんな時に、

 『他人がどうこうしてるのを見下すくらいならまず自分を見ろ。くだらねえなあオイ』

 そう、蔑みの言葉で諌めた。言い方は悪いが、男が女をからかうのがみっともないのだということを、彼は理解していたのかもしれない。

 しかしそこはベート。

 『テメエも黙ってないでなんか言い返せ。好きなもんを譲る程度なら捨てちまえ。どいつもこいつも、本当に……』

 そんな言葉を叩きつけて、彼は去っていった。

 台風のような出来事に呆気に取られたティオナだが、その日から何かと理由をつけてベートをからかったのをいつでも思い出せる。

 ティオナが言うなら、ベートは、

 「素直になれないお兄ちゃんみたいな人、かな」

 「……変わんないなあ、アイツ」

 「あはは。だよね? だからベートにああ言われるのって、わかってても結構()()んだ」

 その笑顔に、いつもの活気さは欠片もない。兄と慕う相手に、心から思われた言葉を言われたことにショックを受けているのかもしれない。

 だけどティオナはううんと首を横に振ると、

 「――なんて、言い訳だよ。私は、『役立てない』ことが、辛いだけだから」

 「役立つ、って……何のことだ?」

 「臆病になっちゃったんだ、私。独りだった時は全然気にしなかった……ううん、気付かなかっただけ。私、()()()()()()()()()()。誰にも見られなくなるのが、怖いの」

 母親からも、同年代からの子供達からも言われ続けた、かつての言葉。

 ――お前は本当にアマゾネスなのかい?

 ――フィン達みたいになりたいよな! ハァ? そうでもない? ありえねーだろ!

 ――いいよ、放っておこう? その方が楽しいんだろうし。

 誰も認めてくれなかった。リヴェリアとベート以外、見向きもしてくれなかった。男の子達は外で遊ぶのを選び、女の子達は人形遊びに夢中だった。

 本を読むのは古臭い――アホみたいに単純な、そんな雰囲気だけで、ティオナは排斥された。

 誰にも見られず、理解されず、ただ独り。そこに現れたのがシオンだった。

 『英雄様の本とか、見てみたいなぁ』

 あの時の衝撃を、忘れることなんてできないだろう。

 ――初めて、私と話し合ってくれるかもしれない。()()()()に、なってくれるかもしれない!

 それからは、ただ行動した。シオンにバレないよう無理にテンションを上げて、話を作って、約束をして。

 だけど相手に一方的にしてもらうのは悪いから、自分も相手に尽くした。頼られ頼る関係。それに心地いいと感じて、ずっと続くと信じて、そして――恐れた。

 殺し合ったはずの(ティオネ)と、(ベート)の二人と笑い合う、友達(シオン)

 取り残されたような気がした。無理矢理割って入って気持ちを誤魔化して、無かったことにしたけれど。

 だけど今、死ぬ恐怖を味わって、敵わない相手を前にして、気づいた。

 ――役に立てれば一緒にいれる。傍にいても、嫌だとは言われない。

 そんな風に無意識に考えていた自分が、いたことを。

 

 

 

 ティオナの告白は、正直ショックだった。

 そう思われていた事が。

 そう思わせていた事が。

 何より、友達のはずの自分が気付かなかった事が、ショックだった。

 だけどシオンはその全てを呑み込んで、ティオナに笑いかけた。

 「ティオナ、おれさ、前に言ったよな」

 「え、と……何を?」

 その笑顔に、嫌な予感を感じた。

 「『何かあったら、おれがお前を守るから』」

 笑みは薄くなり、ティオナの頭を撫でる。呆然としたままのティオナは、何の反応を返すこともない。

 「逃げたっていい。だけどおれは決めた。守るって」

 「わ、私はそんなの望んでない! それより、なんでいきなりそんなこと言うの? 私、シオン達に依存しかけてたんだよ? 軽蔑、しないの!?」

 悲痛だった。聞いていて痛々しい程に、大きな叫び声。必死に避けているティオネにも届いたかもしれない。

 ただ、シオンにとってはどうでもよかった。

 「大きな理由なんてないよ。大切な(まもりたい)人だから。それだけで、命を懸けるのには十分すぎる」

 だから、そこで待っていて。

 とても小さな声を投げかけて、シオンは真正面から怪物に向けて駆け出した。

 「隙だらけになってるぞクソがっ、ティオネばっか狙ってるからだ!」

 振るわれた剣がインファント・ドラゴンに迫る。それを見た敵は心なし見下すような笑みを浮かべていた。

 しかしそれは、油断だった。

 『ギャウッ!?』

 鮮血。ほんの少しだけ、しかし確かに飛び散ったそれは、確かにインファント・ドラゴンのものだった。

 「確かにお前の鱗は硬いよ。でもさ、『継ぎ目』は絶対にあるんだ!」

 ハード・アーマードと原理は同じだ。幾重もある鱗、その中にある確かな弱点を狙って剣を振るう。ティオナの力任せとは違う、確かな技術。

 痛みで硬直している間にもう一閃。だが、新たな痛みが起爆する要因になったのか、インファント・ドラゴンが叫ぶと、

 『グルウアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 その場でただ、一回転した。

 予備動作が見えたそれは回避することも容易い。しかし距離を取らなければいけないというのが辛い。時折機敏な動きを見せるコイツ相手に迂闊に近づくのは危険なのだ。

 偶然か、あるいは必然か。シオンが退避した先にはティオネがいた。

 「シオン、コイツ、殺せると思う?」

 「殺せる」

 断言する。傷を付けることは可能なのだ。血を流し、痛みを感じさせる手段があるのなら、それはいつか相手を絶命させることだってできるという証左。

 もちろん、自分達が先に死ぬ可能性の方が遥かに高いが。

 「だったらやってやるわ。私はサポートに回る。あんたが決めなさい」

 「わかっているさ」

 背中をティオネに任せる。言っては悪いが、これが初めてのことだ。もしまかり間違えばシオンは死ぬ。

 ――信じろ、ティオネを。だから、今はただ!

 不安も恐怖も全て押し殺して、シオンは引きつった笑みを浮かべる。

 「どっちが先に死ぬか、やってやろうじゃねえか!」

 インファント・ドラゴンの爪を掻い潜る。迷宮の地面を叩き割る程の一撃は重い。すぐ傍を通って行くたびに押し出された風を全身に叩きつけられる。

 だが、ただで浴びてやるのも癪だ。これみよがしに腕に剣を叩きつける。当然、鱗の継ぎ目を狙ってだ。

 所詮小さな傷、痛みはあるが無視できる程度のもの。しかし小虫が自分の周囲を飛び周り、それが叩きとせないときに感じる苛立ちと同様、インファント・ドラゴンも次第に頭へと血を上らせていた。

 『グルウ、ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 「――ッ!?」

 グッ、とインファント・ドラゴンの後ろ足に力がこもる。その動作に見覚えがあったシオンは驚愕で息を殺した、その瞬間。

 その巨体が、持ち上がる。

 「待て、こいつまさか――全員離れろおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

 インファント・ドラゴンとは逆に顔から血を引かせたシオンが叫ぶ。その声音に真っ先に反応したティオネは遠くまで逃げる。

 それに安堵したシオンは、更に叫んだ。

 「コイツが行動を起こしたら、全員逃げろ! いいな、リーダー命令だ!」

 限界ギリギリまで持ち上がったインファント・ドラゴンの前足。何百キロという重さを持った生物がそれを思い切り踏み下ろしたら、どうなるか。

 その答えは、すぐにやってきた。

 ――ズ、ズウゥゥゥゥン……!

 局所的な地震。遠くにいたティオネはその影響をほとんど受けず、ティオナの元へまで駆けて彼女の身を起こす。

 「逃げるわよ!」

 「だ、ダメ! そんなのダメだよティオネ!」

 「なんで!? シオンの指示ならこのまま逃げれば」

 言うことを聞かない妹に、いっそ殴ってでも言うことを聞かせようとしたが、

 「()()()()()()()()()()()なんて、できない!」

 その言葉を理解するのに、数秒の時間を要した。

 「……え?」

 そうだ、何も考えずに行動したから、忘れていた。

 ティオネは遠くにいたから地震の影響をほとんど受けなかった。

 では、シオンは? 一番近くにいて、地震を受けたシオンは、どうなった?

 振り返ったティオネが見たのは、

 「イ――イヤアアアアアアアアアアアアアアアアアアァァァァァッッ!??」

 血と共に吹き飛ぶ、シオンの姿だった。

 

 

 

 ――ここで、死ぬのかな。

 地震を直下で受けたシオンは、まともに立つ事さえできなかった。これが日常の中でならすぐにしゃがんで対処できたかもしれない。

 けれどここはダンジョンで、命を懸ける場所で、そんな余裕はなかった。足を取られて倒れたシオンが顔を上げたとき、そこにあったのは巨大な爪。

 それでもリヴェリアに教えられた『大木の心』が、シオンから冷静さを奪わせない。

 ――結局、見方によっちゃ自己犠牲になってるし。ベートに悪いことしたな。

 ガレスに叩き込まれた『不屈の魂』が、諦め悪くシオンの体を動かしてバックパックに残っていたナイフを投げさせる。その中の一本だけは手の中に残しておいた。

 いくつかは弾かれたが、一本か二本だけ、インファント・ドラゴンの指と爪の間に刺さる。だが痛みを堪えたインファント・ドラゴンの攻撃は止まらず、シオンの体を引き裂いた。

 「――――――――――ッ!??」

 悲鳴をあげる事さえ許されない。代わりに悲鳴をあげたのは、ティオネだった。

 ――早く、逃げろ。おれが狙われてる間に、早く!

 ドゴォ! と背中がダンジョンの壁にぶつかった。ビチャリと弾けた血が髪にかかり、顔を濡らしていく。生き延びれたのは砕けたナイフが少しだけ爪を逸らしてくれたからだと理解する。

 その命も、もって一分ないくらいだろうけれど。

 ティオネが近づこうとして、けれど足踏みしているのが見えた。泣きそうに歪んだ顔が、シオンの心を苛める。

 ――泣くなよ。リーダーが囮になるのは、普通だろ。だから、逃げてくれ。誰かが死ぬんだったら被害は最小限に。そういうものだろう!?

 そう叫ぼうとして、口から漏れたのは血だった。咳こんだ体が痛みを発してくる。それは生きている証だが、その事実は、インファント・ドラゴンにとって屈辱でしかない。シオンを睨みつけた怪物は、次の瞬間一転してニヤリと笑みを浮かべた。

 スゥ、と息を吸い込む。それに呼応して、周囲の温度が少しだけ上がった気がした。血が流れ出て薄れる視界の中で、インファント・ドラゴンの喉奥に小さな光が見えた。

 ――まさ、か。

 炎。

 ブレス。

 そして――爆発。

 フラッシュバックするのは、炎の中に包まれた、義姉の姿。

 「ハァ、ハァ、ハァ……!」

 視界が揺れる。顔が恐怖に歪む。トラウマを刺激されたシオンの瞳には、死んでしまった義姉の姿だけが映っていた。

 その反応はインファント・ドラゴンの嗜虐心を十分に満たしたらしい。既に放てるそれを、状況(シチュエーション)を万全にしてから、放った。

 『ガアッ!!』

 火が、迫ってくる。動くことができない体では、もう何もできない。

 スゥ、と視界が陰った。それが火が迫ったせいだろうと思ったシオンの体が更に強張る。

 「私を守ってくれるって、言ってくれたよね」

 その声が聞こえたのは、すぐ目の前だった。ハッとあげた瞳が捉えたのは、

 「だから、私がシオンを守ってあげる」

 笑顔を浮かべる、ティオナだった。

 ――嫌、だ。

 彼女の意図は明白だ。ただ、守りたい。それだけのために、命を投げ出した。

 ――誰かがもう目の前で死ぬのは、嫌なんだッ!!

 ティオナの体に覆い被さって、抱きしめる。意味なんてない。無駄な行動だ。自分の体を簡単に食い破って、この炎はティオナの体を蝕むだろう。

 それでも何もしないのだけは、絶対に嫌だった。

 ――ごめんなさい。誰も助けられない、『英雄』にさえなれない、弱虫で。

 その思いと共に、シオンの視界が、完全に炎に覆われた。

 

 

 

 「う、嘘……なんで、私、何も、できな……っ!?」

 見ているだけしか、できなかった。

 シオンがインファント・ドラゴンのブレスで焼かれようとしている時も、助けたいと思っていたのに、動かすことさえできなかった。

 ティオナが覚悟を決めて駆け出した時も、見ているだけしか、できなかったっ!

 「友達も、妹も、私は見捨てたのっ!? このっ、このっ、動いてよ、私の足でしょ!?」

 涙でぐしゃぐしゃになった顔で、ティオネは己の足を叩く。だけど、何度拳をぶつけても、拳と足が痛むだけで、全く動いてくれない。

 「あ、ああ……」

 ティオネの声が、絶望で歪む。

 そのまま喉を掻き毟ってしまいそうな彼女。自身に、世界に、そして何より自分の大切な人を奪ったインファント・ドラゴンに、怒りが湧いてくる。

 そのまま無謀な特攻をし、命を散らす事さえ厭わないという気持ちさえ湧き上がる。

 「あ……?」

 その所業を止めたのは、優しく温かな風だった。

 全てを包み、許すかのような風。それが今ティオネを慰めるように吹き、彼女を絶望の淵から引き上げた。

 ハッと顔を上げ、シオンのいた方を見る。今もなお燃え盛っているそこを眺めて悦に浸っているインファント・ドラゴンの首を引き千切りたい衝動に駆られながら、ティオネは見た。

 風が、一際大きく跳ね上がる。

 そこにいたのは、ティオナを守るように抱きしめているシオンの姿。完全には防ぎきれなかったのか少しだけ火傷を負っていて、しかしなお、生きている。

 「シオン、ティオナ……!」

 喜びで潤んだ瞳が、新たな事象を捉えた。

 二人を包むようにして動く風が、一人の人間を形作る。

 美しい、という言葉さえ陳腐だと思える半透明な女性だった。

 鮮やかな金髪を優雅に揺らし、微笑ましいものを見るように緩やかな笑みでシオンの頭を撫でている。ともすればリヴェリアやロキにも劣らぬ美貌を持つ彼女は、シオンの額を一度だけ撫で上げる。

 それを終えて満足そうにすると、女性はティオネを見つめる。

 その事にドギマギしている内に女性は人差し指を立て、口元へ寄せる。その仕草はまるで『内緒だよ』と告げているようで、彼女が一瞬無垢な子供に思えてしまった。

 そして、全てをやり終えた女性は完全に姿を消す。あまりに常識外な光景にティオネは完全に動きを止めた。

 だからティオネは気づかない。

 インファント・ドラゴンが、怯えたように女性を見ていたのを。

 

 

 

 何秒経っても、全身が焼ける感覚がしない。いつになったら終わるのだろう、そう考えているのに何も感じなくて、ついに目を開けてしまった。

 「炎が……消えてる? 生きて、るのか?」

 何が起こったのか、全然わからない。呆然としたティオネが駆けてきて、慌てた様子で言った。

 「シオン、さっきの何!? 一体どうやったのよ!」

 「いや、それはこっちが聞きたい。何が起こったんだ?」

 「それは――」

 何かを言おうとしたティオネは、ふと何かを思い出したように口を閉ざす。その様子に疑問を覚えたが、聞く暇はなかった。

 『グウウウウウウ……ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 自身の渾身の一撃を食らっても殺しきれなかった。

 その事実に苛立ったインファント・ドラゴンが地団駄を踏み、シオンを睨む。

 「話してる暇はない、か。私が時間稼いであげるから、その間にその子と話しなさい! でもあんまり時間ないわよ!」

 叫んだティオネは返事も聞かずに走り出す。

 ティオネは忘れてはいない。シオン達が炎に包まれた時の無力感を。全てに絶望したような虚脱感を。

 今回はあの風がなんとかしてくれた。

 でも、次は? 次似たようなことが起きたときは、どうなる?

 もう何もできないのは嫌。

 それに何よりも、

 「私は、キレてんだよこのクソモンスターがああああああああああああああああ!!?」

 二人の命を奪おうとしたクソを、ぶち殺したいッ!!

 ティオネの中で、感じたことのない『力』が荒れ狂う。それに従って、ティオネは湾短刀をインファント・ドラゴンへ振り抜いた。

 

 

 

 ティオネが命を賭して時間を稼いでくれている。なのに、シオンの体は動いてくれない。インファント・ドラゴンの一撃は、シオンの体から動くという機能を奪い取っていた。

 「ハン、情けねえ。自分で回復くらいはしてみせろっての」

 今までどこに隠れていたのか、ベートが後方から姿を現す。そして自分の回復薬をシオンの体に適当にまくと、二本目をシオンに飲ませた。

 体の傷が、不完全とは言え癒える。流れ出た血は当然戻らないが、それでも動くことはできる。

 「おい、シオン。テメエはもう戦えないとかほざかねえよな?」

 「当たり前だ。逃げるなんて選択肢はない。それにさベート、思うんだよ」

 ふと、思った事を言ってみる。

 「【ステイタス】的には十分。なら――アイツをぶっ殺せば【ランクアップ】するとは、思わないか?」

 あのインファント・ドラゴンは恐らく同個体の中でもかなり強い方だ。そんな相手を倒せば得られる【経験値】は多いだろう。

 シオンの言葉を聞いたベートは意外そうに眉を上げると、

 「……ハッ、いいじゃねえか、最高だ。【ロキ・ファミリア】の看板、『巨人殺し(ジャイアントキリング)』をやってやろうじゃねえか!!」

 獰猛な笑みを浮かべて、そう返してきた。

 一歩前に出ると、彼はシオンに拳を向けてくる。

 「おいシオン、一つだけ言っておくぜ」

 「なんだ、ベート」

 「俺はテメエが諦めても諦めることはねえ」

 「そんな事か。だったらそれはありえない。だって、おれはお前が諦めても諦めることはしないんだからな」

 「言ったな? だったら精々気張ってみせろ」

 「あいよ」

 コツン、と拳をぶつけあう。

 ベートは何も言わない。なら、シオンも何も言うつもりはない。

 例えベートの拳が『血に濡れていた』としても、そのとき感じた想いはベートだけのもので、求められてもいないのに勝手に斟酌するのは間違っている。

 「先行くぜ」

 一言告げ、彼は走る。

 ……湾短刀でインファント・ドラゴンの爪と切り結んでいるティオネが見えたのは、何かの気のせいと思いたいところだ。 

 シオンは一度目を瞑り、それから振り返った。

 助かってから一度も言葉を発さず、俯いているティオナ。彼女はシオンの言葉を恐れるように震えていた。

 「なあ、ティオナ」

 「……!」

 ぶんぶん、と頭を振って拒否する彼女に、シオンは手を差し伸べた。フィンから貰った『勇気』を胸に秘め、彼女に願う。

 「助けてくれ」

 「え……?」

 「おれだけじゃ、ティオナを守るなんて無理だった。思い上がってたよ。痛感した。だからさ」

 恥ずかしさはある。だけどそれよりも、シオンは勝ちたかった。

 勝って、『全員で』生き残りたかった。

 「ティオナの力を、貸してくれ」

 「あ……」

 スッとティオナの胸の痛みが和らいだ。

 ――やっと、わかった。

 ティオナは確かに恐れていた。見捨てられることを。誰にも見られなくなるのを。しかし、それは人間誰しもが持つ感情だ。

 ただ、気付かなかっただけ。ティオナが本当に恐れていたのは、もっと別の感情。

 ――私は、シオンに失望されて、嫌われたくなかっただけなんだ。

 確かに、全然違った。

 ティオネの言うとおり、『人を好きになる』のと、『その人だけに恋をする』のは、比べ物にならないくらい違う。

 ――シオンの役に立ちたい。

 ――シオンを支えたい。

 ――シオンの、隣にいたい。

 ――シオンに、好きになって欲しい……!

 少し見方を変えただけ。

 たったそれだけで、ティオナの世界は変わってしまった。

 「うん、うん……! 私の力、いつでも借りて!」

 彼女の笑顔に、もう暗さはない。いつも彼女が浮かべる、シオンの大好きな笑顔がそこにある。だから、守るのだ。そして守ってもらう。

 「あ、でも私、武器がない。さっきの場所に落としたままだから、取りに行かないと」

 「それなら問題ないよ」

 はい、とティオナの大剣を渡す。

 『ベートが』持ってきた大剣はティオナにちょうど見えない角度に置いてあった。あの捻くれっぷりはいっそ突き抜けすぎてて笑いが出てしまう。

 アイツが来るのが遅れたのは、これを持ってきたせいだ。感謝の一言くらいは貰ってしかるべきだろうに、本当に素直じゃない。

 「後でベートにお礼言っておきなよ。わざわざ持ってきてくれたんだから」

 「ベートが……そうだよね。私だって、やれるってところを見せてあげないと!」

 ――戦うんだったら、無様な姿は見せんじゃねえぞ。

 そんな声が、聞こえたような気がした。

 「行こうか、ティオナ」

 「どこにだってついていくよ! シオンと一緒ならね」

 やっと、戻る。

 シオン、ティオナ、ティオネ、ベートという、ひと組のパーティに。

 最初背中に感じた心細さは、どこかに消えて無くなっていた。

 

 

 

 シオンはひたすら前に出る。結局のところこの中で一番インファント・ドラゴンにダメージを与えられるのはシオンだ。ティオネは何故かインファント・ドラゴンの爪と湾短刀で殴りあえているが、武器の性質上、そろそろ折れる。無理はさせられない。

 ――どんどん頼もしくなっていくよ、うちのパーティは!

 「せいや!」

 掛け声を一つ、ティオネの手助けになるようインファント・ドラゴンの腕に剣を叩き込む。小さな傷でも塵が積もれば山となる。何時間かかってもいいから倒しきる。

 ――頑張って。

 そんな、どこか遠くから聞こえた声を背にして決意を固める。

 『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!??』

 「は――?」

 そう思っていたシオンに、大量の血の雨が降ってきた。

 咄嗟にその場から退避したシオンだが、訳のわからない事態に頭が混乱する。そんなシオンを落ち着かせるように、一陣の風が髪を撫でた。そして風がシオンを包み、剣身に纏われる。

 理由はわからない。だけど、戦える、そう根拠もなく思った。

 「シオン、そいつの注意を引きつけろ! 隙を見てやってやる!」

 どこからかベートの声が聞こえてくる。

 根拠の無さでは自分とどっこいどっこいの言葉だ、それでもシオンの顔に薄い笑みが広がる。

 ――お前ならやってくれるよな、ベート!!

 「ティオナ、おれが適当にコイツの体に斬りつける! お前はおれが斬った場所に大剣を突っ込んで抉れ!」

 「わかった!」

 中々エグいことをしろと言っているのに躊躇なく頷いてくれる。シオンは指示を出すために回避していた動きをやめてインファント・ドラゴンの腹に風の剣で切り込んだ。

 『ガアアァアァ!?』

 悲鳴をあげながら反撃してくるが、痛みで鈍った攻撃など怖がる必要さえない。シオンはインファント・ドラゴンの前足の間から一気に後ろまで駆け抜ける。

 ――速すぎる!?

 風を纏ったシオンの動きは先程の比ではない。自分でも驚くほどに速すぎて、景色を置いていくようだ。

 シオンを追いかけようと回転しようとしたインファント・ドラゴンの腹に、今度はティオナの大剣が突き刺さった。

 そのままグリュ! と捻ってお腹を掻き回す。

 『グギュアアアッ!? ガアアアアッ!! ゴアアアアアアアッ!?』

 ドシンドシンと足を暴れさせるが、その度に大剣が大きく動き、深く、容赦なくグチャグチャと腹を抉る。

 「うわ、容赦な……」

 怒りで染まったティオネを冷静にさせるその所業だが、ティオナの頭にあるのは一つだけ。

 ――シオンの、役に立つ!

 初恋で舞い上がった心が、ティオナから常識(まとも)な思考を奪い取った。

 後ろに回ったシオンはインファント・ドラゴンの後ろ足に狙いを付ける。片方の足は空中に上がった瞬間を狙い突き。痛みでまた暴れるが、それを無視してもう片方の足を適当に斬りつける。

 これで、インファント・ドラゴンは先程の地震を起こす事はまずできなくなった。あの技はインファント・ドラゴンの全体重が後ろ足にかかるため、ここまで傷つければ自重に耐え切れなくなるはず。

 『グウウ……ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!!』

 小虫程度の存在に腹を嬲られ、足を傷つけられたインファント・ドラゴンが、自身を巻き込むのを承知で真下に向けてブレスを放つ。

 「それ、実は待ってたのよねえ」

 ニッコリと悪魔の笑みを浮かべて、ティオネはインファント・ドラゴンの『口の中』にナイフを放り込んだ。鱗に覆われた外ならいざ知らず、そうでない喉に突きこまれたナイフに傷つけられたインファント・ドラゴンの口内で、ブレスが爆発する。その間にティオナは大剣を力任せに引っこ抜いて退避する。

 火に大きな耐性を持つインファント・ドラゴンをそれで屠ることはできない。完全に殺すと瞳孔が開ききり怒りに染まった視線が三人に向けられる。

 ――この時をずっと待ってたんだよ、俺はなぁ!!

 声なき絶叫が響き渡り、『迷宮の武器庫』である枯れ木の上からベートが奇襲する。ベートの敏捷値はパーティ随一だ。インファント・ドラゴンでさえ気づく間もなく、彼はその頭へと着地する。

 けれどこのまま突っ立っていては振り落とされる。だからベートは突き刺した。

 その、真っ赤に染まった眼球に。

 『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?』

 「いくらテメエでも眼球まではどうしようもねえだろうがクソトカゲ!!」

 鱗に覆われていない、剥き出しの目玉。そこに双剣の片割れを刺して視覚を奪う。

 「クソッ、刀身が足りねえ。脳までは無理か……」

 このためだけに、ベートは耐え続けた。ティオネが、シオンが狙われているのに、拳を握り締めて何もせず傍観するのを選んだのだ。

 炎に飲み込まれたシオンとティオナを見たときでさえ、血が噴出するまで爪を突き立てて理性を保ち続けることを。

 待ち続けた甲斐はあった。最初にティオナを助けたとき以外は影も形も見えなかったベートのことを驚異ではないと判断したコイツは油断した。この三人だけが敵だと、警戒を外してしまったのだ。

 「わざわざ俺に『耐える』なんて面倒くせえ事をさせてくれたんだ……テメエも苦しまなきゃフェアじゃねえよなあ!?」

 『アアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!?』

 「チッ、暴れんじゃねえ!」

 グリグリと捻ってやれば頭を振り回してベートを落とそうとする。更に剣を突き立てて耐えるベートは、必死だからこそ気付かなかった。

 「ベート、そこから下りろ! ぶつかるぞ!」

 「あ――ガッ!?」

 何の事だ、と聞こうとしたときにはもう遅い。頭を振り回していたインファント・ドラゴンはベートの気づかぬ内に壁へ移動し、そこへ頭を叩きつけた。頭の上に乗っていたベートはインファント・ドラゴンの頭と壁の間に叩きつけられ、全身を殴打する。

 「ハッ、そっちがその気ならよお……」

 だが、ベートは死なないし、まして気絶するなどあってはならない。

 『諦めない』と、シオンに言った。意識はある。体だって動く。その上もう一本、自由に動かせる剣があるのだ。

 ニイィ、とベートは意地で笑みを浮かべた。獣を食らう、凶悪な物を。

 インファント・ドラゴンが何かを感じたのか、もう一度ベートを壁に叩きつけようとしたが、

 「遅いんだよ」

 二本目が、無事だった目に叩きつけられた。

 『グギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!』

 一つ目とは比ではない程に暴れ狂うインファント・ドラゴン。壁に叩きつけられ、最後の力で刃を突き刺したベートはその勢いのまま放り落とされる。

 ――クソッ、落ちたら痛そうだ。

 妙に冷静な思考でそんな事を思う。死なないならそれでいいかと考えていたベート。

 「たく、世話が焼けるわね!」

 そんな彼を救ったのは、ティオネだった。降ってきた彼を受け止める。それでも勢いは殺せず数度転がるハメになったが、痛みは大分軽減された。

 ティオネに感謝する間もなく、ベートは叫ぶ。

 「やれぇ! シオン、ティオナァ!」

 叫びを受けたシオンは構える。横にいるティオナに笑いかけて、

 「最後だ。首を、落とす」

 「わかった。私はシオンに合わせるよ」

 たったそれだけの言葉を最後に二人は動く。

 風の恩恵を受けたシオンが加速し後ろに回る。そして普通に斬りつけた後ろ足をザン! と切断し、インファント・ドラゴンを倒れさせる。

 『アア、ガアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!?』

 悲痛な叫びだった。

 それでもシオンは動きを止めない。イヤイヤと首を振るインファント・ドラゴンの背中に飛び乗り、その瞬間、ティオナが接近する。

 足音でティオナの位置を察したのか、インファント・ドラゴンが最後の悪あがきで爪を振るう。その軌跡を見ていながら、ティオナは避けようともしない。

 「任せたよ、お姉ちゃん(ティオネ)!」

 「まったく、世話の焼ける妹ね!」

 その爪目掛けて、ティオネは自身の主武装である湾短刀を投げる。投げナイフとは違い大きさのあるそれが指と爪の間に刺さり、ついに爪を剥ぎ取った。

 『~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!??』

 あまりの痛みに悲鳴をあげることさえ許されないインファント・ドラゴンに、ティオナは全身の力を込めて腹に大剣を突き刺した。

 「シオン、今だよ!」

 インファント・ドラゴンが痛みで硬直し、首が止まる。

 「これで、終わりだああああああああああああああああっ!!」

 風の剣が、振り下ろされる。刀身が足りない部分を補うように纏われた風が伸び、ティオナの大剣にも負けぬ物となる。

 『ギャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッッ!??』

 最初に感じた硬い手応えは、もうない。竜の首を両断し、噴射した血を全身に叩きつけられた。地面に着地して残身を取る。

 ドサリと真横にインファント・ドラゴンの頭が落ちてくる。数秒息を吸うように口が上下していたが、やがてそれさえなくなった。

 「勝……った、のか?」

 呆然と呟く。

 数秒、あるいは数分。シオンが感じたのは勝利した歓喜よりも、生き残れたという安堵。剣を手放しその場に座り込む。

 「全員で、生き残れた……生き残ってやった……!」

 ハァァ……と息を吐いたその瞬間、

 「やった、私やったよシオン! あのインファント・ドラゴン相手に勝ったんだよ、たった4人だけで!」

 「うおわ!?」

 武器を投げ満面の笑顔で飛びついてくるティオナに押し倒される。頬擦りしてくる彼女を振り払う訳にもいかず困惑したが、やがて浮かんだのは笑顔だった。

 「ありがと。ティオナのお陰で勝てたよ」

 「あ、なーにそれ。私達は必要なかったってこと?」

 「そんなこと言ってないだろティオネ。お前には一番助けられましたーだ」

 茶化すように言葉をかけて、生き延びれたことを笑い合う。

 しかしそこに水を差すように、回復薬で傷を癒したベートが言った。

 「おい、笑い合ってるとこ悪いがさっさとここから離れるぞ。インファント・ドラゴンが死んだのを察したのかモンスター共が来てやがる」

 「うげっ、マジか……。ほらティオナ、離れろ! モンスターの魔石を回収してさっさとここから逃げるぞ!」

 「はーい、もう、全然落ち着けないんだから」

 「落ち着くのはダンジョンから出てから! ほら行くわよ!」

 ボロボロの体を引きずり無数のモンスターから魔石を回収する。あまりの魔石とドロップアイテムの量に顔を引きつらせながらシオンとベートのバックパックに詰め込み、それでも入らない物は仕方がないからティオナとティオネが持てる分だけ持っていく。

 大量にありすぎたインプの魔石なんかは捨て置いた。持てないのだから仕方がない。

 帰り道、周囲を警戒しながらベートの鼻を使ってモンスターと遭遇しないようにしていると、シオンが言った。

 「それにしても『インファント・ドラゴンの爪』か……どうする。普通に売るか? それとも加工して武器にするか?」

 悩みどころはそれだ。ティオネが湾短刀で剥ぎ取った爪がその場に残り、魔石を取っても消えなかった。恐らくあのインファント・ドラゴンは特に足に魔力が溜まっていたのだろう。だからこそ自分の巨体を支え切るような事ができたのだ。

 そんな爪ならば、高性能な武器になるに違いない。とはいえ売ればかなりの値段になるのも間違いはなく、悩みどころだ。

 「私は武器にしたい」

 「俺も武器だな」

 「ていうかそれ以外に選択肢は無いわね」

 今回文字通り死にかけるほど痛感した。武器が通じない、という恐ろしさを。ならば、かなりの額がかかろうと、自分達の命のためにこのドロップアイテムを使うべきだ。

 「それだと今度は何に使うか、なんだよな」

 正直こういった事は喧嘩の種になるから辛いところだ。誰だって自分の武器を更新したい。いっそフィン辺りに相談しようか、そう思っていると、

 「ティオナじゃねえのか? やっぱ一番火力が出る大剣なんだからよ」

 「ベートもやんなきゃダメなんじゃない? 今回双剣だとほとんど何もできてなかったみたいだしさ」

 「私はまだいいかな。今使ってるより多少マシな湾短刀と投げナイフがあれば戦えるし。二人に使って余ったらシオンの予備武器(スペア)でも作ったらどう?」

 「まあ、シオンが決めろ。俺達は文句言わねえよ」

 当たり前のように、三人は相談していた。それも、自分のためではなく、現状のパーティの戦力を鑑みた上でだ。

 「えっと、お前達はそれでいいのか?」

 「いいも何も、決めるのはテメェだろ。お前が最後倒したんだからな。俺達はおまけだ」

 見つめられて、シオンは悩んだ。けれどそれも一瞬のことで、

 「わかった。ティオナとベートの武器を作ろう。材料の残り次第でおれの予備武器か、ティオネのナイフでも作ろうか」

 「できればシオンの予備武器じゃなくて、主武器を作りたいところだけどね」

 「シオンにゃあの変な風があるんだから十分だろ」

 「って言われても、あの風、おれ自身よくわかってないんだけど」

 「……まあ、そうよね。わかんない力をアテにするのは危険よ。自分達だけで何とかしないと」

 ティオネは何かを気にするようにそう言ったのを、三人は気づいていた。しかし本当に大事なことなら言ってくれると信じてもいた。だから問いかけるようなことはしなかった。

 ダンジョンから戻り、疲れた体を引きずってホームへの道を戻る。途中飲み物を人数分買って、渇きに渇いた喉を潤していく。

 そして飲み終えた彼らは、

 「あ゛ー、なんか生き返る……やばい、頭から冷たい水被りたいんだけど」

 「行儀悪いよシオン。同意するけど」

 「クソッ、飲み足りねえ。さっさと帰るぞ」

 「ああ、団長に会いたい団長に会いたい団長に――」

 なんか色々と追い詰められていた。

 どこか殺気立っている集団に街の人達が引いているのに気づかないまま門を潜ってホームへと帰還する。

 そして彼らを待っていたのか、扉を開けてすぐそこにリヴェリアが立っていた。

 「お帰り。今日はどんな事があったんだ?」

 「「「「死にかけた」」」」

 「そうか、なるほど……何?」

 リヴェリアの声が聞けて、完全に気が抜けた。

 「すまん、先落ちる……」

 「ちょ、シオン!?」

 「寝かせとけ。そいつが一番動いてたんだからな。俺はロキんとこに行って【ステイタス】の更新してくるぜ」

 「私は団長の顔が見れればもう満足……」

 皆が皆、疲れていた。それでも思い思いに足を動かし去っていく。その様子に、話を聞けるのは後だなと判断したリヴェリアが、倒れたシオンを見る。

 「やれやれ、随分と無茶をしたものだ。一体何と戦ったんだ?」

 回答は期待していなかった。シオンの体にある軽度の火傷から、中層にでも潜ったのだろうかとリヴェリアは思ったのだ。

 だから、予想外だった。

 「えっと、インファント・ドラゴンと戦って、殺してきました……」

 「……は?」

 まさか『上層の迷宮の孤王』を撃破したなどと言われるなど。この火傷は、その時の怪我だ。

 「なるほど、そういうことか。全く、苦労をしてほしくないと願えばこうなるか。因果な物だ」

 シオンの頭を撫で、なるべく揺らさないようその小さな頭を膝に乗せる。

 「ティオナ、回復ができる魔法を持つ者を連れてきてくれ。彼の傷を治そう」

 「わかった。すぐに戻ってくるね!」

 その背中を見ながら、リヴェリアの耳に驚声が響いてきた。

 『Lv.2キタァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!』

 シオン達が迷宮に行き始めてから、早九ヶ月。恐らく世界中でもトップクラスの速度。しかもわずか六歳になったばかりの少年少女が、だ。

 「これは、荒れるか?」

 色んな意味でシオン達の将来は波乱万丈だ。それを間近で見ることになるリヴェリアは、どれくらい振り回されるだろう。

 「どれだけ上り詰められるか、見させてくれ。お前達の可能性を」

 それでも若い芽を育てるのは楽しいと、そう思うリヴェリアだった。

 

 

 

 シオン達がインファント・ドラゴンを討伐し、全員が【ランクアップ】をしたと巷で噂になってから三ヶ月という期間が過ぎた。

 フィン達のアドバイスで中層に行くならば『サラマンダー・ウール』を用意しろと言われたシオン達は、未だに中層へ辿りつけていない。

 理由はティオナとベートの武器の更新だ。アレを『発展スキル』持ちの鍛冶屋に頼んだところ、かなりの値段を持って行かれた。借金を覚悟した程である。その代わりに残った材料でシオンの予備武器である短剣を作ってもらえたので、納得はしているが。

 しかし更新する物は他にもある。ティオネの湾短刀と投げナイフに、全員の防具。更にはこれから必要だろうと道具類も充実させていく必要がある。

 そのためにリヴェリアから二つの治療と製薬を作っているところを紹介してもらった。【ディアンケヒト・ファミリア】と【ミアハ・ファミリア】の二つだ。できればもしものために虎の子の道具が欲しかったため、今は手が届かなくとも顔見知りにはなっておきたかった。

 「サラマンダー・ウールが4人分で数十万ヴァリス……無茶をしない範囲でダンジョンに潜らなきゃいけないから、まだ時間がかかるな」

 ハァ、と溜め息を吐き出す。幸いといっていいのか、シオンの武器はガレスがもう使わない剣を放り投げられたため何とかなった。もちろん中層で使える程度の武器ではあるが。

 「日常品にもお金が消えるし、目標金額まで後一ヶ月はかかるかな……」

 シオン達は『冒険者』だ。ただ養ってもらう子供ではない。生活費やらなんやらは自分で稼げとフィン達から言われている。それができるだけの力はあるだろう、と。

 実際シオン達も未だに彼らの時間を取らせて鍛えてもらっているのにこれ以上甘えられない。そのため予想以上に稼ぐのが難航していた。

 ふと露店を眺めて見る。そこにあるのは様々な装飾品(アクセサリー)

 「お、嬢ちゃん見ていくか? 安くしとくぜ」

 「……おれ、男なんですけど」

 「マジか!? はー、綺麗な嬢ちゃんだと思ったんだが、悪いな」

 「ま、いいけどね」

 勘違いされる理由はわかっているので、シオンも強く言わない。

 「代わりに安くしてくれると嬉しいな」

 「げっ、藪蛇だったか……ま、仕方ねえ。サービスしとくぜ」

 ニッコリと告げれば引きつった笑みを返される。それを見てから商品を眺めた。

 指輪(リング)首飾り(ペンダント)、髪留め、腕輪(ブレスレット)御守(アミュレット)、他にも色々ある。ベートは余計な物はいらねえと言って拒否しそうだから、ティオナとティオネの分だけでいいだろう。

 指輪辺りだとティオネが怒りそうだから却下。首飾りと腕輪は、どうなのだろう。あの二人にそれは目立つだろうか。

 決めた。御守と、髪留めにしよう。御守はかつてシオンを救ってくれた神秘の込められた石になぞらえて。これをティオネに渡せば、変な勘違いもしないだろう。髪留めは、髪に頓着しないティオナが主だ。あの子はもうちょっと身嗜みに気をつけた方がいいと思う。

 「はい、これ代金」

 「あいよ、ありがとな坊主。ああそうだ、こいつはおまけだ」

 店主がカラフルな色彩のゴムを渡してくる。

 「その髪留め、そろそろ限界だろ? 買ってくれた礼だ、使ってくれ」

 「ありがと、大切にするね」

 今使っていた髪留めを解き、代わりに貰った物を使う。確かに感触が違う。ニッコリ笑ってもう一度礼を告げて、そこから立ち去る。

 「うーん、さすがに女の子っぽい物過ぎたか……嬢ちゃんにしか見えねえ」

 まあ、いいかと店主は店番へと戻っていった。

 露店から離れたシオンは紙袋に包まれたそれを胸に抱いてホームを目指す。

 「喜んでくれるといいな……」

 それで身に付けてくれたのなら、もっと嬉しい。センスに自信はないから不安もあるが、贈り物をしたいのだから、素直にこの気持ちに従おう。

 そしてやっと北のメインストリートに戻れた時に、ドンッと誰かにぶつかった。

 「あ、ごめん。ちょっとよそみしてたかな」

 ぶつかったのは、自分と同じかちょっと下くらいの女の子。綺麗な金色の髪はどこかくすんでいるようで、もったいない。

 すぐに離れるだろう、そう思っていたシオンだが、どこか様子がおかしい。グイッとシオンの服を掴んで放してくれない。

 「お母、さん……お父さん……! どこに、行っちゃったの……!?」

 顔をあげた少女の焦点は、合っていない。見えていない。よくよく見れば少女の体はやせ細っていて、何日も食べていないのが窺えた。

 紙袋を脇に挟んで、そっと少女を抱きしめる。予想以上に、細かった。

 「お母さんと、同じ……? お母さん、おかー、さん……私を、おいて、いかないで」

 何かを必死に求めるように、彼女はシオンに手を伸ばす。それの姿に、かつて『親がどこにいるのか』と聞いた自分の姿が重なった。

 呆然としたシオンを前に、ついに限界を超えたのか、少女の手から力が失われる。

 それを前にしても、シオンは動くことができなかった。

 内から込み上げてくる何かに、耐えることしかできなかった。

 ――風は、大切な少女を少年へ運んできた。

 風の祝福を受け、新たな力を手にした少年。

 風と共にある、それを纏う少女。

 二つの風は混じり合い、やがて一つの軌跡となる――。




初めての強敵! ということで書いていたら筆が乗ってしまいまして。
21000文字超えちゃいました。いつもの倍です。アホです私。書き終えてから気づいたせいで分割もできないですし。

まぁそれはそれとして、今回はどうだったでしょうか。

インファント・ドラゴンという強敵を相手に一つに纏まったパーティの姿を思い描いてくれたのなら幸いです。シオンが決定打になったのは事実ですが、そこに至るまでに三人が協力したからこそ行けたのだと書きたかったんです。

長くなった一番の理由? ティオナの想いを明確にするためです。子供故に曖昧な感情と勘違いを正して恋する乙女にしたかった。

――要するに自分のためだ(開き直り

暗いところを入れたのは落として上げる戦法。子供は無邪気だからこそ残酷なところもできると知ってるのでそこも取り入れて。

ティオナ好きの方にはちょっと申し訳ないこともしたかな。でも彼女をもっと魅力的に描くためにも必要な事だったと!

ティオナばっかり言ってるとアレなので。実はティオネもスキルを獲得したとわかった方がいらっしゃると嬉しいです。

ただ原作とはちょっとだけ違うスキル。名前考えついていないんですけど、効果は

・仲間が傷つくと効果発生。
・『力』と攻撃力に高補正。
・怒りの丈により効果上昇。

スキル『噴化招乱(バーサーク)』の変化版です。自分を起点ではなく仲間を起点とするスキル。こういうのもアリですかね、ちょっと悩み中です。

まぁ名称はその内。

ベートについては今も昔も変わらない、と。ただちょっとだけデレる時が多くなってきました。うまく変わってる様子が書けてるでしょうか。


最後に、アイズらしき少女がやっと出せました。ただ彼女の幼少期の口調が全くわからないのが問題です。流石に最初からあの独特な話し方な訳ありませんし。

次回は、すいません、2話分書いたので10日後の26日で、時間変えて21時投稿です。

タイトルは『風の娘』、それではノシ

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