カザミ・鈴。そう名乗った少女は、良く言えば大らか、悪く言えば大雑把な人間だった。使えればそれでいいという思考の持ち主なのだろう、ある意味合理的だ。
フィンは案内を済ませたからと言って消えてしまい、部屋には鈴とシオンだけが残された。客室なのでお茶や菓子は置いてあるが、鈴がそれらに手を出す様子はない。とはいえただ見合っているだけなのも芸がないと思ったシオンが言う。
「もうロキから『神の恩恵』は授かったのか?」
「『恩恵』……あぁ、アレの事かい。ちゃんと貰ったよ、よくはわからないけど『スキル』は発現してるとか何とか」
何気なく言う鈴だが、最初から『スキル』や『魔法』を覚えている人間は少ない。それこそ長年武器を扱っているとか、特殊な経験を持っているとか、先天的に魔法の才能があるエルフなどの一部種族だけだ。
鈴は刀使いだと名乗っていたから、恐らく『スキル』もそれ関連のものになるだろう。使い方次第では大きな武器になる。
まぁ、それはそれとして。
「鈴の戦い方はどんな感じだ? 今おれのパーティは前衛と遊撃と後衛に分かれていて、鈴の戦い方でどこにするかが変わるんだが」
「基本的には前衛ってとこだね。ただ足には自信があるから、遊撃もできると思うよ」
「って事は【ステイタス】が低い内は遊撃に回ってもらうか。足止めしてくれればいいし、最悪こっちに擦り付けてくれ」
事も無げに言うが、自分が戦闘しているところに新しいモンスターを連れてこられたら、普通はたまったものじゃない。
鈴もそれくらいは想定しているのだろう、訝しげに聞いた。
「あんた、死ぬ気かい?」
「戦況全部俯瞰して見てれば特に問題ないだろ?」
「……ああ、そういう事か。あたいがまだあんたの事を見縊ってたって事かい……」
つい呻いてしまった鈴の態度に首を傾げるシオンだが、気にしても仕方がないと、さっさと意識を切り替えて立ち上がる。
「覚えた『スキル』とかは、必要になったら話してくれ」
「あんたに教えなくてもいいんだ?」
「知らなくても、使わなくてもどうにかできる状況に持っていくのがおれの、リーダーの仕事だからな。問題はないさ」
言いながら、シオンは鈴にも立ってもらう。
「どこに行くつもり?」
「顔合わせ。新しいパーティメンバーが増えたってな。そっちも顔を覚えてくれよ、これから命を任せ合う関係になるんだから」
もう既にシオンは背を向けている。だから、シオンに鈴の表情は見えない。それがわかっているから、鈴はどこか複雑そうな顔をシオンに向けていた。
――コイツは、信用できるか否か。
頭を振って、鈴はその思考を打ち消す。
――少なくとも今まで関わってきた奴等よりはマシってとこかねぇ。
今は、それでいい。そう判断した鈴は、素直にシオンの背中をついていった。
廊下を二人並んで歩いていると、鈴は何が珍しいのか、ホーム内をキョロキョロと忙しなく見回していた。
「何してるんだ、さっきから」
「いやぁ、ここまで立派な家ってのは、あんまり見覚えが無くてね。あたいも【ロキ・ファミリア】の一員になったんだからここで寝泊りできるっていうのはわかるんだけど」
妙に現実感が無い、と。
それはわからなくもない。シオンとて、家族二人っきりの生活から、見知らぬ他人同然の人間が多くいるところで日々を過ごすのは、違和感が凄かった。
「その内嫌でも慣れる。おれの場合は、そんな些細な事を気にしてられる状況じゃ無かったからすぐにどうでもよくなったし」
「ふぅん。そう思えるような日々、か。ちょっと楽しみだね」
ニンマリ笑う彼女は刀の位置を調整しだす。歩いている最中ズレてしまったらしい。刀、というだけあってかなり大きい。彼女の場合は身長が身長なので、大太刀のようにも見えた。
「そういや鈴って歳はいくつなんだ?」
「いきなり女に年齢を聞くって……いや、別にいいんだけどね。今年で十二さ。そっちは?」
「九歳だな。後数ヶ月くらいで十歳になると思うけど」
「へぇ、そりゃ本当かい? 身長は私よりちょっと低いくらいだから、同じくらいかと思ってたんだがね」
ジロジロと鈴がシオンの姿を確認する。どう見てもそこらにいる子供とは顔付きから何まで違いすぎる。多分、腑抜けている大人よりも、ずっと。
それが九歳。予想よりも違いすぎて、呆れるより先に笑ってしまう。
「そっちだって似たようなもんだろ。十二歳とは思えないくらい落ち着いてるが」
「あたいの場合は、まぁ、色々あったのさ。一人旅ってのは、トラブルも多かったしね」
「経験の多さ、か。精神的に大人にならなきゃやってられないってのは、どこも変わらないみたいだな」
お互い似た者同士。
肩を竦め合い、ふと思案顔になった鈴が二本ある刀の内一本を腰から鞘ごと引き抜くと、シオンに手渡してきた。
視線で意味を問うと、
「いや、その刀は皆が言っているダンジョンとやらに通用するのかと思ってね」
「……通じるってどころの話じゃないんだけど」
鈴の腰に差してあるときは気付かなかったが、こうして手に持てば、わかってしまう。
――この刀……第二、いや
少なくとも、そんじょそこらの刀とは訳が違う。シオンは柄を逆手で持ち、鐔をもう片方の手の親指で押した。ほんの少しだけ押し出された刀が鞘からその刀身を現す。
シオンには刀の良し悪しはわからない。だが、武器の良し悪しはわかる。椿のところで、性能を試したいからと無理矢理連れ去られる事数十回を経験したら、何となく見ればわかるようになってきたのだ。
光を反射する程に研ぎ澄まされた剣。そして如何なる技術か、刀に星型の波紋がついている。それもかなり特徴的な。どこかで見たような気はしたが、わからないのでシオンは思考を止め、刀身を鞘に戻した。
外から見てもわかる、
「なるほどね。とりあえず、当てられれば十二分に攻撃を通せるよ。多分、おれの知らないずっと深い階層の敵でも」
「当てられれば、ね。ま、その言葉だけ聞ければ十分さ。後はあたいの腕次第だからね」
鈴に刀を返すと、彼女は己の武器を見下ろし、ちょっとだけ表情を変えた。けれどそれはすぐに消えてしまったので、シオンには読み取れない。
代わりに彼女は悪戯っぽい、ニヤリとした笑みを浮かべると、
「そんじゃ、次はこっちだ」
もう片方の刀――鐔と鞘を、柄頭から伸びた紐で雁字搦めに縛っているそれを渡してきた。何故そうなっているのか、まるで封印しているみたいだと思いつつも、素直に受け取るシオン。
「どうやって見りゃいいんだよ、これ」
と愚痴をこぼしながら、シオンは先程と同じく柄を逆手で握る。そうして紐を解こうとしたのだが、その必要は無かった。
紐が独りでに動き出す。生きているかのように蠢き、やがて封印が解かれた。
――何なんだ、この刀は。
チラリと横目で鈴を見ると、彼女も驚いているようで、感心するようにこちらを見ている。答えてくれそうに、無かった。
内心で溜め息を吐きながら、シオンは諦めて刀身を抜く。
――ゾクリ。
背筋を舐められるかのような錯覚。恐ろしい何かに見つめられているかのような、理解できない感覚にシオンは刀身を確かめる暇もなく鞘へ戻し、紐で縛りなおす。その勢いに押されるがまま鈴に刀を押し付けた。
「なんだよ、この刀……妖刀?」
「まぁ、認めぬ者は最悪殺しちまうから、ある意味妖刀かね?」
「おい今何て言った」
「あはは、まぁ大丈夫大丈夫。どうにもシオンは気に入られたっぽいから」
全然大丈夫な気はしないが、持ち主がそう言うなら、そうなのだろう。気にし続けてもわからないのなら、頭の片隅にでも置いておくだけでいい。
「ったく、寿命が縮むかと思ったぞ……と、やっと到着だ。今日はここに全員いるはずだ」
「あんたのお仲間か。もしかして全員同い年?」
「多少の差はあるが、そうだ」
全員が九歳。しかも、恐らくは自分より遥かに強い。その事実に、鈴は頬を汗が伝っていくのを感じた。
――あたいはどこまで食らいついていけるのか、ね。
個人的なプライドとして、負け犬に甘んじているのは嫌な鈴だった。
扉を開け放ち、ひたすら広い部屋に入る。そこにいたのは僅か四人の子供のみ。だがそこで行われている戦いは、子供だとか四人だとか、そういうのは関係が無かった。
鈴の視力では動いているのがギリギリわかる程度。幼少から鍛えていた鈴でさえこれだ、普通なら捉えるのすら無理だろうが、しかし、その事実は中々に
――自分がまだまだだっていうのは、知ってたけど。
「オラリオじゃ【ステイタス】を上げて【ランクアップ】させればこれくらいはできるようになる」
こっそり打ちのめされていた鈴。その内心を、シオンは見抜く。それは、かつてオッタルに叩きのめされた経験故か。
「刀使いとしての技術を極めたいなら、強い奴がゴロゴロいるここは、最適だぜ?」
「……なるほど。そりゃ良いところみたいだね、楽しみにさせてもらうよ」
打ちのめされている暇などありはしない。
だがその事実は、鈴にとって、多少の余裕を与えてくれた。
「まぁあたいは強くなるのが一番の目的じゃないから、そこまで気にしてないよ」
「ん、そうなのか。それじゃなんでここに?」
それは、と答えようとしたところで、鈴はいつの間にか目の前に少女がいるのに気づいた。その少女はジッと自分を見つめていて、思わず一歩後退る。
「……シオン、この人誰?」
「いや誰って、指差すな。失礼だろ」
「別にいいさ。あたいは細かい決まりとか年功序列だとかそういった事はどうでもいいと思ってるし。あたいはカザミ・鈴ってんだ」
「鈴は今日からおれ達のパーティに参加する。よろしくしてくれ、ティオナ」
「りょーかい!」
やはりというべきか、こういう状況で物怖じしないのはティオナらしい。逆にアイズは一歩遠くからこちらを見ているだけで、近寄ろうとしない。仕方なくシオンが手招きすると、ほっと安堵の息を吐いてこちらに来た。
そして、それから更に遠くにいる二人は、観察するように鈴を見ている。
「見ない顔、ってことはつい最近加入した人間。多分Lv.1ね」
「持ってる得物は刀。前衛か、遊撃。Lv.1なら遊撃が主ってとこか」
「あの武器が見かけ倒しじゃなければいいんだけど」
「どっちかっつーと本人の腕だろ。あんな重そうな刀二本、まともに扱えんのかよ」
当たり前のように分析している二人。自分の命を預ける仲間が増えた嬉しさより、むしろ相手の命を守らなければいけないのが憂鬱だった。
そもそも、とティオネが言う。
「このパーティ、前衛多すぎない? まともな後衛が一人もいないじゃないの。私とシオンが兼任できるくらいで」
そう、このパーティはあまりに偏りすぎだ。全員が全員近接戦闘が主であり、投げナイフを扱うティオネは威力が低い。唯一魔法による遠距離攻撃ができるシオンだけが、まともな攻撃方法を確保していた。
「いいや、むしろこれでいいんだ」
「は? ベート、あんた正気? これ以上前衛増やしてどうするってのよ」
「確かに、『普通』ならな」
だが、このパーティは普通じゃなかった。どいつもこいつも近接戦闘に関する才能が並外れて高いせいで、ちまちま後ろから攻撃する必要はあまり無い。そもそも大群が来ない限りは魔法の詠唱を行う前に敵が全滅するくらいなのだから、相当だ。
が、ティオネは『万が一』を危惧しているのを理解していたベートは続ける。
「ティオネ、お前もシオンの【ステイタス】と俺達の【ステイタス】にどれくらいの差があるかくらい、わかってんだろ?」
「……まぁね」
シオンと三人の【ステイタス】は、『魔力』を除いた四つの項目を合計し平均した場合、一つの項目につきおよそ二百近い差がある。
Lv.3ともなれば数値を一つ上げるだけでも相当な時間を要するので、日数で換算すると――大体数ヶ月くらいの差ができている計算だ。
「シオンの【ステイタス】が今までみたいな上昇幅なら、恐らくアイツは後数ヶ月くらいで【ランクアップ】するはずだ。俺達の場合は――まぁ、それの更に数ヶ月先だろうよ」
置いていかれている。シオンはダンジョンに行く頻度を減らしたのにも関わらず。それが示しているのは、もしシオンが椿の助言に従っていなければ、恐らくは、もう。
そんなのはティオネも知っている。ティオネが言いたいのは、もっと別のことだ。
「……それとあの鈴って子が参加するのに、繋がりがあるの?」
「まぁ黙って聞いとけ。いいか、シオンは調整役をこなしている。それは、そうしなきゃパーティが崩壊しちまうからだ。だが、鈴が『使える』ようになれば話は別になる」
「なるほど、そういうこと」
ここまで言われれば、ティオネにだってわかる。
「つまり、鈴はシオンの代わりってことね?」
「まぁ必ずしも後衛だけをしていればいいって訳じゃないだろうが、そうだ」
シオンのやっている前衛、遊撃、後衛の内、鈴が前衛と遊撃を行えるようになれば、シオンは後衛をしているだけで済む。
とはいえ『調整』という役割の通り、シオンが前に出てくる事もあるだろう。それについては仕方ない、全滅するよりはマシだ。
重要なのは、シオンが今より前に出ないでいい、という点だ。
そしてそれは、シオンはともかくベート達にはプラスに働く。
「モンスターと戦って【経験値】を得るには、奴等をぶちのめす必要がある。だが、シオンが後衛を行っている間アイツが増える【ステイタス】は精々敏捷と器用と魔力くらいになるだろう」
「しかも私達が頑張って殲滅すれば、魔法さえ使う暇を無くせる」
先頭での貢献度的な物をあまり与えないようにすれば、シオンの【ステイタス】上昇量は、今よりもグッと下がる。ベート達がシオンに追いつく余地ができるのだ。
「シオンを、一人にはさせられない」
「ったりめーだ。壊れるアイツなんて……見たくない」
珍しく素直に、心情を吐露するベート。本来なら驚くべきなのだろうが、ティオネ自身そう思っているので、今だけはからかおうとしなかった。
とはいえ、この考えは取らぬ狸の皮算用、理屈としての話でしかないが。
「この話はあくまであの女ができるなら、ってのが前提だがな」
「そうね。見極めないと……私達にとって鈴という存在が、プラスになるか、あるいはマイナスになるかを」
できれば、プラスになってほしい。
だがマイナスになるのなら、その時は。
ある意味物騒な思考を共有している二人は顔を見合わせ、拳をぶつけ合わせた。
とりあえず自己紹介と、各々の戦い方を四人で話していたらふとシオンが言った。
「そういえば鈴。お前、防具はどうするんだ?」
「防具? 無いよそんなの。邪魔だし、動きの阻害になるから付けるつもりもないけど」
確かに速度特化の人間にとって、防具なんて邪魔にしかならないだろう。それはシオンにも良くわかる。
良くわかる、が、それとこれとは話が別だ。
鈴のあっけらかんとした答えに、シオンは一段低い声音で言った。
「金は渡す。だから買ってこい」
「は? いやだから、必要ないって」
「ちょっと待ってろ。取ってくる物があるから」
言うだけ言うと、シオンはさっさと行ってしまう。その背中に手を伸ばした鈴は空振りしてしまい、体が泳ぐ。反射的に足を前に出して倒れるのを押さえると、シオンを追いかけようとしたのだが、それを止める人間がいた。
「やめといた方がいいよー。こうなったらシオンは譲らないし」
ティオナだ。しょうがないなぁと言いたげな顔をしているが、それは鈴ではなく、シオンへと向けたものだ。
「だけど、あたいにゃ防具は本当に邪魔なんだよ。あんな思っ苦しくてガッチャガッチャ鳴る代物なんて」
「鈴にとってはそうかもしれないけど、その考えは、甘すぎる」
ピシャリと冷たく言い放ったのはアイズ。その眼はとても冷ややかで、ガリガリと頭を掻いていた鈴はもちろん、関係ないはずのティオナまで固まっていた。
「ア、アイズ?」
「ダンジョンじゃいつ死んでもおかしくない。『邪魔だから』なんて
「どうでもいいって……あたいは今までの経験でこう言ってるだけなんだけどねぇ」
「防具がいらないなんて言える、そんな経験、必要無い」
どこまでも冷たいアイズだが、その真意は別にある。
「あなたは弱い。この中で、誰よりも。だから、一番危険があるのはあなた。勘違いしないで。パーティに入ったからって、あなたが強くなるわけじゃない。あなたが傷つけば――それだけ私達に負担がかかるって事を」
特に、シオンにかかる負担が。
まだ会って間もないが、シオンはとにかく身内や仲間、友達を傷つけられるのを恐れている。もし死んでしまえば、それはいつか死んだ義姉の記憶を強制的に思い起こさせるだろう。
もう言う事はないと背を向けてどこかに行こうとしたアイズは、ふと足を止めると、
「一つだけアドバイス。
それ以降一度も振り返る事なくアイズは去っていく。その背中を見つめる鈴の顔は沈んでいて、明るさは無い。
「どうにも……信用されてないみたいだね」
「そりゃそうだよ、初対面なんだし。私だって信じきれてないよ?」
「そう……なのかい?」
会った時からころころと明るい笑顔を見せているティオナ。その笑顔には裏がなく、だからこそその言葉は、傷ついた。
だがそれも、すぐに思い違いだと気づく。
「鈴は、会った相手に自分の命を預けられる?」
「――――――――――」
ティオナの真っ直ぐな瞳。それに見つめられてなお、鈴は何も言えなかった。それが答え。それは鈴の経験から来るもの。
けれどそれは、相手にも当てはまること。
「私は鈴の強さを知らない。知らないから、知っていくしかない。でも、そこに行き着くまで、私達は私達の命を預けられない。――信じきれないから」
「……なるほどね。逆に私はあんた達の強さを少しでも見た。命を預けるのはむしろ、あたいの方ってわけかい」
だからこそアイズは冷たかったのだ。
――自分一人で何でもできるなんて考えは、捨てて。
「全く、本当にあんたら全員九歳なのか? 全然信じられないよ」
「ふふ、残念でした。紛うことなき九歳です」
茶化すように言えば、それを察したティオナが乗ってくれる。これ以上鈴に言葉を重ねるのは無意味だとわかっているからだろう。
鈴はただ、肩を竦めるしかない。
――甘い考えは、捨てるべきだろうね。
外にいるモンスターと、オラリオのダンジョンに潜むモンスターは全く別の生き物。そう考えておいたほうがいい、鈴はそう判断した。
「そろそろシオンも戻ってくるかな。だから、私も一つだけアドバイスしておくね」
「ん、なんだい」
「ダンジョンでは常に命懸け。準備はいつも最大限に。じゃ、またね! 鈴と一緒にダンジョンに潜れるのを楽しみにしてるから」
ひらひら手を振って去っていくティオナに、鈴も小さく手を振り返す。完全にその背中が見えなくなると、鈴は壁に背中を預けて天井を仰ぎ見た。
――なんていうか、全員覚悟が違うよ。
先程見た男女が自分を観察しているのに気づいていた。あの二人がティオナやアイズよりもバカだとは到底思えない。
なるほど今ならロキが言っていた意味もわかる。
このパーティ……異常すぎる。鈴の記憶にはないくらい、鮮烈な個性を各々が持っていた。そしてそんな個性を持った者達を纏めあげている人間が。
「シオン、というわけか」
凄すぎて溜め息しか出ない鈴。そんな彼女を慰めるように、『室内で』風が吹いた。
鈴も結構経験積んでるんですが、相手が悪すぎるってことで。
作中にほぼほぼ説明入れちゃったんで今回は解説無し。疑問点あれば感想で聞いてください。
今回は文字数かなり少ないですが、許してください前回頑張ったので。
次回はもうちょっとほのぼのした話にします。
タイトルは『新しい仲間の歓迎会』とかかな。若干変えるかもしれませんが。
あ、それとベティ√のお話は別枠にしておきました。ついでに二話目も投稿しましたが、ベティさんの出番はほぼほぼ無いのであしからず。
ではまた次回。