ペルソナ4 正義のペルソナ使い    作:ユリヤ

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今更ですがペルソナ4のBGMっていいですよねぇ


第7話

 夜中、明日香はマヨナカテレビが映るのを待っていた。

 そして午前0時となりテレビに映像が浮かび上がってきた。

 映像は昨日のようにぼんやりしたものではなく、何処か建物の外からの撮影してるものだ。

 なんだこれはと明日香が考えていると、画面の外から急に雪子が現れた。現れたのだが…

 

「なんでドレス…?」

 

 雪子は何時ものような和服姿ではなく、童話の御姫様が着るようなドレスを着ていた。

 ドレス姿の雪子はこんばんわ~とにこやかに笑いながら挨拶をし、雪子の次に言った事が明日香の目を見開かせる。

 

『えっとぉ、今日は私天城雪子がナンパ…逆ナンに挑戦してみたいと思います!題してやらせなし!突撃逆ナン雪子姫の白馬の王子様探し~!!』

 

 逆ナン!?明日香は思わず叫びそうになった。何時もは男子にナンパされてもバッサリ断っていた雪子が逆ナンなんて有りえないと明日香は思ってしまった。しかしドレス姿の雪子は何処か生き生きしており、最近の雪子とは雰囲気が正反対であった。

 明日香が唖然としている間にも雪子はドレスの下半身を押さえたり、胸の谷間を強調するようなきわどい映像が流れていた。

 

『もう私用のホストクラブをぶったてる位の意気込みでぇ、じゃあ!行ってきまぁす!!』

 

 其れだけを言い残すと、雪子は建物の中へ入ってしまった。建物の全体が分かるようになり、その建物は西洋のお城であった。

 映像は雪子が城に入る所で消えてしまい、明日香は未だに戸惑っていたが、携帯の着信音でハッとした。

 千枝からの様で明日香は直ぐに着信ボタンを押した。

 

「千枝いま映ってたの『明日香!さっき映ってたの雪子だった!ねぇ如何して!?さっき会ったばっかりなのに!』落ち着け千枝、混乱してるのは分かるけど!」

 

 千枝は明日香が思っていたように慌てふためいていた。とりあえず落ち着くように深呼吸をするように言った。電話越しに千枝が深呼吸しているのが聞こえる。

 漸く落ち着いた千枝は再度明日香に聞いた。

 

『ねぇ映像がハッキリしたんだったんなら、雪子ってテレビの中に入っちゃんだよね?もしそうなら雪子死んじゃうんじゃ…』

 

「落ち着け千枝、雪子がテレビに入ったのは恐らく俺らと別れてすぐの事だ。それに霧が出ないのなら雪子は直ぐには殺されない」

 

 天気予報を先程見たが、今日明日と霧が出る予報は無かった。クマが言ったこっちの世界で霧が出てる時はあっちでは霧が晴れてシャドウが暴れる。

 なら今のところは雪子が襲われる心配は無いのだ。だから心配するなと千枝に言い聞かせる。

 

「明日は日曜だ。朝一でジュネスに陽介や悠と集合しよう」

 

『う…うん分かった』

 

 千枝も納得したようで電話を切った。明日香も携帯をしまうと先程のテレビを考えていた。

 先程はまるでバラエティ番組のようで、今までとは違う感じであった。

 それについては明日悠たちと会って話す事にした。明日香は陽介と連絡を取って朝一にジュネスに集合するように言って眠りについた。

 

 

 

 4月17日(日) 昼間

 

 ジュネスにて悠と陽介とフードコートで集まった。千枝は本当に雪子がいないのか確認するために天城屋へ

 陽介が大事な物を取りに行くと言って今は席を外しており、今は悠と明日香の2人だけ

 

「しかし昨日のは驚いた。雪子が逆ナンなんか言うんだからなぁ」

 

「それには俺も驚いたけど、なんか天城イキイキしてた」

 

 そうなんだよなぁと悠が言った事に明日香も同意した。あのテレビ出ていた雪子は最近の静かな感じの真逆でものすごく明るかった。

 それに…と悠は何か思った様で

 

「若しかしたら天城は白馬の王子を望んでるんじゃないかって」

 

「望んでる?あの雪子がか…」

 

 俄かには信じられないが、そうだと思ってしまう事がある。それは…

 

「天城越えかな…」

 

「それが一番考えられる」

 

 天城越え、それは雪子に付き合ってほしいと言っても振られる事から、雪子と付き合う事事が困難という事で天城越えと言われている。

 大抵の男子は雪子と付き合う事よりも、天城越えを達成する事を目的としている。雪子の友人としてはそんなふざけた理由は納得できるわけなく、時折千枝と一緒に天城越え目的の男子を追い払った事がある。

 

「要するに雪子はちゃんと自分を見てくれる男子を求めていた?だからあんなお城やドレス姿の雪子がテレビに映ったのか?」

 

「今はそれしか分からない。とにかく今日テレビの中に入ってみよう」

 

 明日香と悠が話していると、陽介が手を背中に回して何かを隠しながら戻ってきた。

 

「わりぃ、またせたな」

 

「遅かったな陽介、何を取りに行ってたんだ?」

 

 明日香がそう訪ねると、陽介はバックヤードからあるものを取って来たと言った。

 

「じゃーん!どうよコレ?」

 

 陽介は背の後ろに隠していた物を見せた。刀と鉈である。明日香達が座っている席の近くに座っていた女性が陽介を見ていた。

 

「いくらペルソナの力があるからってゴルフクラブじゃ心許ないからな。と言うわけで悠、お前はどっちにする?」

 

「刀かな…」

 

 悠は一応刀を選んだ。ゴルフクラブを振っていたし、刀の方が鉈よりも扱いやすいと思った。

 

「おッお目が高いな。これジュネスオリジナルブランド、刃は当然偽物だけどな。でも俺は…あ、両方ってのもありかもな」

 

 そう言って陽介は刀と鉈を振り回し始めた。

 

「おい陽介、幾ら偽物って言っても刀とかをむやみに振り回したら…」

 

 明日香が陽介を注意しようとしたが

 

「挙動不審の少年3人組を発見。刃物を複数所持、至急応援を求む」

 

 巡回中の警官に見られてしまい、警官が此方に近づいてきた。

 

「へ?いやこれなんでもないっすよ!これ別に万引きとかじゃなくて!いや其処じゃないですよね!べッ別に怪しくないっす!」

 

 陽介は必死に誤解を解こうとしたが、逆にキョドってるせいで怪しさ倍増である。

 

「あーっと、俺ら刃物マニアっていうか…あそれもアブナイ話っすよねへへへ」

 

「俺らって俺も入ってるのか?」

 

 悠は陽介に巻き込まれて思わずツッコミを入れる。

 

「取りあえず詳しい話は署で聞くから、凶器を床に置きなさい。手は頭の上ね。ほら早く」

 

 警官は陽介に早く置くように急かした。これ以上は面倒な事になりそうだから明日香が助け船を出す事にした。

 

「すみません。ちょっと待ってください」

 

「何だね、本官の邪魔を…ってあれ?君どっかで見たような」

 

 明日香の顔を何処かで見たと言う警官

 

「日比野刑事の息子です。父が何時もお世話になっています」

 

 明日香はそう言って45度のお辞儀をした。こういう時はキョドるよりも冷静に話せば聞いてくれると言うのが明日香の考えである。

 

「彼は花村と言って僕の友人です。色々とぶっ飛んでいますが、友人思いなんです。最近物騒という事で態々ジュネスのバックヤードから護身用としてこの刀と鉈を出してくれたんですよ。ほら刃も偽物だし」

 

 明日香は陽介から刀を貸してもらい、刃の所を指で触った。指は切れておらず、偽物だと主張する。

 明日香はこれで納得してくれたら万々歳だと思っていたら、警官は一応は納得してくれたようだ。明日香の誠意のあるお辞儀と冷静な説明でなんとかなったようだ。

 

「成程、日比野刑事の息子さんの友人か。全くはた迷惑な…今度はこんな事をしない様に」

 

 警官も納得したのを見て、明日香の隣にいた陽介がホッとする。

 

「いや助かったぜ。ありがとな明日香」

 

「は?何言ってるんだ陽介」

 

 へ?と陽介は意味の分からないと言った顔をしていたが、明日香は

 

「こんな人がいる前で刃がついてないからって凶器を振り回したんだ。それなのに俺が話して注意で終わりな訳ないだろ?ちゃんと警察署に連れて行く」

 

「ちょっと待て明日香!警察署なんかに行ったら天城の救出が…」

 

「分かってるよ陽介、けどな人様に迷惑かけたんだ。ちゃんと説教は受けような」

 

 そう言って明日香は応援に来た警官の人達に陽介と悠を任せ、自分も一緒に稲羽署へ向かう事になった。

 

 

 

 

 

「お前、こういう馬鹿をするとは思わなかったんだけどな」

 

 堂島は呆れたような表情を浮かべていた。悠の叔父が堂島であり、未来の息子という事で何とか補導歴が付かなかった。

 

「スンマセンでした」

 

 凶器を持って居た陽介が堂島と未來に謝った。

 

「ハハハ、まぁ元気が有り余ってるようでいいじゃないか。けどこれっきりにしてほしいね、今起きてる事は知ってると思うし今は警官が色々な場所で配備されてるから」

 

 未來が言った事に3人は黙って頷いた。

 それだけ注意をすると、未來は堂島を連れて仕事に戻って行った。

 武器も没収されてしまい、どうしようかと考えているとコーヒーを持った足立が3人の前に現れた。

 

「おーっとゴメンね…あれそこの2人って堂島さんと日比野さんとこの」

 

「あッあの少しいいですか!?」

 

 陽介は足立に雪子が消えたとかで捜索願出ていないか聞いてみた。

 足立はう~ん言っていいのかなぁと唸っていたが

 

「まぁいいか、堂島さんや日比野さんのご家族だし、天城さんの友達だっていうなら…特別だよ?」

 

 足立は雪子の事について話してくれた。

 雪子は昨日の夕方から姿が見えなかった様だ。時間からして明日香と千枝が雪子に気を付けるように言った1時間後ぐらいだろう。

 旅館も土曜という事できりきり舞いだったらしく、夕方頃は誰も雪子の姿を見ていないそうだ。

 警察の方でも雪子が連続殺人と何か関係があるのでは?とその考えで動いているそうだ。

 

「そうだ…その天城さんだけど、最近何か辛そうだった?」

 

 足立の問いに3人は首をかしげた。

 なんでも旅館に山野アナが泊まっていて、その山野アナのクレームに女将さんが倒れてしまったようだ。

 それで娘でもある雪子が女将代役として旅館を切り盛りしてるようだが、まだ雪子は女子高生である。いくらなんでも女将の代役は無理があったのだろう。

 

「つまり警察は事件の他に、雪子が女将の代役に精神的に疲れてしまい、女将の仕事を投げ捨てて家出をしたと…そうも考えてるんですか?」

 

「おっと鋭いねぇ。流石は日比野さんの息子さんかな」

 

 足立は明日香の推理に感心していた。

 

「僕もちょっとしか天城さんのとこの娘さんを見たことないけど、しっかりした娘さんだよねぇ。あれで次期女将っていうのも納得できるよ…でもまぁまだ女子高生だからねぇ、女将の仕事をかわってあげたり旅館の仕事を毎日のように手伝ったりしたら、ストレスだってたまるはずだよ」

 

 でもまぁ女子高生女将ってのもグッと来るけどねぇと足立のお気楽そうな一言に、明日香は足立を睨み付けた。

 友人である雪子の生死がかかっているのだ。ふざけた事を言っている足立に怒りを覚える。

 明日香の睨みを見て、足立も不謹慎だったと頭を下げた。

 お詫びということで他にも何かを話そうとしたが、堂島の怒鳴り声で急いで堂島の元へ走り去っていった。

 残った3人は去っていった足立を見て頼りない刑事だと思った。

 

「悠の叔父さんや明日香の親父さんは頼もしく見えるけど、あの足立っていう若い刑事はハッキリいって頼りない。今は俺達が天城の居場所を知ってるし、その場所に行ける。早く行って天城を助けに行こうぜ」

 

「あぁ急ごう」

 

 陽介と悠は行こうと意気込んでいたが、ちょっと水を指して悪いんだがと明日香が

 

「テレビの中に入るのはいいが、お二人は武器をどうするんだ?」

 

 明日香の言ったことにそうだったと思い出す2人。

 先程の騒動で武器は没収されてしまった。今の二人は丸腰の状態である。

 いくらペルソナの力があったとしても武器がないと…

 どうしようかと考えていると、千枝が警察署へとやって来た。

 

「明日香達がパトカーに乗ってるの見て慌てて来たけど、どうしたの?」

 

 明日香は千枝に陽介がへまをして補導されかけたと包み隠さず話したら、千枝は陽介をジト目で睨み付けた。

 陽介も千枝に馬鹿をしたと謝り、これからどうするのかと話し合おうとしたら、明日香と千枝がなにやら話していた。

 

「?何を話してるんだ?」

 

 悠がなんの話をしているのか尋ねると

 

「その武器なんだけど、あそこなら色々と揃ってるかも」

 

「あぁ彼処なら…だいだら.なら」

 

 

 稲羽市中央通り商店街南側、明日香と千枝に連れられついたのは店の前に甲冑が置かれた武具店『だいだら.』

 悠と陽介は店の扉を開けると、いきなりの熱風に顔を覆った。

 店のなかは刀や鎧やらと現代にないものが並んでいた。

 そして極めつけがだいだら.の店主である。顔に大きな十字傷があり、その手の人にしか見えなかった。

 

「おっおい明日香、あの店主ヤバイだろ!?大丈夫なのかこの店?」

 

 陽介は明日香に小声で話しかけていた。

 だいだらの店主はジロリと睨み付けるような視線で、冷やかしなら帰りなと目でそう言っているように見えた。

 

「大丈夫だよ。店主のおじさんとは顔馴染みだし。顔は怖いかもしれないけど、腕は確かだから。おじさんが鍛えた刀は模擬刀でも真剣よりも斬れるって噂だし」

 

「いやそれは大丈夫なのか!?」

 

 陽介はツッコミをしていたが、千枝や悠は動じずに自分達の武具を選んでいた。

 そんな2人に呆れを通り越して感心してしまった陽介は、自分じゃ良いのが選べそうになかったので、悠にお金を渡して買って来てほしいと頼んだ。

 明日香も自分の装備を買おうと、店主に話しかけた。

 

「おう明日香坊じゃねぇか。お前さんが頼んだ模擬刀の手入れだが、まだ先になりそうだぞ」

 

「今日はおじさん、今日はその事で来たんじゃないんだ。手頃な模擬刀と鎖かたびらを頂きたい」

 

 明日香の注文にピクリと眉を動かす店主

 

「なんでいきなりそんな物を頼む?まるでこれから戦にでも行くようじゃねぇか」

 

 それは…明日香は本当のを事を言えずにいたが、悠が

 

「大切な友人を助けるためだ」

 

 悠の言ったことに、そうだなと他の3人も頷いた。

 それだけを聞いたら、アートを乱暴に扱わないのならそれでいいと店主は何も言わなかった。

 4人は各々の装備を購入すると、だいだらを後にした。

 

 

 

 

 装備が装備ということで、私服だと隠せないということで制服に着替えてもう一度ジュネス集合ということになった。

 鎖かたびらを装着し、その上から制服を着た。竹刀袋に模擬刀を入れて準備万端となり、家を後にした。

 丁度千枝も準備が終わったようで、一緒にジュネスに行こうとしたが明日香から話があるようだ。

 

「いいか千枝、今更だがテレビの世界は危険が一杯だ。だから無闇矢鱈に自分勝手に突っ走らないでほしい」

 

「わかってるわよ…」

 

「否千枝、悪いけど千枝は今焦っている。雪子が大切なのは分かってる…でも俺は雪子も大切だけど、千枝も大切なんだ。千枝に何かあったら俺は……」

 

 明日香の小さな声の訴えに千枝もわかったと小さく頷いた。やはりどこか焦っていたのだろう。

 

「俺は来るなって言ってないさ。ただ千枝や俺は何の力もない。そんなやつが前に出たとしても足手まといにしかならないさ…だから千枝は雪子を優しく抱き締めたりしてやってほしい」

 

 明日香のお願いに千枝も頷いてくれた。

 話もそれだけで2人は急いでジュネスへとむかって行った。

 しかし今の千枝の頭のなかは雪子のことで頭が一杯で、明日香の話を半分しか聞いていなかったのであった……

 

 

 




次回は雪子姫のお城へ突撃します

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