ペルソナ4 正義のペルソナ使い    作:ユリヤ

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第4話①

「いってて…」

 

 再度テレビの中へ入り、明日香や悠はちゃんと着地できたが、陽介だけまた尻を打ってしまっていた。

 3人は辺りを見渡してみると、先日クマ?と別れたスタジオに戻っていた。

 

「見ろ!同じ場所だ。やっぱり場所と場所で繋がってたんじゃねえか」

 

 陽介はそう言っていると、霧の中からクマ?が現れた

 

「きッキミたちなんでまた来たクマ?」

 

 クマ?はまたもや現れた明日香達に驚いていたが、ぬぬぬ~と唸った後に

 

「分かった!犯人はキミたちだクマ!」

 

 と行き成りクマ?は明日香達を犯人と呼んだ。

 

「おいこのクマ!行き成り何言いだすんだ!?」

 

「今俺達の事を犯人と言ったけど、それは如何いう意味なんだ?」

 

 陽介は行き成り犯人呼ばわりに腹を立て、明日香は如何いう意味なのか尋ねるとクマ?は明日香達に背を向けながら話し始めた。

 

「最近誰かがここに人を放り込んでいる気配がするクマ。そのせいでこっちの世界は最近どんどん可笑しくなってしまっているクマ」

 

 そして振り返りクマ?は話を続ける。

 

「キミたちはここに来れる…他人に無理矢理入れられた感じがしないクマ。よって一番キミたちが怪しいクマ!」

 

 クマ?は明日香達を指差しながら

 

「キミたちこそが、ここに人を放り込んでいる犯人クマぁ!」

 

 クマの言った事にカチンときた陽介は

 

「ふざけんな!何勝手に決めてやがる!!」

 

「落ち着け陽介!言いたい事は分かるが今は堪えろ!」

 

 明日香は陽介を押さえる。確かに色々と言いがかりはあるが、昨日今日自力でテレビの中へ入ってきたらクマ?が決めつけるのも無理はない。

 だがここで争っても意味が無い、まずはクマ?に色々と情報を聞き出す事が先決である。

 

「だいたいよ、こんな分けわからん所に人を放り込んだら、出れずに死んじまうかもしれないって…おいまさか…」

 

「若しかしたらはなから殺すために放り込んだかもしれない。山野アナや小西先輩も…偶然じゃなかったんだ」

 

「きっとそうだ」

 

 明日香と悠と陽介だけで勝手に話を進めてクマ?は置いてけぼりの状態であった。

 

「ゴチャゴチャうるさいクマね!一体何しに来たクマ!?ここは一方通行なの、入ったらもう出られないの!」

 

「出られない?昨日は出る事が出来たじゃないか」

 

「だからそれはクマが出してあげたからなの!自力じゃ出られないの!」

 

 どうやらこのクマ?の力がないと自力では出られ無いようだ。

 

「うっせぇ関係ねーよ!みろ今回はそんな事を考えて命綱を…」

 

 と陽介がクマ?に命綱を見せびらかせようとしたら、明日香がポンと陽介の肩を叩いて

 

「陽介、現実は残酷な形で進んでいるようだ」

 

 陽介は明日香が言っている意味が分からなかったが、腰に巻いてあるロープを見てみるとロープは途中で切れていた。

 切れたロープを見て陽介は叫び声をあげた。陽介はクマ?の方を見ると

 

「テメェ…調べが済んだら俺らをこっから出してもらうからな…!」

 

「色々と強引だな…」

 

「あんま言うな悠、陽介だって必死なんだろうだから」

 

 しかしこれでクマ?の力が必要になってしまった。陽介とクマ?の言い合いはヒートアップしていた。

 

「調べたいのはこっちクマよ!クマずっとここに住んでたけど、こんなに騒がしくなったのは初めてクマ!だったら証拠あるクマか?君たちが人を放り込んでいないっていう証拠が!」

 

「証拠!?」

 

 クマ?に証拠と聞かれ、陽介は戸惑う。そんな証拠なんて持っているわけがない。

 

「急に言われても…」

 

「俺達がそんな事をしない…ていうのは証拠にはならないよなうん」

 

 悠や明日香も急に証拠と言われ、戸惑っている。

 

「ほら、やっぱりキミらクマ!」

 

 クマ?の中ではもう明日香達が犯人だという事になっていた。

 

「違うって言ってんだろ!てかお前に説明する義理は無いっての!昨日は偶然来たんだが、今回はマジなんだ。知ってる事全部話してもらうぞ!」

 

 と陽介は霧が出ている時は死体が上がっているという事を説明した。

 説明を聞いたクマ?は

 

「そっちで霧が出ている時は、こっちは霧が晴れているクマよ。霧が晴れている時はシャドウが暴れるからとっても危険クマ」

 

 クマ?の説明で自分達の世界で霧が出ている時はこっちのテレビの中は霧が晴れているのが分かった。

 だがシャドウと言うのがよく分からない。霧が晴れている時はシャドウが暴れるという事はそのシャドウと言うのは生き物なのだろう。

 

「はっはーんそういう事クマね」

 

 とクマ?が勝手に納得していた。

 

「シャドウが暴れると危険だから早く帰れって言ったクマ。さぁ質問は終わりクマ!キミらが犯人なのは分かってるクマ。今すぐこんな事止めるクマ!」

 

「だから違うって言ってるんだろうが!いい加減キレそうだぜ…なんで人の話を聞かねーんだテメェは!」

 

 クマ?の一方的な問い詰めに、遂にキレてしまった陽介はクマ?に怒鳴り返した。

 

「たっただ犯人かもって言っただけクマよ…」

 

 さっきまで強気だったのが嘘のようにクマ?は弱々しく返した。

 

「んだよコイツ、さっきまで強気だったのに今度は弱気とか、調子狂うぜ」

 

「陽介気持ちは分かるが、怖がらせ過ぎだ。後は俺が聞いてみるから」

 

 そう言って明日香はクマ?に近づいてニッコリと笑いながら

 

「怖がらせて悪かったね。でも俺らもここの事がよく分からないんだ。君が分かる事があれば話して欲しいな」

 

 明日香の言い方にクマ?もゆっくりと頷いてくれた。ありがとうと明日香が笑いながら言うと

 

「まず最初に、今俺達がいるこの場所は何なんだい?スタジオみたいだけど、あのマヨナカテレビに映っている映像はここで撮影してるのかい?」

 

「マヨナカテレビ?撮影?何の事クマ?」

 

 どうやらクマ?はマヨナカテレビの事や撮影の事を知ら無いようだ。

 

「俺達の世界では雨が降っている日の夜中に可笑しな番組が流れるんだ。それも死んだ2人がその番組に映ってる。若しかしたらその映像をこの世界で撮影してるんじゃないかって」

 

 明日香の説明にうーむと唸っているクマ?

 

「ここは元々こういう世界クマ。誰かが何かをとるとか、そんなの無いクマよ」

 

「分かるように説明してくれ」

 

 悠がクマ?に分かるように説明を要求すると

 

「だからさっきも言ったけど、ここはクマとシャドウしか住んでないの!他の事なんか知らないの!」

 

「だから俺らはそのシャドウなんてものも知らないんだって!だいたいお前の方が怪しいじゃねえか!いい加減そのふざけた着ぐるみを脱ぎやがれ!!」

 

 と陽介はクマ?の頭を掴み強引に脱がせようとした。そしてクマ?の頭が脱げるとうわぁ!と陽介が驚いてしまった。

 

「なッ中身がねぇからっぽだ…何もんだよお前!?」

 

 明日香達はクマ?の中には人が居ると思っていたが、実際は中は空っぽで人なんて居なかった。

 改めて存在が謎なクマ?は外れた頭を戻すとシュンとしてしまった。

 

「クマが犯人だなんて…そんな事しないクマよ。クマはただここで住んでいるだけ。ただここで静かに暮らしたいだけ…クマ」

 

 クマ?の悲痛な訴えに明日香達は黙って聞いていた。

 

「…キミたちが犯人じゃないって信じても良いクマよ。でもその代わりに本物の犯人を捜してこんな事を止めさせて欲しいクマ。でも約束してくれないらこっちにも考えがあるクマ」

 

 クマ?の考えとは…

 

「ここから出してあーげない」

 

 その考えは流石にヤバかった。

 

「この…下手にでてればいい気になりやがって…」

 

 遂には我慢できなくなった陽介はクマ?に殴り掛かろうとしたが、悠が手で制止し黙って首を横に振った。

 

「クマは…クマは…静かに暮らしたいだけ、なのにこのままだとここがメチャクチャになっちゃうクマ。そしたらクマは…ヨヨヨ」

 

 と遂には泣き出したクマ。たく調子狂うぜと呟く陽介。

 だがこのままではクマ?が可哀そうであった。

 

「なぁ如何するよ悠、明日香」

 

「頼れるのキミたちしかいないクマ。約束、してくれるクマか?」

 

「分かった約束しよう」

 

「何かここまで来たら可哀そうになってきたからな。助けてあげるよ」

 

 悠と明日香はクマ?と約束するようだ。

 

「よッよかったクマ!」

 

 クマ?は喜んだ。

 

「ったくよ出さないとか足元見やがって、けどま色々と知りたくて此処に来たんだからな。今のところなんも分かって無いしな。俺達で犯人捜せとか…いいぜやってやろうじゃねぇか。一応名乗っておく俺は花村陽介」

 

「俺は鳴上悠」

 

「俺の名前は日比野明日香、君の名前は?」

 

 明日香はクマ?の名を聞いてみると

 

「クマ」

 

 まんまであった。こうして明日香達はクマに犯人探しの約束をしたのだ。

 

「でも犯人を捜すって言ってもどうすればいいんだ?」

 

「それはクマにも分からんクマ。けどこの前の人間が入り込んだ場所は分かるクマ」

 

「それって若しかして小西先輩か!?」

 

「クマ、その場所に案内してくれるか?」

 

「いいけど3人にはこれをかけてほしいクマ」

 

 そう言ってクマは3人に眼鏡を渡してきた。悠には黒、陽介はオレンジ、そして明日香は白だった。

 なんだと思いながらも3人は眼鏡をかけてみる。すると霧で曇っていた景色がクリアに見える。

 

「すげぇ、さっきまでの霧が全然見えねぇ。かけてると濃い霧が無いみたいだ」

 

「霧の中で探索するにはもってこいのアイテムだな」

 

 明日香が眼鏡をそう評した。

 

「クマはココに長く住んでるから、頼りにしてくれクマ。あ、でも自分の身は自分で護ってほしいクマよ。クマにできるのは案内だけクマ」

 

「頼りにならねーじゃねーか!」

 

 クマの言った事に陽介は思わずツッコミを入れてしまった。一応武器になりそうなものを持ってきたが、雰囲気だしと言うのも、シャドウなるものを相手にして、本当に大丈夫なのか心配になってきた。

 

「お前戦えないのかよ!?」

 

「無理クマ。筋肉ないもん」

 

 確かにクマは中身が空洞であった。本当に戦えないのか、悠は黙ってクマに近づくとクマを軽く押してみた。

 クマは軽く触っただけでひっくり返ってしまった。

 

「いやしょぼすぎだろ…俺らこんな奴と約束したのかよ」

 

 明日香はひっくり返ったクマを助け起こしてあげた。

 

「そだ、案内ついでに聞いておくけど、小西先輩って君らのなんなんクマ?」

 

「……なんでもいいだろ」

 

 陽介は直ぐに答えずに目を逸らしながらそう答えた。明日香はそんな陽介を怪しんでみていた。普段の陽介ならもう少し早く自分の大切な友人だと答えるはずだ。

 

「兎に角、先輩が此処に入れられている事は分かった。もっと何か分かるかもしれない。さっさと行こうぜ」

 

 クマの案内の元、小西先輩が入り込んだ場所へ向かった。

 

 

 

「何だよここ、稲羽の商店街そっくりじゃねえか」

 

 クマに案内されて着いた場所が稲羽の商店街そのものであった。

 これは如何いう事なのかとクマに聞いてみると

 

「最近おかしな場所が出現しだしたクマよ。色々と騒がしくなってそれで困ってるクマ」

 

 この商店街も可笑しな場所の一つなのだろう。

 

「クマ、稲羽でなんでこの商店街だけなんだい?」

 

「クマも分からない。でもここに居るものにとって、ここは現実クマ」

 

 ここは現実、その言葉が若しかしたら小西先輩と関係があるかもしれない。

 

「なぁ、もし商店街がそのまま稲羽とそっくりなら…この先って確か小西先輩の酒屋が」

 

「だよな明日香、もっと先に行ってみようぜ」

 

 更に先に行くと本当に小西先輩の酒屋があった。

 

「本当にあったよ。若しかして小西先輩この酒屋で…」

 

 陽介が酒屋に近づこうとすると

 

「ちょっと待つクマ!そっそこにいるクマよ!」

 

 クマが慌てだした。

 

「いるって何がだよ?」

 

 クマの慌てぶりに陽介は怪訝な表情をしていたが

 

「シャドウ…やっぱり襲ってきたクマ…!」

 

「!陽介、今すぐそこから離れるんだ!」

 

 明日香は何かの気配を感じとり、竹刀袋から竹刀を抜いて構えた。

 すると酒屋から5体の仮面が現れた。いきなり仮面が現れて陽介は短い悲鳴を上げた。

 仮面は泥のような体を作りながら明日香達に近づいてきた。が、泥のような体が球体に変わりはじめ、巨大な口だけの化け物となり、大きい口から舌を出しながら明日香達を見ていた。

 

「こッこれがシャドウ!?」

 

 シャドウ達は雄たけびを上げながら明日香達に襲ってきた。

 

「来るぞ!」

 

 明日香は竹刀を、悠はゴルフクラブを構えた。

 一体のシャドウが明日香に突っ込んできた。剣道をやってる明日香は剣の間合いを分かっている。

 球体のシャドウの動きを見切り、横に避けると

 

「面!!」

 

 明日香の鋭い上段打ちがシャドウにクリーンヒットした。

 

「よっし!」

 

「おお!!」

 

 陽介とクマは歓声を上げた。今のは決まったと思っただろう。しかし竹刀を振るった明日香本人は

 

「くそッ!あんまり効いてない!」

 

 シャドウは蚊に刺された程度しか思ってないのか、再度明日香に突っ込んできた。今度は3体が一斉に。

 明日香は相手に自分の間合いに入られない様に竹刀を振るい、逆に返し技をしたりした。

 と明日香は悠の方を見ていたが、悠は矢鱈目鱈にゴルフクラブを振っていただけだった。

 恐らく悠は今迄剣などを振った事が無いのだろう。遂に一体のシャドウの舌でゴルフクラブを捕まられてしまい、シャドウの体当たりを喰らっていた。

 

「悠!!」

 

 明日香は悠に気が行ってしまっていた。それがいけなかった。一体のシャドウが明日香に体当たりをしてきた。

 油断してしまった明日香は地面に叩きつけられ、シャドウが大口を開いて明日香に食らいつこうとした。

 明日香は竹刀でシャドウの口を防いで自分に食らいつこうとするのを阻止していたが、シャドウの力が余りに強力で今に食われそうだった。

 

「悠!明日香!おいクマ何とかならねぇのかよ!?」

 

「無理クマ!クマには戦う力なんてないクマよ!」

 

 万事休す、此処までなのか…明日香は踏ん張りながらそんな事を考えてしまっていた。

 

(ゴメン千枝。さっきは無事に帰って来るなんて言ったのに、無理みたいだ……)

 

 ジュネスにおいてきた千枝の事を思い、すまないと千枝に謝っていた。

 このまま食われてしまうと思ったその時であった。

 

「ペ…ル…ソ…ナ…ウオォォアァァァァッ!!」

 

 悠が叫びながら、手の平で蒼く燃えていた火を握りしめたのを明日香が見た瞬間、悠の後ろに黒い長学ランを着て、大剣を持った巨人が現れた。

 巨人が現れた瞬間、シャドウ達は唸り声を上げた。あの黒い巨人に警戒をしているようだ。

 2体ほどのシャドウが黒の巨人に突撃して行った。

 

「イザナギ!」

 

『ジオ』

 

 黒の巨人の名前なのか、悠がイザナギと叫ぶとイザナギは電撃を放ち、2体のシャドウは一瞬で消えてしまった。

 明日香はアレを見てイザナギはシャドウに対抗できる力だと言うのは直ぐに分かった。

 明日香に食らいつこうとしたシャドウもイザナギに向かって行った。

 

「ペルソナ!!」

 

『スラッシュ』

 

 今度はイザナギが大剣を振るい、全てのシャドウを切り倒してしまった。

 あれだけ苦戦していたのにイザナギの登場によって勝負は一瞬で決まってしまった。

 イザナギは役目が終わったのか、消えてカードが現れた。見てみるとカードにイザナギの姿が写っていた。

 

「すっげーな今の!どうやったんだ!?ペルソナとか言ってたけど何なんだよ!てか何したんだよ!?」

 

 陽介は興奮した様子で悠に聞いていた。明日香もほこりを払いながら悠の元へ行った。

 悠自身も今一よく分かっていなかったが

 

「落ち着けヨウスケ、センセイが困ってらっしゃるクマ」

 

 クマが悠の事をセンセイと呼び、陽介は呼び捨てであった

 

「いやはやセンセイは凄いクマね。クマはまったくもって感動した。こんな力を持っていたなんてシャドウが怯えるのも無理ないクマ。若しかしてこの世界に入って来れたのもセンセイの力クマか?」

 

「若しかしたらそうかもしれない」

 

 クマの問いに悠はそう答えた。答えを聞いてクマはもっと驚いたようで

 

「やっぱりそうクマか。こら凄いクマねーな、ヨウスケやアスカもそう思うだろ?」

 

「何で俺らはため口になるんだよ!ちょーしにのんな!」

 

「ハハハ…でもまぁ今さっきのペルソナって力はシャドウには効果的だろう。俺の攻撃もあんまり効いてなかった様だし」

 

 明日香は自分の剣道には自信はあったが、それは人間相手だと言うのが今痛感した。恐らく自分では時間稼ぎしか出来ないだろう。

 今は悠のイザナギに頼るしかないだろう。

 

「よしこの調子で調査を再開するぞ。何とかこの先も何とかなりそうじゃんか!」

 

 再度酒屋の前に立つ明日香達

 

「しかし先輩ここで何があったんだろな」

 

 陽介が酒屋に入ろうとしたその時、周りからザワザワと話し声が聞こえてきた。

 

『ジュネスなんか潰れればいいのに…』

 

『ジュネスのせいで…』

 

『ジュネスのせいで』

 

『ジュネスのせいで…』

 

 聞こえてくるのはジュネスに対する恨み妬みであった。

 

「何だよこれ…」

 

 陽介は行き成りジュネスに対する恨み言を聞いて、足が止まってしまった。

 

『そういえば小西さんちの娘さん、ジュネスでバイトしてるそうよ』

 

『まぁお家の方が大変だっていうのにねぇ』

 

『最近じゃジュネスのせいで売り上げが悪いって言うらしいじゃない?』

 

『最近の娘はお家の事よりもお金の方が大切なのかしらねぇ』

 

「やッやめろよ…」

 

 陽介は耳をふさぎたくなった。そこから流れるのはジュネスの悪口や小西先輩への悪口であった。

 

「クマ、ここは此処に居るの者の現実だって言ったよね?それは此処に迷い込んだ小西先輩の現実でもあるっていう事だよね?」

 

 明日香が聞いてもクマ唸るだけで

 

「クマはこっちの世界の事しか分からない」

 

 それしか言えなかった。とりあえずは酒屋の中へ入れば何か分かるかもしれない。

 

「上等だよ」

 

 陽介はそう言って酒屋の奥へと入って行った。

 続いて明日香・悠・クマの順で酒屋へと入っていく。

はたして明日香達に待ち受けるのは何なのか……

 

 

 

 

 




次回は後篇です

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