ペルソナ4 正義のペルソナ使い    作:ユリヤ

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最近深夜投稿をしてたせいで体の調子が可笑しいユリヤです。
今回は時間的は早い投降ですね
それではどうぞ


第3話

「ぐえ!」

 

「くぅ!」

 

「あいた!」

 

 テレビの中へ入ってしまった明日香達、そのまま落ちていき地面へ激突してしまった。

 ゆっくりと上体を起こす悠

 

「皆、怪我は無いか?」

 

 悠が他に落ちて行った陽介や千枝に明日香と怪我が無いか聞いてみた。

 

「若干けつが割れた」

 

 アホな冗談を言う陽介、冗談を言えるという事は無事という事だろう。

 

「もともとだろが、ってあれ?ねぇ明日香は何処?」

 

 見れば自分達の周りに明日香の姿が無かった。

 まさか落ち所が悪くて、もっと下まで落ちてしまったのか、そう思った悠たちだったが

 

「!ひゃう!」

 

 千枝がいきなり顔を赤くしビクンと反応した。

 

「如何した里中!?」

 

「いい今何か動いた!あッアタシの股の下に何かいる…!」

 

 千枝がそう言い、千枝・悠・陽介は恐る恐ると千枝の股の下を見てみた。

 其処に居たのは…

 

「ふがふががふご!」

 

 千枝の股に顔を埋めていた明日香の姿があった。

 

「ッ!!!」

 

 変な感触の正体が明日香だと分かると千枝はスクッと立ち上がり、そして…

 

「明日香のエッチィ!!」

 

 まだ寝ていた明日香に向かって容赦のない蹴りをおみまいした。

 結構強烈だったのか、ビクビクと震えだした明日香

 

「ってゴメン明日香!なんかビックリと恥ずかしさで色々とぶっ飛んでた!」

 

 千枝も蹴った後でやり過ぎたと思って、明日香を助け起こした。

 

「…俺らだけ痛い思いしたのに、明日香の奴だけ良いおもいしてね?」

 

「青春だな」

 

「いや全然違うだろ」

 

 

 

 明日香の調子が戻った事で、改めて状況を把握する事にした。

 テレビの中へ入り、見知らぬ場所に投げ出されたわけだが、自分達が今何処に居るのか見当もついていないのだ。

 

「うおッ!?」

 

 陽介は上を見上げて驚いた声をあげた

 

「何!?ついに漏らした!?」

 

 千枝は我慢していた陽介が遂に限界に来てしまったと思い、思いっきり引いたが

 

「ばか違うって!周りを見ろ周り!」

 

 陽介に言われた通り明日香達も周りを見てみると、自分達が居るのが大きなスタジオだ。

 

「何ここ、スタジオ?それにすっごい霧…じゃなくてスモーク?」

 

 スタジオどころか自分達の周りを霧が包んでおり、正確な大きさが分からない状況だ。

 

「規模が大きすぎて分からないが、これだけはハッキリ言える。今俺達が居るところは稲羽じゃない」

 

 生まれてから今迄稲羽を離れた事の無い明日香は今自分達が居る場所は稲羽じゃないと断言する。

 

「兎に角此処に来たのは事故みたいなもんだが、如何するか?」

 

「調べてみよう」

 

 明日香が此れから如何するかと3人に聞いてみるが、悠が調べてみようと言う。

 

「えぇ?何も準備してないでウロチョロするのはまずいって。一度帰ってからさ」

 

 そう言って千枝は辺りをキョロキョロと見てみるが、さぁっと顔を青くして

 

「……ねぇ、そう言えばアタシらどっから入ってきたんだっけ?」

 

「は?何言ってるんだよ里中、そりゃテレビでって…」

 

 陽介は辺りを見たが、テレビなんか影も形も無かった。

 つまり…出れそうな場所が無いのだ。

 

「出れそうな場所がないってどういう事だよ!?」

 

「知らないよ!アタシにキレないでよ!もうやだ帰る!今すぐ帰るー!」

 

「だからどうやってだよ!?」

 

 陽介と千枝がパニック状態で言い争っていた。

 

「落ち着け2人とも」

 

 悠はパニック状態の陽介と千枝を落ち着かせようとした。

 

「そうだ落ち着け、言い争っていたって何も解決しない。まずは落ち着いて出口を探そう」

 

「そッそうだよな、冷静に冷静に…とにかく出口を探すか」

 

「でッでも出口なんかほんとにあるの?」

 

 落ち着いたが未だ不安そうな千枝。そんな千枝に明日香が

 

「現に俺らは此処に入ってきたんだ。だったら出口だってあるはずだ。大丈夫だって千枝、何とかなるさ」

 

 と優しく落ち着かせようとした。明日香に言われ漸く落ち着いた千枝。

 

「兎に角探してみよう。何かあるはずだ」

 

「分かった。とりあえず悠が先頭を歩いてくれ。テレビの中へ入れるのも悠がきっかけなんだ。若しかしたら悠のおかげで何か分かるかも」

 

 という事で悠を先頭にし、出口を探す事にした。

 

 

 

 出口を探す事数十分、明日香達は霧の中の建物を探索していた。

 暫く歩いていると霧が薄くなってきた。

 

「何かここらへん霧が薄いね」

 

「何かの建物みたいだが、霧自体が凄くてわっかんねぇ」

 

「大丈夫明日香?これって却って遠ざかってない?」

 

「此処まで来たら勘で行くしかないな、あんま離れるなよ千枝」

 

「兎に角今は先に進んでみよう」

 

 悠の言う通り先に進むしかなさそうだった。

 だが先に進んで明日香達が目にした光景は…

 

「何此処…」

 

 千枝は自分が目にしている光景に背筋を凍らせていた。

 部屋は行き止まりとなっていたのだが、問題はそこではない。その部屋が異常なのだ。

 ベッドや観葉植物まではいい。だかこっから問題であった。

 部屋中に張られている顔が無いポスター、赤いペンキなのか血なのか分からない染み。そして…

 

「なッなぁこの天井に張られてるロープと椅子、あからさまにマズイ配置だよな」

 

 陽介はロープと椅子を見てそう呟いた。

 

「これってスカーフか?輪っかつくってるけど…マジでアウトかもな」

 

 よくあるサスペンス劇場とかで出てくるようなものを連想する千枝と陽介。

 さっきから明日香と悠が静かだから如何したのかと、悠と明日香の方を見てみると、悠は色々と探しており明日香は携帯のカメラで写真を撮っていた。

 

「おッおい、明日香はなに写真なんか撮ってるんだよ!?」

 

「いやこの部屋が明らかに怪しいから、証拠として部屋の写真を」

 

 そう言って明日香は顔を切りぬかれたポスターと赤い染み、そしてロープと椅子そしてスカーフを何回かカメラに収めていた。

 

「明日香のやってる事は警察がやってる事みたいで分かるけどさ、一回戻らねえか?此処に居ると何か落ち着かないぜ」

 

「アタシも…それに何か気分が悪い」

 

 千枝が体調の不調を訴え始めた。確かに部屋の雰囲気のせいか明日香自身も少し調子が悪い。

 充分カメラに収めると携帯をしまい、不気味な部屋を後にした。

 

 

 

 先程のスタジオに戻ってきたが、これから如何するか考えていると

 

「ねッねぇ、あそこに何かいる!」

 

 千枝が指差した方に、人じゃない何かのシルエットが見えた。

 ずんぐりした姿、まるでクマの様だ。

 そしてシルエットが此方に近づいて来ると、そのシルエットの正体が露わになった。

 

「何此れ…クマ?」

 

 千枝はクマなる者の姿をまじまじと見ていた。クマと言ってもリアルな感じではなく、漫画のキャラクターのような愛らしい姿をしていた。

 

「何なんだコイツ…」

 

 行き成り自分たち以外の者に出くわして戸惑っている陽介

 

「結構可愛いな」

 

「悠って結構可愛いもの好きなのか?」

 

 戸惑っている千枝と陽介に対して悠と明日香は落ち着いていた。

 だが次の瞬間、落ち着いていた明日香と悠までもが驚いた。

 

「きッ君らこそ誰クマ?」

 

 目の前に居るクマらしきものが急に話し始めたのだ。

 

「そっちこそ誰よ!?ヤル気!?」

 

 千枝は驚いて思わず身構えてしまった。

 

「そそッそんなに大きい声出さないでよ」

 

 千枝の大声にクマ?は体を小さくして震えてしまった。

 

「千枝落ち着け。怖がってるじゃないか」

 

「でも明日香…!」

 

 明日香が千枝を宥めている間に悠がクマ?近づいた。

 

「此処は何処なんだい?」

 

 クマ?警戒を解こうと、悠が優しくクマ?に尋ねてみた。

 

「ここはここクマ。名前なんて無いクマよ。僕がずっと住んでるところ」

 

 如何やらここには名前なんかないらしく、クマ?はずっとここで住んでいるようだ。

 

「住んでいるという事は、君は此処の事については詳しいのかい?」

 

 と今度は明日香が尋ねてみるとクマ?体を縦に動かし

 

「クマはここで静かに住んでいたのに、最近誰かがここに人を放りこんでいるからクマ迷惑してるクマよ。だから君たちはここからさっさと帰るクマ。霧が晴れる前に帰らないと、此処は危険クマ」

 

「人を放り込む?何の話だよ」

 

 陽介はクマ?言っていることがちんぷんかんぷんだったが、明日香の頭の中ではパズルが少しづつ組み合って行った。

 

「だから誰の仕業か知らないけど、あっちの人にも少しは考えてほしいって言ってんの!」

 

 クマ?は自分の言ってる事が伝わっていないようで地団駄を踏んだ。

 

「ちょっと何なわけ!?行き成り出てきて何言ってんのよ!アンタ誰よ!此処は何処なの!?何がどうなってんの!?」

 

 千枝の迫力ある言い方に、クマ?は驚いて悠の背中に隠れてしまった。

 

「とっとにかく早く帰った方がいいクマ」

 

「だから出る方法が分からないって言ってんだろ?帰りたくても帰れないんだよ俺らは」

 

 クマ?の言い方に呆れた陽介は溜息を吐きながらクマ?にそう言った。するとクマ?はまたウガーッ!と怒りだし

 

「だからクマが外に出すってつってんの!」

 

「!今なんて言ったんだい?君が外に出してくれるのか?」

 

 明日香が再度尋ねると、クマ?は足を二回トントンと鳴らすと煙と共にレトロなテレビが3段のタワーとなって現れた。

 

「んだこりゃ!?」

 

「テレビ…だよねどう見ても」

 

 陽介と千枝は行き成り現れたテレビに驚いた。

 明日香や悠もまじまじとテレビを見ているとクマ?が背後に回って

 

「さー行った行ったクマ!僕は忙しいクマだクマ!」

 

 とクマ?は強引に明日香達をテレビに押し込んだ。

 千枝や陽介がまたも悲鳴をあげながらもテレビに吸い込まれてしまった。

 

 

「ん?あれ、此処は」

 

 明日香は周りを見渡すと、ジュネスの家電売り場だった。

 

「よかったぁ、戻って来れたぁ」

 

 千枝は脱力したようで、座り込んでしまった。

 

「にしても変な所だったな。変な部屋や喋るクマみたいなのにも会ったし」

 

 陽介はさっきまでの事を思い出していると、店内放送が流れた。今からタイムサービスが始まるようだ。

 

「けっこう俺らあそこに居たんだな」

 

 陽介がそう言っているあいだ、悠が何かを発見したのか歩いて行った。

 明日香は悠が歩いて行った方を見ると、同じく悠と同じ方向へ歩いて行った。

 

「これって…」

 

「あぁあの部屋のポスターだな」

 

 悠と明日香2人で納得してしまい、陽介と千枝も近づいてみると

 

「このポスターってあの部屋にあった顔無しの」

 

「そっかどっかで見たことあるって思ったのは、柊みすずのだったからか」

 

 陽介と千枝もポスターを見たが、確かに顔無しのポスターと柊みすずのポスターはまるっきり同じだった。

 柊みすず、最近不倫騒動となっている山野アナの不倫相手の生田目太郎の奥さんである。最近騒がれていた。

 

「おい、じゃあ何か?あの不気味な部屋と死んだ山野アナには何か関係があったりするのか?」

 

「恐らくな陽介。あの顔が無い柊みすずのポスター、顔が無いっていう事で何か強い恨みがあったんじゃないかって俺は考えていた」

 

「マジかよ明日香、明日香の推理は当たる確率が高いからな…それにあのスカーフの輪っかがぶら下がっていたけど…」

 

 と陽介はわーわーと行き成り叫びだした。

 

「なぁやめねぇかこの話?もうメンタル的に俺も限界だし、俺今日の事は纏めて忘れる事にするからうん」

 

「アタシも今日は気分最悪、もう帰る」

 

 今日の事は色々と精神的に堪えた。現地解散という事で明日香は千枝と一緒に帰ることにした。

 

 

 ――夜――

 

 あれから千枝も何時ものような元気はなく、黙って歩いていた。明日香も変に励ましたり元気づけたりするのは返って逆効果と判断、無言での帰りが続いた。

 互いの家に到着し、一応さようならを言って互いの家に入って行った。

 家に入ると、未來が帰ってきていた。今日は仕事が早く終わったようで一緒に夕食を食べることになった。なのだが

 

「如何したんだい明日香?全然箸が進んでないけど」

 

「今日は未來さんが早く帰ってきたから未來さんと明日香の好きなお寿司にしたのに、如何したの?」

 

 未來と明野は心配そうに明日香を見ていた。明日香は如何も気分が晴れなかった。恐らくはテレビの中に居たのと関係があるのだろう。

 だが未來や明野にテレビの中の事を言っても信じるどころか、かえって不安にさせてしまうに決まっている。

 

「いッいやぁ父さんが久しぶりに帰ってきたから遠慮してるだけだよ。遠慮しないんだったらいっぱい食べるけど」

 

「子供が親に遠慮するものじゃないよ。沢山食べなさい」

 

「明日香が食べると思ったから沢山作ったのに、これじゃお刺身が勿体ないわ」

 

 これ以上心配させないと明日香は少しづつだが寿司を平らげて行った。

 一貫一貫と食べすすめると食欲の調子も戻ってきたようで普通に寿司を食べ続けた。

 明日香と未來で殆どの寿司を平らげると、明日香は直ぐに部屋に戻って行った。

 久しぶりの夫婦水入らず、ゆっくりしなよとそう言い残して。

 さて部屋に戻った明日香はさっそく今日まで見た事を纏める事にした。

 

 ①不倫騒動になった山野アナ。

 

 ②マヨナカテレビにて山野アナの姿が映った。

 

 ③その後山野アナ、死体で発見される。

 

 ④山野アナの遺体の第1発見者の小西先輩?がインタビューされる

 

 ⑤小西先輩?がマヨナカテレビに映った。

 

 ⑥悠の力でテレビの中へ入った。

 

 ⑦テレビの中を散策、そこで顔が無い柊みすずのポスター、自殺現場のようなロープ・スカーフ・椅子

 

 ⑧クマ?がテレビの中の世界に誰かが人を放り込んでいると言っていた。

 

 以上を箇条書きで纏めると此れ位だろう。クマ?が言っていた人を放り込む、と言う言葉が引っ掛かった。もし、もしもだが山野アナが悠のようにテレビに入れる事が出来たら?もし何かの事故でテレビの中に入ったとしたら、若しかしたらあの不気味な部屋と山野アナは関係があるのだろうか?

 確かめるために、明日香は携帯で撮った写真を見ようとしたが、見れなかった。ボケているとかそういう事じゃない。濃い霧で何も写ってないのだ。

 結局あの不気味な部屋は謎だらけであった。

 色々と纏めていたらもう直ぐで12時だ。今日も雨が降っているからマヨナカテレビが映るのではとそう思った明日香。

 とりあえずマヨナカテレビを見てみるかと12時になったので明日香はジッと消えたテレビを見続けた。

 すると前のように砂嵐が起こり、少しづつだが映像がハッキリし始めた。

 今度はちゃんとした映像が見れると思ったが、明日香はマヨナカテレビに映った映像に目を疑い絶句してしまった。

 何故なら小西先輩がもう一人の小西先輩(・・・・・・・・・)に首を絞められている映像であった。

 首を絞められている方の小西先輩は抵抗していたが、首を絞めている小西先輩は力を緩める事は無かった。

 しだいに抵抗する力を失って、小西先輩は腕をだらんとしてしまった。そこで映像にノイズに走り遂には見えなくなってしまった。

 こんな映像を見て、明日香はこんな推測を立てた。マヨナカテレビに映った人間は死んでしまうのではないのか…と

 

「いやまさか、いくらなんでも話が出来すぎだ」

 

 そうだ出来すぎだと明日香は自分に言い聞かせ、ベッドへと潜った。

 だが明日香が出来すぎだという推測が思わぬ方向に進んでいくのを明日香は知るよしもなかった。

 

 

 

 4月15日(金) 午後

 

 全校生徒が体育館に集められていた。

 殆どの生徒は何故集まっているのか知らされていなかった。

 確かに今日の朝はサイレンがうるさかったり、未來が朝早くに事件と言って家を飛び出していったりと忙しかった。

 まさかと明日香は頭の中で嫌な予感のパズルがどんどんと組み合っていくのを感じていた。

 となりでは陽介が携帯をいじっていた。

 

「小西先輩からの連絡があんま来ないな…」

 

 生徒達で騒がしくなっていると、校長先生が壇上に上がって話を始めた。

 

「えー皆さんに悲しいお知らせがあります。3年3組の小西早紀さんが………亡くなりました」

 

 亡くなったと言う言葉を聞いて陽介は目を見開いて、顔面が蒼白になっていた。

 他の生徒達が亡くなったと言う事を聞いて騒々しくなったが、明日香はもう別の事を考えていた。

 明日香の推測通りマヨナカテレビに映った人間は死ぬのだ。そしてその死因は若しかしたらクマ?が言っていたようにテレビに放り込まれて、何かしらの事があってテレビの中で死んでしまったのだ。恐らく山野アナもそうなのだろう。あのもう一人の小西先輩は何だったのだろう…

 全校集会が終わるまで、明日香はその事を考えていた。

 

 

 

 小西先輩の事件があった為に、午後の授業は全てお休みとなった。

 小西先輩と面識がない生徒の殆どは午後の授業が休めてラッキーとしか思っていなく、さっさと何処かへ遊びに行ってしまっていた。

 他にはマヨナカテレビを見た生徒達が、小西先輩が苦しそうにしていたとそんな話で盛り上がっていた。

 

「ったく、好き勝手に言ってるよ。やんなっちゃう」

 

 千枝・明日香・悠は小西先輩の話で盛り上がってる生徒を見てそんな事を言っていた。

 

「ほっとけよ千枝、人間自分自身に被害が無ければ好き勝手に言うもんだ。自分に被害が被ると皆慌て助けを求めるもんだ。ほっとけばいいんだよ。一々真に受ける事はないって」

 

 明日香と千枝がこんな話をしていると、陽介が重々しい表情でやってきた。

 

「なぁお前ら、昨日のマヨナカテレ見たか?」

 

「ちょっと花村!アンタまでそんな事言って」

 

 千枝が花村に怒ろうとしたが、明日香が手で制した。

 

「話してくれ陽介、俺も皆に話したい事がある」

 

「サンキュー明日香…昨日映ってたの小西先輩で間違いない。先輩何か苦しそうだった。そしたら消えちまった」

 

「成程な。俺の話も聞いてくれ…花村恐らくお前にとってはつらいかもしれない」

 

 明日香は昨日見た映像を話した。一人の小西先輩がもう一人の小西先輩の首を絞めてたと

 

「2人の先輩?如何いう事だよ?」

 

「分からない。でも俺は昨日のテレビを見て、そして今日の集会ではっきりした。マヨナカテレビに映ったの人間は死ぬっていう事が。そして山野アナも恐らくマヨナカテレビに映っていた事も」

 

「あぁそれにあのクマも言っていやがった。霧が晴れる前に帰れやら此処は危険だとか。あと誰かが人を放り込んでいるとか」

 

「偶然としては出来過ぎているが、山野アナと小西先輩の死の原因にはあのテレビの世界が関係してるんじゃないのか」

 

 そして明日香は悠の方を向いて

 

「なぁ悠、俺や陽介の言っていることが間違っていると思うか?」

 

「いや俺も2人の言ってる事は正しいと思ってる」

 

 悠は明日香と陽介の考えを正しいと肯定した。

 

「もし繋がりがあるのなら、小西先輩も山野アナもあの世界に入ったかもしれない。だったらあのポスターの部屋も説明がつく」

 

「それに先輩の手がかりも何か掴めるかもしれない」

 

「花村、アンタまさか…」

 

 千枝が恐る恐ると言った形で聞くが、花村は頷いて

 

「俺、もう一度あの世界に行ってみようと思う。確かめたいんだ」

 

「ちょやめなって!危ない事は警察に任せようよ」

 

「警察なんかあてにできるかよ!山野アナの件でも進展無さそうじゃんか!第一テレビの中に入れるって話誰も信じねーって!…全部おれの見当違いならそれでいい。でも先輩がなんで死ななきゃいけなかったのか、それが知りたいんだ」

 

 明日香は陽介を悲痛な目で見ていた。恐らく一番慕っていた先輩なのだろう。そんな先輩が亡くなって色々とショックなのだろう。

 

「わりぃ。けど止めないでくれ。ジュネスで待ってるから」

 

 それだけ言うと、陽介は行ってしまった。

 

「どうしよう明日香…」

 

「此処は陽介の好きなようにやらせてやろう。大丈夫だ、何があっても俺が護ってやるから」

 

 そう言って明日香も準備のために家へと帰って行った。

 

 

 

 ――放課後――

 

 陽介が待っているジュネスへ明日香や千枝に悠もやって来た。

 

「来てくれたか…」

 

 陽介は来てくれたことに嬉しそうだった。

 

「何言ってんの!バカを止めに来たに決まってるじゃん。ねぇ止めなって、危ないよ」

 

 千枝は危ないと言って行くのを止めようとしていた。

 

「あぁ、けど無茶は承知だ。けどあのクマが居ればまた帰れるだろうしさ。この同じテレビに入ればまたクマに会えるってきっと」

 

「そんなの保証ないじゃん!」

 

「けど他の奴らみたいに他人事って盛り上がれない…明日香・悠お前らは如何する」

 

「俺は千枝が危険な目にはあってもらいたくない。此処に残ってもらう」

 

「俺もその意見に賛成だ」

 

 明日香は千枝に危険な目にはあってもらいたくないのだ。だから千枝には残ってもらう。

 

「あぁ行くのは俺達だけで十分だ。里中にはこれ頼む」

 

 そう言って陽介はロープを千枝に渡した。行き成りロープを手渡され戸惑う千枝。

 

「俺らそれ巻いてテレビの中入るから、里中はしっかり掴んでいてくれ」

 

「ちょっとこれ命綱?ちょっと待ってよ、アタシそんなの無理だって」

 

 無理だと言っても陽介は強引に千枝に渡した。

 

「悠、お前にはこれを渡しとく」

 

 そう言って陽介は悠にゴルフクラブと傷薬を数個を渡した。

 

「明日香、お前は大丈夫なのか?」

 

「あぁ自前のを持ってきてるからな」

 

 そう言って明日香は竹刀袋を見せ、中に竹刀がある事を教えた。

 

「そう言えばお前剣道習ってるもんな。じゃあこの中で一番戦えそうだな」

 

「あぁ戦う事になったら任せてくれ」

 

 明日香は戦闘面で活躍する事を誓った。

 準備は整った。あとはテレビの中に入るだけだ。

 

「準備は完了だ。里中ロープ絶対に離すなよ」

 

 明日香・悠・陽介は体にロープを巻いて準備完了だ。

 

「ちょっと待ってってば!明日香、アタシも一緒に」

 

 千枝がそう言ったが、明日香は千枝に心配すんなと笑いかけて

 

「絶対無事に帰って来るから、千枝はロープを絶対に離さないでくれ…な?」

 

 そう言って、悠・陽介・明日香の順でテレビの中へ入って行った。

 ポツンと残された千枝は少しづつだが命綱を引っ張って行った。

 クイクイと引っ張っていると、急にロープから重みが感じなくなった。

 まさかと思い、ロープを引っ張って戻してみると、ロープが途中で切れてしまっていた。

 

「ほらぁ…やっぱ無理じゃん。どうしよう…」

 

 千枝は膝から崩れ落ち、ペタンと座り込んでしまった。

 

「あすかぁ…うぅ…!」

 

 千枝一人ではテレビの中へ入る事が出来ない。今の千枝は明日香の名を呼びながら泣く事しか出来なかった。

 

 

 

 

 

 




次回は戦闘パートとなります
恐らくですが、前編後編と分かれさせていただきます

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