ペルソナ4 正義のペルソナ使い    作:ユリヤ

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第16話

 5月2日(月) 放課後

 

「すごい……本当にテレビの中にこんな世界があるなんて」

 

 復帰した雪子にテレビの中の世界。そしてペルソナについて色々と話した。

 救出した時は疲労などで意識や記憶が途切れ途切れだった。落ち着いて、雪子が元気になったら改めてここに来ようと決めていたのだ。

 そしてマヨナカテレビの内容やへたをしたら雪子が死んでいたかもしれないことを話した。

 雪子も自分が死ぬかもしれないと聞かされたときは、顔色が悪くなった。でも……と雪子が

 

「ありがとう。千枝やみんなが私を助け出してくれたそれだけ今わかれば十分だから」

 

 雪子が笑ってくれた。最近見ていなかった雪子の微笑み。今まで溜め込んでいた胸のつっかえがとれてスッキリしたのだろう。

 いつもの雪子に戻ってくれた。幼馴染である明日香と千枝は本当によかったと心からそう思った。

 

「それにしても、クマのやつどこに行ったんだ?アイツが居ないと困るってのに」

 

 陽介はクマが来るのを待っていた。クマが来ないと色々と始まらないからだ。

 陽介がクマが来ないことをぼやいている矢先に、クマが現れた。

 

「おようやく来たか。ってどうしたんだよ?」

 

 クマは見るからに元気がなかった。

 しょんぼりとしているクマは

 

「クマ、みんなが来なくってさびしかったクマ。みんなが来るあいだ、ずっとさみしんボーイだったクマよ」

 

 クマは皆が来ないあいだ一人ぼっちで寂しかったようだ。つい最近までごたついていて、こっちの世界に来ることがなかったからだ。

 雪子はクマに近づくと、優しく頭を撫でながら

 

「ごめんね。でも今度から時間がある時はここに遊びに来るから」

 

 雪子に撫でられていい気分になったクマは

 

「まっまぁ遊びに来てくれるなら、許してあげるクマよぉ」

 

 調子いい奴と陽介が呆れていると

 

「そうだった、ユキちゃんにプレゼントがあるクマ!」

 

 そう言ってクマが取り出したのは、雪子のイメージカラーである赤の眼鏡だ。

 皆がかけているように、雪子も眼鏡をかけてみると霧が消え、周りがくっきり見えることに驚いた。

 

「もうひとつプレゼントがあるクマ。はいクマ」

 

 クマはもうひとつの眼鏡を雪子に渡した。渡された眼鏡をかけてみた。

 どんな眼鏡だと思った明日香だったが、もうひとつの眼鏡をかけた雪子を見て固まった。

 何故ならその眼鏡が……鼻眼鏡だったからだ。

 

「……」

 

 鼻眼鏡をかけた雪子は黙っていた。

 まさか鼻眼鏡なんてものをプレゼントされて、怒ってしまったのだろうか。

 

「雪子……?」

 

 千枝がおそるおそる雪子の様子を見てみると

 

「ぷっ……ぅくくくく、あははははは!おおかおかしぃあははははは!」

 

 いきなり大爆笑した雪子に呆然としてる悠と陽介。

 幼馴染である明日香と千枝は別段驚いた様子はない。

 

「なんかこの雪子久しぶりに見た気がする」

 

「雪子は変なところがツボだからな。長年友達やってるけど、いまだにわからん」

 

 2人は慣れっこのようだ。

 その後、雪子は千枝に鼻眼鏡をつけてこれまた大爆笑。最初は微妙な表情をしていた千枝や明日香達だったが、雪子につられて笑ってしまった。

 雪子がいつもの調子に戻ってよかった。そう思った明日香であった。

 

 

 

 ―夜―

 

 夕食を食べ終わった明日香の家の電話が鳴り響いた。

 

「はい日比野です。まぁ遼太郎君」

 

 電話は堂島からのようだ。

 

「元気にしてた?……え?明日香に話があるのね。ちょっと待ってね。明日香~遼太郎君からよ」

 

「わかった」

 

 堂島は明日香に用があるようだ。

 

「はい電話かわりました」

 

『おぉ明日香』

 

 堂島の声がいつもより元気がない。そう感じとった明日香

 

『いきなりだが、お前明日は予定はあるか?』

 

「予定ですか?とくにありませんけど」

 

 明日からまた連休が始まる。それが何か関係があるのだろうか。

 堂島の話は、本来だったら明日は家族で日帰りで出かける予定だったが、急病で倒れた部下の仕事を代わりにすることになってしまった。

 

『お前が大丈夫なら、奈々子と一緒に遊んでくれないか?』

 

「奈々子ちゃんですか?はい構いませんよ」

 

 奈々子は堂島の一人娘だ。まだ7歳ではあるがしっかり者である。

 

『そうか。それじゃあ奈々子の事を宜しく頼む』

 

「はい分かりました。お仕事頑張ってください」

 

『……あぁすまないな』

 

 堂島が電話を切った。明日香は明野に明日の予定を伝え、自分の部屋へと向かう。

 そして千枝に電話をかけた。千枝が電話に出てから、明日の予定を伝える。

 

「てことで、千枝も明日付き合ってもらうけど構わないか?」

 

『うん大丈夫!アタシも久しぶりに奈々子ちゃんに会いたいし』

 

 千枝は明日香の付き合いで奈々子に何回か会った事があるのだ。

 

「それじゃあ明日はよろしくな」

 

『了解了解。んじゃお休み~』

 

 千枝が電話を切ったので、自分も明日遅れない様に今日は早く寝るのであった。

 

 

 

 5月3日(火) 午前

 

 

 堂島に頼まれ、明日香と千枝は悠と奈々子を誘うために堂島家へと向かう。

 堂島家に到着した2人はチャイムを押す。しばらくしたら、悠が玄関のドアを開けた。

 

「よ悠。これから遊びに行くんだけどさ。一緒に行かねえか?」

 

「奈々子ちゃん久しぶり!奈々子ちゃんも一緒に行く?ジュネスだけど」

 

 悠の後ろに隠れるように明日香と千枝を見ていた少女、奈々子はジュネスの言葉に反応した。

 

「いっいいの?」

 

「もっちろん!良いに決まってるじゃん」

 

 千枝が一緒に遊ぼうと奈々子にそう言う。奈々子は喜びを飛び跳ねで表現した。お出かけできるのが嬉しいようだ。

 悠と奈々子を誘った明日香と千枝はさっそくジュネスへと向かう。

 

 

 

 ジュネスフードコート。

 バイト中の陽介や家の手伝いを切り上げた雪子らと合流した。

 テーブルに座って談笑をしていると

 

「しっかしゴールデンウィークなのに、こんな店じゃ奈々子ちゃんが可哀想だろ」

 

「だって他無いじゃん」

 

 陽介の言った事に、千枝はそう返した。稲羽で一番大きい所と言ったら、ここジュネスしかないのだ。

 

「ううん、ジュネス大好き!」

 

 奈々子がジュネス大好きと言ってくれて、陽介は感激した。小さい女の子にジュネが好きと言ってくれるのは店長の息子である陽介は嬉しいってものである。

 けど……奈々子はシュンとなりながら

 

「本当はお出かけするつもりだったんだ。おべんとう作って」

 

「お弁当、奈々子ちゃん作れるの?」

 

 雪子が奈々子に弁当を作れるのか尋ねると、首を横に振って悠を見た。どうやら悠が弁当を作る係りの様だ。

 

「へー家族のお弁当係?すごいじゃんお兄ちゃん?」

 

 千枝が悠の事をからかう

 

「お兄……ちゃん?」

 

 奈々子は悠の事をジッと見てポツリと呟いた。

 

「へぇ料理とか出来るのか。確かに器用そうな感じはするけどな」

 

「でも悠が料理できるって言うのは、何か納得できるな」

 

「そんな事無い。下手の横好きだ」

 

 陽介と明日香が悠を褒めると、そんな事は無いと謙遜した。

 

「あっアタシも何気に上手いけどね。たぶん!お弁当ぐらいなら作ってあげたよホント」

 

 いや何故そこで張り合う千枝よ。と明日香が心の中でツッコミを入れた。

 

「いや、無いだろソレは」

 

 陽介がナイと言い切ると、ムキになった千枝は

 

「何で決めつけるのよ!?んじゃあ勝負しようじゃん!」

 

「ムキになってる時点でバレバレだろ。てか勝負って俺作れるなんて言ってねーよ」

 

 陽介はムキになった千枝を見て、呆れかえっていた。

 

「あ、けどお前位なら勝てそうな気がするわ」

 

「あはは。それ分かる」

 

 陽介にスパッと言われ、陽介の言った事がツボだったようで雪子が噴き出した。雪子が陽介の言った事を肯定して、千枝がショックを受けた。

 

「んじゃあ奈々子ちゃんが審査員かな?」

 

 矛先が奈々子に向いた事に、明日香はこの先の事が予想できてしまった。

 

「そっそうだ!奈々子ちゃんお腹すいたり、のど乾いてないかな?俺が奈々子に色々と買っちゃうよ!てことでジ店長の息子の陽介君、奈々子ちゃんが喜びそうなのをチョイスしてくれ!ついでに千枝と雪子も一緒に。悠は奈々子ちゃんと一緒に待っててくれ!」

 

「あぁ分かった」

 

「おっおい明日香?」

 

「うわわ」

 

「え?あの?」

 

 明日香は強引に話題を変えると、悠と奈々子をテーブルに待たせて、千枝たちを連れて行ってしまった。

 

「おい明日香、行き成りどうしたんだよ」

 

 陽介は強引に話題を変えた明日香に尋ねると。

 

「陽介、お前あの後奈々子ちゃんに、『奈々子ちゃんのお母さんと同じくらい美味しいものをつくれるのは誰か』みたいなこと言おうとしただろ」

 

「あぁ言おうとそたけど」

 

 やっぱりかぁと呟いた明日香は

 

「奈々子ちゃんのお母さん、事故で亡くなっちゃたんだよ」

 

 明日香の発言に陽介と雪子は絶句した。

 

「だから奈々子ちゃんの前でお母さんの話をするのはタブーな。奈々子ちゃんも分かっているつもりだけど、やっぱり寂しい思いをしてるのは確かなんだから」

 

「了解。まさか奈々子ちゃんのお母さんがそんな事に……明日香のおかげで地雷踏むことなくてよかったぜ」

 

「ほんとだよ。でもアタシもさっきはムキになり過ぎちゃったな。反省しないと」

 

 

 陽介と千枝はお詫びと言う事で、自分らからお金を出してジュースやスナックなどを色々と購入した。

 トレーを一杯にして、悠と奈々子が居るテーブルに戻ってきた。

 

「お待たせ奈々子ちゃん。奈々子ちゃんのために色々と買ってきてあげたよ」

 

「うわぁ!いっぱいある!」

 

 陽介が笑顔で奈々子にトレーを見せると、奈々子は目を輝かせた。

 明日香や千枝がスナックやジュースを配り、軽いパーティーが始まった。

 奈々子が楽しそうにスナックやジュースを頂いていると

 

「ねぇ奈々子ちゃん。いま楽しい?」

 

 雪子がさりげなく楽しいかと聞いてみると

 

「うん!お出かけ出来てうれしいし、それに……お兄ちゃんがいるし」

 

 悠の方を見て顔を赤くした奈々子。

 笑顔の奈々子を見て、楽しんでもらってよかった。そう思った明日香達であった。

 食べて飲んだ後は、時間が許す限りいっぱい遊んだのであった。

 

 

 

 

 

 陽介がバイトの時間になったのでバイトに戻り、雪子は旅館の手伝いと言う事で、旅館に戻った。

 奈々子も少し疲れた様子を見せたので、今日は解散となった。

 

「じゃあ明日香、里中」

 

「バイバイ!明日香お兄ちゃん。千枝お姉ちゃん」

 

 帰りの道中、悠と満足そう笑顔を浮かべている奈々子と別れて、自分達の家へと向かう明日香と千枝。

 

「奈々子ちゃん、楽しんでくれたみたいだな」

 

「うんよかったよかった!誘ったこっちとしては楽しんでくれただけで満足だよ」

 

 でも、と暗い表情になる千枝

 

「こんな事言うのは分かってるけど、奈々子ちゃんが可哀そう。折角のお休みなのにどこも出かけられないなんて」

 

「仕方ないさ。堂島さんも刑事としての仕事が忙しいだろうし。それに、まだ奈々子ちゃんとどう接していいのか分からない所もあるんだろうさ」

 

 奈々子の母親は保育園の迎えに行くときに、車に轢かれて亡くなった。しかも轢き逃げで、犯人は見つかっていないのだ。堂島はその犯人を捕まえるために何時も資料を漁っている。そして明日香の言う通り、7歳の少女である奈々子とどう接すればいいのか分からないのだ。

 

「でもさ悠が奈々子ちゃんのお兄ちゃんになってくれたから、自然と何とかなるんじゃないかと俺は思っている」

 

「それは……うん鳴上君ならなんとかしてくれそう」

 

 悠なら、奈々子と堂島の心の殻を破ってくれる。そんな気がしたのだ。

 

「それにしても、奈々子ちゃん見てると改めて子供って可愛いなって思うなぁ。アタシも欲しくなっちゃった」

 

「……そう言う事をおおっぴらに言うんじゃない。要らぬ誤解を生むだろうが」

 

 千枝の問題発言になりそうなセリフに、呆れながらツッコミを入れる明日香であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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