ペルソナ4 正義のペルソナ使い    作:ユリヤ

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早めに書き終わった……


第15話

 4月30日(土) 放課後

 

「まったく。悠も陽介もお金持ってきてないなら全部食べるなよな」

 

 文句をいいながら購買に向かっている明日香。

 雪子が漸く復帰して学校にやって来た。

 復帰したお祝いとして屋上でワイワイと騒いでいた。

 千枝がカップうどんとカップそばを買ってきた。

 最初は雪子と千枝が食べてたのに、悠と陽介が一口とせがんできた。

 最初は一口食べたのだが、箸が止まらず全部食べてしまった。

 詫びとして悠と陽介が買うことになったのだが、小銭が足りないために明日香が買うことになった。

 そして現在に至る。

 

「悠と陽介には今度奢って貰うか……ん?」

 

 財布が落ちていた。拾ってみると女物のがらだ。

 職員室に届けておくか……そんなことを考えていたら、どこからか騒ぎ声が聞こえてきた。

 

「何だ?購買の方から聞こえるな……」

 

 購買へ急いでいってみると

 

「だからとってねぇって言ってるだろぉが!!」

 

「嘘つくんじゃないわよ!不良の言うことなんか信じられるわけないじゃない!」

 

 金髪で長身の男子と女子がもめていた。

 

「おばちゃん何をもめてるんだい?」

 

 購買のおばちゃんに騒動の原因を訪ねると

 

「何でもあの女の子が財布を落としたらしくてね、偶然歩いていた巽君がとったって言い張ってるのよ。彼見た目がいかついじゃない。とってないって言っても信じていないみたいなのよ」

 

 巽……明日香は金髪の男子の顔をよくみて、そして思い出した。

 

「(巽ってもしかして巽屋の完二か。ずいぶんとたくましくなったな。見違えたな)」

 

 巽完二は小さい頃はよく見かけていた。実家が染め物屋で雪子の旅館がお土産として染め物を取り寄せている。その時に完二とは面識があった。

 昔馴染みが言いがかりをされているのは黙っていられない。それよりも何もしていないのに、勝手に決めつけるのが許せない。

 

「止めろ。彼がとったと言う証拠もないのに言いがかりはよせ。それに落とした財布というのはこれだろう」

 

 明日香が落とし物である財布を女子に見せた。さっきまで怒鳴っていた女子は何も言えずに黙った。どうやら持ち主のようだ。

 女子は明日香から財布をひったくるようにとって、この場を後にしようとしたが

 

「待てよ。さっきまで言いがかりをかけた巽には謝らないのか」

 

 自分の方が分が悪いと理解している女子は、小さい声でごめんなさいと謝り、逃げ出すように去っていった。

 

「まったく……お前も災難だな完二」

 

「どもっす日比野先輩」

 

 完二は明日香に会釈をした。

 彼は見た目が不良ではあるが、根は素直で優しい少年である。

 

「お前も見た目で決めつけられて災難だな。でもお前が根がいいやつっていうのは、分かってるからさ」

 

 カップうどんとそばを購入した明日香は、頑張れよと完二に言い、悠たちがいる屋上へと急いだ。

 

「日比野先輩……明日香さん」

 

 完二は明日香の後ろ姿をじっと見続けた後、購買を後にした。

 

 

 

 

 5月1日(日) 昼

 

 日比野家自宅、玄関のチャイムがなった。

 

「は~い。あらあら千枝ちゃんこんにちは」

 

「おばさんこんにちは」

 

 明野が玄関を開けると、いつものみどりのジャージ姿の千枝が立っていた。

 

「明日香ぁ。千枝ちゃんが来たわよぉ!」

 

「大丈夫!もう用意は終わってる!」

 

 明野に呼ばれ、事前に準備できていた明日香が降りてきた。

 明日香も白い上着をはおる、いつもの格好だ。

 

「悪い千枝。本当だったら俺が向かいに来るつもりだったのに」

 

「いいよ。いつも明日香が迎えに来てくれてるんだし、たまには逆もいいでしょ」

 

「うふふ。千枝ちゃん初めてのデートで張り切っちゃたみたいね。明日香、しっかり千枝ちゃんをエスコートするのよ」

 

「かっ母さん。千枝の前で言わないでくれよ。結構恥ずかしいんだから。それじゃあ行ってくる」

 

「おばさんいってきま~す」

 

 明野に見送られて出発した2人。

 今日は雪子が復帰して落ち着いたら出掛けようと言った日。簡単に言えばデートである。

 

「そのさ、いつもの格好だけどいいのかな?」

 

「大丈夫だ。俺はいつもの千枝が好きだから。それよりも初めてのデートがジュネスでよかったのか?」

 

「うん。やっぱ初めては地元の方が落ち着くし、それに……デートで来たらなんかいつもと違うんじゃないかなってさ。アハハ」

 

 千枝のはにかんだ笑顔を見てカワイイと思った明日香。恥ずかしくなって思わず俯く千枝。どちらも初々しいかんじである。

 

「早くいこう。時間は有意義に使わないと」

 

「そっそうだよね!いこういこう!」

 

 照れながらもジュネスへと急いだ2人。今ここに悠がいたら「青春だな」というセリフがでそうな雰囲気であった。

 

 

 

 

 ジュネス家電売り場。

 2人は家電売り場のテレビを見ていた。

 前々からテレビを買い換えようという話はしていた。

 

「明日香はさ、どういうテレビがいいと思う?アタシらの一家、家電には疎くてさ。アタシもでっかくて安いのならなんでもいいかなぁって」

 

「最近のテレビはでかくて高性能な品が増えてるらしいけど、その反面値段が高いからなぁ。でかくて安いとなると、少し前のやつか最悪中古品になっちゃうかもなぁ」

 

 恋人同士になっても、会話はいつもと同じ。それが彼らの基本スタイル。

 

「あれ明日香と里中じゃん。うーす」

 

 テレビを見ていたら陽介がやって来た。

 

「花村じゃん。おーす」

 

「よう陽介。陽介はバイトか?」

 

 ジュネスのエプロンを着けているし、食品売り場でのバイトだろう。

 

「まぁな。それにしてもお二人仲良く、もしかしてデートか?デートでジュネスとか変わってんなぁ」

 

 陽介は2人を冷やかしたが

 

「まぁね初めてのデートは地元で落ち着ける感じがいいと思ってたし」

 

「見栄はって遠いところ行って失敗する……なんてことはしたくないからな」

 

 相思相愛な2人を見て、ハイハイごちそうさまごちそうさまと苦笑いを浮かべる陽介。

 

「ととそろそ持ち場に戻らないとな。んじゃお二人さんごゆっくり」

 

 陽介はそう言って持ち場へと戻っていった。

 しばらくテレビを品定めしていると

 

「あれ鳴上君じゃん」

 

 悠が現れた。千枝は悠を呼ぶ。

 

「おーい鳴上くーん!と……誰?」

 

 悠の後ろには前にあった不思議な少女、マリーがいた。

 

「またあった。えっと……堅物」

 

 それもう定着してるのね……思わずずっこけそうになった明日香はそう思った。

 自分の彼氏である明日香が堅物と言われ、苦笑いを浮かべる千枝。がマリーのことがきになるから、悠にマリーのことを聞いた。

 

「鳴上君、この子誰なの?もしかして鳴上君の彼女とか」

 

「彼女はマリー。ここの駅で知り合った。時折会っているんだ」

 

 千枝にマリーのことを紹介し、悠は千枝は自分の友達だということを教えた。

 マリーは千枝をじっと見て

 

「ミドリ」

 

 アダ名のつもりだろうか。千枝がみどりのジャージを着ているからなのか。なんと安直なアダ名だろうか。千枝は乾いた笑い声をあげた。

 

「堅物とミドリはどうして一緒にいるの?」

 

 堅物とミドリ……端から聞くと奇妙なカップルだなぁ。そんなことを明日香は思っていると

 

「マリー、二人は付き合ってる恋人同士なんだ」

 

 第3者に言われると恥ずかしいと思った明日香と千枝。

 しかしマリーは

 

「恋人同士って何?私と君と一緒にいるのと何が違うの?」

 

 悠に恋人同士というのは何のかと聞いてきた。冷やかしやからかいではなく、本当に恋人同士がなんなのかわからないようだ。

 悠は返答に困った。今までだって付き合ったことが皆無なためにどう答えたらいいか……

 困った悠は現在千枝と付き合っている明日香に、アイコンタクトで助け船を求めた。

 明日香は悠の代わりに、恋人同士がなんなのかを教える。

 

「マリーさん、恋人同士というのは一緒にいると楽しくて、離れてしまうと心がチクチクして痛い。ケンカもするけど、相手が大切だから直ぐに仲直りができる。いつまでも大切にしたい……それが恋人同士だと俺はそう思ってるよ」

 

 自分の考えをマリーに伝えた。自分のことを言われていると実感している千枝は、嬉しい反面恥ずかしくなり赤面していた。

 明日香に恋人同士がなんたるかを教えてもらったマリーは

 

「ふ~ん……あっそう」

 

 自分から聞いてきたのに、返答はなんとも淡白なものだった。

 肩透かしをくらった明日香を無視して、マリーはテレビの映像を熱心に見ている。

 

「マリーちゃんはテレビ好きなの?」

 

「うん好き。だけど鼻が見せてくれない」

 

 テレビを見せてくれないのは結構厳しい家なのか。というより鼻と呼んでいるのは家の人と仲が悪いのだろうか。

 

「マリーさんは好きなテレビ番組はあるの?」

 

「やじうまテレビ」

 

 明日香・悠・千枝は首を傾げた。そんな番組は聞いたことがない。

 

「知らない?やじやじ~うま!」

 

 マリーはその番組の決めポーズをしたが、やっぱり知らない。恐らく他方のテレビ番組なのだろう。

 同意を得られなかったマリーはもういい、とそっぽを向いてまたテレビを見始めた。

 しばらくして見飽きたのか、さよならを言わずに家電売り場を後にした。

 悠は二人にサヨナラを言うと、マリーを追いかけた。

 

「マリーちゃんて不思議な子だね」

 

「ファッションもここら辺のじゃないし、都会の子なのかもな。都会は進んでるんだなぁ」

 

 改めて都会は凄い所だと実感した明日香と千枝である。

 その後は屋上のフードコートで軽く食べ、スポーツエリアで物色して、気に入ったものがあったので購入した後、ジュネスを後にした。

 

 

 

 

 帰り道、いつもの雰囲気の2人。

 

「それで千枝、初めてのデートはどうだった?」

 

 明日香は初めてのデートの感想を千枝に聞いてみた。

 千枝はう~んと少し唸った後に

 

「なんかいつものおんなじ感じだった」

 

 あっけからんに言いきった千枝。だなと頷く明日香は

 

「幼馴染が恋人同士になったら最初はこういうもんだと俺は思うよ。それに幼馴染だからこそ遠慮なく楽しめると思うしな」

 

「そうだね」

 

 笑い合う2人。だけど……と明日香が

 

「そろそろ中間テストがあるから、遊ぶ時間とかメッキリ減るなぁ。テスト勉強大事だし」

 

 明日香のテスト発言に千枝が固まった。

 

「……千枝?」

 

「アハハ……最近色々と大変だったからテスト勉強してない」

 

 困った困ったと苦笑いを浮かべる千枝。

 

「ふぅ……晩飯一緒に食べた後、勉強会だな」

 

「よろしくお願いいたします」

 

 

 

 

 その日の夜、明日香の家にて晩飯をごちそうになった千枝。

 そのすぐに明日香の部屋にて軽い勉強会が始まった。

 最後は勉強会となったが、初めてのデートはとても楽しかった。そう思った2人だった。

 

 

 

 

 




今度から多くても五・六千字にまとめられるように頑張ります

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